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Symptoms · Published

縮瞳

Miosis

別名
瞳孔縮小針先瞳孔
臓器系
眼科神経
科目
NeurologyAnatomyPharmacologyPhysiologyInternal MedicineHistopathology
トピック
神経内科 G1-01:瞳孔支配の障害解剖学 8.3:頸部:血管と神経薬理学 A2:コリン作動薬薬理学 A11:オピオイド生理学 8.4:視覚の生理学内科学 L-72:中毒患者の一般的管理組織病理 H2-120B:橋出血
関連疾患
コリン作動性クリーゼ片頭痛・一次性頭痛症候群有機リン中毒
起因薬
ベタネコール

🧠 全体像は、(副交感神経・)と(交感神経・α1受容体)という拮抗する2つの平滑筋のうち前者が優位になった結果であり、副交感神経の亢進でも交感神経の遮断でも起こりうる。のように治療のはずの薬剤がそのままという主作用兼副作用になる一方、両側の針先瞳孔に意識障害を伴えば橋出血という致死的な鑑別を最優先で除外しなければならない。「両側性か片側性か」を最初の分岐に、原因を薬剤性・神経性・生理的の3群で整理する。

定義と用語の整理

成人の正常な瞳でおおむね2〜4mm、で4〜8mmであり、は一般に明所で瞳が2mm未満まで収縮した状態を指す1。対義語の(瞳の拡大)と対比すると、同じのどちらが優位かという1本の軸で理解できる。

項目
優位になる筋 (副交感神経) (交感神経)
代表的な薬剤性の原因 ・オピオイド など点眼
危険な神経性の原因 橋出血、 麻痺(圧迫性)

両側性か片側性かが、以降のすべての判断の起点になる。両側性のは薬剤性・など全身に作用する原因を、片側性のは同側の交感神経路の障害()を示唆しやすい。

(左右の瞳の差)との関係も整理しておく。生理的なはおおむね0.4mm程度で、まれに0.8mmを超えない2。これを超えるがあり暗所で差が拡大するなら、小さいほうの瞳孔の交感神経障害を疑う——側こそが異常という発想の転換が鍵になる(局在診断の詳細はの項に譲る)。

病態生理

・副交感神経・)と(交感神経・α1受容体)のバランスで決まる。は次のどちらか、あるいは両方によって生じる。

  • 副交感神経()の亢進、コリンエステラーゼ阻害・によるアセチルコリン蓄積、そのもの
  • 交感神経の遮断、橋出血による下行性交感神経路の破壊

「副交感神経をする経路」と「交感神経を遮断する経路」という向きの異なる2方向から、同じという所見に至る。 オピオイドは中枢性に副交感神経核()をすることでを来し、点眼のとはがまったく異なるが、結果として同じ収縮に収束する。

原因の群分け

機序 代表例
薬剤性 (緑内障・
薬剤性 阻害によるアセチルコリン蓄積 中毒
薬剤性 オピオイド刺激による モルヒネ・などのオピオイド過量
神経性 同側交感神経路の障害(の三徴)
神経性 下行性交感神経路の破壊(両側性の針先瞳孔) 橋出血
神経性 背側中脳の経路の障害(は保持) 梅毒の項参照)
炎症性(眼局所) 症によるの攣縮。を伴うと瞳孔はになりも鈍くなる 眼痛を伴う点が薬剤性・神経性との切り分けになる)
生理的 加齢に伴うの緊張亢進・筋機能低下 高齢者(
生理的 副交感神経が優位になる生理的状況 明所、睡眠、

