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Drug Atlas · A21 Antiepileptics / 抗てんかん薬 · 必修

ビガバトリン

vigabatrin

分類
Antiepileptics / 抗てんかん薬
商品名(日本)
サブリル
商品名(EU)
Sabril
科目
Pharmacology
トピック
A21: Antiepileptics. Adjuvant analgesics
承認適応
乳児てんかん性スパズム症候群てんかん
副作用
傾眠焦燥視力低下体重増加
監視検査値
網膜電図
影響検査値
アミノトランスフェラーゼ
対象疾患
てんかん性脳症結節性硬化症

🧠 全体像:は(-T)を不可逆的に阻害するという、他のどのとも異なる作用機序を持つ。この「不可逆的」という性質が、(、)への高い有効性と、不可逆的なという重大な副作用の両方を生んでいる。に伴うでは単剤第一選択という、狭いが確立した居場所を持つ薬である。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 標的 可逆性 適応
-T阻害 不可逆的(酵素の新規合成を待つ必要がある) 難治性焦点てんかん・
-A受容体(↑) 可逆的 てんかん・重積・
-A受容体(↑) 可逆的 ・・重積・パニック

⭐ の治療は原因で選択が分かれる。

  • による例: 単剤が第一選択で、2週間以内にスパズムが止まらなければ()またはをとして追加する1。
  • それ以外の例: 第一選択はではなく、によるまたは高用量副腎皮質ステロイドである(の項を参照)。はそこへする位置づけで、の臨床診断がついた377例の(ICISS)では、+の第14〜42日のスパズム消失が72%(133/186例)、単独が57%(108/191例)、差15.0%(95%信頼区間5.1〜24.9、p=0.002)であった2。

💡 この試験はで、は「第14〜42日にスパズムが観察されないこと」という短期のスパズム消失である。発達転帰そのものを比べた結果ではない点に注意する。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vigabatrin'>ビガバトリン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gamma-aminobutyric acid'>GABA</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='transaminases'>トランスアミナーゼ</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gamma-aminobutyric acid'>GABA</span>-T)へ不可逆的に結合"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gamma-aminobutyric acid'>GABA</span>-Tによる<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='gamma-aminobutyric acid'>GABA</span>分解が止まる"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synaptic cleft'>シナプス間隙</span>・細胞内の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gamma-aminobutyric acid'>GABA</span>濃度が上昇"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gamma-aminobutyric acid'>GABA</span>-A受容体を介した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inhibitory transmission'>抑制性伝達</span>が増強"]
    D --> E["発作の発生・伝播が抑制される"]
    F["酵素が不可逆的に失活している"] -.->|"効果の消失・回復ともに<br>新規酵素合成を待つ必要がある"| B

💡 「不可逆的」阻害であることが両刃の剣になる。一度阻害された-Tは新しい酵素が作られるまで機能しないため、血中濃度が下がっても効果が持続する(が多少崩れても発作抑制が保たれやすい)。しかし同じ理由で、視野への毒性が始まると中止しても不可逆的に残る。

薬物動態

項目 値・特徴
良好(食後投与でがやや下がるがは変わらない)
ほとんど結合しない
代謝 ほとんど代謝を受けない(血漿中に代謝物を認めない)
排泄 が主体——投与量の約82%が未変化体として尿中に排泄される3
薬効の持続 酵素ののため、血中濃度と薬効が乖離する(濃度が下がっても効果が残る)
への影響 ・を低下させる(で30〜100%の低下報告)。肝機能を評価するときはなど他項目も併せて見る3

適応

同じ薬でも国によって承認されている範囲が違う。 難治性焦点てんかんへの併用は欧州・米国の適応であり、日本では承認されていない。

地域 承認されている適応
他ので不十分な難治性(の有無を問わない)の併用療法/()の4
日本(サブリル散分包) のみ3
2歳以上の難治性の併用療法(としては適応外)/生後1か月〜2歳のの5

⚠️ 以外では単剤で開始しない(欧州のが明記している)4。

用法・用量

では早期の治療開始が発達予後に影響するため速やかに導入する。

対象 用量
(日本) 生後4週以上に1日50mg/kgで開始し、3日以上の間隔をあけて1日量として50mg/kgを超えない範囲で漸増する。1日最大量は150mg/kg又は3gのいずれか低い方を超えない。いずれも1日2回に分割し、してする3
成人の難治性(欧州) 既存のに1g/日をして開始し、反応とをみながら週ごとに0.5gずつ増量する。有効域は概ね2〜3g/日、推奨最大量は3g/日4

