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Disease Atlas · 眼科 · 疾患

緑内障

Glaucoma

別名
グラウコーマ緑内障性視神経症
臓器系
眼科神経
科目
Medical PhysiologyPharmacologyNeurologyMedical Microbiology
トピック
生理学 8.4:視覚の生理学薬理学 A2:コリン作動薬薬理学 A8:β受容体拮抗薬薬理学 A6:α2作動薬およびイミダゾリン受容体作用薬薬理学 B10:カリウム排泄性利尿薬薬理学 B11:カリウム保持性利尿薬・ADH拮抗薬・浸透圧利尿薬薬理学 B27:平滑筋作用薬・子宮収縮作用薬神経内科 G1-01:瞳孔支配の障害微生物学 3/4:先天性ウイルス感染(例)微生物学 5/3:眼感染を起こす細菌とウイルス(一覧)とその診断
鑑別疾患
結膜炎後部多形性角膜ジストロフィ高眼圧症水疱性角膜症先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ虹彩角膜内皮症候群鼻涙管閉塞片頭痛・一次性頭痛症候群網膜中心動脈閉塞症
関連疾患
UGH症候群加齢黄斑変性弱視
治療薬
ラタノプロストビマトプロストチモロールベタキソロールブリモニジンアセタゾラミドピロカルピンカルバコールマンニトールグリセロール
原因薬剤
プレドニゾロンデキサメタゾンアトロピンスコポラミン
原因微生物
Rubella virus
症状
頭痛悪心嘔吐視力低下眼痛霧視結膜充血角膜浮腫毛様充血散瞳
検査値
眼圧
下位分類
隅角後退緑内障
元疾患
Axenfeld-Rieger症候群Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎Peters奇形Posner-Schlossman症候群Vogt-小柳-原田病WAGR症候群遺残胎児血管系眼虚血症候群眼内異物急性網膜壊死若年性黄色肉芽腫糖尿病網膜症虹彩母斑・虹彩黒色腫網膜静脈閉塞症頸動脈海綿静脈洞瘻
原因となる疾患
Weill-Marchesani症候群眼部帯状疱疹色素散布症候群落屑症候群
適応薬
カルバコールグリセロールトラボプロストビマトプロストラタノプロスト
禁忌薬
アトロピンイミプラミンウメクリジニウムエスゾピクロンオキシブチニンオキシメタゾリンキサノメリン+トロスピウムキシロメタゾリングリコピロニウムシクロペントラートジメンヒドリナートソリフェナシンダリフェナシンチオトロピウムトリヘキシフェニジルトルテロジンドロキシドパトロピカミドナファソリンヒドロキシアンフェタミンマジンドールミドドリン硝酸イソソルビド

🧠 全体像:緑内障は「が高い病気」ではなくである。は現時点で唯一のな危険因子にすぎず、(が正常域でもが進む)や(が高いだけでがない)の存在がそれを裏づける。学習の幹は「の産生→循環→排出のどこが詰まるか(か閉塞隅角か)」で病型を分け、「とは周辺から始まりは末期まで保たれる」という進行パターンを軸に、だけは数時間〜数日で失明しうるとして別枠で覚えることである。

病態:房水動態と視神経症

はが能動的Na⁺分泌により産生し、→瞳孔→と流れたのち、大部分(約90%)は隅角のからへ排出される(主流出路)。残り約10%は(間隙からへ)を通り、こちらは非依存性の経路である。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ciliary process'>毛様体突起</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aqueous humor production'>房水産生</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior chamber'>後房</span> → 瞳孔 → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior chamber'>前房</span>"]
    B --> C["隅角"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trabecular meshwork'>線維柱帯</span> → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='Schlemm canal'>シュレム管</span><br>(主流出路・約90%)"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uveoscleral outflow pathway'>ぶどう膜強膜流出路</span><br>(約10%・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼圧</span>非依存性)"]
    D --> F{"隅角は開いているか"}
    F -->|"開放だが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trabecular meshwork'>線維柱帯</span>自体の抵抗↑"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary open-angle glaucoma'>原発開放隅角緑内障</span>"]
    F -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iris'>虹彩</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trabecular meshwork'>線維柱帯</span>を機械的に閉塞"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary angle-closure glaucoma'>原発閉塞隅角緑内障</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute glaucoma attack'>急性緑内障発作</span>"]
    G --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼内圧</span>上昇"]
    H --> I
    I --> J["視神経(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lamina cribrosa'>篩状板</span>)への機械的ストレス+血流障害"]
    J --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal ganglion cell'>網膜神経節細胞</span>のアポトーシス"]
    K --> L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cupping'>視神経乳頭陥凹</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visual field defect'>視野障害</span>"]

