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Lab values · Published

網膜電図

Electroretinography

別名
ERG
臓器系
眼科
科目
Medical PhysiologyMedical Biophysics
トピック
生理学 8.4:視覚の生理学生物物理学 22.08:光感覚の反応過程
関連疾患
Leber先天黒内障Usher症候群錐体杆体ジストロフィー成人Refsum病先天停在性夜盲網膜色素変性
監視対象薬
ビガバトリン

🧠 全体像:(ERG)は、光刺激に対する網膜の電気応答を記録する生理で、網膜のどの細胞層が働いているかを波形の成分ごとに分けて評価できる点が本質である。は、は・に由来し、さらに下(杆体系)と明下(錐体系、30 Hzフリッカーを含む)を分けて記録することで、杆体・錐体のどちらが、網膜のどの層で障害されているかをに切り分けられる。では、この杆体応答が先に・強く障害されるという経過そのものが診断と病期の指標になる。

何を測っているか

網膜に光刺激を与えたときに生じる細胞外電位変化を、角膜上または皮膚に置いた電極で記録する。波形は主に2つの成分からなる。

成分 由来する細胞層 意味
(杆体・錐体) 自体の応答の大きさ
(主にON型)・ からの情報が次の神経層へ伝わっているか1

⭐ とを分けて見ることで、障害されている層を切り分けられる。 が小さければそのものの障害を、は保たれるのにだけが小さければからへの伝達障害(などの「陰性ERG」)を示唆する。

検査の構成:暗順応と明順応を分けて記録する

ISCEVの標準プロトコルは、(DA)で杆体系を、明(LA)で錐体系を分けて評価するよう、刺激強度と状態の組合せで6種類の記録を規定している1。

記録 状態 評価する系統
DA 0.01 ERG ・弱い光 杆体系(由来のが主体)
DA 3 ERG ・標準的な光 杆体系・錐体系混合、杆体優位
DA 10 ERG ・強い光 寄与の大きい
DA律動様小波(OPs) 由来の律動様小波
LA 3 ERG 明・標準的な光 錐体系
LA 30 Hzフリッカー ERG 明・30 Hz反復刺激 錐体系に感度の高い応答1

💡 と明を分けるのは、杆体と錐体で感度も応答特性も違うからである。 弱い光は杆体しか反応せず、明るい環境にさせたうえで速い反復刺激(30 Hz)を与えると錐体だけが追従できる——この生理学的な性質の違いを利用して、混ざり合った2つの系統を検査上分離している。

網膜色素変性での典型的な経過

⭐ では、が先に・強く障害される。 早期にはの振幅低下・延長がみられる一方で錐体反応は保たれるが、進行するにつれ振幅はさらに低下し、末期には・の両条件で応答が検出不能となる23。この「杆体から錐体へ」という障害の進み方は、が最初の症状になりへ進むという臨床経過と対応しており、ERGは症状に先立って異常を検出できる。

多局所網膜電図(mfERG)との違い

⚠️ 通常のERGは網膜全体の集合反応であり、局所の機能は分からない。 これに対し(mfERG)は61または103個の六角形刺激配列を用いて、網膜の対応する局所ごとに応答を記録する検査で、黄斑など限られた領域の機能を面として評価したいときに用いる3。が進行し全視野ERGが検出不能になった段階では、mfERGも全域で応答が乏しくなり、局所評価としての意味を失う。

⚠️ 測定上の注意

  • には時間がかかる。 杆体系の記録には数十分のを要し、途中で光に曝露すると再度が必要になる。検査時間が長く、小児・協力困難な患者では鎮静や工夫を要する。
  • が不十分だとによる刺激光量の変動で振幅が過小評価されうる。
  • ・・など光路のは、網膜自体が正常でも振幅を低下させる。による低下と光路による低下を臨床的に区別する。
  • 電極の接触不良・・体動によるは波形の判読を妨げる。

経時変化とモニタリング

のような進行性疾患では、単回のだけでなく振幅・のな推移を追うことが病期評価に直結する。

⚠️ ただし、遺伝子治療の適応判定には使われない。 RPE65へのが求めるのは「十分な生存網膜細胞」だが、これを測る指標としてのが挙げるのはで推定したの網膜厚100µm超であり4、日本の電子添文が記す試験の組入れ基準も①網膜厚100µm超、②に萎縮も色素変性もない網膜が3乳頭面積以上残存、③Ⅲ4eイソプターまたは相当する指標で測定した30度以内の残存視野、のいずれか1つである5。どちらの文書にもは一度も現れない45。

💡 理由はこの検査の性質そのものにある。 RPE65関連の・重症では、が著明に低下するか記録不能になる(重症の1〜5歳では・明とも残存反応がみられることがある)6。⭐ 記録不能な検査は「どれだけ残っているか」を段階づけられない。 はの機能が失われたことを示せても、残存量の多寡で治療対象を選び分けるにはならない——そこは構造(・眼底)と視野が担う。

