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House-Brackmann分類

House-Brackmann grading scale

臓器系
神経
科目
ENT
トピック
耳鼻咽喉科 14:中枢性・末梢性顔面神経麻痺の鑑別、末梢性麻痺の原因と鑑別診断耳鼻咽喉科 18:外耳・中耳・内耳の外傷
構成:症状
顔面神経麻痺
適用疾患
前庭神経鞘腫側頭骨骨折

🧠 全体像は、片側のの重症度を、額・眼・口のという単一の身体所見の軸からGrade I(正常)〜VI()の6段階に落とし込む、で世界的にもっとも広く使われる評価尺度である。もとは摘出術後の顔面神経温存を報告するための共通言語として作られたが、現在はなど、あらゆる片側性の重症度記録に転用されている。が単一の筋・関節運動の出力を測るのと同じ発想で、は「顔面神経がどれだけ働いているか」という単一の軸を、加点式ではなく総合的な臨床像として判定する。

目的と適用場面

内容
目的 片側の重症度を6段階の総合グレードで記録する
対象 ・耳科手術後の摘出術後の顔面神経温存評価など、片側性の全般
使う場面 初診時の重症度記録、な悪化・回復の追跡、手術記録・診療情報提供書での共通言語
評価しないもの 中枢性か末梢性かの鑑別そのもの(の診察で先に判定する)、味覚・など顔面神経の副交感神経・感覚機能、両側性の麻痺(左右比較が前提のため評価しにくい)

構成要素と配点

複数項目を加点する形式ではなく、総合所見・安静時所見・額/眼/口のを組み合わせて単一のGrade I〜VIを判定する。

Grade 総合所見 安静時 額の動き 口角の動き
I(正常) 全顔面領域で正常な機能、左右差なし
II(軽度機能障害) 近くで観察して初めて分かる程度の軽い筋力低下。ごくわずかなを伴うことがある 左右対称・緊張正常 中等度〜良好に動く 最小限の努力で完全に閉じられる 軽度の非対称
III(中等度機能障害) 明らかだが変形とまではいえない左右差。片側顔面痙攣を伴うことがあるが高度ではない 左右対称・緊張正常 軽度〜中等度に動く 努力すれば完全に閉じられる 最大努力でもわずかに弱い
IV(中等度〜高度機能障害) 明らかな筋力低下、および/または変形を伴う左右差 左右対称・緊張正常 動きなし 不全 最大努力でも非対称
V(高度機能障害) かろうじて分かる程度の動きのみ 左右差あり 動きなし 不全 わずかに動く
VI( 動きなし

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Grade IとVIは、他の4段階のように安静時・額・眼・口を分けて記載されておらず、それぞれ「全顔面領域で正常」「完全に動きがない」という単一の総合判定として原典に定義されている。

⭐ Grade IIIとIVの境界が実務上もっとも重要なになりやすい。IIIまでは安静時対称性が保たれ、努力すれば完全にできるのに対し、IV以上は不全となる——角膜保護の必要性が一段上がる境界と一致する。

解釈とカットオフ

Grade帯 目安
I〜II 軽症。保存的な経過観察で十分なことが多い
III〜IV 中等症。不全があれば角膜保護を強化し、原因検索やを見直す対象になる
V〜VI 重症。回復不良のリスクが高く、原因疾患によっては介入(減荷術・神経移植など)の検討対象になる

💡 の診療では、のGradeそのものより発症からの進行と経過中の変化が重視される——典型的なは数時間〜1、2日でGradeが悪化し、その後は自然に改善へ向かう経過をたどる。一方、では受傷直後から(Grade VI)か、時間を置いて遅発性に進行するかが方針を左右する。即時のは神経の・高度変性を示唆し外科的減荷術の検討対象になりうるのに対し、の多くは浮腫性の病態で、副腎皮質ステロイドなど保存的治療で経過をみることが多い。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 6段階の総合グレードは粗く、臨床的に意味のある変化を捉える感度が低い。 特にGrade IIIとIVの間のような中間の変化は、総合グレードだけでは記録しにくい2

⚠️ 額・眼・口を別々に採点せず、最終的に顔全体で1つのGradeにまとめる。 部位によって重症度が異なる患者(例:は保たれるが口角の動きだけ強く低下している)でも代表値としてまとめられてしまう。部位ごとの変化を追いたい場合は、部位別に加点するSunnybrook法などの方が感度が高い2

⚠️ 評価者間のばらつきが残る。 「軽度」「中等度」といった記述語の解釈は評価者に依存し、特に隣接するGrade同士の境界は主観に左右されやすい。

⚠️ 両側性のには使いにくい。 左右比較を前提とした尺度であり、両側が同時に麻痺している患者では基準となる「」がない。

⚠️ 中枢性・末梢性の鑑別を代行しない。麻痺の型を診断したあとに重症度を記録する目的でのみ使う。

まとめ

  • は、片側の重症度を額・眼・口のと安静時所見からGrade I(正常)〜VI()の6段階に総合判定する尺度である。
  • もとは摘出術後の顔面神経温存評価のために作られ、現在はを含む全般の重症度記録に使われる。
  • Grade IIIまでは安静時対称性が保たれ努力で完全できるが、Grade IV以上は不全となり角膜保護の必要性が上がる。
  • 6段階の総合グレードは粗く、部位別の変化を捉えにくく評価者間のばらつきも残るため、より感度の高い部位別採点にはSunnybrook法などが使われる。
  • の評価や、中枢性・末梢性の鑑別そのものには使えない。

出典

  1. 1.Facial nerve grading system(Otolaryngology–Head and Neck Surgery(House JW, Brackmann DE)・1985)House–Brackmann分類のGrade I〜VIそれぞれの採点基準(総合所見、安静時所見、額・眼・口の随意運動)の原文の定義閲覧 2026-08-10
  2. 2.Comparison of 3 Grading Systems (House-Brackmann, Sunnybrook, Sydney) for the Assessment of Facial Nerve Paralysis and Prediction of Neural Recovery(Medeniyet Medical Journal・2023)House–Brackmann・Sunnybrook・Sydneyの3分類を比較し、粗い6段階の総合グレードでは臨床的に意味のある変化(特に部位別の変化)を捉える感度が低く、部位別に加点するSunnybrook法の方が治療反応への感度が高かったこと、既存の重症度分類は評価者間のばらつきが大きく単純な相互比較が難しいことを確認した閲覧 2026-08-10