神経解剖学

神経解剖学 · 04

自律反射

Autonomic reflexes

応用トピック
脊髄損傷のリハビリテーション:神経学的後遺症・合併症とその管理排尿・排便障害椎体骨折の固定と脊椎・脊髄損傷のリハビリテーション
疾患
ハーレクイン症候群

🧠 はと同じ・介在ニューロンを共有し、だけが「()→(神経節)」という2ニューロン中継に置き換わる。 この中継のおかげで、1つの内臓刺激がだけでなく、皮膚の血管・・汗腺やにまで“飛び火”しうる——(・)で脊髄神経を出て、(・)で皮膚へ戻る、という往復の構図を押さえればすべてが繋がる。

自律反射弓の全体像

(autonomic reflex arc、vegetative reflex arc)は、弓と・介在ニューロンを共有しながら、(側)だけがまったく異なる構造を持つである。が官(平滑筋・腺細胞)であるため、支配は2つのニューロンの連結によって実行される点が最大の特徴である。

感覚受容と求心路

受容器は内臓の壁および実質に存在するである。特異的な刺激は以下の通り。

刺激 内容
臓器の伸展 臓器壁が伸ばされることによる刺激
管腔臓器の閉塞による緊張 例:尿管の閉塞
血流不足(虚血, ischemia) 最も強力な刺激

(、)の末梢枝はに集まって走行する。細胞体は()にあり、中枢枝は次の経路をたどる。

後根 → 脊髄 → Lissauer路 → 上行枝・下行枝に分岐 → 後角で終止

介在ニューロン——屈曲反射弓と共通

弓で述べたのと同じ介在ニューロン群が、このでもと運動ニューロンの間の連絡を担う。

遠心路:節前ニューロンと節後ニューロンの2段リレー

の独自性は(側)にある。このは官(平滑筋・腺細胞)を活性化し、その運動支配は2つのニューロンによって実行される。

第1ニューロン

  • 細胞体は脊髄灰白質の(, IML)に位置する

  • 軸索はA・Aγ運動ニューロンの軸索に合流し、のを通って脊髄を出る

  • その後、脊髄神経の腹側枝から離れて(white communicating rami, )を形成し、に合流する

  • に入った軸索には2つの経路がある

    1. の神経節()のいずれかで終止する
    2. を下行し、の1つに合流して腹腔内の(通常は, celiac ganglion)で終止する

これらのニューロンはいずれも末梢の官まで到達せず、いずれかので終わることからと呼ばれる。

💡 はの中では線維(Aα・Aγ)と一緒に走行し、脊髄神経になった直後に初めてとして分かれる。 つまりには線維だけでなく線維も含まれており、両者が分離するのは脊髄神経が形成されたあとである。

第2ニューロン

は神経節内のニューロン(ニューロン, postganglionic autonomous neuron)とシナプスし、その軸索が適切な官を支配する。

のレベルの神経節(傍脊椎神経節, paravertebral ganglia)に存在するの軸索は、(grey communicating rami, )を介して脊髄神経の腹側枝に再び合流する。

髄鞘 含む線維 方向
脊髄神経→
→脊髄神経(皮膚へ)
flowchart TD
  A["内臓刺激(伸展・閉塞による緊張・虚血)→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free nerve ending'>自由神経終末</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='afferent neuron'>求心性ニューロン</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pseudounipolar'>偽単極</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dorsal root ganglion'>脊髄神経節</span>)<br>後根→Lissauer路→後角<span class='jp-term jp-term-diagram' title='superficial'>浅層</span>"]
  B --> C["介在ニューロン(後角〜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intermediate zone'>中間帯</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='withdrawal reflex'>屈曲反射</span>弓と共通)"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='preganglionic neurons'>節前ニューロン</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lateral horn'>側角</span>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intermediolateral cell column / IML'>中間外側核</span>)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='thoracic'>胸髄</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventral root'>前根</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='white ramus communicans'>白交通枝</span>"]
  D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sympathetic trunk'>交感神経幹</span>で終止"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postganglionic neurons'>節後ニューロン</span>(傍脊椎神経節)"]
  D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='splanchnic nerve'>内臓神経</span>を下行し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prevertebral ganglia'>椎前神経節</span>(例:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='celiac ganglia'>腹腔神経節</span>)で終止"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postganglionic neurons'>節後ニューロン</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prevertebral ganglia'>椎前神経節</span>)"]
  E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gray ramus communicans'>灰白交通枝</span>→脊髄神経→皮膚"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='effector'>効果器</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle'>血管平滑筋</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arrector pili muscle'>立毛筋</span>・汗腺"]
  F --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='effector'>効果器</span>:内臓の平滑筋・腺"]

