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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

Li-Fraumeni症候群

Li-Fraumeni syndrome

別名
LFS
臓器系
腫瘍全身
科目
PathologyMedical Genetics and Immunology (Genetics)Pathology (Histopathology)Pediatrics
トピック
病理学 B/13:遺伝性腫瘍症候群(遺伝性がん症候群)病理学 B/06:腫瘍抑制遺伝子の抑制機構と発癌における役割病理学 B/08:RB遺伝子・p53遺伝子・APC遺伝子(腫瘍抑制遺伝子)病理学 B/18:腫瘍の疫学遺伝学 9.1:生物学的過程の遺伝学組織病理 H1-091:手の骨肉腫組織病理 H2-105B:骨肉腫の疫学・病態・画像・治療組織病理 H2-115B:髄芽腫組織病理 H2-129:髄芽腫(M分類とリスク層別化)小児科 3-05:小児の悪性骨・軟部腫瘍
鑑別疾患
Werner症候群遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)家族性異型多発母斑・メラノーマ症候群家族性大腸腺腫症・リンチ症候群多発性内分泌腫瘍症網膜芽細胞腫
続発疾患
髄芽腫副腎皮質癌乳癌中枢神経系腫瘍(成人・小児)骨肉腫・ユーイング肉腫軟部肉腫白血病脈絡叢腫瘍

🧠 全体像:はTP53のによるので、「ゲノムの守護者」を生まれつき半分失っているために、生涯を通じて多臓器・若年発症・多重がんという形で発癌が繰り返される。・・骨/軟部肉腫・乳癌・が中核腫瘍であり、Chompret基準を満たせばTP53の遺伝学的検査に進む。もう一つの特徴がで、のリスクゆえに診断・治療の両面でを最小化する判断が必要になる。

病態

TP53とKnudsonの2ヒットモデル

TP53は・修復・アポトーシスを統括するであり、通常はMDM2に抑制されているが、損傷を受けると安定化してp21(Rb経由のG1停止)・GADD45(修復)・Bax/PUMA(アポトーシス)を活性化する。では、このTP53アレルの一方をすでに生殖細胞系列で失った状態(1ヒット目)で生まれるため、体細胞での2つ目のヒットだけで細胞周期の監視機構が失われ、発癌に至る。

💡 のRB1と同じく古典的にはで説明される。ただしTP53の変化は他の多くのと異なりが最も多く、一部のp53は実験モデルで、残る野生型p53の機能まで妨げる()やの活性を示す。を用いたスクリーニングでは、野生型p53機能の喪失だけでなくによる阻害でも細胞の適応度が高まった1。また、RB1が単一臓器(網膜)に腫瘍を作るのに対し、TP53はほぼ全身の細胞で監視機能を担うため、症候群としてのがはるかに広い。

中核腫瘍(コア腫瘍)

腫瘍 特徴
小児で診断されたでは、生殖細胞系列TP53変異の保有率が50〜97%と報告される2。逆にLFS側から見ると6〜13%に発生し、多くは小児期である3
乳幼児のはを疑う契機になる()
・ RB1性と並ぶ代表的な遺伝性素因。若年発症・多発性を疑う契機
軟部肉腫 を含め小児期から成人まで幅広く発症する
乳癌 閉経前、しばしば30歳前後で発症。女性保因者で最も頻度の高い腫瘍
ではSHH活性化型・TP53がと関連し、非より予後不良
白血病 、二次性の血液腫瘍を含む

臨床像

コア腫瘍のいずれかが若年で発症し、多くの場合その後の人生で異なる臓器に2つ目・3つ目の原発性腫瘍が生じる「多重がん」の経過をたどる。強い家族歴(複数世代・複数臓器の若年がん)を伴うことが多いが、例では家族歴を欠く。

鑑別診断

若年発症・多発性・強い家族歴という所見は、他ののにも共通する。・・典型的な発症年齢で区別する。

症候群 典型的な発症年齢
TP53 ・・骨/軟部肉腫・乳癌・・白血病と多臓器にまたがる 小児期〜若年成人、生涯にわたり多重発症
RB1 ほぼ網膜に限局。として・軟部肉腫・悪性黒色腫を伴う 乳幼児期(多くは2歳未満)
・ APC(FAP)/() 大腸に加え、子宮体・卵巣・胃など消化管優位 FAPは10〜20歳代のを経て中年までに大腸癌、は40〜50歳代の大腸・
MEN1/RET 副甲状腺・下垂体・()、・() 若年成人、内分泌臓器に限局

💡 いずれもで、古典的にはで説明されるだが、はTP53が細胞周期の中枢を担うためにが臓器横断的に広い点が最大の鑑別点であり、他の3つは責任遺伝子の機能に応じて腫瘍が特定のに集中する。

