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Disease Atlas · 眼科 · 疾患

急性網膜壊死

Acute retinal necrosis

別名
ARN
臓器系
眼科感染症
科目
Medical MicrobiologyDermatology
トピック
微生物学 3/13:ヘルペスウイルス:水痘・帯状疱疹ウイルス皮膚科 1-14:単純ヘルペスと帯状疱疹
鑑別疾患
サイトメガロウイルス網膜炎トキソプラズマ症硝子体網膜リンパ腫進行性外層網膜壊死
合併症
網膜剥離緑内障白内障
関連疾患
眼部帯状疱疹増殖性硝子体網膜症
治療薬
(バル)アシクロビルフォスカルネット(バル)ガンシクロビル
原因微生物
Varicella zoster virusHerpes simplex virus 1Herpes simplex virus 2
症状
眼痛羞明飛蚊症視力低下

🧠 全体像:(ARN)は、・などヘルペス属ウイルスが免疫正常者の眼内で再活性化して起こる、まれだが視力を破壊しうるである。核心はから始まり円周方向へ急速に広がる壊死と動脈を巻き込むの組み合わせで、この2つが揃って初めてARNと呼ぶ。診断がついたら(あるいは強く疑ったら)の確定を待たずに抗ウイルス薬を始めるのが原則である。ただし全身抗ウイルス薬が一貫して支持されているのはの発症を減らすことであって、すでに侵された眼のは治療下でも高率に起こる。免疫不全者に起こる類縁疾患・(PORN)とはの有無と免疫状態で区別する。

病態

で(V1)に再活性化したが眼球内へ及ぶ経路と同じく、ARNもヘルペスウイルスが眼内で再活性化・増殖することで生じる。原因はVZVが成人のの80〜90%超を占め、HSV-1・HSV-2、まれに・も原因となる。は25歳未満(中央値20歳)に多いのに対し、(中央値47歳)とによるARN(中央値57歳)はより高齢層に多い。によるARNが高齢層に偏るのは、加齢とともにに対する免疫が減弱するためと説明される1。

💡 によるARNも、初感染ではなく再活性化を反映している可能性がある。 11例12眼の ARNの症例集積では、の既往・ARNの既往・が患者ごとに認められ、眼周囲外傷・手術・高用量ステロイドといった出来事が引き金になっていた。またによるARNの患者は髄膜炎の既往を、によるARNの患者は脳炎の既往をもつことがある1。

⭐ ウイルスの種類は予後にも効く。 によるARNはによるARNよりのリスクが2.5倍高く、1年後に20/200以下にとどまる割合も高い。初診時に20/60以上の視力を保っている割合は-ARNで52%、-ARNで35%である1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='varicella-zoster virus'>VZV</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='herpes simplex virus'>HSV</span>が眼内(網膜・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='choroid'>脈絡膜</span>)で再活性化"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral retina'>周辺網膜</span>に壊死巣(境界明瞭)が出現"]
    B --> C["無治療下で円周方向へ急速に進展"]
    B --> D["動脈を巻き込む<span class='jp-term jp-term-diagram' title='occlusive vasculopathy'>閉塞性血管症</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal ischemia'>網膜虚血</span>・出血"]
    C --> F["著明な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitritis'>硝子体炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior chamber inflammation'>前房内炎症</span>"]
    E --> G["壊死部と正常網膜の境界に裂孔"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal detachment'>網膜剥離</span>"]

診断基準

米国ぶどう膜炎学会()の基準(Hollandら, 1994年)はのみで定義され、以下5項目すべてを満たすことで診断する2。

基準 内容
①壊死巣 に境界明瞭な巣が1つ以上
②進展速度 無治療下で急速に進展する
③進展様式 円周方向へ広がる
④血管病変 動脈を巻き込む
⑤炎症 著明なおよび/または

