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Disease Atlas · 神経 · 疾患

パーキンソン病

Parkinson disease

別名
Parkinson's diseasePD
臓器系
神経
科目
NeurologyPathologyMedical Biochemistry
トピック
神経内科 G1-28:パーキンソン病の診断神経内科 G3-10:パーキンソン症候群を呈する疾患神経内科 G3-11:パーキンソン病の治療病理学 C/107:神経変性疾患・プリオン病生化学 11/2:ドパミン神経伝達とパーキンソン病
上位概念
α-シヌクレイノパチー
鑑別疾患
アルツハイマー病Wilson病血管性・レビー小体型・前頭側頭型認知症など非アルツハイマー型認知症進行性核上性麻痺正常圧水頭症多系統萎縮症大脳皮質基底核変性症本態性振戦
合併症
悪性症候群慢性巨大結腸症
続発疾患
慢性偽性腸閉塞
関連疾患
Meige症候群ハンチントン病むずむず脚症候群純粋自律神経不全症
治療薬
レボドパカルビドパレボドパ+カルビドパ配合剤ベンセラジドアマンタジンセレギリンプラミペキソールロピニロールレボドパ+カルビドパ+エンタカポンロチゴチンビペリデントリヘキシフェニジルゾニサミドイストラデフィリンサフィナミドアポモルヒネ
症状
動作緩慢丸薬丸め様振戦筋強剛低血圧嚥下障害日中傾眠倦怠感幻視振戦不安不眠便秘疼痛嗅覚障害REM睡眠行動異常症転倒流涎ウェアリングオフ現象ジスキネジア眼瞼開放失行衝動制御障害
検査値
温熱発汗試験
画像所見
ドパミントランスポーターSPECTMIBGシンチグラフィ
スコア
MDS-UPDRSHoehn-Yahr重症度分類
組織像
パーキンソン病(病理)パーキンソン病(Braak病期分類とαシヌクレイノパチー)
原因となる疾患
Gaucher病
適応薬
アポモルヒネイストラデフィリンオピカポンカベルゴリンサフィナミドセレギリンゾニサミドトリヘキシフェニジルドロキシドパプラミペキソールペルゴリドミドドリンロチゴチン
禁忌薬
アミスルプリドクロルプロマジンシナリジンズクロペンチキソールセビメリントリメタジジンハロペリドールピロカルピンフルナリジンフルペンチキソールプロクロルペラジンベタネコールメトクロプラミドリスペリドン

🧠 全体像:パーキンソン病は、ドパミン神経の進行性変性によって、を中心とする運動症状と多彩な非運動症状を生じる。診断は単一検査ではなく、を確認してから支持所見・・をに評価する。

定義

パーキンソン病は、のドパミン作動性神経細胞が失われ、線条体ドパミンが不足する進行性である。

というを呈する疾患の一つであり、薬剤性、血管性、、、などと区別する。

病態生理と病理

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='substantia nigra pars compacta'>黒質緻密部</span>ドパミン神経の変性"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nigrostriatal pathway'>黒質線条体路</span>のドパミン低下"]
    B --> C["大脳基底核回路の出力異常"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bradykinesia'>動作緩慢</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rigidity'>固縮</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resting tremor'>安静時振戦</span>"]
    A --> E["非ドパミン系にも病変が進展"]
    E --> F["自律神経・睡眠・気分・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cognitive symptoms'>認知症状</span>"]

病理学的には黒質・のと神経細胞喪失を認め、残存神経細胞にをとするがみられる。ただし臨床診断と病理学的確定は区別する。

多くは散発性だが家族性もある。加齢、、ミトコンドリア機能、、環境曝露など複数因子が関与する。

症状

運動症状

所見 特徴
反復運動で速度低下に加えて振幅または速度がする中核所見
安静時振戦 片側から始まることが多い
または
、すり足、減少、、方向転換困難
その他 、、、姿勢、後期のと転倒

発症時の左右差と緩徐進行が典型である。は重要だが、現行基準でを定義する中核所見(+または)には含まれない1。

非運動症状

💡 非運動症状は「ドパミンだけでは説明できない」ことの臨床的な現れである。 病理はの蓄積として黒質以外——・・・末梢自律神経——にも及ぶため、・便秘・のように運動症状の何年も前から出る症状がある。ここがという括りで学ぶ意味であり、ドパミン補充で運動症状が良くなっても非運動症状はそのまま残ることの理由でもある。

⚠️ 上の状の数値はレセプト病名を用いた観察研究であって、因果を示すものではない。 原著自身が診断の確からしさを検証できない点を限界に挙げており、受診行動の差(PD で医療機関にかかる回数が多ければ併存病名も付きやすい)という残余も残る。「があればパーキンソン病を疑う」という読み方はできない。

⚠️ 便秘を「よくある訴え」で終わらせない

便秘はパーキンソン病でもっとも頻度の高い自律神経症状である。ドイツ神経学会の診療ガイドラインは、その成立をの要因と非の要因の両方——可動性の低下、腹筋の緊張低下、繊維の乏しい食事、水分摂取の不足——で決まるものとし、これらはいずれも消化管の延長に寄与し、ときにに至ると述べている3。⭐ したがって受け皿は薬だけではない。 を延ばしている非の要因は、そのまま介入できる項目でもある。

⚠️ 便秘を悪化させる薬が、パーキンソン病では二重に効く。 同ガイドラインは、とくにに加え、オピオイド・・カルシウム含有・・・・利尿薬も便秘を悪化させうると挙げている3。💡 排便時にが弛緩しない、あるいは不随意に収縮するanismusは、まれに「」を起こす3——の問題と出口の問題は別なので、下剤を増やしても改善しない便秘ではこちらを疑う。

⚠️ 進行した便秘は慢性症というな帰結を持つ。 慢性症は塞栓・・性穿孔の入口になるので、腹部膨満の増悪や腹痛の性状変化は急性合併症への移行を疑う契機にする(→慢性症)。

診断

パーキンソニズムの確認

まずを確認し、またはの少なくとも一方を伴えばとする。

その後、(国際パーキンソン病・運動障害学会)の2015年臨床診断基準1に沿って支持基準、、を評価する。

判定要素 代表例
支持所見(4項目) ①への明瞭かつ劇的な反応(初回治療で正常または正常に近い機能まで戻ったこと。には治療変更を伴うUPDRS III運動スコアの30%超の改善、には信頼できる患者・による明確な変化の記録のいずれかで判定し、初回反応の記録が無いときは、増量での明瞭な改善/減量での明瞭な悪化、またはなを含む明確なon-off変動で代替判定する)、②誘発性、③四肢の(過去または現在の診察で記録されたもの)、④またはによるのいずれかを認めること1
除外 明瞭な、下方向の、正常な、原因薬との明確な一致など
(10項目) 発症5年以内にの常用を要するまで進む、発症5年以内の重度の(重度の・・嚥下障害)、発症5年以内の重度の、発症3年以内にによる反復転倒(年1回超)、発症10年以内の不釣り合いな頸または手足の、両側対称性発症など1