乳癌が重なる鑑別として(HBOC)も挙げられる。BRCA1・BRCA2はに関わるで、乳癌・卵巣癌・前立腺癌・を中心とするのに対し、の乳癌はTP53による損傷応答の破綻に起因し、乳癌に加えて肉腫や小児期の・を伴う点で区別される。

診断基準

家族歴と発症年齢のパターンからTP53生殖細胞系列検査の適応を判断する3。

基準 内容
古典的Li-Fraumeni基準 が45歳未満で肉腫を発症 かつ が45歳未満でがんを発症 かつ のいずれかが45歳未満でがん、または年齢を問わず肉腫を発症
(2015年版) 上記を満たさなくても、コア腫瘍の若年発症・多重原発がん・家族内の多発がんなど4経路のいずれかを満たせば遺伝学的検査の対象とする、より感度の高い基準(詳細は次項)

⭐ (2015年版)は次の4経路のいずれかを満たせばTP53検査の対象とする、古典基準より感度の高い基準である3。

  1. がコア腫瘍(乳癌・軟部肉腫・・・)を46歳未満で発症し、かつの少なくとも1人が56歳未満でコア腫瘍(が乳癌の場合、近親者の乳癌は数えない)、または多重腫瘍を発症している
  2. が多重腫瘍(多発乳癌を除く)をもち、そのうち2つがコア腫瘍で、最初の発症が46歳未満
  3. が・・のいずれかを発症(家族歴を問わない)
  4. 女性のが31歳未満で乳癌を発症

両基準を組み合わせてTP53検査の適応を判断するのが現行の実務である。

flowchart TD
    A["若年発症・多重がん・強い家族歴を疑う"] --> B{"古典的基準または<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='revised Chompret criteria'>改訂Chompret基準</span>を満たすか"}
    B -->|"満たす"| C["TP53生殖細胞系列の遺伝学的検査"]
    B -->|"満たさない"| D["経過観察・再評価"]
    C --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pathogenic variant'>病的バリアント</span>を確認"}
    E -->|"陽性"| F["本人に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surveillance'>サーベイランス</span>開始、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood relative'>血縁者</span>に遺伝カウンセリング・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cascade testing'>カスケード検査</span>"]
    E -->|"陰性"| D

サーベイランスと放射線感受性

保因者には、生涯にわたる(——に・・・・腹部・と生化学検査を組み合わせる)を行う。では、群の88.8%に対し非群は59.6%であった4。

具体的な間隔は次のとおりである3。

  • ・:全年齢で年1回。
  • (がん徴候を意識した全身診察):出生から18歳までは3〜4か月ごと、18歳以降は6か月ごと。
  • 腹部・:のリスクが高い小児期は18歳未満で3〜4か月ごと(超音波が不十分ならテストステロン・・を測定)、18歳以降は年1回。
  • 乳癌:臨床乳房診察を20〜25歳の間に開始して6〜12か月ごと、を20〜30歳の間に開始して年1回、30〜75歳ではとを6か月ごとにに実施する。
  • 消化管:とを25歳から2〜5年ごと。
  • 皮膚:的診察を18歳から年1回。

のは可能な限り最小化し、代替可能な場面ではに置き換える3。⚠️ ただし「一律に避ける」ではない——GeneReviewsの表は、肺癌の家族歴や喫煙歴に応じて成人にらせんを考慮対象として挙げている3。

⭐ 保因児へのは、成人発症疾患(BRCA関連のHBOCなど)で一般に成人になるまで先送りされるのとは対照的に、では・・肉腫など小児期発症のコア腫瘍が多く、乳児期を含む全年齢でリスクが上がるため、TP53検査は出生時()または出生後まもなく提示することが推奨される3。でが確認され次第、へのと遺伝カウンセリングをすみやかに提供する。

⚠️ はTP53による損傷応答そのものが障害されているため、への感受性が高く、放射線治療・診断のいずれもがのリスクを大きく高める。 乳癌治療では、二次原発乳癌のリスク低減と放射線治療の回避のためより両側乳房切除がしばしば推奨され3、放射線治療が避けられない場合もなどを絞れる手法を検討するなど、診断・治療のいずれの場面でもを避けられる選択肢を優先して判断する。

まとめ

  • はTP53のによるので、古典的にはで説明されるが、一部のTP53はも示す。
  • LFS関連腫瘍のスペクトラムは・・骨/軟部肉腫・乳癌・(TP53を含む)・白血病に及ぶ。⚠️ このうちGeneReviewsがと呼ぶのは・乳癌・・・軟部肉腫の5つで、白血病は「その他の関連腫瘍」に分類され、の推奨も置かれていない3。
  • 古典的Li-Fraumeni基準に加え、より感度の高い(2015年版)を満たせばTP53生殖細胞系列検査に進む。
  • 陽性であればへの遺伝カウンセリング・と、に由来する(・は全年齢で年1回、18歳未満はと腹部を3〜4か月ごと、女性はを20〜30歳の間に開始)を開始する。小児期発症のコア腫瘍が多いため、は成人発症疾患と異なり出生時または出生後まもなく提示する。
  • が高いため、診断・治療のいずれでもの使用を最小化する判断が管理上の核心となる。
  • (RB1)、・(APC/MMR遺伝子)、(MEN1/RET)、HBOC(BRCA1/BRCA2)はいずれものだが、責任遺伝子とでと鑑別する。