まとめ

  • は()・(・)に成分を分けて網膜の電気応答を評価する検査である。
  • ISCEVの標準プロトコルは(杆体系)と明(錐体系、30 Hzフリッカーを含む)を分けて6種類の記録を規定する。
  • ではが先に振幅低下・延長を示し、進行すると検出不能になる——この経過が診断・病期評価の指標になる。
  • は網膜局所の機能を面で評価する検査で、網膜全体の集合反応を見る通常のERGとは目的が異なる。
  • に時間を要すること、光路や不良で振幅が過小評価されうることに注意する。
  • ⚠️ 遺伝子治療()の適応判定にはを使わない。 記録不能になりやすく残存量を段階づけられないため、判定はによる網膜厚・・残存視野で行う。

出典

  1. 1.ISCEV Standard for full-field clinical electroretinography (2022 update)(Documenta Ophthalmologica / International Society for Clinical Electrophysiology of Vision (ISCEV)・2022)b波が主に杆体駆動性のON型双極細胞に由来すること(明順応記録ではON・OFF双極細胞の組合せ)、標準プロトコルが暗順応(DA 0.01・DA 3・DA 10・DA律動様小波)と明順応(LA 3・LA 30 Hz)の6種類で規定され前者が杆体系、後者が錐体系(30 Hzフリッカーを含む)を評価することを確認した(ISCEV Standard ERG protocol節、Table 1)。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Retinitis Pigmentosa(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)網膜電図で早期には杆体反応の振幅低下・潜時延長がみられ錐体反応は正常にとどまるが、進行すると振幅がさらに低下し最終的に検出不能となること(Evaluation節)を確認した。閲覧 2026-08-11
  3. 3.Application of Electrophysiology in Non-Macular Inherited Retinal Dystrophies(Journal of Clinical Medicine・2023)網膜色素変性の全視野網膜電図(ffERG)が進行に伴い振幅低下・潜時延長を示し最終的に暗所視・明所視条件とも消失すること(Section 2.1、図1のキャプション)、多局所網膜電図(mfERG)が61または103個の六角形刺激配列により対応する網膜局所の応答を記録する点で網膜全体の集合反応を見る全視野ERGと異なること(Introduction節)を確認した。閲覧 2026-08-11
  4. 4.Luxturna 5 × 10^12 vector genomes/mL concentrate and solvent for solution for injection — Annex I Summary of Product Characteristics(European Medicines Agency・2025)5.1が臨床試験の全参加者について「後極部に厚さ100µm超の網膜領域があること(光干渉断層計で推定)」を確認したと逐語で述べており、これが4.1のsufficient viable retinal cellsの実体であることを確認した。あわせてPDF全文(37頁)を検索し、electroretinogram・electroretinography・ERGのいずれも0件であることを確認した(陽性対照としてretinalは106件)。yearはEPARページのProduct information欄に表示された英語版PDFの Last updated 21/10/2025 から採っており、drugs/voretigene-neparvovec の同じidと揃えてある閲覧 2026-09-14
  5. 5.ルクスターナ注 電子添文(2026年6月改訂・第1版)(医薬品医療機器総合機構(PMDA。製造販売業者 ノバルティス ファーマ株式会社、承認番号 30500FZX00003000)・2026)5.2が「適切な検査により十分な生存網膜細胞を有することが確認された患者に投与すること」とだけ書いて指標を特定していないこと、17.1.1の注1が試験の組入れ基準として「以下の基準を設定した上で網膜の構造(OCT及び眼底所見)及び網膜の機能(視機能)を検査し、十分な生存網膜細胞の有無を評価していた。以下のいずれかの条件を満たす。1)OCTで測定された後極部の網膜厚が100µm超 2)後極部において萎縮又は色素変性のない網膜が3乳頭面積以上残存 3)Ⅲ4eイソプター又はこれに相当するもので測定した、固視点の30度以内の残存視野を有する」と記すこと(=3項目は選言であって連言ではない)を確認した。あわせてPDF全文を検索し、網膜電図・電図・ERGのいずれも0件であることを確認した(陽性対照として網膜は52件)閲覧 2026-09-14
  6. 6.Autosomal Recessive RPE65-Related Retinal Degeneration(GeneReviews(University of Washington, Seattle)・2026)Suggestive Findings節が逐語で「In RPE65-related Leber congenital amaurosis (LCA) and early-onset severe retinal dystrophy (EOSRD), the ERG is severely reduced or non-recordable」と述べ、ただし早発重症網膜ジストロフィー(おおむね1〜5歳)では暗順応(杆体)・明順応(錐体)いずれの網膜電図にも残存活動がみられることがあるという但し書きを付けていることを、ライブページで確認した閲覧 2026-09-14