2つの確実性レベル

基準は「あり/なし」ではなく、支持所見とを数えて2段階の確実性に振り分ける1。

レベル 条件
臨床的確実 が無く、支持所見が2つ以上あり、がゼロ。特異度を優先し感度を犠牲にする
臨床的ほぼ確実 が無く、があっても支持所見でされている——が1つなら支持所見が1つ以上、2つなら支持所見が2つ以上必要で、が3つ以上あればこのレベルにも当てはまらない。感度と特異度の釣り合いを取る

⚠️ 支持所見は「4つの枠」で数える。 ①の代替判定(増量での改善・減量での悪化・明確なon-off変動)はどれも①の中にあり、別々に2つとは数えない。④はとのどちらか一方で満たされる項目なので、両方陽性でも1つと数える。後述の病理確認レビューは集計の都合でこれを6行に分解しているが、数える単位は原著の4項目である。分解したまま「2つ以上」を当てはめると、支持所見が実質1つの患者を臨床的確実に繰り上げてしまう。

💡 支持所見に挙がっている補助検査はとの2つだけである。 「特異度の高い検査が陽性なら支持所見に数えてよい」という一般規則が置かれているわけではないので、DaT-SPECTや経頭蓋超音波の所見を支持所見の数に加えない。DaT-は支持所見の側ではなく、正常であることがという形で基準に入っている1。

⚠️ とを同じものとして扱わない。 は1つでも該当すればパーキンソン病と診断しないが、は支持所見でできる。の規則を落とすと「早期転倒があるからパーキンソン病ではない」という読み方になり、逆にの上限(は2つまで)を落とすとを取り込む方向へずれる。

⭐ 数える所見の重みは同じではない。 病理確認例を集めた2025年のスコーピングレビュー(1988〜2024年の28文献)では、への明瞭な反応が病理確認パーキンソン病の84.1%(範囲69〜100、n=917)にみられたのに対しでは35.9%(16〜54、n=293)・では15%(7〜23、n=63)、四肢のはパーキンソン病68%(43〜91、n=675)に対し39%(n=39)・28%(26〜30、n=256)・22%(7〜37、n=45)で、この2項目が最も鑑別に効いた。一方、支持所見に挙がるについては病理確認研究のデータがまだ無い4。

⚠️ これらは研究ごとの割合を平均した値で、範囲が広い。 の43〜91%という開きが示すとおり、研究によって所見の記載の仕方が揃っていない(同レビューも、安静時と明記せず「振戦」とだけ報告した研究を集計から外したと述べている)。の39%は1研究・39例だけの値である4。個々の患者の確率としてそのまま使える数字ではなく、項目どうしの重みの差を掴むための目安として読む。

💡 除外・の側にも例外がある。 同じレビューでは、麻痺・を要するまでの急速な・両側性症状が、病理で確認されたパーキンソン病でも5%を超えて報告されている4。ただしレビュー自身が、麻痺については多くの研究が方向(下方向か否か)を記載していないことが一因でありうると注記している。基準は確率を整えるためのであって、単独の所見で診断を確定も否定もしない。

flowchart TD
    A["振戦・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rigidity'>固縮</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bradykinesia'>動作緩慢</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gait disturbance'>歩行障害</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bradykinesia'>動作緩慢</span>と反復運動の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>を確認"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resting tremor'>安静時振戦</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rigidity (muscle rigidity)'>筋強剛</span>を確認"]
    C --> D["薬剤・毒物・血管障害・水頭症を検索"]
    D --> E["支持所見・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exclusion criterion'>除外基準</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='warning sign (red flag)'>警告所見</span>を評価"]
    E --> F["パーキンソン病または他の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parkinsonism'>パーキンソニズム</span>"]
    F --> G["経過中も診断を反復して見直す"]

検査の位置づけ

診断の中心は病歴とである。・は、腫瘍、など構造性原因の除外に用いる。

検査 何を見るか 位置づけと限界
DaT-SPECT のトランスポーター密度 ・薬剤性・血管性との鑑別に有用。ただしパーキンソン病と・は単独で区別できない。正常であることは基準のに当たる
のの(心縦隔比の低下) 基準の支持所見の1つ。ただし病理確認例での検証データはまだ無い4
など 発汗・血圧応答の分布と程度 の広がりを評価する補助。早期から広範・重度ならを疑う方向へ働く
構造性原因との所見 ・の除外に加え、萎縮による()などを拾う

短期の試験だけで確定診断しない。

の増幅法(SAA)など、臨床像ではなくに基づいて病態を定義しようとする研究上の枠組みも提案されているが、感度・特異度の検証が続いている段階で、2025年時点では利用がおおむね研究に限られる4。日常診療の入口は依然として臨床診断である。

鑑別診断

疾患・病態 鑑別の手掛かり
D2遮断薬、、バルプロ酸など。対称性が多いが例外あり。原因薬中止で数週〜数か月かけて回復する可逆的な病態で、パーキンソン病そのものとは区別する
血管性 下半身優位の、状経過、、血管病変。ただし「」という概念自体に議論がある
早期・重度の、排尿・、、
早期転倒、軸性、低下・麻痺
(背景病理の一つが) 著明な左右差、、、
、具体的。認知症が運動症状の前または1年以内
、、と
若年発症、肝障害、、精神症状
姿勢時・動作時振戦が主体で安静時には目立たない。左右差が乏しく、・を伴わない

