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Microbe Atlas · ウイルス

Varicella zoster virus

水痘・帯状疱疹ウイルス

分類
ヘルペスウイルス / Herpesviruses
性状
エンベロープあり EnvelopeddsDNA
科目
Medical Microbiology
トピック
5/19: Pathogens of air-borne viral infections (list)5/24: Microbes causing pre- and perinatal infections (list) in the fetus / new-born baby5/25: Childhood infections characterized by exanthemas (rashes)
原因となる疾患
ウイルス性脳炎ライ症候群横断性脊髄炎感音難聴急性肝不全水痘・帯状疱疹先天性TORCH感染症先天性水痘症候群内耳炎(迷路炎)
作用する薬剤
(バル)アシクロビルフォスカルネット

🧠 全体像:VZVは1つのウイルスが生涯で2回、まったく違う顔の病気を起こす代表例として読む。初感染は気道から侵入して2回のウイルス血症を経て全身に散布する水痘として発症するが、その後はに何十年も潜み、免疫が落ちた瞬間に1つのだけを侵す帯状疱疹として再来する。潜伏+再活性化という設計図自体はHSV-1/2と共通だが、VZVは潜伏部位がである点、そして再活性化が「1に限局する」点が診断上の決め手になる。

微生物学的な特徴

に共通する構造(線状dsDNA、由来のエンベロープ、、核、生涯潜伏感染)はHSV-1のノートを参照。VZVはHHV-3とも呼ばれ、(および)に潜伏する。保有源はヒトの粘膜・神経組織のみで、を持たない。

病原性の仕組み

気道から吸入されたウイルスは局所リンパ節で増殖したのち、第1回ウイルス血症で肝臓・脾臓へ、約2週間後の第2回ウイルス血症で皮膚へ散布されて水痘を発症する。皮疹から感覚神経を逆行性にされ、に潜伏する。加齢や免疫低下で再活性化すると、軸索をに皮膚へ移動して片側1の帯状疱疹をつくる。

flowchart TD
  A["気道からの吸入(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='respiratory droplets'>飛沫</span>感染)"] --> B["局所リンパ節で増殖"]
  B --> C["第1回ウイルス血症<br>→脾臓・肝臓へ散布"]
  C --> D["第2回ウイルス血症(約2週間後)<br>→皮膚へ散布"]
  D --> E["水痘(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='asynchronous'>非同期性</span>の発疹)"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='DRG'>後根神経節</span>に潜伏"]
  F -->|"加齢・ストレス・免疫抑制"| G["帯状疱疹<br>(1<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Dermatomes'>皮膚分節</span>の疼痛性水疱)"]

水痘とは発疹の同期性で鑑別する。 は全病変が同じ発育段階で四肢優位・を伴うのに対し、水痘は病変の発育段階がバラ(紅斑・丘疹・水疱・痂皮が同時に混在)で体幹優位という古典的な鑑別点がある。

感染経路と疫学

  • 感染が主経路——気道粘膜に定着後、ウイルス血症を経て遠隔臓器(皮膚)で本当の病気を起こす「侵入経路と病気が現れる場所が一致しない」ウイルスの代表例
  • (子宮内または周産期)——の一つ
  • 発疹出現の前後、水疱がするまで感染力を持つ
  • 帯状疱疹は水疱内容との直接接触で水痘として伝播しうるが、帯状疱疹そのものがで広がることは通常ない(播種性の場合を除く)

起こす疾患

詳細な臨床像・治療は水痘・帯状疱疹に譲り、ここでは初感染と再活性化の対比に絞る。

病期 疾患 特徴
初感染 水痘(第4病) の全身発疹、そう痒を伴う。成人・免疫不全者では肺炎・脳炎を合併しうる
初感染(母体) 妊娠初期〜中期の母体初感染でまれだが重篤——性の、中枢神経障害の四徴
再活性化 帯状疱疹 片側1に限局する有痛性小水疱。を越えない
再活性化の合併症 (V1領域、失明リスク)、+耳介の水疱+めまい)、 免疫不全で頻度・重症度が上がる
難聴の原因 感音難聴 の内耳障害いずれの機序でも起こりうる

⚠️ (V1)領域の帯状疱疹は失明のリスクがある。 鼻尖に病変が及ぶ()場合は特に眼科的評価を急ぐ。

⚠️ 水痘罹患後の小児にアスピリンを投与しない。 のリスクがあるため、にはを用いる。

診断

  • 典型的な水痘・帯状疱疹は臨床診断できる
  • 診断が不確実な場合・決定には病変部PCR(NAAT)を優先する
  • の確認)は感度が低く、HSVとの鑑別もできないため補助的位置づけにとどまる
  • 小児の発熱+発疹では麻疹・風疹・HHV-6/7)との鑑別が重要になる

治療と予防

  • 健常者の水痘は通常支持療法で足りる
  • 帯状疱疹:(バル)アシクロビルを用い、発疹出現72時間以内の開始が最も有効
  • 重症化リスク(成人、免疫不全、新生児曝露、肺炎・脳炎合併)では静注アシクロビルを用いる
  • 耐性化・TK非依存治療が必要な場合は
  • 予防:小児にはを2回接種する
  • ⚠️ 帯状疱疹予防は現在、(RZV、非生ワクチン)が第一選択である。 50歳以上の免疫正常者・19歳以上の免疫不全者に2回接種する。旧来のは2020年に米国で販売中止となっており、「高齢者への帯状疱疹も生ワクチン」という理解は現行の推奨と一致しない
  • 免疫不全者などの曝露後予防にはを曝露後10日以内に投与する

まとめ

  • VZV(HHV-3)はに潜伏し、「気道感染→第1回ウイルス血症(肝脾)→第2回ウイルス血症(皮膚)→水痘→DRGでの潜伏→再活性化で帯状疱疹」という一連の経過をたどる。
  • 水痘はの全身発疹(との鑑別が古典的頻出)、帯状疱疹は片側1限局の有痛性水疱で、やV1罹患時の失明リスクを伴う。
  • ・耳介の水疱・めまいを三徴とし、感音難聴の原因にもなる。
  • 妊娠中の初感染は性の・中枢神経障害)を、小児のアスピリン使用はを招きうる。
  • 治療はアシクロビル系抗ウイルス薬(帯状疱疹は発疹出現72時間以内の開始が最も有効)。
  • 水痘の予防は生ワクチン、帯状疱疹の予防は現行では組換え非生ワクチン(RZV)——この2つを混同しない。VariZIGは免疫不全者の曝露後予防に用いる。