疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 腫瘍

多発性内分泌腫瘍症

Multiple endocrine neoplasia

別名
MEN
臓器系
内分泌・代謝腫瘍
科目
Internal MedicinePathology
トピック
内科学 E-07:神経内分泌腫瘍病理学 C/89:多発性内分泌腫瘍症(MEN)/カルチノイド症候群
鑑別疾患
Li-Fraumeni症候群
続発疾患
原発性副甲状腺機能亢進症先端巨大症・プロラクチノーマ(下垂体腺腫)カルチノイド症候群・神経内分泌腫瘍(ゾリンジャー・エリソン症候群、インスリノーマを含む)褐色細胞腫甲状腺癌
関連疾患
甲状腺髄様癌
治療薬
オクトレオチド
検査値
ガストリン
画像所見
ソマトスタチン受容体イメージング
禁忌薬
セマグルチドティルゼパチドデュラグルチドリラグルチド

🧠 全体像は、複数の内分泌臓器に若年から過形成・腺腫・癌を来すの遺伝性症候群群である。MEN1)の機能喪失で副甲状腺・下垂体・(「3つのP」:Parathyroid、Pituitary、Pancreas)を、MEN2はがん原遺伝子RETを中心に・副甲状腺病変(MEN2A)または(MEN2B)を来す。性腫瘍と違い、MEN由来の腫瘍はより若年・多巣性・過形成先行・進行性という共通点を持つため、1つの内分泌腫瘍が見つかったら他臓器の系統的スクリーニングと家族評価につなげることが診療の核心になる。

病態

遺伝形式と責任遺伝子

病型 遺伝子・機序 遺伝形式
MEN1遺伝子(11q13)の機能喪失、コードするは細胞増殖を抑制する腫瘍
MEN2A( RET(10q11.2)の
MEN2B RET(MEN2Aと異なるコドンが多い)

💡 は「の喪失」、MEN2は「がん原遺伝子の活性化」という逆方向の機序でありながら、どちらも内分泌臓器のを引き起こす点は共通する。

侵される臓器

特徴 MEN2A MEN2B
副甲状腺 過形成→(初発病態のことが多い) 過形成→PHPT なし
下垂体 腺腫(が最多、GH産生腺腫も) なし なし
膵・十二指腸NET )、など。の主要死因 なし なし
なし ほぼ必発、両側性 ほぼ必発、MEN2Aより早期発症・進行性
なし あり、しばしば両側性 あり
その他 (口唇・舌・消化管)、

臨床像

MEN1

初発症状は多くの場合、による高Ca血症関連症状である。として無月経・・不妊で、GH産生腺腫としての身体所見で気づかれることがある。膵・十二指腸NETはによるによる低血糖として発症し、進行性・転移性の経過を取り得るための主要な死因になる。

MEN2A・MEN2B

・C細胞由来、カルシトニン産生)がほぼ必発で、やカルシトニン高値で発見される。、頭痛、発汗として現れる。MEN2Bはさらに口唇・舌の、腸管のによる便通異常、・細長い四肢などを伴い、MEN2Aより若年で急速に進行するを来す。

診断とスクリーニング

生殖細胞系列のMEN1遺伝子変異またはRET変異の同定が確定診断であり、で変異が確認されればに遺伝を提供する。

  • :血清Ca・PTH、プロラクチン、IGF-1、空腹時など)を定期的にスクリーニングする。
  • MEN2:RETに加え、のスクリーニングにカルシトニン測定、のスクリーニングに血漿・尿中を用いる。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multiple endocrine neoplasia type 1'>MEN1</span>またはMEN2を疑う臨床像・家族歴"] --> B["生殖細胞系列の遺伝学的検査(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multiple endocrine neoplasia type 1'>MEN1</span>遺伝子またはRET)"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pathogenic variant'>病的バリアント</span>を確認"}
    C -->|"MEN1"| D["Ca・PTH、プロラクチン・IGF-1、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastrointestinal hormone'>消化管ホルモン</span>を定期スクリーニング"]
    C -->|"MEN2"| E["RETのコドン別<span class='jp-term jp-term-diagram' title='risk stratification'>リスク層別化</span>"]
    E --> F["カルシトニンで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medullary thyroid carcinoma (MTC)'>甲状腺髄様癌</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fractionated metanephrines'>メタネフリン分画</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pheochromocytoma'>褐色細胞腫</span>をスクリーニング"]
    C --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood relative'>血縁者</span>に遺伝<span class='jp-term jp-term-diagram' title='counseling'>カウンセリング</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='presymptomatic testing'>発症前検査</span>を提供"]

治療

MEN1

各腫瘍を個別に評価・治療する。通常の手術適応基準に加え、多腺性であることを念頭に亜全摘や全摘+を検討する。下垂体腫瘍・膵十二指腸NETはそれぞれの病態に応じた内科的・を選び、進行性の膵NETにはなどのを含む腫瘍指向治療を用いる。

MEN2:RETバリアント別のリスク層別化

RETのバリアントは、コドンごとにの発症時期・進行速度が異なることが知られており、これに基づいての時期を決める。

リスク区分 代表的なRETバリアント の目安
最高リスク MEN2B、コドンM918T 生後1年以内、可能なら数か月以内
高リスク MEN2A、コドンC634 5歳未満、またはカルシトニン上昇時期に応じて早める
上記以外のRET 5歳からカルシトニンを半年〜1年ごとに追跡し、小児期〜若年成人で、上昇があれば前倒し

⚠️ MEN2で甲状腺・副甲状腺手術を計画する際は、必ず先にの有無を評価する。を除外せずに手術・麻酔を行うと、周術期に制御困難なを起こし得るため、存在すれば原則としてを中心とした副腎の術前管理を先行させる。進行・転移性のには、など)が肢として用いられる。

flowchart TD
    A["MEN2の診断・RETバリアント確定"] --> B["まず<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pheochromocytoma'>褐色細胞腫</span>の有無を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fractionated metanephrines'>メタネフリン分画</span>・画像で評価"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pheochromocytoma'>褐色細胞腫</span>があるか"}
    C -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Alpha-blockers'>α遮断薬</span>を中心に術前管理し先に副腎を治療"]
    C -->|"いいえ"| E["RETリスク区分に応じた時期に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prophylactic total thyroidectomy'>予防的甲状腺全摘</span>を計画"]
    D --> E
    E --> F["カルシトニンで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medullary thyroid carcinoma (MTC)'>甲状腺髄様癌</span>を、進行例ではRET阻害薬などを検討"]

まとめ

  • MEN1はMEN1遺伝子()の機能喪失により副甲状腺・下垂体・膵の「3つのP」に腫瘍を来し、膵NETが主要死因となる。
  • MEN2A・MEN2BはRETによりを中心とし、MEN2Aは副甲状腺病変を伴い、MEN2Bはを伴う代わりに副甲状腺病変を欠く。
  • の遺伝学的検査が確定診断であり、への・定期スクリーニングにつなげる。
  • MEN2ではRETバリアントのコドンによるに基づきの時期を決める。
  • MEN2の手術計画では、を先に除外・治療してから甲状腺・副甲状腺手術に進むという順序が安全上最も重要である。