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Symptoms · Published

Adie緊張性瞳孔

Adie tonic pupil

別名
Adie瞳孔緊張性瞳孔Holmes-Adie症候群
臓器系
神経眼科
科目
NeurologyPharmacology
トピック
神経内科 G1-01:瞳孔支配の障害薬理学 A2:コリン作動薬

🧠 全体像は、が交感神経路の障害でを作るのと対をなす、副交感神経路——およびその——の障害である。機序は一点に尽きる:を出た副交感線維のうち、)へ向かう線維よりも(調節)へ向かう線維のほうが圧倒的に多く、障害後の再生でこの数の非対称性が仇となり、調節線維の一部が誤ってする。この1つの機序が、に乏しいのには保たれる後の再が非常にゆっくりになる緊張性(この遅さが「緊張性瞳孔」という呼び名の由来である)、による低濃度への過剰反応という3つの所見をすべて説明する。良性で経過観察が基本だが、急性のを伴えば麻痺との取り違えが最大の危険である。

定義と用語の整理

同じ「・節後副交感線維の障害による緊張性瞳孔」を核に、随伴所見の有無で3段階に呼び分ける。

用語 定義
(緊張性瞳孔) ・節後副交感線維の障害による、不良・保持()と緊張性の瞳孔
の低下・消失
の低下・消失+

とは瞳の異常が正反対の対をなす。は交感神経路の障害で瞳孔が縮小を伴うのに対し、は副交感神経路の障害で瞳孔がし、も伴わない。この「随伴所見の有無」が麻痺との鑑別点そのものである——麻痺はを支配する線維も同時に障害されるためを伴うが、より末梢の副交感線維だけが障害されるためそのものがない1の原因の群分けでは副交感神経性に位置づけられる。

⭐ 若年〜中年成人(平均32歳)の女性に多く(男女比約1:2.6)、発症時は約80%が片側性だが、年4%程度の割合で対側にも広がる2

病態生理

を出る節後副交感線維は、)へ向かう線維よりも(調節)へ向かう線維のほうがおよそ30倍多い2。炎症などで神経節が障害されたあと軸索が再生する際、本来の標的を見失った調節線維の一部が、数で圧倒的に少ないのほうへ誤ってする。この1つの機序が、次の3つの所見をすべて説明する。

  • の経路(網膜→)を担っていた線維は失われたままだが、した調節線維が時にを収縮させるため、は乏しいのには保たれる。
  • 緊張性した線維は本来の支配より応答が遅く持続的であるため、後の瞳孔の再が非常にゆっくりになる。
  • の障害であるためが上方調節され、低濃度(0.1〜0.125%)点眼に健常眼より強く反応してする(陽性率はおおむね80%)2

では、の一部だけが収縮し他の部分は収縮しない、の不規則な収縮運動として観察されることが多い。

急性期はが前面に出るため、時のかすみ・読書困難を訴える2。その後は数か月〜数年かけて瞳孔が徐々に縮小し、最終的にはより小さい「小さい緊張性瞳孔」になることが多く、の低下も並行して進行しうる2

💡 麻痺の慢性期に生じる線維が誤ったへ再支配する現象、麻痺の項)と、は「誤って再生する」という点では似るが、後者は数の非対称性というに特有の解剖学的条件だけで説明できる点が異なる。