治療

治療は症状と生活機能を改善するが、現在の標準治療はの進行を止める根治療法ではない。

薬物療法

薬剤群 主な役割 重要な注意
+末梢性阻害薬(配合剤の、または) 最も強力な運動症状改善 悪心、、、
(、、のなど) 初期または追加療法、オフ時救済 傾眠、、浮腫、
のうち・ が使えないときに限った二次選択 ・線維症。投与開始前と投与中の、1日最大3 mgが条件になる(下記)
のうち だが上の2剤とは上の扱いが分かれる 弁の線維症リスクが増えるかを判定する根拠は足りないとされ、二次選択への限定も投与中の定期的な心エコーも課されていない。高用量・長期使用での線維症の、1日30 mgの上限、弁膜病変のある患者への禁忌はある(下記)
阻害薬(など) 軽症初期または追加療法 (・・・など)併用でのリスク、他の阻害薬との併用は禁忌。どこまでが「禁忌」かは剤と国で違うので、処方時は当該剤の添付文書を開く(→下記「国内で承認されている補助薬」のサフィナミドの項)
阻害薬(配合剤など) を延長 下痢、など
主に 、混乱、、腎機能で調整
(、など) 若年者の難治性振戦に限定 、尿閉、便秘、
国内で承認された補助薬(、イストラデフィリン、サフィナミド) 併用下での短縮 下記「国内で承認されている補助薬」を参照

⚠️ (・買い物・・)は本人からは申告されにくい。 でとくに問題になるので、家族も含めて能動的に聞く。・のどちらでも起こる。

運動症状が生活の質へ影響する場合、を不必要に遅らせない。早期パーキンソン病を対象としたLEAP試験(低用量の/300/75 mg/日を80週間続ける早期開始群と、40週の後に同じ用量を40週間投与する遅延開始群の比較)の5年追跡では、平方根変換した総UPDRSスコアに群間差はなく(推定差0.24、標準誤差0.13、P=0.07)、5年時点のは早期開始群160例中46例・遅延開始群161例中62例(P=0.06)、の頻度と換算1日投与量にも有意差がなかった5。⭐ 早期の誘発を懸念して開始を先延ばしする根拠は乏しい。 ただしこの試験が比べたのは「40週の差」と「低用量」であって、生涯にわたるの大小を比べたものではない。薬剤の選択は年齢、認知・精神症状、転倒、生活目標、を踏まえて個別化する。

⚠️ カベルゴリン・ペルゴリドは「使えるが二次選択」である(ブロモクリプチンは別扱い)

はかかで扱いが分かれる。の・は、ドパミン受容体とは別系統のを強く刺激し、心臓弁のの増殖からの線維化・逆流——すなわち——を起こす。(EMA)は2008年に5剤を対象とするクラス審査を行い、5剤のうちとがをもっとも強く刺激すること、両剤の添付文書には弁膜の病変がある患者への禁忌が既に置かれていること、パーキンソン病では他の治療を受けたことがあるか受けられない患者にのみ使うべきであることを確認したうえで、①投与開始前と投与中の心エコーによる監視の、②1日最大3 mgへの用量制限、③心線維症を very common(10人に1人超)の副作用として記載すること、を勧告した6。

💡 「だから同じ」ではない。同じ審査がを別扱いにしている。 CHMPは審査対象の5剤(、、ジヒドロエルゴクリプチン、リスリド、)について「線維症のリスクは5剤すべてで同じではないようだ」と明言したうえで、・ジヒドロエルゴクリプチン・リスリドには逐語で「心臓弁の線維症のリスクが増えるかを判定するだけの十分な根拠が無い(there is not enough evidence to determine whether there is an increased risk of fibrosis of the heart valves)」とした。したがって上の①投与中の定期的な心エコー監視、②1日最大3 mg、③心線維症を very common と記載、そしてパーキンソン病での二次選択への限定は、いずれもとの2剤に対する勧告であってには掛かっていない。に勧告されたのは、高用量・長期使用での線維症の、1日30 mgへの用量制限、弁膜病変のある患者への禁忌の追加である(開始前に心臓に線維症が無いことを確かめる点は5剤に共通して求められている)6。

⭐ この線引きは、審査が各国の添付文書へ書かせた文言そのものを見ると一目でわかる。 同じ審査の附属書IIIは「と」用と「・ジヒドロエルゴクリプチン・リスリド」用の2つの別の文書として発行されており、の頻度区分が正反対に割り当てられている。

添付文書の項 ・7 8
4.2 1日最大用量 3 mg 30 mg
4.8 弁膜症の頻度区分 very common(10人に1人超) very rare(1万人に1人未満)
投与中の心エコー 開始後3〜6か月以内に1回目、以降少なくとも6〜12か月ごと(must) 定期実施の規定は無く、必要なときに行う
パーキンソン病での二次選択への限定 あり なし

💡 very common と very rare は同じクラスの薬に付く区分ではない。 「だから弁膜症に注意」と一括りにすると、には過剰な監視を課し、・では「まれな副作用」と読み違えるという、両方向に誤った運用になる。⚠️ なお禁忌の文言は3剤で微妙に違う——とは逐語 “For long-term treatment: Evidence of cardiac valvulopathy as determined by pre-treatment echocardiography” と長期投与に限定されるが、だけはこの限定が無い(日本の電子添文でペルマックスの禁忌に期間の限定が付いていないのと整合する)78。

⭐ この「二次選択」という線引きは、文書の側に書かれている。 日本の電子添文は、(カバサール)も(ペルマックス)も〈パーキンソン病〉の効能又は効果に関連する注意で逐語「非の治療効果が不十分又はに問題があると考えられる患者のみに投与すること」と限定する910。スペインののSmPCも、4.1の適応そのものを「誘導体に反応しない、またはできない患者における」と書いている11。💡 つまり上の表の3剤と・は同じ段に並ばない——を選ぶ場面でまず出てくるのはで、この2剤はそれが効かない・使えないときの選択肢である。⚠️ ただしこの「二次選択」の限定はというクラスに掛かっているのではなく、この2剤に掛かっている(には上記のとおり掛かっていない)。

⚠️ ・を使うなら心エコーが条件になる。 日本の電子添文は両剤とも長期投与について、投与開始前に等の身体所見とで潜在する弁膜症の有無を確認し、投与開始後3〜6ヵ月以内、以降は少なくとも6〜12ヵ月ごとにを行うよう求める。禁忌は「により、心臓弁尖肥厚、心臓弁可動制限及びこれらに伴う狭窄等の心臓弁膜の病変が確認された患者及びその既往のある患者」である910。の各国での流通状況は国ごとに違うので、剤ごとのノート(→・)で確認する。

