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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 腫瘍

先端巨大症・プロラクチノーマ(下垂体腺腫)

Acromegaly and prolactinoma (pituitary adenoma)

臓器系
内分泌・代謝
科目
PathologyInternal Medicine
トピック
病理学 C/84:視床下部・下垂体系の機能低下・亢進内科学 E-01:下垂体・視床下部疾患内科学 S-08:先端巨大症とプロラクチノーマ
鑑別疾患
頭蓋咽頭腫
続発疾患
下垂体機能低下症男性性腺機能低下症
関連疾患
クッシング症候群
治療薬
オクトレオチドブロモクリプチンカベルゴリン
症状
腫脹頭痛発汗
画像所見
下垂体MRI
組織像
下垂体腺腫による巨舌症下垂体腺腫の病理組織学的評価
原因となる疾患
多発性内分泌腫瘍症
適応薬
カベルゴリンランレオチド
禁忌薬
アミスルプリド

🧠 全体像は、どちらも良性腺腫が原因ホルモンを過剰分泌する疾患だが、治療の第一選択が正反対なのが最大の学習ポイントである。過剰→IGF-1上昇によるものでが第一選択過剰によるもので唯一薬物療法()が第一選択となり手術は例外的な位置づけである。両疾患とも腫瘍サイズが大きくなると視交叉圧迫によるや、正常下垂体組織の圧迫によるを来しうる点は共通する。

病態

下垂体腺腫という共通の土台

はいずれも(多くは性、まれにMEN-1などの家族性症候群の一部)が原因ホルモンを自律的に分泌することで発症する。腫瘍サイズにより(<1 cm)と(≥1 cm)に分け、では周囲構造への圧迫()がそのものとは独立した病像を作る。

  • は機能性の中で最多(約30〜40%)。
  • GH産生腺腫(の原因)は機能性腺腫の中で2番目に多い。
  • では正常下垂体実質の圧迫によるによるドパミン抑制解除で二次性の軽度(“stalk effect”、真のとの鑑別が必要)を来しうる。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior pituitary'>下垂体前葉</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monoclonal adenoma'>単クローン性腺腫</span>"] --> B{"分泌するホルモン"}
    B -->|"GH"| C["GH過剰 → 肝でIGF-1産生 → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='acromegaly'>先端巨大症</span>"]
    B -->|"PRL"| D["PRL過剰 → GnRH抑制 → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='Prolactinoma'>プロラクチノーマ</span>の症状"]
    A --> E{"腫瘍サイズ"}
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macroadenoma'>大腺腫</span>"| F["視交叉圧迫(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bitemporal hemianopsia'>両耳側半盲</span>)"]
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macroadenoma'>大腺腫</span>"| G["正常下垂体圧迫 → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypopituitarism'>下垂体機能低下症</span>"]

先端巨大症:GH-IGF-1軸の自律的活性化

GH産生腺腫からのGH過剰分泌は、視床下部からのGHRH・ソマトスタチンによる生理的な負のフィードバックを受けなくなり、律動的なパルス分泌が消失して持続的に高値を示す。GHは肝臓でIGF-1産生を刺激し、全身の骨・軟部組織・内臓の増大、インスリン抵抗性、心血管リスク上昇などIGF-1を介する作用の多くを引き起こす。前に発症すれば、閉鎖後ならとなる。

💡 GHはが短くに分泌されるため、単回のGH測定は診断に向かない。IGF-1は肝臓での産生を反映して血中濃度が安定しているため、スクリーニングの中心的指標として使われる。

プロラクチノーマ:ドパミン抑制の欠如とPRL過剰

正常な下垂体では視床下部由来のドパミンがPRL分泌を持続的に抑制している。細胞はこの抑制系から独立して自律的にPRLを分泌し続ける。PRL過剰は視床下部のGnRHパルス分泌を抑制し、下流のLH・FSH分泌低下→という機序で症状を来す。

の原因はだけではない。妊娠・授乳などの生理的原因、抗精神病薬・・一部の抗うつ薬などの薬剤性原因、原発性症、腎不全、による“stalk effect”)を除外して初めてと診断する。

臨床像

先端巨大症の症状

  • 手足・指輪・靴サイズの増大、下顎突出()、額の突出、鼻・口唇・舌の肥大、歯間の開大
  • 発汗過多、脂性肌、皮膚肥厚、多発性軟部組織腫脹(“の指”)
  • 様の
  • 高血圧、・心筋症、症候群
  • ・糖尿病(インスリン抵抗性)
  • ・大腸癌リスク上昇、の増加
  • による頭痛、

