脳神経内科学

脳神経内科学 · G1-01

瞳孔支配の障害

G1-01: Disorders of the innervation of pupils

前提:正常
自律神経系の微細構造・伝導路脳神経核の分類頭部:眼窩と眼
疾患
Ross症候群ハーレクイン症候群外傷性虹彩括約筋断裂内頸動脈解離緑内障
症状
Adie緊張性瞳孔Horner症候群眼痛眼瞼下垂散瞳縮瞳相対的瞳孔求心路障害動眼神経麻痺瞳孔不同霧視毛様充血
スコア
眼外傷スコア

🧠 全体像:では、暗所で差が開くなら小さい瞳孔の交感神経障害、明所で差が開くなら大きい瞳孔の副交感神経障害を考える。に・を伴えば、動脈瘤を含む圧迫を緊急に除外する。

正常の瞳孔制御

瞳孔は中央の開口である。明るさで、暗さや警戒時でする。

系 経路と標的 主な働き
副交感神経 網膜→視神経(CN II)→中脳→両側→(CN III)→→ 、時の調節・
交感神経 視床下部→脳幹→脊髄中枢(C8-T2)→→周囲神経叢→ 、軽い上眼瞼挙上、顔面発汗
flowchart TD
    A["片眼に光"] --> B["網膜・視神経(CN II)"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pretectal area'>視蓋前域</span>"]
    C --> D["両側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Edinger-Westphal nucleus'>Edinger-Westphal核</span>"]
    D --> E["両側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oculomotor nerve (CN III)'>動眼神経</span>(CN III)"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ciliary ganglion'>毛様体神経節</span>"]
    F --> G["両眼の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sphincter pupillae'>瞳孔括約筋</span>が収縮"]

観察と反射の評価

左右の大きさ・形(正円か、不整か)、安静時と明暗条件での差、、眼球運動を観察する。直接は照射眼の、間接は反対眼のである。では・・調節が同時に起こる。

観察/検査 何をみるか
形 、、、、楕円形・、術後の欠損などを記録する。
直接・間接 片眼に光を当て、照射眼と反対眼の両方がするかをみる。視神経からへ入った信号が両側核を刺激するためである。
swinging flashlight から患眼へ光を移し、両眼のが弱く見かけ上するならを支持する1。
近くの目標へ視線を移し、の、、調節を確認する。

⚠️ 新規の、、強い頭痛または意識障害は救急評価を要する。薬剤性・も鑑別する。

主要な異常と局在

所見 典型的局在・機序 手がかり
動眼神経麻痺 CN IIIまたはの障害 、、、対光・反射低下。痛みを伴うはなどを緊急評価
/節後副交感神経障害 片側の大きい瞳孔、光への反応は鈍くが相対的に保たれる。0.0625%希釈点眼でのはを支持する2
同側交感神経経路の障害 、軽い、病変部位により。ならを警戒。薬理学的診断は点眼が古典的な試験に代わりつつある34
背側中脳の光反射経路障害 小さく不整、光反応なし・あり。などを背景にみることがある
() 重度の片側/ swinging flashlightで患側照射時に両瞳孔の収縮が弱く、見かけ上
重度の片側視神経(CN II)障害 患眼照射では直接・を誘発できないが、照射時の患眼のは保たれる。

瞳孔不同を明暗で読み解く

flowchart TD
 A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anisocoria'>瞳孔不同</span>を確認"] --> B["暗所で差が大きいか"]
 B --> C["小瞳孔が拡大できない:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Horner syndrome'>Horner症候群</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miotic'>縮瞳薬</span>を検討"]
 A --> D["明所で差が大きいか"]
 D --> E["大瞳孔が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miosis'>縮瞳</span>できない:CN III・Adie・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mydriatic'>散瞳薬</span>を検討"]
 E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ptosis'>眼瞼下垂</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='impaired ocular motility (ophthalmoparesis)'>眼球運動障害</span>・頭痛なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='compressive lesion'>圧迫性病変</span>を緊急評価"]
機序 典型像・原因
交感神経障害 視床下部・脳幹、、胸部傍脊椎神経節、頸部の周囲、眼窩のどこでも切断されうる。、、、は重要な原因である。
副交感神経障害 動脈瘤、糖尿病性虚血、外傷、腫瘍などによるCN III障害、・の、性を区別する。
オピオイド、などの、はを生じうる。

💡 生理的は通常1 mm未満で、両眼とも光・への反応が正常である。そのものではなく、明暗でどちらの瞳孔が異常に振る舞うかを判断する。

薬剤・眼疾患

(例:、)や点眼はを、やオピオイドはを生じうる。は急性の発作を誘発しうるため、眼痛・充血・・悪心を伴う場合は緊急対応する。

片側性は片頭痛に一過性に伴うこともあるが、診断は除外的である。・障害は中脳・病変、錐体外路疾患などでも起こり、随伴する眼球運動・神経症状を優先して局在する。

まとめ

  • 暗所で悪化するは交感神経障害、明所で悪化するは副交感神経障害を示唆する。
  • CN III麻痺のはを、+はを優先して除外する。
  • 、、眼球運動、眼瞼、発汗を一組として評価する。

出典

  1. 1.Marcus Gunn Pupil(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2026)相対的求心性瞳孔障害(RAPD、Marcus Gunn瞳孔)はswinging flashlight testで健眼から患眼へ光を移した際に両側瞳孔がかえって散大する所見として検出され、視神経・網膜など求心路の左右非対称な障害を示す徴候であることを確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.Dilute pilocarpine test for diagnosis of Adie's tonic pupil(Scientific Reports・2021)片側Adie緊張性瞳孔56例と他原因による片側散瞳61例を対象とした後方視的症例対照研究で、0.0625%希釈ピロカルピンは0.125%よりAdie瞳孔検出の診断精度が高く(AUC 0.954 対 0.840)、点眼後の瞳孔径変化0.5mm以上をカットオフとすると感度100%・特異度82.8%で脱神経過敏を検出できたことを確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.Apraclonidine Is Better Than Cocaine for Detection of Horner Syndrome(Frontiers in Neurology・2019)単一施設で14年間に行われた660件の連続する薬理学的検査(コカインまたはアプラクロニジン)の後方視的解析で、瞳孔計測に基づく判定基準を用いるとHorner症候群検出の感度はコカイン約40%に対しアプラクロニジン約93%と推定され、アプラクロニジンが新たなgold standardとして提案されたこと(ただし交感神経障害急性期の数時間以内や生後1年未満の乳児では慎重を要するとされた)閲覧 2026-08-27
  4. 4.Horner syndrome: clinical perspectives(Eye and Brain・2015)Horner症候群は同側眼交感神経路の障害による片側眼瞼下垂と、対光反射が正常に保たれる縮瞳を中核とすること、同側顔面の無汗は一部の症例にしか伴わないこと、確定診断には薬理学的(点眼)検査を用いることを確認した閲覧 2026-08-27