国内で承認されている補助薬

日本では、を使ってもが残る段階で追加する補助薬として次の3剤が使える。日本の処方を読むときに必要になるので、名前と位置づけを分けて覚える。

薬剤 機序 位置づけ
(トレリーフ) 併用下で線条体の細胞外ドパミンを上げる。阻害はB型に12 効能・効果は「含有製剤に他のを使用しても十分に効果が得られなかった場合」という限定つき。含有製剤と併用し1日1回25 mg、の改善には1日1回50 mg12
イストラデフィリン(ノウリアスト) アデノシンA2A受容体拮抗薬。非ドパミン系の機序で大脳基底核の出力を調整する 2013年5月から国内で使用可能。同ガイドラインが引用するでは、1日平均オフ時間が20 mg/日で1.31時間(p=0.013)、40 mg/日で1.58時間(p<0.001)短縮したと報告されている13。⚠️ この2つの数字を並べて「40 mgのほうが効く」と読まない——電子添文7.1は逐語で「40mgでは、20mgを上回るオフ時間の短縮効果は認められていない」と述べ、40 mgへの増量はオン時のの改善を期待する場合の選択と位置づけている14
サフィナミド(エクフィナ) 選択的かつ可逆的な阻害で内因性・由来のドパミンの脳内濃度を高める。これが主要な機序だが、阻害を介した抑制という非ドパミン作動性の作用も併せ持つ15 効能・効果は「含有製剤で治療中のパーキンソン病におけるwearing off現象の改善」で、含有製剤の投与量または投与回数を調節してもwearing offが認められる患者に使う。含有製剤と併用し、通常は1日1回50 mg、症状に応じて1日1回100 mgまで15

日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」は、を呈する患者への追加とイストラデフィリン追加をどちらも2C(弱い推奨/エビデンスの質「低」)として提案している13。

⚠️ 「国内で使える」と「国際的に評価が定まっている」は別である。 同ガイドラインはこの2剤の推奨に同じ付帯事項を付け、本邦のみでの承認薬剤であるため海外での評価は定まっていないと注意を促している13。

⭐ ただしこの付帯事項は2018年時点のもので、イストラデフィリンについてはその後に各国の判断が出ている。 米国は2019年8月27日にを併用下のを伴うパーキンソン病に承認した(過去20年でが承認した初の非ドパミン系パーキンソン病治療薬である)16。一方、(EMA)は同じ薬(Nouryant)の販売承認を拒否し、2021年11月11日の再審査でも拒否を維持して2022年1月6日付で最終決定した——8件の主要試験(3,245例)のうちオフ時間の短縮を示したのは4件にとどまり、増量しても効果は増大せず、圏の患者を含む2試験(とくに最大限かつ最適な治療を受けている患者を対象とした最新の試験)では効果がみられなかったことを理由に、がリスクを上回らないと判断している17。💡 「海外での評価が定まっていない」は、その後「定まった」のではなく、地域ごとに逆向きに定まった。 上の位置づけは国ごとに別の当局文書が決めるので、1国の判断を他国へ持ち込まない。

💡 は同じ成分が別の販売名・別の用量帯でとしても流通している。 てんかんでは1日100〜600 mg(エクセグラン)、パーキンソン病では1日25〜50 mg(トレリーフ)で、一桁違う。処方を読むときは販売名と用量の組み合わせで適応を判定する(→)。

なおサフィナミドは2018年のガイドラインには取り上げられていない(第I編のMAOB阻害薬の章にも、を扱う第II編のCQ2にも一度も現れない)13。ガイドラインに載っていないことは「使わない」という意味ではなく、刊行後に加わった薬であることが多い。

⚠️ サフィナミドは、日本の電子添文では抗うつ薬との併用が「注意」ではなく禁忌である。 禁忌に挙がるのは、①他の(、)投与中、②・・含有製剤投与中、③三環系・抗うつ剤、、、、、、中枢神経刺激剤などを投与中、④重度の(分類C)、⑤本剤成分への過敏症、⑥妊婦または妊娠している可能性のある女性——の6項目である。このうち①〜③はやのおそれが理由で、切り替えには原則14日間(含有製剤からは2〜3日、からは7日など薬剤ごとに規定)のが要る15。💡 抑うつはパーキンソン病の高頻度の非運動症状なので、この禁忌は机上の話ではなくに当たる。中等度の(分類B)では1日50 mgを超えない15。

進行期治療

内服最適化後もオフ時間、、薬剤反応性振戦が生活を妨げる場合、、、に加え、米国で2024年10月に承認された皮下の・(Vyalev。適応はパーキンソン病の成人の)18などのデバイスを専門チームで評価する。

は反応性症状とを改善するが、を止めず、薬剤非反応性のや高度認知症には効果が限られる。

非薬物療法

  • 定期的運動、、歩行・バランス訓練。
  • による日常生活環境の調整。
  • による、構音、嚥下の評価。
  • 便秘、、睡眠、気分、認知、を個別に治療する。
  • 転倒、運転、服薬時刻、支援を継続的に見直す。

経過と合併症

進行はが大きいが、運動症状はへの反応が保たれる時期を経て、やがて薬効の変動(、)と、が効かない症状(、、認知・自律神経症状)が前景に出る。この全体の進み方を、左右差・の有無・生活の自立度という大づかみな指標で5段階に区分したのがHoehn-Yahrであり、外来で経過を共有する共通言語として広く使われる。

合併症 押さえどころ
認知症 経過が長いほど頻度が上がる。運動症状が確立して1年を超えてから認知症が生じれば、認知症が運動症状に先行するか同時、または1年以内ならと呼び分ける。この1年ルールは臨床上の区別で、病理は連続している
転倒と骨折 ・・が重なる。早期からのはむしろを疑う所見である
嚥下障害と誤嚥 の主要な。との調整を早めに入れる
精神症状 ・。まず脱水・感染・薬剤(、、)を見直す
便秘と慢性症 最も頻度の高い自律神経症状。と非(可動性低下・腹・低繊維食・水分不足)の双方がを延ばし、ときにに至る3。塞栓・・穿孔が急性合併症

