神経解剖学

神経解剖学 · 03

侵害受容反射

Nociceptive reflexes

症状
くしゃみ疼痛

🧠 は「弱い刺激→少数の筋、強い刺激→四肢全体」という強度依存の動員を持つであり、逃げる側(同側の屈筋)と支える側(対側の伸筋)が必ずペアで働く。 求信路はLissauer路→後角という体性感覚の基本ルートをそのまま流用し、だけがA→屈筋という新しい出口を持つ——がだったのに対し、介在ニューロンを介する多である点が本質的な違い。

屈曲反射とは

はであり、の代表例である。組織を傷害する、あるいは皮膚の統合性を脅かす刺激に対して、身体の一部を刺激から素早く引き離す防御反応を起こす。

反射弓の構成要素

要素 内容
受容器 。皮膚・筋・内臓に広く分布し、機械的・熱・化学的刺激に反応する多様式性の受容器。損傷に反応することからと呼ばれる
()の末梢枝は皮神経に集まり、中枢枝は後根を通る。のAδ・に限らず非のも動員されうるため、まとめて「」と総称される1
介在ニューロン 後角とに介在する1個以上のニューロン
遠心性ニューロン 前角のA。太い軸索がを出て屈筋を支配する
官 骨格筋(横紋筋)の

感覚受容と求心路

は皮膚・筋・内臓のいずれにも存在し、機械的・熱的・化学的な刺激すべてに反応しうる多様式性の受容器である。

の末梢枝は皮神経に集まって走行し、中枢枝は()から後根を経て脊髄に入る。脊髄に入った細い線維はLissauer路内を後根侵入部付近で二分岐し、その側枝は後角の(Lamina I・II)で終止する。

遠心路と効果器

後角・に介在する1個以上の介在ニューロンが、と運動ニューロンの間をする。

遠心性ニューロンは前角のAである。太い軸索はを出て末梢神経に合流し、屈筋を支配する。屈筋は収縮すると四肢を短縮させるため、このは「」と呼ばれる。官は骨格筋のである。

刺激強度と動員の広がり

💡 弱い刺激では少数の筋だけが、強い刺激では四肢全体が動員される。 これは介在ニューロンのネットワークが刺激の強さに応じて興奮を周囲へ広げる(irradiation)ためであり、だからこそ可能な「段階的な」防御反応である。

⚠️ 「」という呼び名ほどは痛覚特異的ではない。 ヒトの下肢を精査した研究では、反射の惹起にはの(遅く大きいRIII反射成分に対応)だけでなく、非の大径(早期のRII反射成分に対応)も関与しており、全体は「(FRA)」という複合的な括りで捉えられている1。「だけが引き金になる」という理解は単純化しすぎである。

交叉性伸展反射:対側での代償

⭐ の四肢の引き込み(屈曲・)は、必ず対側の伸筋活動の増大によって代償される——同側弓・対側伸展。 のために片脚を持ち上げれば、体重を支えるためにもう一方の脚が伸展しなければならない。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unilateral (one side)'>一側</span>肢への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='noxious stimulus (nociceptive stimulus)'>侵害刺激</span>"] --> B["同側:屈筋のA<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alpha motor neuron'>α運動ニューロン</span>興奮"]
  B --> C["同側肢の屈曲・引き込み(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='escape'>逃避</span>)"]
  A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crossed'>交叉性</span>の介在ニューロン(対側へ)"]
  D --> E["対側:伸筋のA<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alpha motor neuron'>α運動ニューロン</span>興奮"]
  E --> F["対側肢の伸展→体重を支持"]

臨床でみる屈曲反射の例

反射 誘発刺激 反応
の皮膚を擦る 同側のが収縮し精巣が挙上する
への刺激 呼気の急激な
くしゃみ反射 への刺激 反射的な呼気の噴出
角膜への接触 の収縮による(R1・R2の二成分に分かれ、線維だけでなく非線維も関与しうる2)

まとめ

  • はの代表であり、である。受容器は(nocireceptor、noxa=損傷に反応)で、皮膚・筋・内臓に広く分布する。
  • はLissauer路を経て後角に終止する体性感覚の基本ルートを流用し、後角・の介在ニューロンを介して前角のAへ伝わる。
  • 遠心性ニューロンの軸索はを出て屈筋を支配し、官は骨格筋のである。
  • 刺激強度に応じて動員される筋の範囲が広がる(irradiation)——弱い刺激では局所的、強い刺激では四肢全体の反応となる。
  • の屈曲・は必ず対側の伸展によって代償される(同側屈曲・対側伸展=伸展反射)。
  • 臨床的なの例として、・・くしゃみ反射・がある。

出典

  1. 1.The lower limb flexion reflex in humans(Progress in Neurobiology・2005)ヒトの下肢屈曲反射(LLFR)を対象にした総説で、これは多シナプス性・多髄節性の脊髄反応であること、安静時のLLFRは大径・低閾値の非侵害受容性Aβ線維が媒介する早期成分(RII反射)と、小径・高閾値の侵害受容性Aδ線維が媒介する遅い主要成分(RIII反射)の二相からなること、実際には侵害受容性・非侵害受容性を問わず皮膚・筋からの多様な求心性線維がLLFRの惹起に寄与すること、そして反射弓の求心性入力が「屈曲反射求心線維(flexion reflex afferents、FRA)」と総称される複合的な入力であることを確認した閲覧 2026-08-26
  2. 2.The blink reflex and its modulation - Part 1: Physiological mechanisms(Clinical Neurophysiology・2024)ヒトの瞬目反射(角膜反射を含む三叉神経-顔面神経性の防御反射)を扱った総説で、瞬目反射は電気刺激に限らず多様な感覚モダリティで誘発されうること、その惹起に侵害受容性線維と非侵害受容性線維の双方が関与しうることを述べており、角膜反射も屈曲反射と同様に単純な「侵害受容器→防御反応」だけには還元できないことを示した閲覧 2026-08-26