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Symptoms · Published

瞳孔不同

Anisocoria

別名
瞳孔不同症左右瞳孔径差
臓器系
神経眼科
科目
Neurology
トピック
神経内科 G1-01:瞳孔支配の障害神経内科 G1-11:頭蓋内圧亢進と脳ヘルニアの症候

🧠 全体像は「左右のどちらが正常でどちらが異常か」を明暗で読み解く所見である。生理的はごくわずか(0.4mm程度、まれに0.8mmまで)で明暗によらず一定だが、これを超えて暗所と明所で差の大きさが変わるなら、変化が乏しいほうの瞳孔が壊れている。暗所で差が開けば小さい瞳孔(交感神経障害、)、明所で差が開けば大きい瞳孔(副交感神経障害、麻痺・・薬剤性)という対応を軸に、それぞれの原因論に頼らず左右差だけから局在を絞り込む。急性のを伴えば、による圧迫という放置すれば破裂しうる病態を最優先で除外する。

定義と用語の整理

は左右の瞳の差である。生理的はおおむね0.4mm程度で、まれに0.8mmを超えることはなく、明所・暗所のどちらでも差の大きさがほぼ一定に保たれる1。目安として1mm未満であれば生理的の範囲として扱われることが多い。この「明暗で差が変わらない」という一点が、病的なとの最初の分岐になる。

同じ瞳孔の左右差を扱う近縁ノートと役割を分けておく。

ノート 問うこと
ある瞳孔がに小さいか。原因は副交感神経亢進または交感神経遮断
ある瞳孔がに大きいか。原因は副交感神経遮断または交感神経亢進
(本ノート) 左右差そのものをどう読むか。どちらが異常かを明暗の変化で決める

「どちらが大きいか」ではなく「どちらが明暗に反応していないか」を見る。 大きい瞳孔・小さい瞳孔のどちらも、条件によっては正常でありうる。

病態生理

(交感神経、α1受容体)と(副交感神経、)という拮抗する2つの平滑筋で決まる。暗所では筋が働いて瞳孔が広がり、明所では括約筋が働いて瞳孔が狭まる——「その場面で働くべき筋」が左右のどちらで働かないかを見るのがの読み方である。

  • 暗所で差が拡大する。 正常側は交感神経性にするが、障害側はできない。小さいほうの瞳孔が異常で、交感神経路の障害()を示す。
  • 明所で差が拡大する。 正常側は副交感神経性にするが、障害側はできない。大きいほうの瞳孔が異常で、副交感神経路・の障害(麻痺、、薬剤性自体の異常)を示す。

💡 生理的でも左右差自体はあるが、両側とも明暗に正常に反応するため差の大きさが変わらない。差が変わるかどうかが、生理的か病的かを分ける実質的な基準になる。

原因の群分け

機序 代表例
生理的 筋の左右差が生来ある。明暗で差が変わらない 健常者の0.4mm程度、まれに0.8mmまでの1
交感神経性 同側交感神経路の障害。暗所で差が拡大 (3ニューロン経路の局在は同項に譲る)
副交感神経性 同側副交感神経路・の障害。明所で差が拡大 麻痺の障害)
機械的・自体 そのもののが不整または欠如 後の後、急性
薬剤性 片眼だけへのの曝露 に触れた手で片眼をこすった例、点眼の誤点眼