⚠️ 見逃してはいけないもの

危険度の高い順に並べる。

  • ⚠️ による麻痺との取り違え。 急性発症のを伴えば、ではなく圧迫性の麻痺として緊急に血管画像で評価する。にはそのものがなく、眼球運動も眼瞼も正常であることがこの鑑別の核心である1
  • 両側性・急性発症例。 通常のは片側性で緩徐に発症するため、両側性・急性の瞳孔異常をみたら傍腫瘍性・自己免疫性の障害や、の自律神経症状を検索する。
  • 梅毒によるとの混同。 同じを示すが向きが逆で、小さく不整な瞳孔がにも反応しにくいのに対し、大きい瞳孔でにより低濃度に過剰反応する。梅毒の病歴・血清学的検査で切り分ける。
  • の低下・消失は不可逆で、経過とともに進行しうる。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["片側の瞳孔が大きく<br>明所で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anisocoria'>瞳孔不同</span>が拡大する"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ptosis'>眼瞼下垂</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='impaired ocular motility (ophthalmoparesis)'>眼球運動障害</span>を伴うか"}
    B -->|"あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oculomotor nerve (CN III)'>動眼神経</span>麻痺として<br>緊急血管画像で動脈瘤を除外"]
    B -->|"なし"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='slit-lamp'>細隙灯</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iris'>虹彩</span>の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='segmental'>分節性</span>収縮運動を確認"]
    D --> E["低濃度(0.1%)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pilocarpine'>ピロカルピン</span>点眼"]
    E -->|"過剰<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miosis'>縮瞳</span>"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Adie tonic pupil'>Adie緊張性瞳孔</span>と判断"]
    E -->|"反応なし"| G["高濃度(1%)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pilocarpine'>ピロカルピン</span>点眼"]
    G -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miosis'>縮瞳</span>しない"| H["薬剤性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mydriasis'>散瞳</span>を疑う"]
    G -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='miosis'>縮瞳</span>する"| I["他の副交感神経障害を再検討"]
    F --> J{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep tendon reflex'>深部腱反射</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='segmental'>分節性</span>発汗を確認"}
    J -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep tendon reflex'>深部腱反射</span>の低下・消失"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Holmes-Adie syndrome'>Holmes-Adie症候群</span>"]
    J -->|"さらに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='segmental'>分節性</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oligohidrosis'>乏汗症</span>を伴う"| L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Ross syndrome'>Ross症候群</span>"]

対応の考え方

そのものに特異的な治療は無く、良性の経過として対応する。

  • 特異的治療は不要で、大半は経過観察でよい2
  • 急性期のには、・サングラスで対症的に対応する。
  • 調節障害による困難には老を処方する2
  • そのものを縮めたい場合は、低濃度点眼を対症的に用いることがある2
  • の低下・消失は治療対象ではなく、不可逆な所見として記録するにとどまる。

まとめ

  • ・節後副交感線維の障害で、(交感神経性)と対をなす副交感神経性のである。
  • (+消失)・(+)は、同じ病態に随伴所見が加わる3段階の呼び分けにすぎない。
  • 機序は1つ:調節線維が線維よりおよそ30倍多いため、の再生時に調節線維がする。これが・緊張性の再(低濃度への過剰反応)をすべて説明する。
  • 急性期はによるとかすみを、慢性期は瞳孔の縮小とのさらなる低下を来す。
  • 最優先の除外はによる麻痺(の有無で区別)で、両側急性発症なら・梅毒(との対比)を考える。
  • 特異的治療は無く、障害には対症療法、の異常は不可逆として扱う。

出典

  1. 1.Adie Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)毛様体神経節の節後副交感線維で調節を担う線維が縮瞳を担う線維のおよそ30倍多く、障害後の再生時に調節線維が瞳孔括約筋へ迷入再生することで光近反応解離を来すこと、低濃度(0.1〜0.125%)ピロカルピン点眼による除神経過敏の確認でおよそ80%が陽性となること、Holmes-Adie症候群が深部腱反射の低下・消失を伴う型でRoss症候群がさらに分節性無汗症を伴う型であること、発症時は約80%が片側性で年4%程度の割合で対側化が進むこと、若年〜中年成人(平均32歳)で女性に多い(男女比約1:2.6)こと、急性期に羞明・近見時のかすみ・読書困難を訴えること、経過とともに瞳孔が縮小し深部腱反射の低下も進行しうること、特異的治療は不要で調節障害には老眼鏡、瞳孔径には低濃度ピロカルピン・フィゾスチグミン点眼を対症的に用いることを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Anisocoria(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)低濃度ピロカルピン点眼が2週間以上経過した除神経性の散大瞳孔で縮瞳を来しAdie瞳孔の確認に使えること、高濃度(1〜2%)ピロカルピンで縮瞳しなければ薬剤性散瞳と判定できること、動眼神経麻痺では眼球の外転・下方偏位や高度の眼瞼下垂を伴うのに対しAdie瞳孔には脳神経麻痺そのものがなく眼球運動・眼瞼が正常であることを確認した。閲覧 2026-08-03