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Disease Atlas · 耳鼻咽喉科 · 疾患

アレルギー性鼻炎

Allergic rhinitis

別名
AR花粉症
臓器系
耳鼻咽喉科免疫・膠原病
科目
Otorhinolaryngology
トピック
耳鼻咽喉科 30:鼻炎の分類
鑑別疾患
非アレルギー性鼻症薬剤性鼻炎
続発疾患
慢性副鼻腔炎急性中耳炎・慢性中耳炎
関連疾患
アトピー性皮膚炎アレルギー性結膜炎花粉-食物アレルギー症候群気管支喘息結膜炎好酸球性食道炎食物アレルギー蕁麻疹
治療薬
フルチカゾンアゼラスチンレボセチリジンモンテルカストオマリズマブビラスチン(デス)ロラタジンフェキソフェナジンモメタゾンオロパタジン
症状
掻痒鼻漏くしゃみ
適応薬
アゼラスチンオキサトミドオロパタジンキシロメタゾリンクロモグリク酸ナトリウムシプロヘプタジンジメチンデンナファソリンフルチカゾンモメタゾン

🧠 全体像:はに対する介在性のI型過敏反応で、発作性くしゃみ・水様性・鼻閉・の四徴を呈する。診断は症状と曝露の時間的一致にやを組み合わせて行い、治療の中心は抗原回避とである。

病態

は、に感作されたが再曝露を受けて(IgE)を介したを起こし、ヒスタミンなどのメディエーターが放出されることで生じるI型過敏反応である。

  • 季節性:樹木・イネ科・雑草花粉、真菌胞子など
  • :ダニ、動物の皮屑、ゴキブリ、屋内カビなど

💡 は摂取後の全身反応としてを伴うことがあるが、を引き起こす一般的なとは病態が異なり、同列に扱わない。

を伴えば、副鼻腔粘膜まで炎症が及べばと呼ぶ。持続する炎症は・の悪化や、を介したにも関与しうる。

上気道と下気道は同じでつながっており、とは共通のアレルギー炎症を背景に高頻度に合併する(“one airway, one disease”)。喘息患者の85%超に鼻炎が合併する一方、鼻炎患者で喘息を合併するのは20〜30%にとどまるが、鼻炎の合併は喘息の重症度を高めるため、鼻炎の管理は気道全体のコントロールの一部として位置づけられる1。

臨床像

診断

flowchart TD
    A["発作性くしゃみ・水様性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rhinorrhea'>鼻漏</span>・鼻閉・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasal pruritus'>鼻掻痒</span>"] --> B["症状と抗原曝露の時間的関係を確認"]
    B --> C["季節性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perennial'>通年性</span>のパターン、家族・本人の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atopy'>アトピー</span>歴"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='skin prick test'>皮膚プリックテスト</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serum specific IgE'>血清特異的IgE</span>"]
    D --> E{"病歴と一致する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sensitizing antigen'>感作抗原</span>がある?"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='allergic rhinitis'>アレルギー性鼻炎</span>と診断"]
    E -->|"いいえ/不一致"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nonallergic rhinitis'>非アレルギー性鼻炎</span>など他の病型を再検討"]

または血清グロブリンE(IgE)は、病歴と合致するを同定するために用いる。の診断に用いるとは目的が異なる点に注意する。・陽性だけで診断を確定せず、必ず症状・曝露との一致を確認する。

治療

薬物療法の骨格は ARIA-EAACI 2024–2025年版で改訂された。以下の「強く推奨」は GRADE の強い推奨、「提案」は条件つき推奨を指す。

段階 主な内容
環境調整 原因抗原・煙・を可能な範囲で減らす
基本の薬物療法 を無治療より強く推奨(中等度の確実性)。鼻噴霧用抗ヒスタミン薬よりを提案(条件つき・中等度)2。よりを強く推奨(中等度)3。のなかでは(フランカルボン酸エステルまたはプロピオン酸エステル)を他剤より提案する2
配合剤 +のような鼻噴霧用抗ヒスタミン薬+の配合剤を、単独より提案する(条件つき。季節性で中等度、で非常に低い確実性)。配合剤どうしでは+を+より提案するが、小児・思春期ではどちらでもよい2
第2世代(・・・など)を第1世代より強く推奨(確実性は非常に低い)3。第1世代は避ける1——同ガイドラインが理由として挙げているのはである(血液脳関門を通過して中枢のを占拠すること、を併せ持つことがその背景にあるが、これは同ガイドラインの記述ではない)。どの第2世代薬を選ぶかは有効性・安全性についての患者の好みと入手性・価格で決める3
などのよりを強く推奨(中等度)。未治療の患者にを開始すること、およびにすることのいずれにも反対する提案である(条件つき・中等度)。ただし「安全性の懸念と有効性の低さのため特定の場面に限る」という書き方で、でコントロールできず、を強く希望する、あるいは喘息を合併する患者が想定されている3
のごく速やかな緩和を要する場合を除き、点眼抗ヒスタミン薬よりを提案する。点眼するならより点眼抗ヒスタミン薬を提案する(いずれも条件つき・非常に低い確実性)3
症状が持続し原因抗原が明確なら、皮下または。小児・思春期では、免疫療法が喘息の発症リスクを下げうるというの根拠があるとされる1
重症例 生物学的製剤(など)を重症喘息・合併など個別の適応に基づき専門的に使用
再評価されていない項目 経口のは常用しない(への併用も同じ)。他の治療で抑えられない中等症〜重症の鼻・にはの短期投与を提案する。いずれも2024–2025年版が改めて評価せず、ARIA 2010年版の推奨として掲げ直したものである3