⚠️ 見逃してはいけないもの

危険度の高い順に並べる。

  • ⚠️ による圧迫。 急性の)を伴えば最優先で疑う。麻痺の中で最もよく知られた致死的原因であり、破裂すれば6か月はおよそ50%にとどまる1。疑った時点で緊急に血管画像(CTA・MRA、必要ならDSA)を行い、経過観察で様子をみない。
  • ⚠️ 急性発症の・頭痛を伴えば最優先で疑う。有痛性の原因として最も重要とされる1。詳しい局在の進め方はの項に譲る。
  • ⚠️ 意識障害に片側のを伴えば、の圧迫によるを疑う(頭蓋内圧亢進の項参照)。は「これからする」ではなく「代償がすでに尽きた」遅発所見として読む。
  • 慢性のに肩・上肢痛、の筋力低下・感覚障害などの症状を伴えば、肺癌を疑う。
  • 小児の急性 既往のない乳幼児・小児に新規発症すれば、による圧迫を必ず除外する。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anisocoria'>瞳孔不同</span>に気づく"] --> B{"明暗で差の大きさが変わるか"}
    B -->|"変わらない(1mm未満)"| C["生理的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anisocoria'>瞳孔不同</span>として経過観察"]
    B -->|"暗所で差が拡大"| D["小さい瞳孔が異常<br>交感神経障害を疑う"]
    B -->|"明所で差が拡大"| E["大きい瞳孔が異常<br>副交感神経障害・機械的異常を疑う"]
    D --> F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ptosis'>眼瞼下垂</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neck pain'>頸部痛</span>を伴うか"}
    F -->|"あり"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Horner syndrome'>Horner症候群</span>として評価<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='neck pain'>頸部痛</span>なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ICA dissection'>内頸動脈解離</span>を除外"]
    E --> H{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ptosis'>眼瞼下垂</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='impaired ocular motility (ophthalmoparesis)'>眼球運動障害</span>を伴うか"}
    H -->|"あり"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oculomotor nerve (CN III)'>動眼神経</span>麻痺を疑い<br>緊急血管画像で動脈瘤を除外"]
    H -->|"なし"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pharmacology'>薬理学</span>的検査で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Adie&#39;s tonic pupil'>Adie瞳孔</span>・薬剤性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mydriasis'>散瞳</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iris'>虹彩</span>自体の異常を鑑別"]

局在をさらに絞り込む的検査は次のとおりである。⭐ 点眼は費用・調剤の手間・判定の煩雑さから実地では使いにくく、点眼のほうが感度・実用性の面で現在の検査の第一選択になっている2

検査 何をみるか 結果の解釈
点眼(2〜10%) ノルアドレナリン。正常側はする 患側のが乏しければを支持する1
点眼 α2作動薬。によりHorner患側でのみ瞳孔がする 患側がしてが逆転すれば陽性、はほぼ不変1
点眼 終末からノルアドレナリンを遊離させる 両眼ともすれば、患側がしなければの障害1
低濃度点眼(0.05〜0.15%) の有無をみる すればを支持する1
高濃度点眼(1%) への しなければによる薬剤性を疑う1

対症療法の考え方

そのものを縮める・広げる介入は存在せず、局在診断で絞り込んだ原因病態への対応がすべてである。

  • 圧迫性の麻痺では、動脈瘤に対する・外科的を緊急に行う。
  • では、へのへの腫瘍治療など、原因治療に委ねる。
  • は多くが経過観察でよいが、障害が強ければ低濃度点眼で瞳を対症的に縮小させることがある。
  • 薬剤性は・曝露源の除去で自然に軽快する。
  • 自体の異常()は原疾患(ぶどう膜炎の治療、外傷の眼科的評価)に委ねる。

まとめ

  • は左右差そのものを問題にする所見で、生理的にはおおむね0.4mm程度・まれに0.8mmを超えず、明暗で差の大きさが変わらない1
  • 暗所で差が開けば小さい瞳孔が異常(交感神経障害、)、明所で差が開けば大きい瞳孔が異常(副交感神経障害、麻痺・・薬剤性)という明暗の読み替えが局在診断の軸になる。
  • 原因は生理的・交感神経性・副交感神経性・機械的(自体)・薬剤性の5群に整理できる。
  • 最優先で除外すべきはによる圧迫とで、次いで、小児のを検索する。
  • 点眼による的検査で局在をさらに絞り込めるが、自体への介入はなく原因治療に委ねる。

出典

  1. 1.Anisocoria(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)生理的瞳孔不同がおおむね0.4mm程度でまれに0.8mmを超えず明暗で差の大きさが一定であること、コカイン点眼(正常側が散瞳し患側の散瞳が乏しければ陽性)・アプラクロニジン点眼(患側のみ散大し瞳孔不同が逆転すれば陽性)によるHorner症候群の確認、ヒドロキシアンフェタミン点眼による節前性・節後性の鑑別、低濃度ピロカルピンによるAdie緊張性瞳孔の確認と高濃度ピロカルピン非反応時の薬剤性散瞳の判定、後交通動脈瘤が動眼神経麻痺の最もよく知られた致死的原因で破裂後6か月生存率がおよそ50%であること、内頸動脈解離が有痛性Horner症候群の最重要原因であることを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Horner Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)コカイン点眼が費用・判定の煩雑さ・尿中代謝物検出などの制約を持つのに対し、アプラクロニジン点眼は感度と実用性の面で現在の検査の第一選択とされていることを確認した。閲覧 2026-08-03