⚠️ 変化が緩徐に進行するため患者・家族が気づきにくく、診断が発症から数年〜10年以上遅れることが多い。古い顔写真との比較が診断の助けになることがある。

プロラクチノーマの症状

  • 女性(閉経前):無月経・、不妊、の段階で症状が出やすく、診断が早い。
  • 男性・閉経後女性(男性)が主体で、月経というがないため診断時にであることが多い
  • 長期のは性腺ステロイド低下を介して骨量低下を来す。
  • では頭痛、などの症状で発見されることもある。

両疾患の臨床像の対比

項目
原因ホルモン GH(→IGF-1)
頻度(機能性腺腫中) 2番目に多い 最多
主症状の機序 IGF-1の(骨・軟部組織増大、代謝異常) GnRH抑制による
診断の遅れやすさ 変化が緩徐で遅れやすい 閉経前女性は早期発見、男性・閉経後女性は遅れやすい
代表的合併症 心血管疾患、糖尿病、、睡眠時無呼吸 骨量低下、不妊
で頭痛・・下垂体機能低下 で頭痛・・下垂体機能低下

診断

先端巨大症:IGF-1スクリーニング→OGTT-GH確定→MRI

診断は年齢・性別補正した血清IGF-1の測定から始める。IGF-1が正常であればはほぼ除外できる。IGF-1が年齢の1.3倍を超える、または臨床的疑いが強いのに結果が判然としない場合は、75 g(OGTT)中のGH抑制不全で生化学的に確定する。

⭐ GH抑制のは測定アッセイに依存する。古典的なRIA系での基準(GH谷値 <1 µg/L)をそのまま現行のultrasensitive(超高感度)アッセイに当てはめるべきではなく、超高感度アッセイではGH谷値 <0.4 µg/L程度をより現行的な陰性基準として用いる(各施設の測定法に応じたの確認が前提)。近年の国際コンセンサス(2023年 Acromegaly Consensus Conference)では、IGF-1が診断の中心であり、IGF-1の結果が判然としない場合に限りOGTT-GHを補助的に用いる、という位置づけがより明確にされている。

生化学的に確定した後、造影で腫瘍の局在・大きさ・の有無を評価する。視交叉に近接する場合は視野検査を追加する。

flowchart TD
    A["特徴的な形態変化・関連疾患(糖尿病、睡眠時無呼吸等)"] --> B["年齢・性別補正した血清IGF-1を測定"]
    B -->|"正常"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acromegaly'>先端巨大症</span>は基本的に否定的"]
    B -->|"高値または臨床疑いが強く判然としない"| D["75 g OGTTでGH抑制を評価(測定法に応じた<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cut-off'>カットオフ</span>)"]
    D --> E["生化学的に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acromegaly'>先端巨大症</span>と確定"]
    E --> F["造影<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pituitary MRI'>下垂体MRI</span>で腫瘍の局在・大きさ・進展を評価"]
    F --> G["視交叉近接例は視野検査を追加"]

プロラクチノーマ:PRL測定→除外診断→マクロプロラクチン・フック効果に注意

血清PRLが高値であれば、まず妊娠・授乳、薬剤性、原発性症、などの生理的・二次性の原因を・検査で除外する。原因薬剤(抗精神病薬など)を独断で中止しないことにも注意する。

  • PRL値は腫瘍サイズと概ね相関するが、単一の値だけでや腫瘍サイズを断定しない。
  • 症状の割にPRL値が中等度〜軽度上昇にとどまる場合は、生物活性を持たない(PRLと抗PRL抗体の複合体)の混在を疑い、で確認する。
  • 逆に、画像上明らかながあるのにPRL値が不釣り合いに低い場合は、アッセイが極端な高濃度で正しく測定できないを疑い、検体を希釈して再測定する。

の確認を経て説明できない持続高値であれば、造影で腫瘍の有無・大きさを確認する。

flowchart TD
    A["血清PRL高値"] --> B["妊娠・授乳・薬剤・甲状腺機能・腎機能を確認"]
    B --> C["説明できない持続高値"]
    C --> D{"症状・画像とPRL値が不釣り合い"}
    D -->|"軽度高値なのに症状が強い"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macroprolactin'>マクロプロラクチン</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='PEG precipitation method'>PEG沈殿法</span>で確認"]
    D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macroadenoma'>大腺腫</span>なのにPRLが低い"| F["希釈測定で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hook effect'>フック効果</span>を確認"]
    D -->|"整合的"| G["造影<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pituitary MRI'>下垂体MRI</span>"]
    E --> G
    F --> G
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Prolactinoma'>プロラクチノーマ</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pituitary stalk effect'>下垂体茎圧迫</span>/他病変を鑑別"]