⚠️ 薬剤で悪化させない

まとめ

  • 診断の入口は+またはである。
  • 非対称性、緩徐進行、反応は支持的だが、単独で確定しない。
  • 基準は支持所見とを数えて確実性を決める。支持所見は4項目(④はかのどちらか一方で1つ)、は10項目で、うち7項目が発症からの年数で限定される(吸気性の・他に説明のつかない・左右対称性発症の3項目には年数の限定が無い)。除外は1つで否定、は支持所見でできる(最大2つまで)。
  • 早期転倒、麻痺、重度、急速進行は非定型疾患を疑う。ただし病理確認例でもこれらが5%を超えて報告されており、単独の所見で否定しない。
  • 治療はを中心に、非運動症状、リハビリ、治療を組み合わせる。運動症状が生活へ影響するなら開始を先延ばししない。
  • はとを同じ段に置かない。・は5-HT2B作動によるのため、日本の電子添文もスペインのSmPCも非が無効またはできない患者に限るという限定を付けており、EMAの2008年のクラス審査も同じ位置づけと、投与前・投与中の心エコー監視・1日最大3 mgを勧告している910116。⚠️ この限定は「だから」ではなくこの2剤に掛かっている——同じEMA審査はについて弁の線維症リスクが増えるかを判定する根拠が足りないとし、二次選択への限定も投与中の定期的な心エコーも課していない(勧告は高用量・長期使用の線維症の、1日30 mgの上限、弁膜病変のある患者への禁忌)6。
  • 日本にはに追加する補助薬として・イストラデフィリン・サフィナミドがあり、前2剤は2018年ガイドラインで2C(弱い推奨)である。同ガイドラインが付けた「本邦のみでの承認薬剤」という但し書きは2018年時点のもので、イストラデフィリンはその後米国が承認・が拒否と地域で逆向きに判断が分かれた。上の位置づけは国ごとの当局文書で確かめる。
  • ⚠️ サフィナミドは日本の電子添文で三環系・・・などとの併用が禁忌(注意ではない)であり、切り替えには原則14日間のが要る。抑うつはパーキンソン病の高頻度の非運動症状なのでに当たる。
  • ⚠️ D2遮断薬(・抗精神病薬)を避け、を急に中止しない(と同じ病態を起こす)。