⚠️ 見逃してはいけないもの

危険度の高い順に並べる。

  • ⚠️ 橋出血・ 両側の針先瞳孔に急速な意識障害・・呼吸パターン異常を伴えば最優先で疑う。・下行性交感神経路が橋で近接して走行するためこの組み合わせが生じる(の項参照)。自体は保たれることが多く、「があるから中枢性ではない」と除外しない。
  • ⚠️ に加え、・徐脈・下痢などの(DUMBELSで記憶)と、・筋力低下などのを伴う。最も危険なのはによる呼吸不全であり、農薬曝露歴・職業歴の聴取が診断の手がかりになる3
  • ⚠️ オピオイド過量。 ・呼吸抑制・意識障害の三徴を伴えば疑う。呼吸数の低下を見逃さないことが最優先で、他の中枢抑制薬併用や違法流通薬への意図しない混入があるとさらに危険性が高い(詳しくはの項へ)。
  • ⚠️ の背後にある)。 自体は軽微な所見だが、急性発症+なら、慢性の肩・上肢痛を伴えばの圧迫を疑う。局在診断の詳細はの項に譲る。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miosis'>縮瞳</span>に気づく"] --> B{"両側性か片側性か"}
    B -->|"両側性"| C{"意識障害を伴うか"}
    C -->|"あり"| D["橋出血・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brainstem lesion'>脳幹病変</span>を最優先で評価<br>緊急頭部CT/MRI"]
    C -->|"なし"| E{"呼吸抑制・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='excessive airway secretions'>気道分泌過多</span>を伴うか"}
    E -->|"あり"| F["オピオイド過量・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='organophosphate poisoning'>有機リン中毒</span>を疑い<br>薬剤歴・曝露歴を確認"]
    E -->|"なし"| G{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='(pupillary) light reflex'>対光反射</span>は保たれ<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='convergence response'>輻輳反応</span>は正常か"}
    G -->|"はい"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Argyll Robertson pupil'>Argyll Robertson瞳孔</span>を疑い<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurosyphilis'>神経梅毒</span>を検索"]
    G -->|"いいえ"| I["点眼薬・全身薬の使用歴を再確認"]
    B -->|"片側性"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ptosis'>眼瞼下垂</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anhidrosis'>無汗症</span>の有無を確認"]
    J --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Horner syndrome'>Horner症候群</span>を疑い<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='neck pain'>頸部痛</span>の有無で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ICA dissection'>内頸動脈解離</span>を除外"]

対症療法の考え方

そのものを標的にした介入は基本的に存在せず、原因の除去・原疾患の治療に委ねる所見型の症状である。

  • では、・頻脈・口渇)が出現するまでを3〜5分ごとに倍量し、酵素の老化が起こる前であればを併用する3
  • オピオイド過量ではで呼吸抑制を解除する。の消失そのものより呼吸状態の改善をとする。
  • による過度のは、多くの場合点眼の中止で自然に軽快する。
  • ・橋出血では自体でなく、へのや脳幹出血の全身管理という背景疾患への対応が治療の本体である。

まとめ

  • (副交感神経・)と(交感神経・α1受容体)の拮抗のうち、副交感神経の亢進または交感神経の遮断のどちらでも起こる。
  • 両側性か片側性かが局在診断の最初の分岐であり、片側性ならを、両側性なら薬剤性・の原因を優先して考える。
  • 原因は薬剤性(・オピオイド)、神経性(・橋出血・)、生理的(加齢・明所・睡眠)の3群に整理できる。
  • 危険度順に、橋出血・、オピオイド過量、の背後にあるを見逃さない。
  • 鑑別は両側性/片側性→意識障害の有無→呼吸抑制・の有無→の順に絞り込む。
  • そのものへの介入は基本的になく、原因薬の中止・拮抗薬()投与・原疾患治療に委ねる。

出典

  1. 1.The Effect of Pupil Size on Visual Resolution(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)成人の正常な瞳孔径が明所視でおおむね2〜4mm、暗所視で4〜8mmの範囲にあることを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Anisocoria(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)生理的瞳孔不同はおおむね0.4mm程度でまれに0.8mmを超えないこと、薬剤性縮瞳(コリン作動薬点眼・オピオイド・クロニジン・有機リン中毒)と神経性縮瞳(Horner症候群・後癒着)という原因の大枠分類を確認した。閲覧 2026-08-03
  3. 3.Organophosphate Toxicity(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)有機リン中毒がアセチルコリンエステラーゼ阻害を介してムスカリン症状(縮瞳・気道分泌過多・徐脈など、DUMBELSで記憶)とニコチン症状(線維束性収縮・筋力低下など)を来すこと、アトロピンは抗コリン症状(散瞳・頻脈・口渇)が出現するまで3〜5分ごとに倍量漸増投与すること、プラリドキシムは酵素の老化が起こる前に投与する必要があることを確認した。閲覧 2026-08-03