治療

先端巨大症:手術第一選択、薬物療法は補助・二次治療

第一選択はによる腺腫摘出であり、や境界明瞭な腫瘍では手術単独で生化学的寛解が得られることが多い。手術で寛解に至らない例、手術不適応例、術後の残存・再発例には薬物療法を追加する。

  • ):を介してGH分泌を抑制する第一選択の薬物療法。
  • ):GHの末梢作用そのものを遮断してIGF-1を低下させる。GH・IGF-1値が治療効果の指標として使えなくなるため、腫瘍サイズは画像で別途フォローする必要がある点、のモニタリングが必要な点に注意。
  • ):GH・IGF-1上昇が軽度な例や、プロラクチンも共分泌する腫瘍で単独または併用療法として使われる。
  • 上記で寛解に至らない場合は放射線治療など)を検討する。

⚠️ とは対照的に、では薬物療法は手術の代替ではなく、あくまで手術後の補助・という位置づけである。

プロラクチノーマ:ドパミン作動薬が第一選択、手術は例外的

の中で唯一、薬物療法が第一選択となる腫瘍である。はPRLを正常化するだけでなく腫瘍そのものを縮小させる。

  • が第一選択のと比べてPRL正常化率・腫瘍縮小効果が高く、も良好(週1〜2回投与でしやすい)。
  • は半減期が短く豊富な使用実績があるため、妊娠を希望・計画する患者や妊娠中に腫瘍増大症状が出た患者での位置づけがに重視されてきた。近年はについても妊娠中の安全性データが蓄積されつつあるが、各施設・診療科の方針に従う。
  • 手術()は、抵抗性・の場合、急速な視機能障害・などの緊急時に限って検討する。

⚠️ は高用量・長期使用(パーキンソン病治療で用いられるような)で(弁逆流)のリスクが上がることが知られる。で通常用いる低用量(週0.25〜2 mg程度)では弁膜症リスクは低いとされるが、長期・高用量使用例では定期的な心エコーによるスクリーニングを検討する。

妊娠が判明した時点で、多くの患者ではを中止する。ただし、視交叉に近接・浸潤するなど腫瘍増大リスクが高い例では、産科・内分泌科で相談のうえ継続や再開を検討し、視野検査を定期的に行う。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Prolactinoma'>プロラクチノーマ</span>確定"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dopamine agonist'>ドパミン作動薬</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cabergoline'>カベルゴリン</span>第一選択)を開始"]
    B --> C{"妊娠が判明"}
    C -->|"通常の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Microadenoma'>微小腺腫</span>"| D["妊娠判明時点で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dopamine agonist'>ドパミン作動薬</span>を中止し経過観察"]
    C -->|"視交叉近接の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macroadenoma'>大腺腫</span>など"| E["産科・内分泌科で継続/再開を検討し視野を定期評価"]
    B --> F{"薬物治療への反応"}
    F -->|"抵抗性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intolerance'>不耐容</span>、緊急の視機能障害"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transsphenoidal surgery'>経蝶形骨洞手術</span>を検討"]
    F -->|"良好な反応"| H["PRL正常化・腫瘍縮小を確認しながら維持"]

治療方針の対比

項目
第一選択
薬物療法の位置づけ 手術後の補助・ 第一選択そのもの
手術の位置づけ 治療の中心 薬剤抵抗性・、緊急時に限定
代表薬
モニタリング指標 IGF-1、(使用中は画像で腫瘍径も別途) PRL、

まとめ

  • はいずれもの良性腺腫による症候群で、ではなどのを共通して来しうる。
  • は年齢補正IGF-1でスクリーニングし、判然としない場合に75 g OGTTでのGH抑制不全(測定法依存の)で確定、造影MRIで局在を評価する。
  • は妊娠・薬剤・甲状腺機能などの二次性を除外し、でのに注意して診断する。
  • は対照的で、が第一選択(薬物療法は補助)、)が第一選択で手術は薬剤抵抗性・緊急時に限られる。
  • は高用量・長期投与でリスクが上がりうるため、通常の用量ではリスクは低いものの、長期・高用量例では心エコーによる評価を検討する。