出典

  1. 1.MDS clinical diagnostic criteria for Parkinson's disease(International Parkinson and Movement Disorder Society (MDS)・2015)動作緩慢+安静時振戦または筋強剛でパーキンソニズムを確認後、支持基準・絶対的除外基準・警告所見で判定する現行の臨床診断基準の枠組みと各基準の具体例。⚠️ 原著(Wiley)は本実行では取得できなかった(Unpaywall は oa_status closed・has_repository_copy false を返し、Europe PMC にも収載が無い)。支持所見・絶対的除外基準・警告所見の逐語は、Postuma らの表を出典表示つきで逐語転載している Front Neurol 2018(PMC5877503)の Table 1 で照合した。そこでの支持所見は4項目で、④は The presence of either olfactory loss or cardiac sympathetic denervation on MIBG scintigraphy であり、「特異度80%超の補助検査が1つ以上陽性」のような一般規則の形はとっていない。警告所見は10項目で、うち7項目が発症からの年数または罹病期間(3年・5年・10年)で限定されている。⚠️ 残る3項目——吸気性の呼吸障害(Inspiratory respiratory dysfunction)、他に説明のつかない錐体路徴候(Otherwise-unexplained pyramidal tract signs)、左右対称性のパーキンソニズム(Bilateral symmetric parkinsonism)——には年数の限定が無い。確実性の規則は、臨床的確実が絶対的除外基準なし・支持所見2つ以上・警告所見ゼロ、臨床的ほぼ確実が絶対的除外基準なしで警告所見1つなら支持所見1つ以上・警告所見2つなら支持所見2つ以上・警告所見3つ以上は不可である閲覧 2026-08-02
  2. 2.Widening the Spectrum of Risk Factors, Comorbidities, and Prodromal Features of Parkinson Disease(JAMA Neurology・2023)ドイツの法定健康保険の外来レセプトを用いた症例対照研究(2011-2020年、新規PD 138,345例と年齢・性・地域・初回受診年で1:2に対応させた対照276,690例、平均追跡6.0年)。PD診断に先行する併存病名として脂漏性皮膚炎のオッズ比1.30(95%CI 1.15-1.46)、乾癬1.13(1.05-1.21)、皮膚糸状菌症1.25(1.19-1.32)を報告している。⚠️ レセプト病名に基づく観察研究であり、原著自身が診断の確からしさを検証できない点を限界として挙げている(因果を示すものではない)閲覧 2026-09-05
  3. 3.Diagnosis and treatment of autonomic failure, pain and sleep disturbances in Parkinson's disease: guideline Parkinson's disease of the German Society of Neurology(Journal of Neurology(ドイツ神経学会 Deutsche Gesellschaft für Neurologie。Fanciulli A, Sixel-Döring F, Buhmann C, et al.)・2025)Europe PMCのfullTextXML(PMC11698777、J Neurol 272巻、CC BY)で全文を取得して確認した。本稿はドイツ神経学会のパーキンソン病ガイドライン2023年版(S2k、最終更新2023年10月、2028年10月24日まで有効)の非運動症状の章を英語に要約した版である。便秘がパーキンソン病でもっとも頻度の高い自律神経症状であり、神経原性の要因と非神経原性の要因(可動性の低下、腹筋の緊張低下、繊維の乏しい食事、水分摂取の不足)の両方によって決まり、これらがいずれも消化管通過時間の延長に寄与して「ときに巨大結腸」に至ること(原文は sometimes megacolon)、抗パーキンソン病薬とくに抗コリン薬に加えオピオイド・三環系抗うつ薬・カルシウム含有制酸薬・降圧薬・鎮痙薬・交感神経刺激薬・利尿薬も便秘を悪化させうること、排便時の肛門括約筋の弛緩不全または不随意収縮と定義されるanismusがまれに出口型便秘を起こしうることを確認した。あわせて、パーキンソン病の神経原性起立性低血圧が圧受容器反射の遠心路をなす節後交感神経の変性によって生じる一方で感染・脱水・心疾患などの非神経原性要因が顕在化・悪化させうること、神経原性起立性低血圧の約50%が仰臥位で高血圧を示すことを確認した閲覧 2026-09-08
  4. 4.Revisiting the 2015 MDS diagnostic criteria for Parkinson disease: insights from autopsy-confirmed cases(npj Parkinson's Disease(Fox SHら)・2025)2015年MDS基準の運用規則(臨床的確実例=絶対的除外基準なし・支持所見2つ以上・警告所見ゼロ、臨床的ほぼ確実例=警告所見は最大2つまでで、その数が支持所見の数を超えないこと)、および本レビューが集計の都合で6行に分解した支持所見(ドパミン作動性治療への明瞭かつ劇的な反応、増量での明瞭な改善または減量での明瞭な悪化あるいは運動変動、レボドパ誘発性ジスキネジア、四肢の安静時振戦、嗅覚低下、MIBGによる心臓交感神経脱神経)を確認した。⚠️ この6行は本レビューの集計単位であって、原著の支持所見は4項目である(①と②は原著では同一項目の本条件と代替判定、⑤と⑥は原著では「嗅覚低下または心臓交感神経脱神経のいずれかを認めること」という1つの選言項目)。1988〜2024年の病理確認症例を扱う28文献のスコーピングレビューで、ドパミン作動性治療への明瞭な反応は病理確認パーキンソン病の84.1%(範囲69〜100、n=917)に対し多系統萎縮症35.9%・進行性核上性麻痺15%、四肢の安静時振戦は68%(範囲43〜91、n=675)に対しレビー小体型認知症39%(n=39、1研究のみ)・多系統萎縮症28%(26〜30、n=256)・進行性核上性麻痺22%(7〜37、n=45)で、この2項目が最も有用であること、心臓交感神経脱神経(MIBG)はいずれの疾患群でも病理確認研究のデータが無い(ND)こと、逆に核上性注視麻痺・車椅子を要するまでの急速な歩行障害・両側性症状は病理確認パーキンソン病でも5%を超えて報告されたことを確認した。またα-シヌクレインのシード増幅法(SAA)を含む生物学的マーカーは感度・特異度の検証が必要な段階で、執筆時点では利用がおおむね研究に限られると本文が述べていることを確認した。⚠️ 本レビューは安静時振戦の割合を表と本文で食い違わせている——表(Table 1)は 68 (43–91) n = 675、本文の散文は Rest tremor was noted in 71% of 675 PD cases である。ノートは表の値を採った。レボドパ誘発性ジスキネジアも表61.7%・本文61.8%で1桁目がずれる。本レビューは全文をEurope PMCのfullTextXML(PMC12748991、CC BY)で取得して確認した閲覧 2026-09-05
  5. 5.Long-Term Follow-Up of the LEAP Study: Early Versus Delayed Levodopa in Early Parkinson's Disease(Movement Disorders (Frequin et al.)・2024)早期パーキンソン病を対象に、レボドパ/カルビドパ300/75 mg/日を80週間続ける早期開始群と、40週間のプラセボ後に同じ用量を40週間投与する遅延開始群へ無作為に割り付けた試験の5年追跡である。5年時点の平方根変換総UPDRSスコアに群間差はなく(推定差0.24、標準誤差0.13、P=0.07)、ジスキネジアは早期開始群160例中46例・遅延開始群161例中62例(P=0.06)、ウェアリングオフの頻度とレボドパ換算1日投与量にも有意差はなかったことを結果の節で確認した閲覧 2026-09-05
  6. 6.Questions and answers on the review of ergot-derived dopamine agonists(European Medicines Agency (EMEA) / Committee for Medicinal Products for Human Use (CHMP)・2008)PDF全文(文書番号 EMEA/CHMP/319054/2008、2008年6月26日付)を取得して確認した。麦角系ドパミン作動薬5剤(bromocriptine、cabergoline、dihydroergocryptine、lisuride、pergolide)を対象とするArticle 31審査で、CHMPは販売承認は維持したうえで線維症のリスクを減らすための使用上の制限を導入すべきだと結論し、逐語で「線維症(心臓弁の線維症を含む)のリスクは5剤すべてで同じではないようだ」と述べている。カベルゴリンとペルゴリドについては、心臓弁の線維化のリスクが確立していること、両剤の添付文書には弁膜の病変がある患者への禁忌が既に置かれていること、パーキンソン病では他の治療を受けたことがあるか受けられない患者にのみ使うべきであることを確認したうえで、投与開始前と投与中の心エコーによる監視の警告、1日最大3 mgへの用量制限、cardiac fibrosis を very common(10人に1人超)の副作用として記載することを勧告した。ブロモクリプチン・ジヒドロエルゴクリプチン・リスリドについては逐語 "there is not enough evidence to determine whether there is an increased risk of fibrosis of the heart valves" としつつ、高用量・長期使用での線維症の警告を勧告し、ブロモクリプチンは1日30 mgに制限、ブロモクリプチンとジヒドロエルゴクリプチンには弁膜病変のある患者への禁忌の追加を勧告した(リスリドには同様の禁忌を勧告するだけの情報が無かった)。すなわち二次選択への限定・投与中の定期的な心エコー監視・1日3 mg・very common の記載はいずれもカベルゴリンとペルゴリドに対する勧告であってブロモクリプチンには掛かっていない。ただし処方者向けの勧告の節では、5剤に共通して心臓・肺・腹部の線維症の既往がある患者には使わないこと、投与開始前に心臓に線維症が無いことを確認することを求めている。機序としては5-HT2B受容体の活性化を挙げ、5剤のうちカベルゴリンとペルゴリドがこの受容体をもっとも強く刺激すると述べている閲覧 2026-09-17
