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Disease Atlas · 神経 · 中毒

交感神経刺激薬中毒

Sympathomimetic toxicity

別名
交感神経刺激性中毒交感神経刺激性トキシドロームsympathomimetic toxidromesympathomimetic syndrome
臓器系
神経循環器全身
科目
Forensic MedicinePharmacology
トピック
法医学 30:乱用薬物と薬物関連死薬理学 A5:間接型交感神経刺激薬・選択的α1作動薬
鑑別疾患
セロトニン症候群悪性高熱症悪性症候群抗コリン薬中毒
合併症
横紋筋融解症
治療薬
ロラゼパムジアゼパムジルチアゼム
原因薬剤
コカインメタンフェタミンリスデキサンフェタミン
症状
頻脈散瞳発汗焦燥発熱
検査値
クレアチンキナーゼ

🧠 全体像:中毒は、・(など)に代表されるの過剰刺激で、頻脈・・高血圧・発汗・という「アドレナリンが効きすぎた状態」を呈する1。学習上の核心はとの鑑別——瞳孔所見()は同じでも、皮膚が「濡れているか乾いているか」で見分ける。交感神経刺激性は発汗が保たれ皮膚が湿潤するのに対し、は発汗ができず乾燥する2。を来す点は共通だが、どちらもは無効でが要る。

病態

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cocaine'>コカイン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stimulant (Japanese Stimulants Control Act class)'>覚醒剤</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methamphetamine'>メタンフェタミン</span>など)による<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='synaptic cleft'>シナプス間隙</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catecholamine'>カテコラミン</span>増加"] --> B["α・β受容体の広汎な刺激"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiovascular'>心血管系</span>:頻脈・血管収縮・高血圧"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dilator pupillae'>瞳孔散大筋</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mydriasis'>散瞳</span>"]
    B --> E["汗腺(発汗は保たれる)"]
    B --> F["中枢神経系:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arousal'>覚醒度</span>上昇・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='psychomotor agitation'>精神運動興奮</span>"]
    F --> G["進行すると<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypertonia'>筋緊張亢進</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperreflexia'>腱反射亢進</span>・せん妄・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hallucination'>幻覚</span>"]
    C --> H["進行すると<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myocardial ischemia'>心筋虚血</span>・不整脈・脳卒中・動脈解離"]
    F --> I["熱産生亢進+血管収縮による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heat dissipation'>熱放散</span>障害"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperthermia'>高体温</span>——予後不良の強い指標"]

💡 は「発汗できないから」ではなく、興奮による熱産生亢進と血管収縮による障害が主因である。 発汗そのものは保たれているため、のとは機序が異なる1。

原因

・など濫用薬物が代表だが、のような処方の、合成カチノン(脱法ハーブ等)でも同様の症候群を来しうる。2019年時点の米国の使用者は約200万人(2015年の140万人から増加)で、使用は18〜25歳男性に最も多く、過量による死亡率は2002〜2018年の間に3倍に増加した1。

臨床像

⭐ 早期は頻脈・・高血圧・上昇()・発汗の組み合わせで、進行すると・・せん妄・・に至る1。ドパミン過剰による・混乱、による神経症状(振戦・様所見)を伴うこともある2。

系統 所見
循環 頻脈、高血圧
眼
皮膚 発汗(保たれる)
精神・神経 ・、進行するとせん妄・
体温 発熱(。予後不良の強い指標)

⚠️ 重症例では心筋梗塞・心不全・脳卒中・動脈解離・けいれん・・に進展しうる。 (パターン)、重度のと脳浮腫、も報告されている12。

診断:抗コリン薬中毒との鑑別

⭐ ・興奮・という表面上似た像を呈する2つの中毒症候群は、「発汗しているか」で見分ける。

(本病態)
皮膚 湿潤(発汗が保たれる) 乾燥・(発汗できない)
瞳孔 (同じ)
血圧 高血圧が目立つ 迷走神経活動低下による軽度上昇にとどまる
会話・行動 過剰な会話量・身体 せん妄での変動を繰り返す
保たれる〜やや亢進 低下(尿閉を伴う)

