Imaging findings · Published
髄鞘内浮腫
Intramyelinic edema
- 別名
- 髄鞘内浮腫性変化
- 臓器系
- 神経
- 科目
- Pharmacology
- トピック
- 薬理学 A21:抗てんかん薬・鎮痛補助薬
🧠 全体像:髄鞘内浮腫は「見えたら即座に薬を止める所見」ではなく、「多くは無症状で可逆的だが、まれに重篤化する」という二面性を持つ所見である。ビガバトリンvigabatrinビガバトリン(vigabatrin)vigabatrin(ビガバトリン)を投与された乳児の頭部MRIで基底核・視床・脳幹に対称性の異常信号を見たとき、無症状であれば経過観察でよいという判断枠組みが中心になる。
所見の定義
髄鞘の層板 lamellae 層板(lamellae) lamellae(層板) 間に水分が異常に貯留し、髄鞘が層状に剥離・空胞化vacuolization (vacuolation) 空胞化(vacuolization (vacuolation))vacuolization (vacuolation)(空胞化) する組織学的変化を指す。動物モデルanimal models 動物モデル(animal models)animal models(動物モデル) ではビガバトリン vigabatrin ビガバトリン(vigabatrin) vigabatrin(ビガバトリン) が用量依存性 Dose-related 用量依存性(Dose-related) Dose-related(用量依存性) にこの変化を誘発することが知られており、ヒトでもビガバトリン vigabatrin ビガバトリン(vigabatrin) vigabatrin(ビガバトリン) 関連脳異常(VABAM)の病理学的基盤として、白質の空胞化 vacuolization (vacuolation) 空胞化(vacuolization (vacuolation)) vacuolization (vacuolation)(空胞化) とともに報告されている12。
モダリティと写り方
| モダリティmodalityモダリティ(modality)modality(モダリティ) | 所見 |
|---|---|
| MRIMRI(magnetic resonance imaging) T2強調画像T2-weighted imageT2強調画像(T2-weighted image)T2-weighted image(T2強調画像) | 淡蒼球globus pallidus淡蒼球(globus pallidus)globus pallidus(淡蒼球)・視床・視床下核subthalamic nucleus視床下核(subthalamic nucleus)subthalamic nucleus(視床下核)・大脳脚crus cerebri大脳脚(crus cerebri)crus cerebri(大脳脚)・中脳・脳幹(正中縦束を含む)・小脳歯状核dentate nucleus of the cerebellum 小脳歯状核(dentate nucleus of the cerebellum)dentate nucleus of the cerebellum(小脳歯状核) に及ぶ両側性・対称性の高信号2 |
| MRI 拡散強調画像diffusion-weighted imaging (DWI) 拡散強調画像(diffusion-weighted imaging (DWI))diffusion-weighted imaging (DWI)(拡散強調画像) (DWIDWI, diffusion-weighted imaging) | 同じ分布域に拡散制限 diffusion restriction 拡散制限(diffusion restriction) diffusion restriction(拡散制限) を伴う異常信号 |
⭐ 分布が左右対称であることが特徴である。片側性・非対称の病変は本所見として扱わず、脳血管障害Cerebrovascular disease 脳血管障害(Cerebrovascular disease)Cerebrovascular disease(脳血管障害) など他の病態を疑う。
リスクを上げる形態
ビガバトリンvigabatrin ビガバトリン(vigabatrin)vigabatrin(ビガバトリン) 関連脳異常(VABAM)は点頭てんかん infantile spasms 点頭てんかん(infantile spasms) infantile spasms(点頭てんかん) の治療を受けた小児の22〜32%にMRI上認められる2。危険因子は以下の通り。
| 危険因子 | 備考 |
|---|---|
| 原因不明の点頭てんかん infantile spasms点頭てんかん(infantile spasms) infantile spasms(点頭てんかん) | 基礎疾患が明らかな例より頻度が高い |
| 年齢12か月未満 | 成人では観察されず、年齢依存性age-dependent 年齢依存性(age-dependent)age-dependent(年齢依存性) が強い1 |
| 高用量 | 用量依存性Dose-related 用量依存性(Dose-related)Dose-related(用量依存性) の関連が示唆される |
| 副腎皮質刺激ホルモンadrenocorticotropic hormone, ACTH 副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone, ACTH)adrenocorticotropic hormone, ACTH(副腎皮質刺激ホルモン) などホルモン療法 hormone therapy, HT ホルモン療法(hormone therapy, HT) hormone therapy, HT(ホルモン療法) の併用 | 単剤投与monotherapy 単剤投与(monotherapy)monotherapy(単剤投与) より頻度が上がりうる |