・・強膜炎・疼痛は支持所見に位置づけられる1。

💡 同じ基準でも、資料によって「項目数」の数え方が違う。 上表は②進展速度と③進展様式を別項目として数える5項目版だが、StatPearlsはこの2つを「無治療下での急速かつ円周方向への進展」という1項目にまとめ、全体を4項目として記載している1。要求されるの中身は同じで、分け方だけが違う。「N項目中いくつ」という言い方をするときは、どの資料の分け方に従っているかを確かめる。

⚠️ SUN Working Group(2021年)基準は、陽性を臨床像にする追加要件ではなく、臨床像の代わりに使えるとして扱う。 必須項目は「を含む」で、これに加えて (a) /のまたは 陽性、あるいは (b) 円周方向・の網膜炎・の/閉塞・軽微を超えるという3項目すべて、のいずれかを満たせば分類できる((b)のの項目は免疫不全患者では必須としない)。陰性でも(b)の3項目がすべて揃えば診断でき、逆に陽性であれば(b)の3項目をすべて満たしている必要はない3。

日本の診断基準(日本ARN研究会、2015年)

日本ARN研究会(2015年)は、6項目の眼所見(1a〜1f)・5つの臨床経過(2a〜2e)・ウイルス学的検査(/の陽性または陽性)を組み合わせ、ウイルス確定ARNとウイルス未確定ARNの2つに分類する2。

分類 要件
ウイルス確定ARN 眼所見1a・1bの2項目+5つの臨床経過のいずれか1つ+ウイルス学的検査陽性
ウイルス未確定ARN 眼所見6項目中4項目(1a・1bを含む)+5つの臨床経過のいずれか2つ+ウイルス学的検査陰性/未実施

💡 基準・SUN基準が主に欧米圏で使われるのに対し、日本ARN研究会基準はウイルス学的検査の可否によって「確定」「未確定」を分けるという運用面の違いがある。ウイルス学的検査が未実施でも、の要件を1項目多く満たせば「未確定」として診断・治療に進める設計になっている。

病変の広がりを表すゾーン分類

⭐ から3000μm以内、または縁から1500μm以内をZone 1と呼ぶ。 Zone 1の壊死は直接視力を脅かし、予後不良因子として扱われる。Zone 2はZone 1の外側から臨床的(渦静脈の前縁で示される)まで、Zone 3はそこからまでである1。

💡 このゾーン分類はもともと網膜炎の病変範囲を記述するために定義されたもので、ARNへ転用されている1。

臨床像

急な眼痛・・・・で発症する。眼底ではの多発融合性の白色壊死、、著明ながみられる1。急性期の網膜炎は通常4〜6週間活動性を保つ1。

検査

  • ・の(・)は79〜100%の陽性率を示し、感度は84〜100%・77.9〜100%とほぼ同等なので、より安全なが優先される2。
  • (眼内/血清抗体比)は6以上で陽性、1〜5は疑陽性、1未満は陰性とされ、発症早期は眼内抗体産生が不十分で偽陰性になりうるためを優先しGWCは補助に位置づける2。
  • ⚠️ 結果を待って治療開始を遅らせない。 臨床診断基準を満たせば結果確認前に経験的を始める2。

鑑別

鑑別 分ける手がかり
網膜炎 免疫不全者に多い。が乏しく透明な媒質、出血が目立つ。⚠️ 起始部位は型で異なり、・が早期に侵される型がある一方、型はから始まる1
(PORN) AIDSなど高度に免疫抑制された患者にほぼのみで生じる。を伴わずから病変が始まり出血に乏しい。ARNが主に免疫正常者に起こるのと対照的である12
強いを伴い「霧の中の」様の局所を呈し、のを隣接して伴うことが多い1

治療

⭐ 静注アシクロビル10〜13mg/kgを8時間ごと(または1500mg/m²/日)に5〜10日間投与し、続けて経口アシクロビル400〜800mgを1日5回、3〜6か月維持するのが歴史的な標準治療である1。

