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Disease Atlas · 神経 · 症候群

ハーレクイン症候群

Harlequin syndrome

別名
Harlequin signハーレクイン徴候
臓器系
神経皮膚
科目
NeurologyMedical PhysiologyMacroscopic Anatomy and Embryology (Neuroanatomy)
トピック
神経内科 G1-01:瞳孔支配の障害生理学 1.10:副交感神経および交感神経の遠心性機構神経解剖学 04:自律反射
鑑別疾患
Ross症候群
治療薬
ボツリヌス毒素
症状
Horner症候群乏汗症紅潮
検査値
温熱発汗試験

🧠 全体像:は、片側顔面の(・)が障害され、患側は蒼白・無汗、は代償性に・という、正中で境界明瞭な左右差が突然出現する病態である。は主にT2〜T3の〜〜の経路で、特発性が半数以上を占める一方、・頸などの・頸部/・や腫瘍でも生じる。⚠️ 核心はとの異同——・を来すはT1由来の線維が担うため、T2〜T3に限局した典型的なではこれらを伴わないが、隣接するレベルを共有するため両者が重なる例も相応の頻度で報告されている。診断は主にによるが、特発性と決めつける前に原因(腫瘍など)を画像で除外することが実務上の要点になる。

定義と機序

顔面の・発汗性を支配する交感神経は、視床下部に始まるがC8〜T2でとシナプスし、がT1〜T3で脊髄を出てを上行し、でシナプスして顔面へ至る1。この経路のどこかが片側性に障害されると、患側の血管拡張・発汗が失われ蒼白・無汗となる一方、では代償性に・が生じる1。最も高頻度に侵されるのはT2〜T3のレベルである1。

flowchart TD
    A["視床下部由来の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='first-order neuron'>一次ニューロン</span>"] --> B["C8〜T2でシナプス"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='second-order neuron'>二次ニューロン</span>がT1〜T3で脊髄を出る"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cervical sympathetic trunk'>頸部交感神経幹</span>を上行"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='superior cervical ganglion'>上頸神経節</span>でシナプス"]
    E --> F["顔面の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasomotor activity (vasomotion)'>血管運動</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sudomotor fibers'>発汗線維</span>"]
    C -->|"T2〜T3が片側性に障害される"| G["患側:蒼白・無汗<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='unaffected side (contralateral)'>健側</span>:代償性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flushing'>紅潮</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperhidrosis'>発汗過多</span>"]
    C -->|"T1線維(瞳孔・眼瞼への経路)が同時に障害される"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Horner syndrome'>Horner症候群</span>が重なる"]

原因

分類 頻度・代表例
特発性 全体の過半数を占める12。運動・・・辛味の摂取で誘発されることがある1
医原性 、、肋間/、、切除(甲状腺腫を含む)、、12
腫瘍性・ 、の腫瘍(等)、、、脳卒中12

⚠️ Horner症候群との異同

⚠️ ・を来すの所見は、主にT1由来の(・へ向かう経路)の障害で生じる。 これに対し、典型的なはT2〜T3に限局した顔面の・の障害であるため、・を伴わないことが多い。しかし両者は隣接する脊髄レベル(C8〜T3)と同じを共有するため、単一の病変が両方を巻き込むことがある。

⭐ 実際に、を伴うの報告は稀ではない。 39例の検討では、患者の64%にのがみられ、その多くはによるものであった。13%には性のがみられ、とが重複する例も4%報告されている2。

所見 典型的な が重なる場合
患側の顔面蒼白・無汗 あり あり
通常なし あり
通常なし あり(軽度)
責任レベル T2〜T3(顔面の・) T1(・への線維)を含む

💡 「があるのにHorner徴候がない」ことを、を除外する根拠にしない。 がT1まで及んでいなければ瞳孔・眼瞼所見は出ないというだけで、より頭側・尾側に病変が広がれば重なりうる。両者を別個の疾患として覚えるより、同じ頸部交感神経路のどのレベルが侵されたかという1本の軸で理解する。

