疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 耳鼻咽喉科 · 先天性疾患

Usher症候群

Usher syndrome

臓器系
耳鼻咽喉科眼科小児
科目
ENTGenetics
トピック
耳鼻咽喉科 23:難聴・聾児の症状、検査、治療と乳児聴覚スクリーニング耳鼻咽喉科 24:人工内耳と植込み型補聴器遺伝学 4.1:単一遺伝子遺伝
鑑別疾患
Senior-Løken症候群
合併症
網膜色素変性感音難聴
検査値
網膜電図

🧠 全体像:Usher症候群は、先天性の感音難聴進行性のという、耳と眼という別々の臓器の変性が1つの疾患として組み合わさったものである。(RP)に合併する症候群のなかで最も頻度が高く、RP患者全体の約18%を占める——RPの中での割合ではなく、RP患者全体に対する割合である点を取り違えない。臨床上の核心は、難聴の重症度との状態で1型・2型・3型に分かれ、この型によってRPの発症時期もの検討時期もまったく異なることにある。難聴が先に、多くは出生時から明らかになるため、乳幼児期に難聴の型を見極めることが、後に訪れるへの備えにも直結する。

病態

は病型ごとに異なり、1型はMYO7AUSH1CCDH23PCDH15USH1Gなど、2型はUSH2AADGRV1WHRNなど、3型はCLRN1が代表的である。これらの遺伝子がコードする蛋白の多くは、間の連結構造と、の連結線毛の両方に局在するため、単一の遺伝子異常が耳と眼の両方を侵す。

flowchart TD
    A["USH関連遺伝子の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pathogenic variant'>病的バリアント</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hair cell of the inner ear'>内耳有毛細胞</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stereovilli/stereocilia'>不動毛</span>間連結構造の異常"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='photoreceptor'>光受容体</span>の連結線毛の異常"]
    B --> D["先天性感音難聴(型により重症度が異なる)"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vestibular function'>前庭機能</span>障害(型により有無が異なる)"]
    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinitis pigmentosa'>網膜色素変性</span>(型により発症時期が異なる)"]

3つの病型

難聴の重症度・・RPの発症時期という3軸で1型・2型・3型を区別する。 この型の違いが、そのままを検討するタイミングを決める。

1型 2型 3型
難聴 先天性・重度〜高度の両側性感音難聴1 先天性・低音域は軽度〜中等度、高音域は高度〜重度(傾斜型の聴力像)2 言語獲得後に進行する難聴1
有意な前庭反応の欠如。歩行開始が生後18〜24か月頃と遅れる1 正常または多様。40〜80%にがみられるが多くは2 型により多様
の発症 小児期早期〜青年期で、学齢前に始まることもある)1 青年期後期〜成人期早期2 遅発性

💡 1型で歩行開始が遅れるのは、内耳のが失われているためである。 前庭反応の欠如は平衡感覚の発達に直接影響し、他の運動発達は正常でも独歩の開始だけが遅れるという特徴的なパターンを示す。

⚠️ 「感音難聴+」という組み合わせだけで診断を確定させない。 Senior-Løken症候群も網膜変性を伴うだが、腎病変()を合併し感音難聴は伴わない。逆にUsher症候群は腎病変を伴わない。随伴する所見が難聴かかで両者を区別する。

人工内耳の適応

1型ではを医学的に可能な限り早期、多くは生後1歳未満で検討する。 先天性の重度〜高度感音難聴があるまま放置すると音声言語の獲得機会を逃すため、聴覚・言語発達を最大化する目的で早期の評価が推奨される1。2型・3型でも、感音難聴の程度に応じて補聴器からへの移行を検討する。

診断

聴力検査()で先天性感音難聴を確認し、検査(前庭誘発筋電位・回転検査など)での有無を評価する。眼科的には網膜電図の有無・発症時期を確認する。⚠️ 難聴が先行し、RPは思春期以降に発症することが多いため、乳幼児期の聴覚評価だけでUsher症候群を除外できない。 難聴の型(先天性・重度で障害を伴うなど)から1型を疑う所見があれば、視力に問題がない時期からRP発症を見越した眼科フォローを組み込む。確定診断はの同定による。

治療

根治療法はなく、難聴とそれぞれへのリハビリテーションが中心になる。難聴には型・程度に応じた補聴器またはには低視力支援・視覚リハビリテーションを行う。⭐ 将来のを見越したが要となる。 難聴の型からUsher症候群1型が疑われる時点で、独歩・言語発達だけでなく、将来の視野狭窄・に備えた生活訓練(歩行訓練、点字を含む手段の準備)を早期から検討する。

まとめ

  • Usher症候群は先天性感音難聴と進行性が組み合わさった疾患で、RPのなかで最多、RP患者全体の約18%を占める3
  • 1型(先天性重度〜欠如+RP発症は小児期早期〜青年期と変動)・2型(先天性の傾斜型難聴+は正常または多様+青年期後期〜成人期早期RP発症)・3型(進行性難聴+遅発性RP)の3型に分かれる。
  • 1型は障害のため歩行開始が遅れ、は生後1歳未満という早期に検討する。
  • 難聴が先行して見つかるため、型からUsher症候群を疑ったら視力正常な時期から将来のRP発症に備えた評価・生活訓練を組み込む。

出典

  1. 1.Retinitis Pigmentosa(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)Usher症候群がRPに合併する症候群として最多であり、原文が"Around 18% of all patients with RP may have Usher syndrome"と述べる通り**全RP患者に対する割合として約18%**を占めること(Differential Diagnosis節のSyndromic RP項)を確認した閲覧 2026-08-12
  2. 2.Usher Syndrome Type I(GeneReviews(University of Washington, Seattle)・2026)1型が先天性の重度〜高度両側性感音難聴と有意な前庭反応の欠如(歩行開始が生後18〜24か月頃と遅れる)を特徴とし、網膜色素変性の発症時期は変動があり学齢前の小児期早期に始まることがあること(Clinical Description節。原文"The onset of RP in individuals with USH1 is variable but can start in early childhood (prior to school)")、3つの病型(1型・2型・3型)の比較表(Table 4)で2型は低〜中等度の難聴と正常/多様な前庭反応・網膜色素変性の発症が青年期後期〜成人期早期であること、3型は言語獲得後に進行する難聴と遅発性の網膜色素変性であることを確認した、人工内耳は医学的に可能な限り早期(多くは生後1歳未満)に検討すべきであること(Treatment of Manifestations節)を確認した閲覧 2026-08-12
  3. 3.Usher Syndrome Type II(GeneReviews(University of Washington, Seattle)・2023)2型が先天性・両側性で低音域は軽度〜中等度、高音域は高度〜重度という「傾斜型」audiogramを特徴とすること、前庭反応は正常または多様で40〜80%に前庭機能低下がみられるが多くは無自覚であること(Clinical Characteristics節)、網膜色素変性の発症は青年期後期〜成人期早期が典型であること(Visual Loss節)を確認した閲覧 2026-08-12