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Disease Atlas · 神経 · 先天性疾患

Pallister-Hall症候群

Pallister-Hall syndrome

別名
Hall-Pallister症候群GLI3関連Pallister-Hall症候群
臓器系
神経内分泌・代謝運動器小児
科目
Medical Genetics and Immunology (Genetics)Microscopic Anatomy and Embryology (Embryology)Internal Medicine
トピック
遺伝学 4.1:単一遺伝子遺伝遺伝学 4.4:常染色体優性遺伝(AD I)発生学 9.5:骨格系:臨床内科学 E-01:下垂体・視床下部疾患
鑑別疾患
Bardet-Biedl症候群Greig頭部多合指症候群
続発疾患
喉頭裂肛門直腸奇形下垂体機能低下症思春期早発症
症状
多指症腟留水腫

🧠 全体像:は「+」を診断の核とするのである。ただし実務で本当に重いのは、この2つではなく見えないところにある2つ——とである。そのものは大半が無症候で摘出も不要な一方、未診断・未治療の副腎不全と重篤な気道奇形がの死亡につながる。「派手な所見()で気づき、地味な所見(内分泌・気道)で命を守る」疾患として捉える。

定義と分子基盤

GLI3のによる疾患で、・無症候性の・という軽症端から、新生児死亡を来すという重症端まで幅広い1。⚠️ 「=重症、=軽症」という思い込みは誤りである。 大多数は軽症で、A型(PAP-A)とされたまま診断がつかない例が相当数あるとみられる1。

同じGLI3が2つの症候群を分けるのはバリアントの種類と位置による。(機能喪失)はを起こすのに対し、本症候群はの3’側、遺伝子の中央3分の1にある=が大部分を占める1。

約25%は(親には無く本人で新たに生じたもの)によるもので、による例は家族歴のある例より一般に重症である。子への再発率は50%で、の報告はない1。

臨床像

視床下部過誤腫

腫瘍ではなく奇形であり、周囲の脳組織と同等かそれ以下の速度でしか大きくならない。最大4 cmに達しうるが、大きさと症状の有無・重症度の相関は乏しく、大半は無症候である1。

画像ではの視交叉後方に位置し、T1・でとを示す造影されない腫瘤として捉えられる。⚠️ もも診断には不十分で、が必要である1。

⚠️ 摘出も生検も原則として行わない。 術後合併症と生涯のホルモン補充の必要性が利益を上回るためで、例外的な状況に限られる1。

内分泌——最も緊急の問題

に伴うは、孤立性のや孤立性のから、生命を脅かしうる汎まで幅がある。は家族歴のない例で起こりうる一方、家族性例ではまれとみられる1。

⚠️ は、評価と治療を受けていない乳児では致死的になりうる。 家族歴のない例、およびのある家族をもつ例では、の評価を緊急に行う。家族内のバリアントが判明していれば、は「出生後ただちに副腎不全へ対応するため」に意味をもつ1。

神経

最もよく記載される合併症は——胸郭と横隔膜のが笑いに似るである。💡 本症候群の発作は、のの発作と対照的に、一般に軽症で治療反応性がよい(ではしばしばになる)1。視交叉の近くにがあってもを来した例は報告がない1。

⚠️ に用いる一部のは発作を悪化させうるため、けいれん素因となる中枢神経病変をもつ本症候群では慎重に検討する1。

多指症——「中央性」が診断の鍵

型 定義 診断上の位置づけ
中央性 Y字型の・を伴う6本以上の完成した指 と並ぶ臨床診断の必須項目
軸後性A型(PAP-A) ・の完成した 本症候群では中央性より高頻度とみられる(出典は “probably” / “may be” と留保)。ただし非特異的
軸後性B型(PAP-B) 同部位の痕跡的な指・結節 中央アフリカ系の人々で頻度が高く、診断根拠としての解釈に注意

出典:GeneReviews1。

気道と消化管

は葉の3分の2以上に及ぶ正中前後方向の裂で、他の症候群ではきわめてまれ、孤発の奇形としてもまれであるため、臨床診断の手がかりとして価値が高い。ほぼ常に無症候だが、より高度なは重篤なを来し、⚠️ は致死的でありうる1。

