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Symptoms · Published

焦燥

Agitation

別名
焦燥感精神運動興奮不穏
臓器系
精神神経
科目
Psychiatry
トピック
精神医学 A-07:せん妄:病因・診断基準・臨床管理精神医学 A-14:アルコール使用症の疫学・診断・離脱・アルコール幻覚症・経過
関連疾患
急性アルコール中毒交感神経刺激薬中毒
起因薬
ビガバトリン
スコア
CIWA-ArRASS

🧠 全体像:は「じっとしていられない」というな内的緊張と、そわそわ動く・歩き回るといったな行動亢進の両面を持つ症候である。⚠️ 臨床で最も陥りやすい誤りは、を見た瞬間に精神症状だと決めつけてしまうことである。低血糖・低酸素・疼痛・尿閉・便秘・アルコールやベンゾジアゼピンの離脱・感染・といった身体的原因を先に外すのが本体で、それを終えて初めて精神科的な(不安、、精神病)や薬剤性()を考える順番になる1。

定義と用語の整理

「落ち着かない」を表す言葉は互いに重なりながら、指す病態が微妙に異なる。

用語 中心となる特徴
内的な緊張・落ち着きのなさのと、それに伴う目的の乏しい運動亢進(そわそわ、歩き回る、)
臨床現場でとほぼ同義に使われるが、暴言・体動などの逸脱行動そのものを指すことが多い、やや広い口語的な語
感情の高ぶりを伴う運動・量の全般的な増加。やでみられる、より広い精神医学用語
⚠️ 薬剤性の内的で、とは別概念。 抗精神病薬・などの作用により生じる、下肢を中心とした「じっとしていられない」感覚と反復的な運動(足踏み、体重移動)を特徴とする。感情的な高ぶりを伴わない点、原因薬剤を止めれば軽快する点で全般と区別する
せん妄の せん妄のうち・多動を主体とする病型。注意・の変動を伴う点が、意識は保たれたままのみを呈する状態と異なる

病態生理:身体的原因を先に外す

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='agitation'>焦燥</span>を認める"] --> B["身体的原因"]
    A --> C["薬剤性"]
    A --> D["精神科的原因"]
    B --> E["代謝:低血糖・低酸素・電解質異常"]
    B --> F["疼痛・尿閉・便秘などの<br>不快な身体刺激"]
    B --> G["離脱:アルコール・<br>ベンゾジアゼピン"]
    B --> H["感染・敗血症"]
    B --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intracranial lesion'>頭蓋内病変</span>"]
    C --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='akathisia'>アカシジア</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dopamine receptor blocking agent'>ドパミン受容体遮断薬</span>)"]
    D --> K["不安、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='manic state'>躁状態</span>、<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute psychosis'>急性精神病</span>、認知症の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='behavioral and psychological symptoms of dementia'>BPSD</span>"]
    B --> L{"注意・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orientation'>見当識</span>も<br>変動しているか"}
    L -->|"はい"| M["せん妄の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperactive subtype'>過活動型</span>として扱う"]

⭐ 身体的原因の多くは治療可能で、見逃すと根本治療が遅れる。代謝性(低血糖・低酸素・電解質異常)、不快な身体刺激(疼痛・尿閉・便秘)、(アルコール・ベンゾジアゼピン)、敗血症などの感染、が代表群である1。

⚠️ 緊急・見逃してはいけない原因

  • :患者の急な・後にが出現した場合、けいれん・へ進行しうる緊急病態として扱う。すでに離脱と診断された患者では、CIWA-Arの構成10項目のうちはその1項目であり、重症度のモニタリングに用いる。
  • 低血糖・低酸素:と血糖の確認は、より先に行う。
  • せん妄:注意・の変動を伴うは、せん妄のとして原因検索を急ぐ。数時間〜数日の急性発症・が手がかりになる。
  • ・感染:新規のに発熱、、歴を伴う場合は、画像・を検討する。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='agitation'>焦燥</span>を訴える/認める"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vital sign'>バイタルサイン</span>・血糖を確認"]
    B --> C{"異常あり"}
    C -->|"はい"| D["低血糖・低酸素・感染など<br>身体的原因の治療を優先"]
    C -->|"いいえ"| E["疼痛・尿閉・便秘の有無を確認"]
    E --> F["飲酒歴・ベンゾジアゼピン使用歴を確認"]
    F --> G{"離脱のリスクあり"}
    G -->|"はい"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='withdrawal syndrome'>離脱症候群</span>として評価・治療"]
    G -->|"いいえ"| I["注意・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orientation'>見当識</span>を評価"]
    I --> J{"変動する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cognitive impairment'>認知機能障害</span>あり"}
    J -->|"はい"| K["せん妄として原因検索"]
    J -->|"いいえ"| L["薬剤歴(抗精神病薬・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antiemetics'>制吐薬</span>)を確認し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='akathisia'>アカシジア</span>と精神科的原因を鑑別"]

対症療法の考え方

⭐ 非薬物的介入が原因治療と並んで第一選択になる。 環境調整(静かでをつけやすい環境、家族の付き添い、頻回の)と原因への対応を優先し、鎮静薬をルーチンに投与するのではなく的なを目指すことが推奨される2。

  • 薬物を使う場合も原因別に選ぶ。にはベンゾジアゼピン、せん妄では原因除去を主体とし鎮静薬の反射的投与を避ける、は原因薬剤の減量・中止をまず検討する、というように機序が異なれば対応も異なる。
  • の程度をに追う場面では、RASS(Richmond Agitation-Sedation Scale)のようなの確認された尺度で評価者間のばらつきを減らす3。

まとめ

  • は内的な落ち着きのなさのと行動亢進の両面を持つ症候で、精神症状と決めつける前に身体的原因(代謝・疼痛・尿閉・便秘・離脱・感染・)を外す。
  • は薬剤性の内的でとは別概念、せん妄のは注意・の変動を伴う点で区別する。
  • の離脱では、CIWA-Arの構成項目としての重症度を追跡する。
  • 対応は非薬物的介入と原因治療が中心で、薬物は原因別に選ぶ。そのものの経時評価にはRASSなどの確認された尺度を用いる。

出典

  1. 1.Agitation(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)焦燥が落ち着きのなさ・興奮・易刺激性・暴力的行動などを含む非特異的な行動パターンであり本人や周囲に危害が及びうる緊急性の高い状態であること、鑑別診断に低血糖・低酸素症・疼痛・尿閉・便秘・薬物離脱・感染・頭蓋内病変などの身体的原因が含まれることを確認した。閲覧 2026-08-19
  2. 2.Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU(Society of Critical Care Medicine(Critical Care Medicine、Devlin JWら)・2018)妥当性・信頼性が確認された尺度(RASSなど)を用いて焦燥・鎮静の深さを反復評価すべきこと、鎮静薬をルーチンに投与するより非薬物的な介入と原因への対応を優先し目標指向的な浅い鎮静を目指すべきことを確認した。閲覧 2026-08-19
  3. 3.The Richmond Agitation-Sedation Scale: Validity and Reliability in Adult Intensive Care Unit Patients(American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine・2002)RASSが+4(好戦的)から-5(覚醒不能)までの10段階で焦燥・鎮静の程度を評価する尺度であり、評価者間信頼性・妥当性が高いことを確認した。閲覧 2026-08-19