効果器官と機序

は最終的に以下を支配する。

官 活動
血管の平滑筋
毛包に付着する平滑筋()
汗腺

反射の向きによる4分類

タイプ 内容 例
(内臓-) 節前→節後→内臓官(平滑筋・腺)が収縮または分泌 内臓反射一般。例:心房への静脈還流増加→心拍数増加(Bainbridge反射)。ただしヒトでこの反射を支持する証拠は乏しく、主にイヌで実証されてきた点に注意する1
Viscero-cutan(内臓-皮膚性) 傍脊椎神経節でシナプス→がを介して脊髄神経へ戻り、対応する皮膚領域の発汗・血管収縮・を起こす 心筋梗塞に伴う関連状
(内臓-性) 内臓刺激が反射を誘発する 腹膜炎における
Cuti-visceral(皮膚-) 皮膚刺激が内臓反応を誘発する 温熱・マッサージによる反応、勃起。眼球周囲の圧迫・の牽引→迷走神経を介した徐脈(眼心臓反射)もこの型に近い(は三叉神経で体性感覚だが、が内臓である心臓に向かう)2

⚠️ 反射(腹膜炎における)は臨床上の重要なである。 内臓(腹膜)の刺激がを反射的に興奮させ、の不随意な収縮(防御性緊張)として現れる——これはを疑う身体所見の基盤となる。

⭐ Viscero-cutan反射はの生理学的基盤である。 内臓の刺激が同じ脊髄を共有する皮膚領域の・・として現れる(例:心筋梗塞における状)。

参考:番号付き模式図の凡例

番号 構造
1 ()の
2 後角の介在ニューロン
3 後根
4 傍脊椎神経節からなる
5 内のニューロン
6 脊髄神経
7 四肢・体壁からの
8 四肢・体壁への節後線維
9 四肢・体壁への節後線維
10 四肢・体壁への節後線維
11
12
13
14 ニューロン
15
16–17 内臓からの
18 傍脊椎神経節またはへ向かう
19

⚠️ は、このそのものが病的に暴走した状態である。 第6分節(T6)以上で脊髄がされると、のが中枢からの抑制的修飾を失う。この状態で損傷レベルより下(・など)にが入ると、この節では前述の2ニューロンがそのまま無修飾に働いて発作性の高血圧と徐脈を来す——本ノートで説明したの生理的な仕組みが、修飾を欠くことで病的な反応に転じる例である3。

まとめ

  • は弓と・介在ニューロンを共有するが、が官(平滑筋・腺)を支配する2ニューロン連結(節前→節後)に置き換わる点が独自である。
  • 受容器は・実質ので、伸展・管腔閉塞による緊張・虚血(最強刺激)に反応する。はで、に細胞体を持ち、後根→Lissauer路→後角に至る。
  • は()に細胞体を持ち、・()を経てに入り、傍脊椎神経節または(例:)で終止する。
  • の軸索は、傍脊椎神経節からは()を介して脊髄神経へ戻り、皮膚の・・を支配する。
  • 反射の向きにより ・viscero-cutan・・cuti-visceral の4つに分類され、それぞれ内臓反射・・・皮膚刺激による内臓反応に対応する。

出典

  1. 1.Physiology, Bainbridge Reflex(StatPearls Publishing・2023)Bainbridge反射(静脈還流・心房内圧の上昇に伴う心拍数増加)はSir Arthur Bainbridgが麻酔下のイヌで最初に実証した反射であり、その後の再現実験では結果が一致せず、多くの研究でイヌでは反射の存在が確認される一方、ヒトでは反射を支持する証拠が乏しいことを確認した(動物=イヌのデータが主体、ヒトでの証拠は限定的)閲覧 2026-08-26
  2. 2.The Oculocardiac Reflex: A Review(Clinical Ophthalmology・2021)ヒトを対象とした15,000例超・無作為化比較試験51件を含む文献レビューで、眼心臓反射は外眼筋の牽引などの眼窩刺激により誘発される三叉神経-迷走神経性の徐脈であり、予防的な抗コリン薬投与がない場合には斜視手術の症例の約10%で著明な徐脈が生じうることを確認した(ヒトのデータ)閲覧 2026-08-26
  3. 3.Autonomic dysreflexia after spinal cord injury: Systemic pathophysiology and methods of management(Autonomic Neuroscience: Basic and Clinical・2018)ヒトの脊髄損傷を対象とした総説で、第6胸髄分節(T6)以上のレベルで脊髄が離断されると重要な交感神経節前ニューロンが上位中枢からの修飾を失い、損傷レベルより下の侵害刺激(膀胱充満・便塊など)を引き金に無修飾の交感神経反射が働いて発作性高血圧と徐脈を来す自律神経過反射(autonomic dysreflexia)が生じることを確認した(ヒトの脊髄損傷患者のデータ)閲覧 2026-08-26