⚠️ 効果判定の目安:では2〜4週、難治性では12週。日本の電子添文は、開始後2〜4週間で効果が認められない場合、あるいは最大量150mg/kg/日でも改善しない場合は中止を考慮するよう求めている3。効かないまま漫然と続けることは、視力を失うリスクだけを積み上げる。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤成分への過敏症の既往(欧州・日本)。日本ではこれに加えてサブリル処方登録システム(SRSP)の規定を遵守できない患者が禁忌である3。米国の添付文書は禁忌を「なし」としている5。疾患そのものを禁忌とする記載はどの国の文書にもない。
  • ⚠️ 不可逆的な(両側性の)が最大の問題である。約1/3の患者に生じ、投与期間・に応じて頻度が上がる。通常は鼻側から始まり、より鼻側視野が広範に欠損する3。発現は投与開始から数ヵ月〜数年後で、大半の患者はしない——重度の欠損があっても本人が気づかないため、検査でしか捉えられない4。
  • ⚠️ 日本では、の診療に精通しSRSPに登録された・薬剤師が在籍し、眼科専門医と連携できる登録医療機関の登録患者にのみ投与できる。投与前に患者または代諾者から文書同意を得る3。
  • 視機能のモニタリング(日本の電子添文):視力検査・による視野評価を少なくとも3ヵ月に一度、などによるを投与開始時・3ヵ月・9ヵ月・12ヵ月・以降少なくとも6ヵ月ごとに実施する3。欧州のは、ベースライン(遅くとも開始後4週以内)・治療中3〜6ヵ月ごと・中止後3〜6ヵ月の評価を推奨している4。
  • 乳児などに協力できない集団では、やなど、その患者に適した方法で代替する4。
  • 既存の臨床的に問題となるがある患者には推奨されない。他のを持つ薬剤と併用しない4。
  • ⚠️ 頭部MRI異常:視床・基底核・脳幹・小脳に高信号・異常信号が現れることがあり、髄鞘内浮腫の報告もある。児205例のでは群22%対群4%で、これらの変化は中止により概ね消退したと報告されている5。一方で日本の電子添文は死亡に至った報告もある重大な副作用として扱い、投与開始時と投与期間中の定期的な頭部MRIを求めている3。「可逆的な所見」と片づけてよい根拠はない。
  • 急激な増量とは脳症症状(顕著な鎮静・・・意識障害)の危険因子である。はが主体のため、腎機能低下例では慎重に用いる3。

副作用

頻度(日本の電子添文の区分) 内容
5%以上 傾眠、、
5%未満 、疲労、浮腫、、、悪心・嘔吐・腹痛、・・眼振、発疹、関節痛、貧血、減少
頻度不明 体重増加、減少、興奮・攻撃性・うつ病・などの精神症状
重大な副作用 ・視力障害(不可逆的なによる)、・、(5%未満)・発作、(・呼吸困難・呼吸不全)、脳症症状、頭部MRI異常

⚠️ でありながら発作を悪化させうる。 や発作の新規出現・増悪が重大な副作用として挙げられている3。欧州のも、を持つ患者はとくにこの影響を受けやすいとしている4。

💡 ・の低下は「肝機能が良い」わけではない。 がこれらの自体を阻害するために起きる見かけの低下であり、だけで肝障害を否定できない3。

まとめ

  • を不可逆的に阻害して濃度を上げる、他剤と機序が異なる薬。
  • によるでは単剤第一選択。それ以外の第一選択はまたは高用量副腎皮質ステロイドで、はそこへする位置づけである。
  • は国で違う。日本はのみで、難治性焦点てんかんへの併用は欧州・米国の適応である。
  • 不可逆的なが最大の弱点で、約1/3に生じ大半は。日本ではSRSP登録下でのみ使用でき、を含む定期的な眼科検査が義務づけられている。
  • 血中濃度と薬効が乖離する(効果の発現・消失に酵素の再合成を要する)という上の特徴を持つ。・を低下させるため、肝機能評価では他項目も併せて見る。