💡 は隅角が見た目には開いているのにそのものの排出抵抗が上がる病態、はが物理的にを覆ってしまう病態で、「隅角が開いているか」という一点が両者を分ける。閉塞隅角の多くは(との間での→の流れがせき止められ、圧がを前方へ押し出す)が機序である。

⭐ の拡大にともなうは、・(、)が先に出現し、は末期まで保たれる。が保たれているため患者本人は病期が進むまでしにくく、健診での評価が早期発見の要になる。

病型

病型 機序 特徴
(POAG) 自体の排出抵抗上昇 慢性・無症候性に進行。緑内障の中で最多
(PACG)・ による隅角の物理的閉塞 眼・・高齢女性に多い。急性発作は
(ステロイド誘発) ・などによるの蓄積 型の機序。中止で可逆的なことが多く早期発見が重要
(血管新生) 糖尿病などの虚血が誘発する隅角がを閉塞 難治。・と併用した緑内障手術を要する
() 物質がに沈着 世界的に頻度の高い続発。時の脆弱に注意
() による(angle recession) 受傷から数年後に発症することがある
先天(発達)緑内障 隅角の発生異常(隅角形成異常) 乳児期に・・の三徴、(拡大)を呈する

⚠️ ・は、隅角が解剖学的に狭い眼でのみを介してを誘発しうる危険薬である(・など)。この禁忌は・の素因がある眼に限られ、では同じ禁忌は当てはまらない。の患者にを使うこと自体は問題にならない。

⚠️ も同じ理由でに禁忌になる。 はα1受容体で収縮するため、とは別の経路で同じを起こす。のであるは欧州のSmPCが「」を禁忌に挙げ1、は日本の電子添文が2.2で「の患者[を上昇させる。]」を禁忌としている2。⭐ どちらも「緑内障」ではなく「」と病型を限定して書かれている——の電子添文は慢性を禁忌ではなく9.1.8(が上昇するおそれ)に置いており2、と同じ線引きになっている。💡 のSmPCは、これとは別に4.4で併用時のにも注意を求めている1。ステロイド誘発のは型の機序なので、こちらは病型を問わない注意である。

臨床像

は無痛性・無症候性に進行し、発見時にはすでに視野の一部を失っていることが多い。健診での・の指摘が診断の契機になりやすい。

は対照的に劇的である。数時間でが40〜80 mmHgまでし、片側の激しい眼痛と頭痛、悪心・嘔吐、光の周りに輪がかかって見える、急激なを来す。眼球は充血し、角膜は浮腫で状に濁り、瞳孔は中等度しを欠き、眼球は触診でも硬く感じられる。⚠️ 悪心・嘔吐を伴う片側性の頭痛は片頭痛とも紛らわしいが、・・・眼球を伴えばを最優先で疑う。

は・・の三徴とで気づかれる。やでは・難聴などと並ぶ眼所見としてが知られ、Rubella virusのがその一因になる。

診断

緑内障の診断は単独では成立せず、のと対応するの両方を確認する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tonometry'>眼圧測定</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='applanation tonometer'>圧平眼圧計</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gonioscopy'>隅角鏡検査</span>で開放/閉塞を判定"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fundus examination (fundoscopy)'>眼底検査</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='optic disc cupping'>視神経乳頭陥凹</span>(cup-to-disc比)を評価"]
    C --> D["OCTで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal nerve fiber layer'>網膜神経線維層</span>の菲薄化を確認"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='static perimetry'>静的視野検査</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visual field defect'>視野欠損</span>の分布・進行を確認"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼圧</span>が正常でも所見があれば<span class='jp-term jp-term-diagram' title='normal-tension glaucoma'>正常眼圧緑内障</span>として扱う"]

💡 はか閉塞隅角かを直接判定する検査であり、この結果次第で治療薬の選択(ミオティクスの使い方)やの可否が変わるため省略できない。OCTによるの菲薄化は、で的なとして検出される前にを捉えられることがある。