  7. 7.Cabergoline and pergolide Article-31 referral - Annex III (Amendments to the summaries of product characteristics and package leaflets)(European Medicines Agency / Committee for Medicinal Products for Human Use (CHMP)・2008)PDF全文を取得して確認した。2008年のArticle 31審査が各国の添付文書へ反映させる文言そのものを、カベルゴリン製剤とペルゴリド製剤について定めた附属書である(同じ審査でもブロモクリプチン等とは別の文書として発行されている)。両剤とも 4.2 で1日最大3 mgへの制限、4.4 で投与開始前の心エコーを含む心血管系評価と、逐語 "Following treatment initiation, the first echocardiogram must occur within 3-6 months, thereafter, the frequency of echocardiographic monitoring should be determined by appropriate individual clinical assessment ... but must occur at least every 6 to 12 months"、4.8 で逐語 "Very common: cardiac valvulopathy (including regurgitation) and related disorders (pericarditis and pericardial effusion)" を定める。4.3 の禁忌の文言は2剤で違い、カベルゴリンは逐語 "For long-term treatment: Evidence of cardiac valvulopathy as determined by pre-treatment echocardiography" と長期投与に限定されるのに対し、ペルゴリドは逐語 "Evidence of cardiac valvulopathy as determined by pre-treatment echocardiography" で期間の限定が無い。ペルゴリドの 4.4 は高用量・累積曝露が危険因子である一方、1日0.5 mg未満でも弁膜症と線維化反応の報告があると述べる閲覧 2026-09-17
  8. 8.Bromocriptine, dihydroergocryptine and lisuride Article-31 referral - Annex III (Amendments to the summaries of product characteristics and package leaflets)(European Medicines Agency / Committee for Medicinal Products for Human Use (CHMP)・2008)PDF全文を取得して確認した。同じ2008年のArticle 31審査が、ブロモクリプチン・ジヒドロエルゴクリプチン・リスリドについて添付文書へ反映させる文言を定めた附属書で、カベルゴリン・ペルゴリドとは別の文書として発行されている。ブロモクリプチンは 4.2 で1日最大30 mgへの制限、4.3 で逐語 "For long-term treatment: Evidence of cardiac valvulopathy as determined by pre-treatment echocardiography"、4.4 で長期・高用量投与における胸膜・肺・心膜・後腹膜の線維症の警告を定める。決定的な違いは 4.8 で、逐語 "Very rare: cardiac valvulopathy (including regurgitation) and related disorders (pericarditis and pericardial effusion)" とされ、カベルゴリン・ペルゴリドに割り当てられた very common とは頻度区分が2段以上離れている。心エコーは長期投与の開始前に求められるだけで、カベルゴリン・ペルゴリドのような投与開始後3〜6か月以内・以降少なくとも6〜12か月ごとという定期実施の規定は無く(患者向け説明文書の文言は逐語 "If necessary he/she will have an echocardiogram taken")、パーキンソン病での二次選択への限定も無い。リスリドには禁忌も用量制限も課されず、線維症の監視についての一般的な警告だけが定められている閲覧 2026-09-17
  9. 9.カバサール錠0.25mg/カバサール錠1.0mg 電子添文(2023年7月改訂・第3版)(医薬品医療機器総合機構(PMDA。ファイザー株式会社)・2023)電子添文の本文を取得して確認した(冒頭の作成又は改訂年月は2023年7月改訂・第3版)。4. 効能又は効果が製剤共通でパーキンソン病を含むこと、5. 効能又は効果に関連する注意の 5.1 が〈パーキンソン病〉の見出しの下で逐語「非麦角製剤の治療効果が不十分又は忍容性に問題があると考えられる患者のみに投与すること。」と限定すること、2. 禁忌の 2.2 が「心エコー検査により、心臓弁尖肥厚、心臓弁可動制限及びこれらに伴う狭窄等の心臓弁膜の病変が確認された患者及びその既往のある患者」であること、パーキンソン病の用法が1日1回朝食後・最高1日3mgであることを確認した閲覧 2026-09-17
  10. 10.ペルマックス錠50μg/ペルマックス錠250μg 電子添文(2026年7月改訂・第2版、承継に伴う改訂)(医薬品医療機器総合機構(PMDA。大原薬品工業)・2026)電子添文の本文を取得して確認した。冒頭の作成又は改訂年月が2026年7月改訂(第2版、承継に伴う改訂)で、その前は2021年9月改訂(第1版)であること。4. 効能又は効果が「パーキンソン病」のみであること、5. 効能又は効果に関連する注意が逐語「非麦角製剤の治療効果が不十分又は忍容性に問題があると考えられる患者のみに投与すること。」であること、2. 禁忌が麦角製剤に対する過敏症の既往と「心エコー検査により、心臓弁尖肥厚、心臓弁可動制限及びこれらに伴う狭窄等の心臓弁膜の病変が確認された患者及びその既往のある患者」の2項目であること、8.1 が「非麦角製剤と比較して、本剤を含む麦角製剤投与中の心臓弁膜症、線維症の報告が多い」とすること、8.3 が本剤の長期投与について投与開始前の聴診等の身体所見の観察と心エコー検査、投与開始後3〜6ヵ月以内・以降少なくとも6〜12ヵ月ごとの心エコー検査を求めることを確認した。用法はL-dopa製剤との併用で、維持量は標準1日750〜1250μgである閲覧 2026-09-17
  11. 11.Ficha técnica Sogilen 1 mg comprimidos / Sogilen 2 mg comprimidos(Agencia Española de Medicamentos y Productos Sanitarios (AEMPS) / CIMA(Pfizer S.L.)・2022)スペインのカベルゴリン製剤(Sogilen 1 mg・2 mg、登録番号64.408/64.409)のficha técnica本文を取得して確認した(10. FECHA DE LA REVISIÓN DEL TEXTO は Octubre 2022、初回承認は2001年11月)。4.1 の適応が逐語で "Cabergolina está indicada como terapia de segunda línea en pacientes que no toleren o no respondan al tratamiento con un derivado no ergotínico, en monoterapia, o en combinación con levodopa y un inhibidor de la dopa-decarboxilasa ... para los signos y síntomas de la enfermedad de Parkinson" であり、EU加盟国にもパーキンソン病を適応とするカベルゴリン製剤が存在すること(英国Dostinexの適応はプロラクチン系と乳汁分泌抑制だけなので、適応の範囲は同じEU圏内でも製剤ごとに違う)。推奨用量が1日2〜3 mgで3 mgが上限であること。4.3 の禁忌が、長期投与について "pacientes con evidencia anatómica de valvulopatía cardiaca de cualquiera de las válvulas determinada mediante una ecocardiografía previa al tratamiento" を挙げ、麦角アルカロイドへの過敏症・肺/心膜/後腹膜の線維性疾患の既往・中等度〜重度の肝機能障害と並ぶこと。4.4 が弁膜症を累積投与量と関連づけて最低有効量での治療を求め、投与開始前に心エコーを含む心血管系の評価を全例に求めること。CIMAの製品一覧では2026-09-17時点で comerc(販売中)が true であることを確認した閲覧 2026-09-17