も速やかに認識されなければ重篤な合併症を起こす。ほかに・・尿管の異所開口、、などの、がみられる1。

診断

臨床診断はにとの両方があることで確定する(Bieseckerら1996のコンセンサス基準)2。ではGLI3ので約95%にが同定され、約5%は原因不明である1。

⭐ 臨床基準を満たさなくても検査する価値がある。 臨床基準を満たす例のGLI3バリアント検出率は22例中20例(91%。先行報告と併合した推定値)と高いが、基準を「またはのいずれか」に緩めた群でも16例中8例(50%)で同定された。一方、そのどちらも伴わない症候性の4例では同定されなかった。著者らはGCPSまたは本症候群の所見を1つ以上もつ患者にGLI3の検査を勧めている2。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polydactyly'>多指症</span>を認める小児"] --> B["四肢X線で中央性か軸後性かを区別"]
    B --> C["頭部MRIで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypothalamic hamartoma'>視床下部過誤腫</span>を検索<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>・超音波では不十分)"]
    C --> D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central polydactyly'>中央性多指症</span>と<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypothalamic hamartoma'>視床下部過誤腫</span>の両方があるか"}
    D -->|"あり"| E["臨床診断が確定"]
    D -->|"片方のみ・所見が部分的"| F["GLI3の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sequence analysis'>塩基配列解析</span>を行う"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cortisol insufficiency'>コルチゾール不足</span>の評価を緊急に行う"]
    F --> G
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior pituitary function'>下垂体前葉機能</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='laryngoscopy'>喉頭鏡</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal ultrasound'>腎超音波</span>・発達評価"]

鑑別

を伴う症候群として・・・が、を伴うものとして6型・が挙がる。SMOのによる・は本症候群に酷似する1。⚠️ のも鑑別に入るが、そちらはの発作・・という重い神経像をとりやすい点で異なる1。

管理

領域 初回評価 方針
内分泌 の評価(緊急)、不足への対応後に・・・甲状腺ホルモンを評価 ホルモン補充は一般人口と同じ。の治療が最優先
神経 頭部MRIでの位置と範囲、頭蓋内圧亢進徴候の除外 は摘出・生検しない。発作は対症的に治療
四肢X線、手の外科医による評価 修復は。中央性の手術は複雑で熟練したが行う
気道 によるの観察、誤嚥徴候があればの緊急評価 は閉塞やの併存がなければ通常は無治療
発達・行動 生後12か月以降に神経精神評価(睡眠障害・・不安・) 必要に応じ・特別支援
腎・消化管 、・があれば外科紹介 標準治療

出典:GeneReviews1。経過観察は小児期を通じて年1回、成長・思春期の徴候・発達と教育上の必要・行動面を評価する1。

まとめ

  • GLI3の中央3分の1にあるによる疾患で、によるとは変異の種類と位置で分かれる。
  • 臨床診断は+。基準を満たす例のGLI3バリアント検出率は91%で、片方のみの例でも50%と高く、検査の敷居を下げてよい。
  • は奇形であって腫瘍ではなく、大半が無症候。⚠️ 摘出・生検は原則行わない(医原性の下垂体機能低下を招く)。
  • ⚠️ 命に関わるのはと。家族歴のない例では副腎不全の評価を緊急に行う。
  • 大多数は軽症で、A型として見過ごされている例が多いと考えられている。

