内科学

内科学 · E-01

下垂体・視床下部疾患

Diseases of the pituitary and hypothalamus

前提:病態
視床下部・下垂体系の機能低下・亢進甲状腺・下垂体・視床下部ホルモン薬
前提:正常
視床下部-下垂体系。成長ホルモンとソマトメジン体液量と細胞外液浸透圧の調節
薬剤
L-アルギニン
疾患
Pallister-Hall症候群Rathke嚢胞TSH産生下垂体腺腫リチウム中毒下垂体機能低下症下垂体偶発腫抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)甲状腺ホルモン抵抗性先端巨大症・プロラクチノーマ(下垂体腺腫)尿崩症
症状
両耳側半盲
検査値
T3抑制試験TRH刺激試験海綿静脈洞カテーテル検査
画像所見
下垂体MRI
スコア
Knosp分類

🧠 全体像:視床下部・下垂体疾患は、ホルモンの「過剰」「欠乏」と、腫瘤による「圧迫」を分けて考える。多系統の欠乏では生命維持に直結する(adrenocorticotropic hormone:)系を先に評価・補充する。

視床下部・下垂体の役割

視床下部は自律神経、体温、食欲・体重、睡眠、情動、性行動、水分恒常性を統合し、放出・抑制ホルモンでを制御する。は、視床下部で合成された(arginine vasopressin:)とオキシトシンを貯蔵・放出する。

下垂体への主作用
分泌を促進
とPRL分泌を促進
・分泌を促進
GH分泌を促進
ソマトスタチン GH・分泌を抑制
ドパミン PRL分泌を持続的に抑制
flowchart TD
    A["視床下部"] --> B["放出・抑制ホルモン"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior pituitary'>下垂体前葉</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adrenocorticotropic hormone'>ACTH</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid-stimulating hormone'>TSH</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='luteinizing hormone'>LH</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicle-stimulating hormone'>FSH</span>・GH・PRL"]
    D --> E["副腎・甲状腺・性腺・肝/全身・乳腺"]
    A --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arginine vasopressin'>AVP</span>・オキシトシンを合成"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior pituitary'>下垂体後葉</span>から放出"]

視床下部障害では、内分泌異常に加えて・低体温、・拒食、肥満・やせ、無飲水・、睡眠、、情動・記憶・性行動の変化が組み合わさる。原因には腫瘍、、手術・放射線、炎症・浸潤性疾患、血管障害、感染、発生異常、遺伝性疾患がある。を伴う先天性欠乏はを示唆する。

下垂体腫瘍

は多くが良性で、機能性とに分ける。最大径10 mm未満を、10 mm以上をとする。

分類 主なホルモン 代表的な臨床像
PRL 、無月経、、不妊
GH 、成長期なら
産生腺腫
産生腺腫
臨床的な過剰なし 圧迫症状、下垂体機能低下

腫瘤効果

  • 頭痛、悪心・嘔吐
  • 視交叉圧迫による
  • 進展による
  • 正常下垂体圧迫による下垂体機能低下
  • によるドパミン抑制解除と

急激な頭痛、・、意識障害、低血圧を伴う場合はを疑う。副腎不全を合併し得るため、採血や画像診断で治療を遅らせず、緊急と・評価を行う。

評価

  1. 症候からと欠乏の両方をする。
  2. PRL、IGF-1、午前コルチゾール、遊離T4・、・と性ステロイドなどをに応じて測定する。
  3. で大きさ、視交叉・との関係を確認する。
  4. 視交叉に接する病変では正式なを行う。

無症候の小さな病変はホルモン、視野、を定期追跡できる。・増大・などを伴うと、以外の多くの機能性腺腫はが治療の中心となる。薬物療法は腫瘍型に応じ、の、のリガンド・、の下垂体標的薬などを用いる。