これは、ノートの鑑別表と対をなす所見であり、瞳孔所見だけでは両者を区別できない点に注意する2。

治療

⭐ ベンゾジアゼピン(、など)が第一選択である。 過剰なの作用を緩和し、頻脈・高血圧・興奮・・けいれんリスクをまとめて軽減する1。

  • には積極的なで対応する。は無効。
  • 頻脈・中等度の高血圧が持続する場合はが有用なことがある1。
  • 十分な輸液で・の悪化を防ぐ2。

⚠️ β遮断薬の使用は議論がある。 特にが疑われる例では、β受容体を遮断しても刺激が拮抗されずに残るため、・末梢血管攣縮がかえって悪化する懸念がある1。

まとめ

  • 中毒は、・などによるの過剰刺激で、頻脈・・高血圧・発汗・を呈し、進行すると・せん妄・に至る。
  • とは瞳孔所見()が共通するため紛らわしいが、発汗の有無で鑑別する——交感神経刺激性は湿潤、抗コリン性は乾燥。
  • は予後不良の強い指標で、は無効。積極的なが必要な点は・など他のと共通する。
  • 重症化すると・脳卒中・動脈解離・けいれん・・に進展しうる。
  • 治療はベンゾジアゼピンが第一選択。β遮断薬は特にで非拮抗α刺激による悪化の懸念から慎重に扱う。

出典

  1. 1.Sympathomimetic Toxicity(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)NCBI Bookshelfのライブページで確認した(2025年2月16日最終更新、Schaffer DH・Richards JR)。2019年時点のメタンフェタミン使用者は米国で約200万人(2015年は140万人)に増加し、コカイン使用は18〜25歳男性で最も多く2002〜2018年は横ばいだが同期間のコカイン過量による死亡率は3倍に増加したこと。早期の交感神経刺激性中毒は頻脈・散瞳・高血圧・覚醒度上昇/精神運動興奮・発汗を呈し、進行すると筋緊張亢進・腱反射亢進・せん妄・幻覚・高体温に至ること。重症例では心筋梗塞・心不全・脳卒中・動脈解離・けいれん・横紋筋融解症・脳出血に進展しうること、高体温は予後不良の強い指標であること。ベンゾジアゼピンが第一選択治療で、頻脈・高血圧が持続する場合はジルチアゼムが有用な場合があるが、β遮断薬は特にコカイン中毒疑い例で非拮抗α受容体刺激による血管攣縮の悪化が懸念され議論があること、高体温には解熱薬ではなく積極的な外部冷却で対応することを確認した。閲覧 2026-09-16
  2. 2.Intoxications Associated With Agitation, Tachycardia, Hypertension, and Fever: Differential Diagnosis, Evaluation, and Management(The Primary Care Companion for CNS Disorders・2013)交感神経刺激性中毒は頻脈・発汗・高血圧・散瞳・高体温というアドレナリン過剰所見に加え、ドパミン過剰による妄想・混乱、セロトニン過剰による神経症状を呈しうること。抗コリン薬中毒との鑑別点として、交感神経刺激性中毒では発汗が顕著で会話量・身体運動量が過剰になるのに対し、抗コリン薬中毒は迷走神経活動低下による軽度の血圧上昇にとどまり発汗機構が障害され意識レベルが変動する(waxes and wanes)ことを確認した。重症化時の合併症として急性尿細管壊死パターンの急性腎障害、けいれん、異常な低ナトリウム血症と脳浮腫、劇症肝不全、横紋筋融解症による腎不全を挙げていること、治療の中核はベンゾジアゼピンであり積極的な輸液と外部冷却を併用することを確認した。閲覧 2026-09-16