出典

  1. 1.Mutational processes shape the landscape of TP53 mutations in human cancer(Nature Genetics・2018)抄録で確認した。他の多くの腫瘍抑制遺伝子と異なりTP53で最も多い遺伝子変化はミスセンス変異で、特定のアレル変異体は実験モデルで優性阻害あるいは機能獲得の活性を示すこと、数百の癌細胞株の機能喪失スクリーニングとTP53飽和変異導入スクリーニングで、野生型p53機能の喪失または優性阻害による阻害が細胞の適応度を確実に高めたこと閲覧 2026-09-23
  2. 2.Adrenocortical Carcinoma Is a Lynch Syndrome-Associated Cancer(The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism・2013)抄録に「Adrenocortical carcinoma (ACC) is a hallmark cancer in families with Li Fraumeni syndrome (LFS) caused by mutations in the TP53 gene. The prevalence of germline TP53 mutations in children diagnosed with ACC ranges from 50-97%.」とあり、小児で診断された副腎皮質癌における生殖細胞系列TP53変異の保有率が50〜97%と報告されていることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-04
  3. 3.Li-Fraumeni Syndrome(GeneReviews(University of Washington, Seattle)・2025)古典的Li-Fraumeni基準(発端者が45歳未満で肉腫を発症し、第一度近親者が45歳未満でがんを発症し、第一度または第二度近親者が45歳未満でがんまたは年齢を問わず肉腫を発症の3項目すべてを満たす)と、改訂Chompret基準(Bougeard et al 2015)の4経路(①コア腫瘍を46歳未満で発症し第一度・第二度近親者に56歳未満のコア腫瘍または多重腫瘍がある、②多発乳癌を除く多重腫瘍のうち2つがコア腫瘍で最初の発症が46歳未満、③家族歴を問わず副腎皮質癌・脈絡叢腫瘍・胎児性未分化型横紋筋肉腫、④31歳未満の女性乳癌)を確認した。コア腫瘍が副腎皮質癌・乳癌・中枢神経系腫瘍・骨肉腫・軟部肉腫の5つであること、古典的LFSの生涯がんリスクが女性90%・男性70%でがんの50%が40歳未満に起こること、LFS関連髄芽腫がSHH活性化型に多いこと、サーベイランス(Torontoプロトコルを改変したもの)が全年齢で全身MRI年1回・脳MRI年1回、身体診察は出生から18歳まで3〜4か月ごと・18歳以降6か月ごと、腹部骨盤超音波は18歳未満3〜4か月ごと(超音波が不十分ならテストステロン・DHEA-S・アンドロステンジオン)・18歳以降年1回、臨床乳房診察は20〜25歳の間に開始し6〜12か月ごと、乳房MRIは20〜30歳の間に開始し年1回、30〜75歳はマンモグラフィと乳房MRIを6か月ごとに交互、上部消化管内視鏡と大腸内視鏡は25歳から2〜5年ごと、皮膚科的診察は18歳から年1回であることを確認した。治療面では、二次原発乳癌のリスク低減と放射線治療回避のためLFS関連乳癌には乳房温存術より両側乳房切除がしばしば推奨されること、放射線治療は二次がんのリスク低減のため可能なら避けるべきだが臨床的に適応があれば行い照射野の厳重な経過観察を行うこと、電離放射線を避けるべき曝露として明示していること、コア腫瘍が乳児期・小児期を含む全年齢でリスク上昇するためTP53検査は出生時(臍帯血)または出生後まもなく提示することが推奨されることを確認した閲覧 2026-09-04
  4. 4.Biochemical and imaging surveillance in germline TP53 mutation carriers with Li-Fraumeni syndrome: 11 year follow-up of a prospective observational study(The Lancet Oncology・2016)抄録で、いわゆるTorontoプロトコルが身体診察に加え全身MRI・脳MRI・乳房MRI・マンモグラフィ・腹部骨盤超音波・大腸内視鏡と頻回の生化学検査からなること、カナダ・米国の3施設でTP53病的バリアント保因者89例(39家系)のうち59例(66%)が中央値32か月サーベイランスを受け、19例(32%)で40個の無症候性腫瘍が検出されたこと、サーベイランスを受けなかった49例では43例(88%)に61個の症候性腫瘍が発生したこと、5年全生存率がサーベイランス群88.8%(95%CI 78.7〜100)に対し非サーベイランス群59.6%(47.2〜75.2)であった(p=0.0132)ことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得閲覧 2026-09-04