下垂体機能低下症

は、腫瘍・圧迫、手術、放射線、、虚血・出血、、浸潤性疾患、感染、遺伝性疾患などで起こる。周産期大量出血後のも重要である。

欠乏する系 主な症状・所見 基本検査
-コルチゾール 倦怠感、体重減少、低血圧、低Na血症、低血糖 8~9時コルチゾール、必要時刺激試験
-甲状腺 易疲労、寒がり、徐脈、浮腫、便秘、 遊離T4低値と不適切に低値~正常の
/-性腺 無月経、不妊、、、骨量低下 ・とエストラジオール/テストステロン
GH-IGF-1 筋量・骨量・低下、脂肪増加 IGF-1、必要時GH刺激試験
PRL 産後 PRL
多尿、口渇、高Na血症 血清・尿浸透圧、専門的

⭐ ではアルドステロン系が通常保たれるため、に比べて高K血症や色素沈着を来しにくい。

補充の順序

flowchart TD
    A["複数の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pituitary hormone'>下垂体ホルモン</span>欠乏を疑う"] --> B["副腎<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reserve capacity'>予備能</span>を評価"]
    B --> C["副腎不全を否定できない"]
    C --> D["先に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydrocortisone'>ヒドロコルチゾン</span>を補充"]
    D --> E["その後に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='levothyroxine, LT4'>レボチロキシン</span>を開始"]
    E --> F["性腺・GH・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arginine vasopressin'>AVP</span>系を個別に補充"]

⚠️ 副腎不全を未治療のままを開始すると、コルチゾール需要と代謝が増えてを誘発し得る。中枢性甲状腺機能低下症ではでせず、遊離T4を基準にする。には通常不要である。

欠乏 の要点
を朝多めに分割し、と緊急注射を教育
。副腎不全への備えを先行し、遊離T4で調整
/ 性腺ステロイドを補充。妊孕性希望時はゴナドトロピンまたはパルスを専門管理
GH 刺激試験で確認した適格成人に遺伝子組換えGHを検討し、IGF-1と臨床反応で調整
AVP と自由飲水、Na・尿量監視

高プロラクチン血症とプロラクチノーマ

はを抑制し、女性では・無月経、、不妊、男性では、、不妊を来す。長期化すると骨量が低下する。

主な原因は妊娠・授乳、、、、腎・、薬剤である。原因薬には抗精神病薬、などの、一部の抗うつ薬、オピオイド、などがある。

flowchart TD
    A["PRL高値"] --> B["妊娠・薬剤・甲状腺・腎肝機能を確認"]
    B --> C["必要に応じてmacroprolactinと再検"]
    C --> D["説明できない持続高値"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pituitary MRI'>下垂体MRI</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Prolactinoma'>プロラクチノーマ</span>/茎圧迫/他病変を鑑別"]

巨大腫瘍なのにPRLが不釣り合いに低い場合は高濃度によるを疑い、希釈測定を依頼する。固定したPRL値だけで腫瘍種を決めない。

の薬物療法の中心は、通常で、PRL正常化と腫瘍縮小を目指す。ただし2023年の Pituitary Society 国際コンセンサスは、へ浸潤していない・境界明瞭な(Knosp grade 0〜1)では、熟練した下垂体外科医による手術を、と並ぶ第一選択肢として薬物療法の開始前に多職種で話し合うべきとしている(強い推奨)。手術で治癒すれば長期の服薬が要らなくなるためである。Knosp grade 2以上で手術での寛解の見込みが低い例ではが第一選択である(強い推奨)1。・、急速ななどでも手術を検討する。

先端巨大症

は、閉鎖後のGH過剰で起こり、多くはGH産生による。閉鎖前ならとなる。

臨床像

  • 手足・指輪・靴サイズの増大、弓・下顎突出、鼻・口唇・舌の肥大
  • 発汗、脂性肌、皮膚タグ、、
  • 高血圧、心筋症、
  • ・糖尿病
  • 頭痛、、
  • 結腸ポリープやの増加

診断と治療

flowchart TD
    A["特徴的身体所見・合併症"] --> B["年齢調整IGF-1を測定"]
    B --> C["高値を再確認"]
    C --> D["経口ブドウ糖負荷でGH抑制を評価"]
    D --> E["生化学的に確定"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pituitary MRI'>下垂体MRI</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transsphenoidal surgery'>経蝶形骨洞手術</span>を中心に治療"]