出典

  1. 1.GLI3-Related Pallister-Hall Syndrome(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2024)Europe PMC経由でNBK1465の全文XMLを自分で取得して確認した(2022年8月18日包括改訂、2024年2月22日改訂)。表現型が多指症・無症候性の二分喉頭蓋・視床下部過誤腫という軽症端から新生児死亡を来す喉頭気管裂という重症端までの幅をもち、大多数は軽症で軸後性多指症A型(PAP-A)と誤診されうること、臨床診断が発端者における視床下部過誤腫と中央性(mesoaxial)多指症の両者で確定し、Johnstonら2010がコンセンサス診断基準を公表していること、GLI3の塩基配列解析で約95%に病的バリアントが同定され残り約5%は不明であること、視床下部過誤腫が腫瘍ではなく奇形であり周囲脳組織と同等かそれ以下の速度でしか成長せず、最大4 cmに達しうるが大きさと症状の有無・重症度の相関は乏しく大半は無症候であること、画像では第三脳室底の視交叉後方に位置しT1・T2強調でグレイマターと等信号を示す造影されない腫瘤として捉えられ、頭部CTも頭部超音波も診断には不十分であること、内分泌障害が孤立性成長ホルモン分泌不全や孤立性思春期早発症から生命を脅かしうる汎下垂体機能低下症まで幅があり、コルチゾール不足は非家族性例で起こりうるが家族性例ではまれとみられること、神経学的合併症として最もよく記載されているのが笑い発作てんかん(胸郭と横隔膜の間代性運動が笑いに似る複雑部分発作)であり、Pallister-Hall症候群の発作は非症候性の視床下部過誤腫の発作と対照的に一般に軽症で治療反応性であること、視交叉近傍の過誤腫があっても視野欠損を来した例は報告がないこと、軸後性多指症A型が尺側・腓側の完成した余剰指、B型が同部位の痕跡的な指または結節であり、中央性多指症がY字型の中手骨・中足骨を伴う6本以上の完成した指であること、軸後性多指症のほうが中央性多指症より高頻度とみられるが軸後性多指症は非特異的で中央アフリカ系の人々ではB型の頻度が高いため診断的価値の解釈に注意が必要であること、二分喉頭蓋が喉頭蓋葉の3分の2以上に及ぶ正中前後方向の裂であり本症候群以外の症候群ではきわめてまれで孤発の奇形としてもまれなため臨床診断に有用であること、二分喉頭蓋はほぼ常に無症候だが本症候群で報告されるより高度な喉頭裂は重篤な気道症状を来しうること・後部喉頭裂は致死的でありうること、その他の所見として鎖肛、嚢胞性腎奇形・腎低形成・尿管の異所開口を含む腎異常、膣留水腫を含む泌尿生殖器奇形、両側二葉肺などの肺分節異常、短肢などの多指症以外の骨格異常があること、行動面の問題・重度知的障害を示す例が少数あること、予後は個々の奇形で決まり早期致死は汎下垂体機能低下症・喉頭気管裂などの重篤な気道奇形に起因することが多く、鎖肛も速やかに認識されなければ重篤な合併症を起こしうること、CAVE(cerebroacrovisceral early lethality)という呼称は大多数が軽症で早期致死を示さないため不適切とされ「視床下部過誤芽腫症候群」という呼称も誤りであること、常染色体顕性遺伝で約25%が新生バリアント(親には無く本人で新たに生じたもの)によりde novo例は家族歴のある例より一般に重症であること、子への再発率が50%であり浸透率不完全の報告はないこと、GLI3のハプロ不全がGreig頭部多合指症候群(GCPS)を起こすのに対し本症候群は亜鉛フィンガードメインの3'側・遺伝子の中央3分の1に位置する切断型(フレームシフト)バリアントが大部分を占めること、初回評価としてコルチゾール不足の評価を緊急に行い(家族歴のない例、およびコルチゾール不足のある家族をもつ例では緊急に実施する)、ACTH不足の評価と治療の後に成長ホルモン・FSH・LH・甲状腺ホルモンを評価すること、頭部MRIで過誤腫の位置と範囲を確認し、四肢X線で軸後性か中央性かを区別し、喉頭鏡で喉頭蓋を観察し誤嚥の徴候があれば喉頭気管裂について耳鼻咽喉科の緊急評価を行い、生後12か月以降は睡眠障害・注意欠如多動症・不安・自閉スペクトラム症を含む神経精神評価を行い、腎超音波を行うこと、治療ではコルチゾール不足の治療が最も緊急であり、視床下部過誤腫の摘出・生検は術後合併症と生涯のホルモン補充の必要性が利益を上回るため例外的な状況でのみ行うこと、発作は対症的に治療し、多指症の修復は待機的に行い中央性多指症の手術は軸後性より複雑で熟練した術者が行うべきこと、二分喉頭蓋は明らかな閉塞や気管狭窄などの併存がなければ通常治療を要さないこと、注意欠如多動症に用いる一部の中枢刺激薬が発作を悪化させうること、経過観察として小児期は年1回、成長・思春期早発の徴候・発達と教育上の必要・行動面を評価することを確認した閲覧 2026-09-03
  2. 2.Molecular analysis expands the spectrum of phenotypes associated with GLI3 mutations(Human Mutation・2010)PMC2947617の著者原稿全文を自分で取得して確認した。GLI3解析に紹介された発端者174例のうち本報告で扱う93例の内訳と解析結果として、Pallister-Hall症候群の臨床診断基準が発端者に中央性多指症と視床下部過誤腫の両方があることを要求する(Biesecker et al 1996)と明記していること、臨床診断基準を満たす場合にGLI3バリアントが同定される確率がPallister-Hall症候群で91%・Greig頭部多合指症候群で68%であること、基準を「中央性多指症または視床下部過誤腫のいずれか」に緩めた群では16例中8例(50%)にGLI3バリアントが同定されたこと、さらに緩めて中央性多指症も視床下部過誤腫も伴わない症候性の軸後性多指症まで含めた4例ではバリアントが同定されなかったこと、Pallister-Hall症候群の臨床基準を満たした患者のほぼ全例がGLI3の中央3分の1に切断型バリアントをもっていたこと、臨床基準を満たさなくてもGCPSまたはPallister-Hall症候群の所見を1つ以上もつ患者にはGLI3の検査を勧めるべきだと結論していることを確認した閲覧 2026-09-03