⭐ 現在の第一選択は、多くの症例で「静注」ではなく「高用量の経口」である。 米国眼科学会(AAO)のOphthalmic Technology Assessmentは、経口の投与で静注アシクロビルと同等の血漿中アシクロビル濃度が得られるというデータを根拠に、は経口・静注のいずれも有効であり、経口が多くの患者にとって選択肢になるとしている4。具体的には、中枢神経系の合併が無い大多数の患者は経口2000mgを1日3〜4回(1日総量6000〜8000mg)7〜10日間で治療でき、維持療法は1000mg/日を6か月以上続けるのが一般的である1。入院・静注が必要になるのは、経口摂取ができない、全身合併(中枢神経系病変)が確実または疑わしい、免疫抑制状態にある、がに困難、といった場合に限られる1。

英国のレビューは別のスケジュール(導入量2gを1日3回2週間、その後1gを1日3回3週間、以後500mg〜1gを1日2回で維持)をの良い選択肢として挙げている2。⚠️ 投与量と期間の組み合わせは資料ごとに異なる。どちらか一方の用量ともう一方の期間を混ぜて覚えない。

視力を脅かす病変や急速進行例には、に(2.4mg/0.1mL)または(2〜4mg/0.1mL)を併用する12。AAOはと全身抗ウイルス薬の併用が単独より有効な可能性を認めているが、その根拠はlevel IIおよびIIIのエビデンス(すべて)であり、確立した推奨ではない4。

⚠️ を単独では使わない。 は投与した眼にしか効かず、を守れない。全身抗ウイルス薬にする補助治療として位置づける1。

⚠️ 副腎皮質ステロイドは抗ウイルス薬より先に、または単独で使わない。 抗ウイルス薬なしのステロイドはウイルス増殖・網膜炎を悪化させうる。0.5〜2.0mg/kg/日を、抗ウイルス薬開始から24〜48時間後、または壊死の退縮が診察で確認できた時点から、6〜8週間を上限に用いる。視神経が侵されている例ではとくにを考慮する。抗ウイルス薬開始後であれば40mg/1mLの注射も選択肢になる12。アスピリンなどはへの対症として検討されることがあるが、有効性の根拠は限られを予防するとは示されていない1。

💡 予防的と早期の位置づけは、報告間で結果が一致しない。 は58%もの症例でを防げなかったとする報告があり、を調整すると独立した保護効果は明確でない12。早期についても報告間で結果が一致しない。あるではレーザー群45.5%・無治療群26.7%・予防的群14.3%という率が報告される一方2、別の104例の後ろ向きシリーズでは最終診察時点で網膜が復位を維持していた割合が予防的群58.3%・経過観察群75.0%と、こちらは群のほうが低かった1——いずれの研究もに明確な予防効果を認めておらず、解剖学的な改善が必ずしも視力転帰の改善に結びつくとは限らない2。AAOもの予防における予防的レーザー・早期の有効性は「不明」であるとしている4。個々の追加治療の選択よりも、治療開始時点の病態の重さ(初診時視力・壊死の広がり・Zone 1病変の有無)が最終視力を規定する、という理解が実務上重要である1。

合併症と僚眼・予後

⭐ が最大の合併症である。 のが罹患眼のおよそ25〜75%に生じ、抗ウイルス治療下の報告でも20〜60%と幅があるが、いずれにせよ高頻度である12。裂孔は壊死網膜と健常網膜の境界にできる萎縮性・の裂孔で、早期から強い増殖性症とを伴うことが多い。閉塞性血管炎・血液網膜柵の破綻・強い炎症からあるいは混合機序の剥離を起こすこともある1。慢性の炎症・虚血からは、血管新生(続発緑内障を含む)、も生じうる1。

⚠️ 発症眼のを治療で防げるかどうかは、資料によって書き方が違う。 アシクロビル単剤で治療した歴史的シリーズを引く StatPearls は「治療は発症眼のの頻度を下げない」とする1。一方、全身投与にを併用する現在の枠組みを述べる Eye 2024 は、併用を「重症度・視力喪失リスク・のを下げる」目的で第一選択に置いている2。⚠️ どちらも対照群のない後ろ向きの根拠であり、「早く治療すれば剥離しない」と読み替えない。 一方での発症を減らすことは両者とも支持している。