典型的身体所見があり、IGF-1が年齢の1.3倍を超える場合は診断を確認できる。境界例では同一の確認済み測定法でIGF-1を再検し、を補助的に用いる。GH抑制のは測定法に依存するため、単一の古い固定値を万能に用いない。2 第一選択はな腺腫ので、残存・再発例ではリガンド、、、や放射線治療を組み合わせる。

多尿:AVP欠乏とAVP抵抗性

は現在、、は抵抗性(arginine vasopressin resistance:-R)とも呼ばれる。

病態 主な原因 反応 治療の軸
-D 、外傷、腫瘍、自己免疫・浸潤性疾患、特発性 尿濃縮が改善 、水への自由なアクセス、Na監視
AVP-R 、高Ca血症、低K血症、腎疾患、遺伝性 乏しい 原因是正、、、選択例で
・行動性 水制限で濃縮可能 原因に応じた飲水行動の調整

24時間尿量、血糖、Na、血清・尿浸透圧を同時に評価し、専門施設ではまたは・刺激下のを用いる。重症患者や高Na血症では自己判断のを行わない。

治療では低Na血症を避けるため最小を用い、飲水、体重、血清Naと周期的なを個別に調整する。-Rにアスピリンを一律使用する治療は行わない。

抗利尿不適合

は、にもかかわらず作用が持続する病態である。悪性腫瘍、肺・中枢神経疾患、疼痛・悪心、薬剤などが原因となる。

診断では、臨床的な正常容量、尿浸透圧の不適切な上昇、、正常な腎・甲状腺・副腎機能を確認し、利尿薬やなどを除外する。

状況 対応
痙攣、昏睡、重い神経症状 3%をし、症状とNaを厳密監視
慢性・軽症 原因薬中止、基礎疾患治療、飲水制限を基本に個別化
難治例 尿素、+食塩、選択例で拮抗薬を専門管理下で検討

⚠️ Naを速く上げ過ぎるとを起こす。初期は症状改善に必要な小幅上昇を目標とし、その後も連続する24時間ごとの補正量を制限する。低K血症、、、肝疾患、著明な低Na血症では、一般的な補正上限内でも発症し得るため特に慎重に管理する。3

まとめ

  • 下垂体疾患は、ホルモン欠乏、の3軸で整理する。
  • 多系統欠乏では副腎系を最優先し、をより先に補う。
  • は、は手術を中心に生化学的寛解を目指す。
  • 多尿では-D、-R、を血清・尿浸透圧と専門的で分ける。
  • SIADの重症低Na血症はで緊急治療するが、を必ず防ぐ。

出典

  1. 1.Diagnosis and management of prolactin-secreting pituitary adenomas: a Pituitary Society international Consensus Statement(Pituitary Society / Nature Reviews Endocrinology・2023)出版社の全文で確認した。微小腺腫と境界明瞭な大腺腫(Knosp grade 0〜1)では熟練した下垂体外科医による手術を「ドパミン作動薬と並ぶ第一選択の選択肢として」話し合うべきで、手術の治癒可能性とリスクを薬物療法開始前に多職種で患者と話し合うこと(いずれも strong)、Knosp grade 2以上ではカベルゴリンで治療すべきこと(strong)、外科的寛解の見込みが低い例では薬物療法が第一選択であること。閲覧 2026-09-24
  2. 2.Consensus on criteria for acromegaly diagnosis and remission(Pituitary・2024)典型的な先端巨大症所見と年齢基準上限の1.3倍を超えるIGF-1値で診断を確認でき、境界例では同一測定法による再検や経口ブドウ糖負荷試験が有用であること閲覧 2026-08-09
  3. 3.Osmotic Demyelination Syndrome following Correction of Hyponatremia by ≤10 mEq/L per Day(Kidney360・2021)重度・高リスクの慢性低Na血症では24時間10 mEq/L以内の補正でも浸透圧性脱髄症候群が起こり得ること閲覧 2026-08-09