診断

⭐ 診断は主に(境界明瞭な片側性の・)による。 (TST)や()は、の分布をに裏づける補助になる1。

⚠️ 特発性と分類する前に、画像で原因を除外する。 胸部X線・頭部〜頸(胸部を含む範囲)・などで、・の腫瘍・といったを検索する12。突然の発症、疼痛の合併、進行性の経過、瞳孔・眼瞼所見の併存があれば、特発性よりを積極的に疑う。

flowchart TD
    A["正中で境界明瞭な片側性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flushing'>紅潮</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperhidrosis'>発汗過多</span><br>(対側は蒼白・無汗)"] --> B["病歴:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerve block'>神経ブロック</span>・頸部/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thoracic surgery'>胸部手術</span>の既往"]
    B --> C{"既往あり"}
    C -->|"はい"| D["医原性として説明可能か評価"]
    C -->|"いいえ"| E["胸部X線・頭頸部〜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thoracic vertebrae'>胸椎</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid ultrasonography'>甲状腺超音波</span>"]
    E --> F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='organic lesion'>器質的病変</span>があるか"}
    F -->|"あり"| G["原疾患(腫瘍・血管解離等)に応じて対応"]
    F -->|"なし"| H["特発性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='harlequin syndrome'>ハーレクイン症候群</span>と診断"]
    A --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miosis'>縮瞳</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ptosis'>眼瞼下垂</span>の有無を確認"]
    I -->|"あり"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Horner syndrome'>Horner症候群</span>の重なりを評価"]

治療と経過

⭐ 全体として良性の経過をたどり、特発性例の多くは自然に軽快する。 治療の中心は安心づけとであり、外見上の左右差に驚く患者へ良性疾患であることを説明する1。症状が持続し患者の苦痛が強い場合には、・注射(の・を抑える目的で用いられる)・が報告されているが、いずれも根拠は限られる1。の原因が判明した場合は原疾患への対応が優先される。

まとめ

  • は片側顔面の(主にT2〜T3の〜〜)の障害で、患側の蒼白・無汗との代償性・を来す。
  • 原因は特発性が過半数を占め、残りは傍脊椎ブロック・などのや頸部/による医原性と、・腫瘍などのに分かれる。
  • ⚠️ (T1由来の・)とは責任レベルが異なるため典型例では合併しないが、隣接レベルを共有するため重なる例も相応の頻度で報告されている(64%、うちとの重複4%)。
  • 診断は主にで、TST・が補助になる。特発性と分類する前に画像で原因を除外する。
  • 全体として良性で自然軽快することが多く、治療は安心づけが中心。持続例には・・が報告されている。

出典

  1. 1.Harlequin Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)ハーレクイン症候群が正中で境界明瞭な片側性の顔面紅潮・発汗を呈し、患側は蒼白・冷感・無汗、健側は代償性の紅潮・発汗過多を示すこと、機序が視床下部起始の一次ニューロンがC8〜T2で二次ニューロンとシナプスし、二次ニューロンがT1〜T3で脊髄を出て頸部交感神経幹を上行し上頸神経節でシナプスするという経路の障害であり最も高頻度にT2〜T3が侵されること、症例の半数以上が特発性であること、医原性の原因として胸部硬膜外麻酔・傍脊椎/肋間/斜角筋間ブロックが、器質性の原因としてPancoast腫瘍・頸部交感神経幹腫瘍、甲状腺摘出術・前方頸椎椎間板切除術後の手術侵襲が挙げられること、Horner症候群(縮瞳・眼瞼下垂・無汗を特徴とする)はハーレクイン徴候を伴うことも伴わないこともあり両者は併存しうること、診断は主に臨床所見によるが定量的軸索反射性発汗試験(QSART)と温熱発汗試験(TST)で客観的評価ができること、特発性と分類する前に胸部X線・CT・MRIで器質的原因を除外する必要があること、特発性例は対症的な安心づけと患者教育が主体で自然消退することが多く、持続例には交感神経ブロック・ボツリヌス毒素注射・交感神経切除術が報告されているが根拠は限られること、全体として本症は良性の経過をたどることを確認した。閲覧 2026-09-01
  2. 2.Mini-Review on the Harlequin Syndrome—A Rare Dysautonomic Manifestation Requiring Attention(Medicina・2022)Bremner・Smithによる39例の検討で、ハーレクイン症候群患者の64%に同側性のHorner症候群による瞳孔異常がみられ、13%に無反射性の緊張性瞳孔、4%に緊張性瞳孔とHorner症候群の重複がみられたこと、顔面・頸部の血管運動/発汗性支配がT2〜T3の腹側脊髄根から頸部交感神経幹を経て上頸神経節へ至る経路であること、病因の内訳として特発性が約54.6%を占め、残りは傍脊椎胸部ブロック・頸静脈カテーテル留置・頸部腫瘤切除術・甲状腺手術などの医原性、脳卒中・頸部脊髄空洞症・Pancoast腫瘍・頸動脈解離・胸部交感神経切除術・神経鞘腫などの器質性であること、評価に発汗試験・心血管反射試験に加え、胸部交感神経幹を含む頭部〜頸胸椎MRI・胸部X線・甲状腺超音波が用いられることを確認した。閲覧 2026-09-01