治療

治療の原則は、個々の患者で設定したまでを下げ、の進行を遅らせることである。

代表薬 機序
・ ↑。1日1回点眼でになりやすい
β遮断薬 (非選択)・(β1選択) ↓。全身吸収による徐脈・に注意
α2作動薬 ↓+↑
↓。急性発作では全身投与で用いる
ミオティクス() ・ ・を収縮させ流出↑。閉塞隅角ではを隅角から引き離す

💡 (=SLT)の位置づけは近年変わった。英国ガイドライン(NG81、2022年改訂)は、新規診断の慢性、または24 mmHg以上の新規に対し、360°SLTを初期治療として提示することを推奨しており、SLTを希望しない・不適な場合にジェネリックのプロスタグランジン点眼を第一選択とするという順序に変わった。欧州緑内障学会(EGS)・米国眼科学会(AAO)もLiGHT試験(SLTを初回治療とした群の約70%が6年時点で点眼・手術非依存であった)を踏まえ、SLTを点眼薬と並ぶ、あるいはそれに先立つ初期治療の選択肢として位置づけている。「SLTは点眼が効かなくなってから使う」という旧来の理解は現行のガイドラインとは一致しない。

閉塞隅角の解剖(・)に対する根本治療は(LPI)で、にも予防的に行うことが多い。薬物治療でを制御できない例や、より侵襲の低い(MIGS、と同時に行われることが多い)で不十分な例には、(を作る標準術式)や(難治例・例)を行う。

⚠️ はであり、点眼のβ遮断薬・α2作動薬に加え、の全身投与、静注やグリセロール内服などの薬で緊急にを下げる。によるはが非常に高いとが虚血で反応しないため、まず他剤でを下げてから追加するのが実際的である。が下がり角膜の透明性が回復した時点でを行い、根本的にを解除する。

⚠️ 小児のではを思い出す。 の黄色調結節から自然に前房出血を起こし、反復すると血液によるの閉塞でが上がる。皮膚病変が目立たない例もあるので、小児の非前房出血ではをで必ず見る。

まとめ

  • 緑内障はそのものではなくであり、は唯一のな危険因子にすぎない(・の存在)。
  • はで産生され→→・(主流出路)またはから排出される。自体の抵抗上昇が、による隅角の物理的閉塞(多くは)がを来す。
  • は周辺・が先行しは末期まで保たれるため、健診でのの評価が早期発見の鍵になる。
  • にはステロイド誘発・血管新生・・があり、は・・の三徴とで気づかれる。
  • ・による急性発作誘発の危険は・閉塞隅角の素因がある眼に限られ、には当てはまらない。
  • 治療は・β遮断薬・α2作動薬・などの点眼が中心だが、(2022年改訂)・EGS・AAOはLiGHT試験の成績を踏まえ(SLT)を点眼と並ぶ初期治療の選択肢と位置づけている。
  • は数時間〜数日で不可逆的視力障害に至るで、全身・薬で緊急にしたうえでにより根本治療する。

出典

  1. 1.Gutron 2,5 mg tabletta — Alkalmazási előírás(Országos Gyógyszerészeti és Élelmezés-egészségügyi Intézet(ハンガリー国立薬事・食品衛生研究所。販売許可保有者 Cheplapharm Arzneimittel GmbH、登録番号 OGYI-T-4239)・2021)本文検証日2021年7月31日(OGYÉI/49235/2021、第2版)のハンガリーSmPCで、ミドドリンの4.3の禁忌に "Szűk zugú glaucoma"(閉塞隅角緑内障)が挙げられ緑内障全般ではないこと、4.4が別に「緑内障または眼圧上昇のおそれがある患者、およびミネラルコルチコイド(フルドロコルチゾン)を併用中の患者では眼圧上昇の危険があるため注意を要する」と述べていること、英国・スペインのSmPCも4.3に "Narrow angle glaucoma" / "Glaucoma de ángulo estrecho" を挙げることを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.ドプスOD錠100mg/ドプスOD錠200mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(住友ファーマ)・2026)2026年5月改訂(第3版)の電子添文で、ドロキシドパの禁忌2.2が「閉塞隅角緑内障の患者[眼圧を上昇させる。]」であること、慢性開放隅角緑内障は禁忌ではなく9.1.8(合併症・既往歴等のある患者)に「眼圧が上昇するおそれがある」として置かれていることを確認した。閲覧 2026-09-07