⚠️ への進展(両側ARN)は治療で減らせるが、ゼロにはならない。 ARNは大部分が片眼性だが、最大30%が両側性となり、その経過は数週から数年に及ぶ1。ある歴史的コホートではアシクロビル治療群の75%が2年時点で無病であったのに対し非治療群では35%にとどまり1、別の歴史的報告では治療によりが70%から13%へ減少したとされる2——いずれも出典・コホートが異なる数値であり、単一の確定値として覚えない。全身抗ウイルス薬による長期・場合によっては生涯にわたる予防投与を提案するもいるが、根拠は限られる2。💡 発症から数年後にが侵されうるため、急性期を脱しても経過観察を打ち切らない。

最終視力は全体として厳しく、罹患眼の64%が20/200を下回る。一方、早期の診断と治療によって転帰は改善しうるとされ、最大で92%が20/400以上、46%が20/40以上に達したとする報告がある1。

まとめ

  • ARNは・が眼内で再活性化し、の壊死巣・急速な進展・円周方向への進展・の・著明なという5項目(基準、1994年)で診断する免疫正常者中心の疾患である。SUN基準(2021年)は陽性を臨床像の追加要件ではなくとして扱い、日本ARN研究会基準(2015年)はウイルス学的検査の可否でウイルス確定/未確定ARNに分ける。
  • (優先、陽性率79〜100%)が確定に有用だが、結果を待たず臨床診断でを開始する。
  • 免疫不全者に生じるPORN・網膜炎とは、免疫状態との有無で区別する。
  • 治療の軸は早期の全身抗ウイルス薬。経口で静注アシクロビルと同等の血漿中アシクロビル濃度が得られるため、中枢神経系合併の無い大多数は高用量経口で治療でき、静注は経口不能・全身合併・免疫抑制・困難の場合に限られる。視力を脅かす病変には/を併用するが、単独ではを守れないので補助にとどめる。ステロイドは抗ウイルス薬開始の24〜48時間後から6〜8週を上限に追加する。
  • は罹患眼の25〜75%と高頻度に生じ、壊死網膜と健常網膜の境界の裂孔から起こる。予防的レーザー・の効果は報告間で一致せずAAOも「不明」としている。発症眼のを治療で防げるかは資料で分かれる(StatPearlsは「減らさない」、Eye 2024は全身+併用が「を下げる」)。最終視力を決めるのは追加治療の選択より治療開始時点の病態の重さである。
  • への進展は全身抗ウイルス薬で減らせるが消せない。最大30%が両側性になり、数週から数年かけて発症するため経過観察を早く打ち切らない。長期予防投与の意義はまだ確立していない。