信号変化signal change 信号変化(signal change)signal change(信号変化) はビガバトリン vigabatrin ビガバトリン(vigabatrin) vigabatrin(ビガバトリン) 開始後3〜6か月でピークに達する一過性の経過をとり、投与期間や発作の有無とは無関係 unrelated 無関係(unrelated) unrelated(無関係) に生じる1。
評価の進め方
flowchart TD
A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vigabatrin'>ビガバトリン</span>投与中の乳児に頭部MRIを施行"] --> B{"視床・基底核・脳幹に両側対称性のT2/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion-weighted imaging'>DWI</span>高信号があるか"}
B -->|"なし"| C["経過観察を継続"]
B -->|"あり"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical manifestation'>臨床症状</span>(脳症・不随意運動・自律神経症状)を伴うか"}
D -->|"無症状"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vigabatrin'>ビガバトリン</span>を継続しつつ経過観察でよい場合が多い"]
D -->|"症状あり"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vigabatrin'>ビガバトリン</span>の中止・減量を検討"]
E --> G["数か月後に再検してピークを過ぎた後の消退を確認"]
F --> G
過去画像との比較は、信号変化signal change 信号変化(signal change)signal change(信号変化) が3〜6か月をピークに自然消退する一過性の経過をたどることを確認するうえで不可欠である。ビガバトリンvigabatrin ビガバトリン(vigabatrin)vigabatrin(ビガバトリン) を中止せずに経過観察する判断の根拠になる。
紛らわしいもの
- ⚠️ 対称性・両側性という分布そのものは本所見に特異的ではない。 ビガバトリンvigabatrin ビガバトリン(vigabatrin)vigabatrin(ビガバトリン) 関連脳異常のMRIパターンは他の病態と鑑別を要する分布であり、単独の画像所見ではなくビガバトリン vigabatrin ビガバトリン(vigabatrin) vigabatrin(ビガバトリン) の投与歴と時間経過 time course 時間経過(time course) time course(時間経過) (開始後3〜6か月をピークに消退するか)を併せて判断する2。
- 無症状の異常信号と症候性の脳症を区別する。 大半の患者は無症状で自然消退するが、まれに脳症・舞踏運動chorea 舞踏運動(chorea)chorea(舞踏運動) 様の不随意運動・自律神経症状(徐脈・呼吸抑制)を呈することがある。
- 日本の添付文書は死亡例を含めて重大な副作用として扱う一方、海外の報告は多くが可逆的・無症状としている。 「可逆的な所見だから安全」と一律に片づけない3。
まとめ
- 髄鞘内浮腫は髄鞘層板 lamellae 層板(lamellae) lamellae(層板) 間への異常な水分貯留で、ビガバトリンvigabatrin ビガバトリン(vigabatrin)vigabatrin(ビガバトリン) 投与中の乳児で視床・基底核・脳幹に両側対称性のT2/DWI高信号として現れる。
- 点頭てんかんinfantile spasms 点頭てんかん(infantile spasms)infantile spasms(点頭てんかん) 治療中の小児の22〜32%に認められ、投与開始後3〜6か月をピークに自然消退する一過性の経過をとることが多い。
- 大半は無症状だが、脳症・不随意運動などの症候性経過やまれに死亡例の報告もあり、画像所見だけで安全と決めつけない。
出典
- 1.Transient brain magnetic resonance imaging hyperintensity in basal ganglia and brain stem of epileptic infants treated with vigabatrin(Journal of Child Neurology・2009)ビガバトリンが複数の動物モデルで髄鞘内浮腫を生じることが知られていること、てんかん乳児22例34件の頭部MRIをT2強調・拡散強調画像での高信号の有無に着目して後ろ向きに検討したこと、ビガバトリン投与群で有意な基底核・脳幹の高信号を認めたこと(P<.001)、この高信号が一過性でビガバトリン開始後3〜6か月でピークに達すること、てんかんの罹病期間・型や発作の有無とは無関係であったこと、成人患者では観察されないことから年齢依存性・時間依存性の変化と考えられることを確認した。閲覧 2026-09-05
- 2.The vigabatrin-associated brain abnormalities on MRI and their differential diagnosis(Clinical Radiology・2024)ビガバトリン関連脳異常(VABAM)が点頭てんかんの治療を受けた小児の22〜32%にMRI上認められること、危険因子が原因不明の点頭てんかん・12か月未満・高用量・ホルモン療法の併用であること、大半の患者が無症状のまま経過すること、典型的なMRIパターンが両側性・対称性のT2強調画像高信号と拡散制限で淡蒼球・視床・視床下核・大脳脚・中脳・脳幹構造・小脳歯状核に及ぶこと、組織学的には白質の空胞化と髄鞘内浮腫を呈することを確認した。閲覧 2026-09-05
- 3.サブリル散分包500mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(製造販売元:サノフィ株式会社)・2023)視床・基底核・脳幹・小脳の頭部MRI異常(T2強調画像高信号・拡散強調画像異常信号)が重大な副作用(8.2・11.1.6)として記載され、死亡に至った報告もあることを確認した。閲覧 2026-09-05