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Symptoms · Published

散瞳

Mydriasis

別名
瞳孔散大散瞳症
臓器系
眼科神経
科目
NeurologyPharmacologyPhysiology
トピック
神経内科 G1-01:瞳孔支配の障害薬理学 A3:ムスカリン受容体遮断薬薬理学 A5:間接型交感神経刺激薬・選択的α1作動薬生理学 8.4:視覚の生理学神経内科 G1-11:頭蓋内圧亢進と脳ヘルニアの症候
関連疾患
セロトニン症候群ボツリヌス症抗コリン薬中毒緑内障
起因薬
アトロピントリヘキシフェニジル

🧠 全体像は、(副交感神経・)と(交感神経・α1受容体)という同じ拮抗する2つの平滑筋のうち、今度は後者が優位になった結果であり、とは正反対の軸で起こる。交感神経の刺激でも副交感神経()の遮断でも生じうるが、臨床的に重い意味を持つのは後者であり、なかでもによる圧迫は破裂前に得られる数少ないである。「が保たれているか」を最初の分岐に、原因を薬剤性・神経性・・生理的の4群で整理する。

定義と用語の整理

成人の正常な瞳でおおむね2〜4mm、で4〜8mmであり、は一般に明所で瞳が5mm以上まで拡大した状態を指す1と対比すると、同じのどちらが優位かという1本の軸で理解できる。

項目
優位になる筋 (副交感神経) (交感神経)
代表的な薬剤性の原因 ・オピオイド 点眼・
危険な神経性の原因 橋出血、 麻痺(圧迫性)

では「が保たれるか」がその後のすべての判断の起点になる。交感神経刺激によるを保ちやすく、副交感神経(経路)の遮断によるを失いやすい——この非対称性がにおける「両側性か片側性か」に相当する最初の分岐になる。

との関係も整理しておく。暗所で差が拡大するなら小さいほうの瞳孔の交感神経障害()を疑うのに対し、明所で差が拡大するなら大きいほうの瞳孔の副交感神経障害を疑う——側こそが異常という発想はの項と対称的である。

病態生理

・副交感神経・)と(交感神経・α1受容体)のバランスで決まる。は次のどちらか、あるいは両方によって生じる。

  • 交感神経(α1受容体)の刺激、覚醒・情動・疼痛による生理的な緊張亢進。の経路そのものは障害されないため、光を当てれば収縮する
  • 副交感神経(経路)の遮断(点眼・全身性)、自体の圧迫・虚血、の障害、そのものの損傷。障害される部位によってが失われる程度が変わる

があるかどうか」で、の関与(保たれやすい)と経路の関与(失われやすい)をおおまかに切り分けられる。 ただし圧迫の程度が軽ければ部分的なにとどまりも部分的にしか失われないため、「反射があるから安全」と単純化しない。

原因の群分け

機序 代表例
薬剤性 遮断(点眼・眼科検査用) (短時間作用)、
薬剤性 遮断(全身性 、抗ヒスタミン薬・
薬剤性 α1受容体直接刺激・交感神経刺激 点眼)、
薬剤性 アセチルコリン放出の遮断 の自律神経症状)
神経性 の圧迫・虚血(三徴: 麻痺
神経性 の障害。
神経性 そのものの機械的損傷 (鈍的眼外傷後の
(眼局所) によるの虚血。中等度不良 眼痛・充血・を伴う点が神経性との切り分けになる)
生理的・両側性 の生理的亢進 、覚醒・情動・疼痛
生理的・両側性(重篤) 脳幹機能そのものの広汎な障害 (両側消失は判定に用いる所見の1つで単独では確定しない)

💡 の障害で、に関わる線維より調節に関わる線維の密度が高いため、変性後の再生線維が誤ってにも入り込み、は乏しいがは相対的に保たれるというを来す。 診断は0.1〜0.125%希釈点眼で、により健常眼より強く収縮することを確認する(陽性率はおおむね80%)。を伴えばと呼ばれる2

⚠️ 見逃してはいけないもの

危険度の高い順に並べる。

  • ⚠️ による圧迫。 の三徴で気づかれ、前に得られる数少ないになりうる。副交感線維が神経の表層を走るため圧迫に弱く、の有無が圧迫性(動脈瘤・腫瘤)と虚血性(微小血管性)を分ける鍵になる。詳しい鑑別と経過観察の基準は麻痺の項に譲る。
  • ⚠️ による片側 を越えて中脳・を圧迫する所見で、意識障害の進行を伴えば緊急の頭蓋内圧管理を要する。片側に意識障害が加わったら画像検査の結果を待たず対応を始める。
  • ⚠️ 中等度不良に加え、激しい眼痛・充血・急激なによるを伴う。は狭隅角眼でのみ発作を誘発しうる(緑内障の項参照)。
  • ⚠️ によるに加え、発汗できないことによる発熱・、口渇・皮膚乾燥、尿閉、せん妄を伴う3。臨床診断であり確定できる検査は無く、原因薬の中止と対症療法が中心になる3