出典

  1. 1.Tuberous Sclerosis Complex(GeneReviews(NCBI Bookshelf)・2024)結節性硬化症に伴う乳児スパズムでビガバトリンが第一選択として推奨されること、2週間以内にスパズムが止まらなければ副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)またはプレドニゾロンを二次治療として追加できること(Treatment of Manifestations節、Seizuresの行)、ビガバトリン投与中は開始後4週以内・治療中3ヵ月ごと・中止後3〜6ヵ月に視機能検査を行うこと(Surveillance節、Ophthalmologicの行)を確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.Safety and effectiveness of hormonal treatment versus hormonal treatment with vigabatrin for infantile spasms (ICISS): a randomised, multicentre, open-label trial(The Lancet Neurology・2017)乳児スパズムの臨床診断があり登録前7日以内にヒプスアリスミア(または類似)脳波を示した乳児377例を無作為化した非盲検試験で、ホルモン療法+ビガバトリン群の第14〜42日のスパズム消失が133/186例(72%)、ホルモン療法単独群が108/191例(57%)、差15.0%(95%信頼区間5.1〜24.9、p=0.002)であったこと(抄録Methods・Findings)を確認した閲覧 2026-09-05
  3. 3.サブリル散分包500mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(製造販売元:サノフィ株式会社)・2023)日本での効能・効果が「点頭てんかん」のみであること(4.効能又は効果)、用法・用量が生後4週以上に1日50mg/kgで開始し3日以上の間隔で1日量として50mg/kgを超えない範囲で漸増、1日最大150mg/kg又は3gの低い方を超えず1日2回に分割すること、投与開始後2〜4週間で治療効果が認められない場合は中止を考慮すること(6.・7.)、警告として約1/3の患者で不可逆的視野狭窄が報告され外国人成人36.5%(110/301例)・小児20.0%(17/85例)であること、サブリル処方登録システム(SRSP)に登録された医師・薬剤師のいる登録医療機関で登録患者にのみ投与できること(1.警告)、禁忌が過敏症既往とSRSPの規定を遵守できない患者の2つであること(2.禁忌)、視野障害が両側性求心性視野狭窄で通常鼻側からあらわれ耳側より鼻側が広範に欠損すること、視力検査・対座法を少なくとも3ヵ月に一度、網膜電図などによる視野検査を投与開始時・3ヵ月・9ヵ月・12ヵ月・以降少なくとも6ヵ月ごとに行うこと(8.1)、視床・基底核・脳幹・小脳の頭部MRI異常(T2強調画像高信号・拡散強調画像異常信号)が重大な副作用で死亡に至った報告もあること(8.2・11.1.6)、重大な副作用にてんかん重積状態(5%未満)・ミオクローヌス発作・呼吸障害・脳症症状・視神経萎縮/視神経炎が含まれること(11.1)、5%以上の副作用が激越・不眠症・傾眠であり体重増加が頻度不明であること(11.2)、ALTが30〜100%低下しALT・AST以外の肝機能検査項目も考慮すべきこと(12.1)、代謝物が認められず投与量の約82%が未変化体として尿中に排泄され血漿タンパクにほとんど結合しないこと(16.3・16.4)を確認した閲覧 2026-09-05
  4. 4.Sabril 500 mg film-coated tablets - Summary of Product Characteristics(Sanofi / electronic medicines compendium (emc)・2025)適応が「他の抗てんかん薬との併用による難治性部分てんかん(二次性全般化の有無を問わない)」と「乳児スパズム(West症候群)の単剤療法」の2つであること(4.1)、乳児スパズム以外では単剤で開始してはならないこと、視野欠損が約1/3の患者で報告され発現は投与開始から数ヵ月〜数年後で大半が無症状であること、視野評価をベースライン(遅くとも開始後4週以内)・治療中3〜6ヵ月ごと・中止後3〜6ヵ月に行うこと、既存の臨床的に問題となる視野欠損がある患者には推奨されないこと、他の網膜毒性薬と併用しないこと(4.4)、成人の難治性部分てんかんでは1g/日を上乗せで開始し週ごとに0.5gずつ漸増、有効域が2〜3g/日で最大3g/日であること、効果判定の目安が乳児スパズムで2〜4週・難治性複雑部分発作で12週であること(4.2)、禁忌が過敏症のみであること(4.3)、傾眠が非常に高頻度で小児では興奮・激越が非常に高頻度であること、髄鞘内浮腫を含む頭部MRI異常が報告されているが臨床的意義は不明であること(4.8)を確認した閲覧 2026-09-05
  5. 5.SABRIL (vigabatrin) powder, for solution(U.S. National Library of Medicine (DailyMed) / Lundbeck Pharmaceuticals LLC・2025)米国の適応が「2歳以上の難治性複雑部分発作の併用療法(第一選択薬としては適応外)」と「生後1か月〜2歳の乳児スパズムの単剤療法」であること(1.1・1.2)、禁忌が「None」であること(4)、成人試験に基づき30%以上の患者に両側性求心性視野狭窄が生じうること(5.1)、乳児スパズム児205例の後ろ向き疫学研究で頭部MRI変化の頻度がビガバトリン群22%・他治療群4%であり、これらの変化は治療中止により概ね消退したこと(5.3)を確認した閲覧 2026-09-05