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Drug Atlas · A3 Anticholinergics / 抗コリン薬 · 必修

トリヘキシフェニジル

trihexyphenidyl

分類
Anticholinergics / 抗コリン薬Antiparkinson drugs / 抗パーキンソン薬
商品名(日本)
アーテン
商品名(EU)
Artane
科目
Pharmacology
トピック
A3: Muscarinic receptor blocking drugsA22: Drugs of neurodegenerative diseases (extrapyramidal motoric system, nootropic drugs)
承認適応
ジストニアパーキンソン病
禁忌疾患
緑内障重症筋無力症
副作用
口腔乾燥霧視錯乱散瞳
対象疾患
Meige症候群ジストニア重積

🧠 全体像:は同じであると役割がほぼ重なるが、という群の中では対極の2つの顔を持つ。一方は治療薬——小児発症の全身性・の第一選択であり、によるにも用いられる。もう一方は原因薬——が強すぎることで(せん妄・・尿閉・・という古典的な徴候)を引き起こす側にも回る。同じ「アセチルコリンを遮断する」という機序が、治療域を超えた瞬間に中毒として跳ね返ってくる薬の典型例になる。

薬効群の中での位置づけ

分類 代表薬 特徴
経口・IM/IVとも使用可、の速効治療にも使う
経口のみ。小児発症ので第一選択という独自の地位
末梢優位の 、 中枢移行が乏しくには無効

⭐ との違いは「剤形」と「小児での立ち位置」。 はIM/IV製剤があるための救急治療で選ばれやすいのに対し、はのみだが、小児発症の全身性・という特定の場面で第一選択に位置づけられる独自の役割を持つ1。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trihexyphenidyl'>トリヘキシフェニジル</span>が中枢の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='M1 muscarinic receptor'>M1受容体</span>を拮抗"] --> B["線条体で相対的に過剰な<br>アセチルコリン作動性シグナルを抑制"]
    B --> C["ドパミン・アセチルコリンの平衡が是正される"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dystonia'>ジストニア</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drug-induced extrapyramidal symptoms (EPS)'>薬剤性錐体外路症状</span>の軽減"]
    A --> E["末梢のM受容体も同時に拮抗(選択性が低い)"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased salivation'>唾液分泌低下</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pupillary dilation'>瞳孔散大</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal peristalsis'>腸蠕動</span>低下・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypohidrosis'>発汗低下</span>"]
    F --> G["治療域では口渇・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blurry vision'>霧視</span>程度<br>過量・高齢者では<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anticholinergic toxicity'>抗コリン中毒</span><br>(せん妄・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperthermia'>高体温</span>・尿閉)"]

💡 「治療薬」と「中毒の原因薬」が同じの延長線上にある。 中枢M1拮抗はの治療効果を生む一方、末梢M受容体への非選択的な拮抗はによる不良、低下による尿閉・便秘といったの症状をそのまま説明する。用量が増えるほど、あるいは高齢者で代謝・排泄が遅れるほど、この「治療」と「中毒」の境界に近づく。

適応

領域 使いどころ
神経内科・小児科 :小児発症の全身性・の第一選択1
神経内科 パーキンソン病(特発性・脳炎後・動脈硬化性)の、特に2
精神科・救急 (抗精神病薬など)投与による・(遅発性を除く)・2

⚠️ 成人の()・では第一選択にならない。 の局所注射の方がおそらく有効でも優れるとされ、など経口は効果不十分例の補助的な位置づけにとどまる3。

用法・用量

:第1日目1 mg、第2日目2 mg、以後1日6〜10 mgのまで2 mgずつ漸増し、3〜4回に分割する24。

・:1日2〜10 mgを3〜4回に分割する2。

高齢者(60歳超):低用量から開始し、注意深く増量する4。実際の用量は年齢・症状・原因により大きく異なるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:、成分への過敏症4。重症筋無力症は日本の添付文書のみが禁忌に挙げる2
  • ・イレウス・腸閉塞では尿閉・腸閉塞増悪のリスクから慎重投与
  • ⚠️ 高齢者では・せん妄のリスクが高く、長期の漫然投与を避ける。 振戦優位で若年という限られた場面を除き、安易に継続しない
  • 緑内障が疑われる患者では治療開始前に・を検討する4

副作用

⚠️ 過量・高齢者では古典的なの症候(・・・頻脈・不整脈・せん妄・・)を呈しうる4。

頻度 内容
高頻度 口渇、、めまい、軽度悪心
注意 、頻脈、便秘、尿閉
重篤・まれ せん妄・、、の顕在化4

は設定されていない(米国添付文書・日本添付文書のいずれも独立した欄なし)42。

まとめ

  • はで、線条体のドパミン・アセチルコリン平衡を是正し・を軽減する。
  • 小児発症の全身性・の第一選択という独自の地位を持つ一方、成人の・ではに主役を譲る。
  • と機序・適応はほぼ重なるが、経口剤しかないための救急治療にはのIM/IVが選ばれやすい。
  • 非選択的な末梢M受容体拮抗により、治療域を超えると(せん妄・・尿閉・・)の原因薬にもなる。
  • ・重症筋無力症が禁忌。高齢者では・せん妄リスクから漫然投与を避ける。は設定されていない。

出典

  1. 1.Dystonia(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)小児発症の全身性・分節性一次性ジストニアには抗コリン薬(トリヘキシフェニジル)が第一選択になることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.アーテン錠2mg/散1% 添付文書(2021年6月改訂)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)添付文書情報・2021)日本の効能・効果が特発性パーキンソニズム、その他のパーキンソニズム(脳炎後・動脈硬化性)、向精神薬投与によるパーキンソニズム・ジスキネジア(遅発性を除く)・アカシジアであること、特発性パーキンソニズムでは第1日目1 mg・第2日目2 mg・以後1日2 mgずつ増量し1日6〜10 mgを維持量として3〜4回に分割投与すること、向精神薬性パーキンソニズムには1日2〜10 mgを3〜4回に分割投与すること、禁忌が閉塞隅角緑内障・重症筋無力症・過敏症であり独立した「警告」の項は設定されていないことを確認した閲覧 2026-08-11
  3. 3.Practice guideline update summary: Botulinum neurotoxin for the treatment of blepharospasm, cervical dystonia, adult spasticity, and headache: Report of the Guideline Development Subcommittee of the American Academy of Neurology(American Academy of Neurology (AAN)・2016)頸部ジストニアに対してボツリヌス毒素が経口抗コリン薬のトリヘキシフェニジルよりおそらく有効かつ忍容性も優れるとされ、ボツリヌス毒素が頸部ジストニア・眼瞼痙攣の第一選択治療として受け入れられていることを確認した閲覧 2026-08-10
  4. 4.Trihexyphenidyl Hydrochloride Oral Solution — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2024)枠組み警告が設定されていないこと、パーキンソン病での漸増法(初日1 mg、以後2 mg刻みで3〜5日ごとに増量し1日6〜10 mgへ)、60歳超の高齢者は低用量から開始し慎重に観察すること、禁忌(狭隅角緑内障、過敏症)、緑内障が疑われる患者では治療開始前にゴニオスコープ検査・眼圧測定を検討すべきこと、過量・中毒時の抗コリン性症状(散瞳・皮膚乾燥・顔面潮紅・頻脈・不整脈・せん妄・幻覚・妄想)を確認した閲覧 2026-08-11