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Lab values · Published

温熱発汗試験

Thermoregulatory sweat test

別名
TST体温調節性発汗試験thermoregulatory sweat test
臓器系
神経
科目
PhysiologyPathophysiology
トピック
生理学 8.10:温度受容器・体温調節・皮膚循環の調節病態生理学 P-1-25:糖尿病性自律神経障害の検査;Ewingテスト
関連疾患
パーキンソン病

🧠 全体像:TSTが答える問いはただ一つ——視床下部から汗腺までの発汗経路のどこが壊れているかである。QSARTがだけを選択的に見るのに対し、TSTは中枢・節前・節後を含む経路全体を通した発汗分布を見る。この違いこそがTSTとQSARTを組み合わせる理由であり、単独のTST所見よりも「TSTとQSARTの組み合わせ」が局在診断の価値を持つQSARTも参照)。

何を測っているか

加温室で外部から熱を加え、を約1℃(またはそれ以上)上げて全身性の発汗を誘発する1。この経路は視床下部から脊髄・を経て汗腺に至る全体である(発汗の神経支配全般は生理学 8.10:・皮膚循環の調節を参照)。体表になどのインジケーター粉末を散布しておくと、発汗した部位だけ色調が変化する(なら黄色から紫〜赤へ)。発汗中の全身を撮影し、色調変化のない範囲=無汗の範囲を求める。

flowchart TD
    A["加温室で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='core body temperature'>中核体温</span>を人為的に上昇"] --> B["視床下部から汗腺までの経路全体が駆動"]
    B --> C["体表のインジケーター粉末が発汗部位だけ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='discoloration'>変色</span>"]
    C --> D["全身を撮影し無汗部位の分布を記録"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anhidrotic area'>無汗面積</span>の割合をTSTパーセントとして算出"]

QSARTが刺激部位に隣接する狭い範囲の発汗量を定量するのに対し、TSTは全身の分布を面として捉える点が対照的である。定量の単位は個々の部位の発汗量ではなく、に対する割合(TSTパーセント)であり、値が大きいほど広い範囲で発汗が障害されていることを示す2

基準値と正常反応

正常な発汗反応では体表のほぼ全域がし、はごくわずかにとどまる。検査は温度・湿度・気流を制御した専用の部屋で行われ3、施行できる施設は自律神経専門の検査室に限られる1は施設・プロトコルで異なるため一律のを覚えるより依頼先の判定基準に従う。目安として、とパーキンソン病を比較した検討ではTSTパーセントが群で67.4±12.42%、パーキンソン病群で1.7±2.96%とほとんど重複せず、群の78%がTST%>30%、パーキンソン病群全例がTST%<10%であった2——TSTパーセントは高いほど広範なを示すという向きだけは施設をまたいで共通する。

所見の読み方

TSTは「異常があるかどうか」だけでなく分布パターンが病変部位を絞り込む。

分布パターン 示唆される病変
遠位優位( 糖尿病など)
神経根・神経幹の限局した障害
片側性 中枢(視床下部・脳幹)・脊髄の障害
全身性・びまん性 ・薬剤性
斑状
限局した代償性の多汗 隣接する無汗領域を探す(ロス症候群・ハーレクイン症候群など)

TSTとQSARTを組み合わせると、を鑑別できる。 TSTは中枢から汗腺までの経路全体を、QSARTはだけを見るという違いを使う1

TST QSART 示唆される局在
異常 正常
異常 異常
正常 異常 限局した節後障害、または偽陽性を疑う

⚠️ パーキンソン病という古典的な対比があるが、例外がある。 でもQSARTが正常にとどまるとは限らず、最大30%程度は異常値を示しうる1QSARTが正常だからといってを除外できない。 TST単独・QSART単独の結果だけで両者を機械的に切り分けない。

⚠️ 測定上の注意

  • などのが必須。 ・抗ヒスタミン薬・など発汗を抑制する薬剤を服用したまま検査すると、発汗経路自体は正常でも偽陽性の無汗と判定されうる。
  • 加温そのものが患者の負担になる。 心疾患・高齢・リスクのある患者では、に上げる負荷そのものが危険になりうるため、適応を慎重に判断する。
  • 判定に主観が入る。色調変化の境界を人が目視で判定するため、施設・評価者間でばらつきが生じうる。
  • 皮膚疾患・・強皮症などで皮膚そのものに変化があると、その部位は発汗の有無に関わらず偽陽性の無汗として現れる。
  • 施行できる施設が自律神経専門の検査室に限られ、どこでも受けられる検査ではない1

経時変化とモニタリング

単回の分布パターンより、進行性のでどこまで無汗の範囲が広がったかという経過が治療反応の評価に使える。の診断では、TSTは中核的なに組み込まれておらず、皮膚生検やQSARTを補う付加的な検査という位置づけにとどまる4。次に進む検査は、QSARTによるの定量、皮膚生検によるの評価、・バルサルバ手技・ヘッドアップ傾斜試験などの病態生理 P-1-25:の検査;で扱うなど)である。

まとめ

  • TSTは加温室でを人為的に上げ、体表のインジケーター粉末ので発汗分布を可視化し、の割合(TSTパーセント)で重症度を表す。
  • QSARTがだけを見るのに対し、TSTは中枢から汗腺までの経路全体を見る。組み合わせるとTST異常+QSART正常で、両方異常で、TST正常+QSART異常で限局した節後障害・偽陽性を疑うという局在診断ができる。
  • 分布パターン(遠位優位・・片側性・全身性・斑状・限局性代償性)が病変部位の手掛かりになる。
  • などの、加温の負担、判定の主観性、皮膚の変化による偽陽性、施行施設の限られていることに注意する。
  • 進行性のでは経過を追い、QSART・皮膚生検・と組み合わせて評価する。

出典

  1. 1.Clinical Assessment of the Autonomic Nervous System(Cardiac Electrophysiology Clinics(Baker JR, Hira R, Uppal J, Raj SR)・2024)温熱発汗試験が節前・節後の両方の交感神経線維を介した発汗を誘発する臨床的に検証された検査であること、施行できる施設が限られること、QSARTと組み合わせることで節前・節後の障害を鑑別できることを確認した閲覧 2026-08-03
  2. 2.The role of autonomic testing in the differentiation of Parkinson's disease from multiple system atrophy(Journal of the Neurological Sciences(Kimpinski K, Iodice V, Burton DD, et al.)・2012)多系統萎縮症9例とParkinson病8例の前向き比較で無汗面積(TSTパーセント)がそれぞれ67.4±12.42%・1.7±2.96%(p<0.001)とほとんど重複せず、多系統萎縮症群の78%(7/9)がTST%>30%、Parkinson病群全例(8/8)がTST%<10%であったこと、複合自律神経スコア(CASS)やMIBG心筋シンチグラフィと比べても温熱発汗試験が両者を最も明瞭に鑑別したことを確認した閲覧 2026-08-03
  3. 3.Small Fiber Neuropathy(StatPearls(Cascio MA, Mukhdomi T)・2022)小径線維ニューロパチーの診断基準(臨床所見・定量的感覚検査・皮膚生検のうち2項目、皮膚生検の代わりにQSARTを含める考え方もある)に温熱発汗試験は明確には組み込まれておらず、発汗パターン異常を評価する付加的な検査という位置づけにとどまることを確認した閲覧 2026-08-03
  4. 4.Thermoregulatory Sweat Test (TST)(Stanford Health Care)検査が温度・湿度・気流を制御した専用の部屋で行われ、体表に散布した粉末が発汗により変色する反応で発汗の分布を可視化することを確認した閲覧 2026-08-03