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Disease Atlas · 神経 · 症候群

Ramsay Hunt症候群

Ramsay Hunt syndrome

別名
Herpes zoster oticus帯状疱疹性耳炎症候群
臓器系
神経感染症
科目
OtorhinolaryngologyDermatology
トピック
耳鼻咽喉科 14:中枢性・末梢性顔面神経麻痺の鑑別、末梢性麻痺の原因と鑑別診断皮膚科 1-14:単純ヘルペスと帯状疱疹
鑑別疾患
ベル麻痺(末梢性顔面神経麻痺)
合併症
感音難聴
治療薬
(バル)アシクロビルプレドニゾロン
原因微生物
Varicella zoster virus
症状
顔面神経麻痺耳痛小水疱耳鳴めまい
スコア
House-Brackmann分類

🧠 全体像:は、()がで再活性化することで起こる。核心は3主徴——片側の+耳介・外耳道の帯状疱疹+症状(難聴・回転性めまい)——で、の近傍を()が走行するために起こる1。もしばしば伴う。臨床上いちばん危険なのは、水疱がより遅れて出現する例、あるいはまったく出ない例(zoster sine herpete)があることで、この場合は初診時にと見分けがつかない。しかしはより予後が悪いため、麻痺が確定した後も水疱の出現に注意を払い続ける必要がある。

病態

顔面神経はのの中でを作り、ここに味覚・や(前庭・)が近接して走行する。水痘の初感染後、はに潜伏し、ここでの再活性化が本症候群の原因になる2。再活性化したウイルスは顔面神経を炎症・浮腫に陥れ、骨性の狭いで神経を圧迫・虚血させる。

💡 の原因とされる()も、実は同じに潜伏している(剖検例の15個中11個・71%からゲノムが検出される3)。つまり両疾患の違いは潜伏部位ではなく再活性化するウイルスの種類であり、の方が近傍を走行するを巻き込みやすいために耳症状・内耳症状を伴いやすい。

flowchart TD
    A["水痘の初感染"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='varicella-zoster virus'>VZV</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='geniculate ganglion'>膝神経節</span>に潜伏"]
    B -->|"加齢・免疫抑制などによる再活性化"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='geniculate ganglion'>膝神経節</span>でのウイルス増殖・炎症"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='facial canal'>顔面神経管</span>内での圧迫・虚血"]
    D --> E["3主徴①:片側の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral facial nerve palsy'>末梢性顔面神経麻痺</span>"]
    C --> F["耳介・外耳道の皮膚枝を侵す"]
    F --> G["3主徴②:耳介・外耳道の帯状疱疹<br>(水疱、しばしば<span class='jp-term jp-term-diagram' title='otalgia'>耳痛</span>を伴う)"]
    C --> H["近傍を走行する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cranial nerve VIII'>第VIII脳神経</span>を巻き込む"]
    H --> I["3主徴③:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cranial nerve VIII'>第VIII脳神経</span>症状<br>(感音難聴・回転性めまい)"]

臨床像

⚠️ 水疱はより遅れて出現することがあり、まったく出現しない例(、zoster sine herpete)もある。 初診時に水疱がなければと鑑別できないため、強い・難聴・回転性めまいを伴うを見たら、水疱が後から出現する可能性を念頭に置いて経過を追う必要がある4。

ベル麻痺との鑑別

項目
潜伏部位 (HSV-1) ()——潜伏部位は共通で、ウイルスの種類が違う
耳介の帯状疱疹 なし 3主徴の1つ(遅れて出現、または無疹性のことがある)
症状 通常なし 3主徴の1つとして難聴・回転性めまいを伴いうる
予後 比較的良好(多くは) より不良——不完全回復・が多い
治療の骨格 ±抗ウイルス薬 抗ウイルス薬+ステロイドの併用が原則

⚠️ はより予後が悪い。 での直接的なウイルス増殖による神経損傷が、単なる圧迫・虚血が主体のより強いためと考えられている4。この予後の違いが、両者を同じ「」として一括せず鑑別を続ける実務上の理由になる。

治療

  • 抗ウイルス薬+副腎皮質ステロイドの併用を、できるだけ早期に開始することが原則である。Sweeney と Gilden は、500mg×3/日またはアシクロビル800mg×5/日を7〜10日間、60mg/日を3〜5日間投与し、発症7日以内の治療開始で顔面神経の回復が有意に改善したことを報告している4。日本国内では(バル)アシクロビル・が用いられることが多い。
  • の重症度・回復の評価には()を用いる。
  • めまいを伴う例ではを、回復後も・不完全回復が残る例ではを検討する。

まとめ

  • はVZVのでの再活性化で起こり、片側の+耳介の帯状疱疹+症状(難聴・回転性めまい)の3主徴を核とする。もしばしば伴う。
  • の原因も同じに潜伏しており、両者の違いは潜伏部位ではなくウイルスの種類である。
  • ⚠️ 水疱はより遅れて出現する、あるいは全く出ない(zoster sine herpete)ことがあり、この場合はと初診時には区別できない。
  • より予後が不良であることが、両者を鑑別し続ける実務上の理由である。
  • 治療は抗ウイルス薬とステロイドの併用をできるだけ早期に開始することが原則で(発症7日以内の開始で回復が改善)、重症度評価にはを用いる。

出典

  1. 1.多発脳神経障害を合併したRamsay Hunt症候群(日本耳鼻咽喉科学会会報・2009)Ramsay Hunt症候群が顔面神経麻痺・耳介の帯状疱疹・第VIII脳神経症状を3主徴とする疾患であること。閲覧 2026-08-19
  2. 2.Clinical practice: Herpes zoster(New England Journal of Medicine・2013)VZVの神経節潜伏と再活性化の機序、帯状疱疹の抗ウイルス治療の一般原則(発疹出現からの早期開始が有効性を左右する)を確認した。閲覧 2026-08-19
  3. 3.Latent herpes simplex virus type 1 in human geniculate ganglia(Acta Neuropathologica・1992)剖検8例のうち膝神経節15個中11個(71%)からHSV-1ゲノムが検出されたこと——HSV-1がベル麻痺の原因ウイルスとして膝神経節に潜伏しうることの根拠。閲覧 2026-08-19
  4. 4.Ramsay Hunt syndrome(Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry・2001)ラムゼイ・ハント症候群では耳介・外耳道の水疱が顔面麻痺より遅れて出現することがあり、水疱を欠く無疹性帯状疱疹(zoster sine herpete)の例もあること、Bell麻痺より予後が不良であることを確認した。閲覧 2026-08-19