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mydriasis'>散瞳</span>に気づく"] --> B{"片側性か両側性か"}
    B -->|"両側性"| C{"意識障害を伴うか"}
    C -->|"あり"| D["脳幹機能の広汎な障害を評価<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='brain death'>脳死</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoxic encephalopathy'>低酸素脳症</span>の可能性を含める"]
    C -->|"なし"| E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flushing'>紅潮</span>・口渇・尿閉・せん妄を伴うか"}
    E -->|"あり"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anticholinergic toxicity'>抗コリン中毒</span>を疑い<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='culprit (suspected) drug'>被疑薬</span>を確認"]
    E -->|"なし"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sympathomimetic'>交感神経刺激薬</span>・生理的要因を確認"]
    B -->|"片側性"| H{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='(pupillary) light reflex'>対光反射</span>は保たれるか"}
    H -->|"消失/不良"| I{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ptosis'>眼瞼下垂</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='impaired ocular motility (ophthalmoparesis)'>眼球運動障害</span>を伴うか"}
    I -->|"あり"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oculomotor nerve (CN III)'>動眼神経</span>圧迫として緊急評価<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior communicating artery aneurysm'>後交通動脈瘤</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uncal herniation'>鉤ヘルニア</span>を検索"]
    I -->|"なし"| K{"眼痛・充血・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased visual acuity'>視力低下</span>を伴うか"}
    K -->|"あり"| L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute angle-closure glaucoma'>急性閉塞隅角緑内障</span>を疑う"]
    K -->|"なし"| M["点眼薬使用歴・外傷歴を確認"]
    H -->|"保たれる<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='near reflex (near response)'>近見反応</span>は相対的に保持)"| N["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Adie&#39;s tonic pupil'>Adie瞳孔</span>を疑い<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pilocarpine'>ピロカルピン</span>0.1%点眼で過敏収縮を確認"]

対症療法の考え方

そのものを標的にした介入はほとんど存在せず、原因の除去・原疾患の治療に委ねる所見型の所見である。

  • では、自体でなくという背景病変への対応が治療の本体である(詳細は麻痺の項)。
  • では薬・抑制薬でを下げたのちを解除する(詳細は緑内障の項)。
  • ・点眼薬によるは、の中止と経過観察で軽快することが多い。
  • によるにはへの対症的な・サングラスで対応し、自体を的に戻す治療は基本的に行わない。
  • は良性・非進行性の経過をとることが多く、調節障害が読書に支障を来す場合に限り矯正を検討する程度にとどまる。

まとめ

  • (副交感神経)と(交感神経)の拮抗のうち、交感神経の刺激または副交感神経(経路)の遮断のどちらでも起こる。
  • が保たれるか」が局在診断の起点であり、交感神経性のは保たれやすく、経路の障害は失われやすい。
  • 原因は薬剤性(点眼・)、神経性(麻痺・括約筋損傷)、)、生理的(・覚醒・)の4群に整理できる。
  • 危険度順に、による圧迫、を見逃さない。
  • 鑑別は片側性/両側性→意識障害・の有無→の有無→随伴所見(、眼痛・充血)の順に絞り込む。
  • そのものへの介入は基本的になく、の中止・原疾患治療(抑制・切開術)に委ねる。

出典

  1. 1.The Effect of Pupil Size on Visual Resolution(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)成人の正常な瞳孔径が明所視でおおむね2〜4mm、暗所視で4〜8mmの範囲にあることを確認し、散瞳の定義域(明所で5mm以上)の基準に用いた。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Adie Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)Adie強直性瞳孔が毛様体神経節の障害による光近反応解離(対光反射不良・近見反応は相対的に保持)を呈すること、診断には0.1〜0.125%希釈ピロカルピン点眼による除神経性過敏(陽性率はおおむね80%)を用いること、無汗症を伴えばRoss症候群と呼ばれることを確認した。閲覧 2026-08-03
  3. 3.Anticholinergic Medications(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)抗コリン中毒が散瞳・無汗性の発熱・皮膚紅潮・尿閉・せん妄などのトキシドロームを呈すること、臨床診断であり確定できる検査法が無いことを確認した。閲覧 2026-08-03