  12. 12.トレリーフOD錠25mg/トレリーフOD錠50mg 電子添文(2023年9月改訂・第2版、再審査結果)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)電子添文・2023)日本のゾニサミド(トレリーフ)の効能・効果が「パーキンソン病(レボドパ含有製剤に他の抗パーキンソン病薬を使用しても十分に効果が得られなかった場合)」であり、OD錠25mgのみ「レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズム(レボドパ含有製剤を使用してもパーキンソニズムが残存する場合)」も併せ持つこと、用法・用量が「レボドパ含有製剤と併用する」うえで1日1回25 mg・症状の日内変動(wearing-off現象)の改善には1日1回50 mgであること、〈パーキンソン病〉について「1日50 mg投与において、1日25 mg投与時を上回るon時の運動機能の改善効果は確認されていない」と注意書きがあることを確認した閲覧 2026-09-05
  13. 13.パーキンソン病診療ガイドライン2018(日本神経学会(監修)/「パーキンソン病診療ガイドライン」作成委員会・2018)第II編第3章CQ2で、ウェアリングオフを呈する進行期パーキンソン病患者へのゾニサミド追加とイストラデフィリン追加をいずれも「2C(弱い推奨/エビデンスの質「低」)」で提案し、両者に同じ付帯事項「本邦のみでの承認薬剤であるために、海外での評価は定まっていない点に十分注意する必要がある」を付していることを確認した。第I編第8章はゾニサミドについてL-ドパ併用下25〜50 mg/日で運動症状改善に有効・50 mgではオフ時間の短縮が期待できるとし、第I編第9章はイストラデフィリンをアデノシンA2A受容体拮抗薬として2013年5月より本邦で使用可能になったと記し、ランダム化二重盲検比較試験で1日平均オフ時間が20 mg/日で1.31時間(p=0.013)・40 mg/日で1.58時間(p<0.001)短縮したと述べている。サフィナミドは第I編第3章(MAOB阻害薬)にも第II編第3章CQ2にも一度も現れない閲覧 2026-09-05
  14. 14.ノウリアスト錠20mg 電子添文(2022年4月改訂・第1版)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2022)冒頭の作成又は改訂年月が2022年4月改訂(第1版)である電子添文の本文を取得し、7. 用法及び用量に関連する注意の 7.1 が逐語で「患者のオン時の運動機能の改善を期待する場合、40mgを1日1回経口投与できる。ただし、40mgでは、20mgを上回るオフ時間の短縮効果は認められていない。」であることを確認した。効能・効果は「レボドパ含有製剤で治療中のパーキンソン病におけるウェアリングオフ現象の改善」、用法・用量はレボドパ含有製剤と併用し通常成人に20 mgを1日1回経口投与し症状により40 mgまで増量できるというもので、7.2 は中等度の肝障害のある患者およびCYP3Aを強く阻害する薬剤を投与中の患者で1日1回20 mgを上限とする。ガイドラインが引用する試験の「20 mg/日1.31時間・40 mg/日1.58時間」という2つのオフ時間短縮を並べて40 mgが優れると読ませないために引いた。閲覧 2026-09-13
  15. 15.エクフィナ錠50mg 電子添文(2024年1月改訂・第5版)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2024)電子添文の本文を取得して確認した。4.効能又は効果が「レボドパ含有製剤で治療中のパーキンソン病におけるwearing off現象の改善」、5.効能又は効果に関連する注意が「レボドパ含有製剤の投与量又は投与回数の調節を行ってもwearing off現象が認められる患者に対して使用すること」、6.用法及び用量が「本剤は、レボドパ含有製剤と併用する。通常、成人にはサフィナミドとして50mgを1日1回経口投与する。なお、症状に応じて100mgを1日1回経口投与できる」であること。2.禁忌は6項目で、2.1 他のMAO阻害剤(セレギリン塩酸塩、ラサギリンメシル酸塩)投与中、2.2 ペチジン塩酸塩含有製剤・トラマドール塩酸塩含有製剤又はタペンタドール塩酸塩投与中、2.3 三環系抗うつ剤・四環系抗うつ剤・選択的セロトニン再取り込み阻害剤・ボルチオキセチン・セロトニン ノルアドレナリン再取り込み阻害剤・アトモキセチン・ミルタザピン・フェンフルラミン・中枢神経刺激剤などを投与中、2.4 重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)、2.5 本剤の成分に対し過敏症の既往歴、2.6 妊婦又は妊娠している可能性のある女性であること。10.1 併用禁忌の表が、切り替え時に原則14日間の間隔を置くこと(トラマドール塩酸塩含有製剤からは2〜3日間、フルボキサミンマレイン酸塩からは少なくとも7日間、ミルナシプランからは2〜3日間、デュロキセチンからは少なくとも5日間、ベンラファキシンからは少なくとも7日間)を求めていること。7.2 が中等度の肝機能障害(Child-Pugh分類B)では1日50mgを超えて投与しないと定めること。18.1 作用機序が「選択的かつ可逆的なMAO-B阻害作用を有し、内因性及びレボドパ製剤由来のドパミンの脳内濃度を高める。このMAO-B阻害作用がサフィナミドの主要な作用機序と考えられる。また、サフィナミドは非ドパミン作動性作用(電位依存性ナトリウムチャネル阻害作用を介するグルタミン酸放出抑制作用)を併せ持つ」であることを確認した閲覧 2026-09-13
  16. 16.The belated US FDA approval of the adenosine A2A receptor antagonist istradefylline for treatment of Parkinson's disease(Purinergic Signalling(Chen JF, Cunha RA)・2020)Europe PMC(PMC7367999)の抄録で逐語を確認した。2019年8月27日に米国FDAがアデノシンA2A受容体拮抗薬イストラデフィリン(Nourianz)を、オフ症状を伴うパーキンソン病に対するレボドパへの追加治療として承認したこと(原文は on August 27, 2019, the US Food and Drug Administration (FDA) approved the adenosine A2A receptor antagonist Nourianz (istradefylline) ... as an add-on treatment to levodopa in Parkinson's disease (PD) with "OFF" episodes)、および Istradefylline is the first non-dopaminergic drug approved by FDA for PD in the last two decades と述べていることを確認した。⚠️ 全文は非オープンアクセスで、確認できたのは抄録の範囲のみである閲覧 2026-09-13
  17. 17.Nouryant (istradefylline) — Refusal of the marketing authorisation(European Medicines Agency (EMA)・2022)EMAのEPARページ(Nouryant、EMEA/H/C/005308)を取得して逐語で確認した。承認状態は Refused(This medicine has been refused authorisation)で、CHMPは2021年7月22日に初回意見を採択し、2021年11月11日の再審査後も拒否の勧告を維持、販売承認の拒否(Refusal of marketing authorisation)は2022年1月6日付である。申請の根拠は、レボドパ基盤治療を受けオフ時間を経験しているパーキンソン病患者3,245例を対象とする8件の主要試験であった。拒否の理由としてEPARは、①結果が一貫せずオフ時間の短縮を示したのは8件中4件にとどまったこと(Only four out of the eight studies showed a reduction in ‘off’ time)、②用量を増やしても効果は増大しなかったこと(and the effect did not increase with an increased dose of Nouryant)、③EU圏の患者を含む2試験——とくにパーキンソン病に対して最大限かつ最適な治療を受けている患者を対象とした最新の試験——では効果が認められなかったことを挙げ、再審査でも efficacy cannot be considered established based on the available results と結論してベネフィットがリスクを上回らないと判断したことを確認した。⚠️ 原文は「用量反応関係(dose-response relationship)」という語を使っておらず、増量しても効果が増えなかったという書き方である閲覧 2026-09-14
  18. 18.NDA 216962 Approval Letter — Vyalev (foscarbidopa and foslevodopa) injection, for subcutaneous use(U.S. Food and Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research・2024)2024年10月16日付の承認書で、フォスカルビドパ・フォスレボドパ皮下注(Vyalev)が進行期パーキンソン病の成人の運動変動(motor fluctuations)の治療薬として承認されたことを確認した閲覧 2026-08-25