出典

  1. 1.Acute Retinal Necrosis(StatPearls(NCBI Bookshelf)(Tripathy K, Datta S)・2026)VZVが成人のPCR確定例の80〜90%超を占め、HSV-1・HSV-2・まれにCMV・EBVも原因となること、HSV-2は25歳未満(中央値20歳)、HSV-1(中央値47歳)とVZV(中央値57歳)はより高齢層に多いこと、米国ぶどう膜炎学会の診断基準が周辺網膜の境界明瞭な壊死巣・無治療下での急速な周辺方向への進展・動脈を巻き込む閉塞性血管症・著明な硝子体および前房内炎症の4項目であり視神経症/視神経萎縮・強膜炎・疼痛が支持所見とされること、Zone1(中心窩から3000μm以内または視神経乳頭縁から1500μm以内)が視力を直接脅かす範囲と定義されること、急性期の壊死性網膜炎が通常4〜6週間持続すること、眼内液(前房水・硝子体)のPCRがVZV・HSVについて79〜100%の陽性率を示すこと、鑑別としてCMV網膜炎(免疫不全者、硝子体混濁が乏しく出血が目立ち、後極・血管アーケードが早期に侵される一方で顆粒状CMV網膜炎では周辺から早期に侵される——"Early involvement of the posterior pole/arcades, and early involvement of the periphery in granular CMV retinitis")・進行性外層網膜壊死(PORN、高度に免疫抑制された患者にほぼVZVのみで生じ硝子体炎がない)・トキソプラズマ症(強い硝子体炎を伴う「霧の中のヘッドライト」様病巣、陳旧性瘢痕の併存)が挙げられること、治療が静注アシクロビル10〜13mg/kgを8時間ごと5〜10日間に続く経口アシクロビル維持療法(3〜6か月)、高用量経口バラシクロビルが実地で一次選択として増えていること、硝子体内フォスカルネット(2.4mg/0.1mL)またはガンシクロビル(2〜4mg/0.1mL)を全身療法に併用しうること、副腎皮質ステロイド(プレドニゾン0.5〜2.0mg/kg/日)は抗ウイルス薬開始の24〜48時間後から用いること、抗ウイルス薬前のステロイド単独使用は網膜炎を増悪させうること、アスピリンなど抗血小板療法の位置づけは不確実で網膜剥離を予防しない可能性があること、予防的バリアレーザーが58%もの症例で網膜剥離の発生を防げなかったとする報告があること、早期予防的硝子体切除術を検討した104例の後ろ向きシリーズでは最終診察時点で網膜が復位を維持していた割合が硝子体切除群58.3%・経過観察群75.0%であり硝子体切除群のほうが低く、硝子体切除が網膜剥離を予防するという明確な根拠は無いこと(Treatment節)、網膜剥離が発症例の25〜75%に生じること、アシクロビル治療群は僚眼が2年時点で無病である割合が75%、非治療群では35%であったこと、最終視力が20/200未満にとどまる例が64%に上る一方、早期治療により92%が20/400以上、46%が20/40以上を達成しうること、初診時視力・網膜剥離の有無・壊死の広範さ・眼内ウイルス量・黄斑/視神経乳頭の関与・Zone1病変が予後を左右する主要因子であり個々の治療法の選択より治療開始時の病態そのものが視力予後を規定することを確認した。閲覧 2026-09-02
  2. 2.Diagnostic and therapeutic challenges in acute retinal necrosis; an update(Eye(Nature Publishing Group、英国ぶどう膜炎学会関連レビュー)・2024)英国での急性網膜壊死の発生率が人口100万人あたり年0.5〜0.63例と推定されること、日本ではぶどう膜炎全体の1.3〜1.4%を占めること、Table 1に基づく米国ぶどう膜炎学会(AUS、1994年、Holland GNら)の基準が①周辺網膜に境界明瞭な壊死巣、②無治療下での急速な進展、③円周方向への進展、④動脈を巻き込む閉塞性血管症、⑤著明な硝子体・前房内炎症の5項目からなること、SUN Working Group(2021年)の基準が、周辺網膜を含む壊死性網膜炎を必須としたうえで、これに加えて(a)前房水/硝子体のHSVまたはVZV PCR陽性、あるいは(b)円周方向・癒合性の網膜炎・網膜血管の血管鞘形成/閉塞・軽微を超える硝子体炎の3項目すべて、のいずれかを満たせば分類できるとしていること(PCR陽性は3項目の臨床像を補う追加要件ではなく、臨床像の代わりに使える代替経路であること)、日本ARN研究会(2015年)基準が6項目の眼所見(1a〜1f)・5つの臨床経過(2a〜2e)・ウイルス学的検査(PCR陽性またはGoldmann-Witmer係数陽性)を組み合わせ、所見1a・1bの2項目+臨床経過のいずれか1つ+ウイルス学的検査陽性を満たす「ウイルス確定ARN」と、6所見中4項目(1a・1bを含む)+臨床経過のいずれか2つ+ウイルス学的検査陰性/未実施を満たす「ウイルス未確定ARN」の2つに分類すること、Goldmann-Witmer係数が6以上で陽性・1〜5で疑陽性・1未満で陰性とされること、前房水・硝子体のPCR陽性率が79〜100%であり感度は前房水84〜100%・硝子体77.9〜100%とほぼ同等で両検体間に有意差がないためより安全な前房水穿刺が優先されること、進行性外層網膜壊死(PORN)がほぼVZVのみで生じ、AIDSなど高度に免疫抑制された患者に生じる点で免疫正常者に多い急性網膜壊死と対比されること、静注アシクロビルが歴史的な第一選択である一方、高用量経口バラシクロビル(導入2gを1日3回2週間、その後1gを1日3回3週間、その後500mg〜1gを1日2回で維持)が費用対効果に優れる選択肢として位置づけられること、硝子体内フォスカルネットと全身療法の併用が増えていること、網膜剥離の全体発生率が抗ウイルス治療下でも20〜60%と報告される一方、別のコホートでは初診時2%・経過中に47%が発症したと報告されること、予防的バリアレーザーの独立した保護効果は交絡因子調整後には明確でないこと、早期硝子体切除術についても報告間で結果が一致しないこと(ある後ろ向き研究ではレーザー群45.5%・無治療群26.7%・予防的硝子体切除群14.3%の網膜剥離率であった一方、解剖学的改善が必ずしも視力転帰の改善に結びつかないこと)、僚眼保護について歴史的コホートでアシクロビル治療により僚眼罹患が70%から13%へ減少したと報告されていることを確認した。閲覧 2026-09-02
  3. 3.Classification Criteria for Acute Retinal Necrosis Syndrome(American Journal of Ophthalmology(Standardization of Uveitis Nomenclature Working Group;Jabs DA, Belfort R Jr, Bodaghi B, Graham E, Holland GN, Lightman SL, Margolis TP, Oden N, Palestine A, Smith JR, Thorne JE, Trusko BE, Van Gelder RN)・2021)SUN Working Groupの分類基準で、必須項目が「周辺網膜を含む壊死性網膜炎」であること、これに加えて基準2(前房水または硝子体検体でのHSVまたはVZVのPCR陽性)**または**基準3(円周方向・癒合性の網膜炎、網膜血管の血管鞘形成/閉塞、軽微を超える硝子体炎[免疫不全患者では必須としない]の3項目すべてを満たすこと)のいずれかを満たせば急性網膜壊死症候群として分類できること、すなわちPCR陽性は臨床像の3項目に追加で要求される条件ではなく、臨床像の3項目すべてを満たせない場合の代替経路として機能すること、梅毒血清反応陽性やCMV/トキソプラズマPCR陽性(一定の条件を満たす場合を除く)が除外項目であることを確認した。閲覧 2026-09-02
  4. 4.Diagnosis and Treatment of Acute Retinal Necrosis: A Report by the American Academy of Ophthalmology(American Academy of Ophthalmology(Ophthalmic Technology Assessment;Schoenberger SD, Kim SJ, Thorne JE, Mruthyunjaya P, Yeh S, Bakri SJ, Ehlers JP)・2017)米国眼科学会のOphthalmic Technology Assessment(33件すべて後ろ向き研究)が、前房水または硝子体のPCRがARN疑い例の79〜100%でHSVまたはVZV陽性となり前房水・硝子体とも感度・特異度に優れること、静注および経口の抗ウイルス療法を支持するlevel II・IIIのエビデンスがあること、経口バラシクロビル投与と静注アシクロビル投与で同等の血漿中アシクロビル濃度が得られること("Data suggest that equivalent plasma drug levels of acyclovir can be achieved after administration of oral valacyclovir or intravenous acyclovir.")、硝子体内フォスカルネットと全身抗ウイルス療法の併用が全身療法単独より有効な可能性を示すlevel II・IIIのエビデンスがあること、網膜剥離の予防における予防的レーザーおよび早期硝子体切除術の有効性は依然として不明であること("The role of prophylactic laser retinopexy or early PPV is unknown at this time.")、PCR結果を待って治療開始を遅らせるべきでないことを確認した。なお導入量の具体的数値(1日6000〜8000mg・7〜10日間)は本文中の記載で、Europe PMC経由で取得できた抄録には含まれない。閲覧 2026-09-05