⚠️ 「第1世代は避ける」と「第1世代にがある」は両立する。 第1世代のは、ハンガリーの Peritol が・を適用範囲に挙げ4、日本のペリアクチンも枯草熱・・を効能又は効果に持つ(スペインの Periactin、米国の添付文書も同様である)5。承認されていることは第一選択であることを意味しない——ARIA-EAACI が第2世代を強く推奨し第1世代を避けるとする理由はであり、上の適応の有無とは別の話である31。

💡 配合剤が勝るのは「効きの強さ」ではない。 2024–2025年版が根拠にしたでは、配合剤と単独の・・生活の質の改善はほぼ同等(差はわずか)で、有害事象の頻度も同程度だった。配合剤を提案する理由は効果発現の速さ・患者満足度の高さ・多くの国でのにある。症状の重い患者ではとくに配合剤が好まれ、低資源の場面ではが選ばれうる2。

💡 ARIA は間欠性/持続性・軽症/中等症〜重症という分類を提唱してきたが、上の推奨はその分類で層別されていない。 2024–2025年版は、大半のが ARIA の分類を採用していないことを理由に、推奨を季節性/の枠で整理している2。分類そのものは鼻炎の分類で扱う。

⚠️ は「5日以内、できるだけ短く」。 鼻閉にはがあるが、ARIA-EAACI 2024–2025年版は5日を超える長期使用に反対している(条件つき・非常に低い確実性。対象は・・トラマゾリン)。12歳未満の小児・妊婦(とくに妊娠初期)・高齢者では使用を避け、系のには安全性と法の観点から反対している。にをすることも、有効性が上がらないまま有害事象・費用が増えるため提案されない(ただしを導入する時期に短期間だけ併用することは考慮しうる)2。連用するとの鼻閉、すなわちを招く。

💡 などの生物学的製剤は「非特異的な免疫療法」ではない。重症喘息やを伴うなど、それぞれの適応に基づいて専門的に使用される薬剤であり、単独への第一選択にはならない。

非アレルギー性鼻炎との鑑別

特徴 非アレルギー性・
アレルギー検査 陽性(病歴と一致) 陰性
・ 目立つ 乏しい
誘因 特定の 温度変化、煙・香料、飲酒、運動、ストレス
所見 蒼白・ 発赤調のことが多い
治療 抗原回避+中心 鼻閉優位なら/抗ヒスタミン薬、水様性優位なら鼻噴霧用

まとめ

  • 発作性くしゃみ・水様性・鼻閉・の四徴と蒼白調のがを示唆する。
  • アレルギー検査陽性だけで診断せず、症状と抗原曝露の時間的一致を確認する。
  • 薬物療法の軸はで、・鼻噴霧用抗ヒスタミン薬よりに置かれる。鼻噴霧用抗ヒスタミン薬との配合剤は、効きの強さではなく発現の速さと満足度を理由に提案される。
  • はに劣り、未治療例への開始もも推奨されない。
  • は5日を超えて使わない。12歳未満・妊婦・高齢者では避ける。

出典

  1. 1.ARIA guideline 2019: treatment of allergic rhinitis in the German health system(Allergologie Select(ARIAをドイツの医療制度へ適応させた版)・2019)全文を確認した。多疾患併存の節に「over 85% of patients with asthma also suffer from AR. On the other hand, only 20 - 30% of patients with AR have asthma at the same time. AR multimorbidity increases the severity of asthma」とあること、「Oral H1-antihistamines of the first generation are sedating and should be avoided」としていること、「In children and adolescents with AR, there is evidence from clinical trials that an AIT may reduce the risk of developing asthma」としていることを確認した。なお、この id に以前付いていた題名(Next-generation ARIA guidelines ... based on GRADE and real-world evidence)は url が指すこの資料ではなく別論文のものだったため、url の実体に合わせて書誌を訂正した。閲覧 2026-09-05
  2. 2.Allergic Rhinitis and Its Impact on Asthma (ARIA)-EAACI Guidelines—2024–2025 Revision: Part I—Guidelines on Intranasal Treatments(ARIA / European Academy of Allergy and Clinical Immunology・2025)全文を確認した。鼻噴霧用ステロイド(INCS)は無治療より強く推奨(中等度の確実性)、鼻噴霧用抗ヒスタミン薬(INAH)より INCS を提案(条件つき・中等度)、INAH+INCS の配合剤を INCS 単独より提案(条件つき。季節性で中等度、通年性で非常に低い確実性)で、その根拠はネットワークメタ解析で症状・QOLの改善が両者ほぼ同等(差はわずか)である一方、配合剤は効果発現が速く満足度が高く多くの国で費用対効果に優れる点にあること、症状の重い患者でとくに好まれ低資源環境では INCS が選ばれうること、INCS のなかではフルチカゾンフランカルボン酸エステルまたはプロピオン酸エステルを他剤より提案すること、配合剤ではアゼラスチン・フルチカゾンをオロパタジン・モメタゾンより提案する(小児・思春期ではどちらでもよい)こと、点鼻血管収縮薬は5日を超える長期使用に反対(条件つき・非常に低い確実性)で対象はオキシメタゾリン・キシロメタゾリン・トラマゾリン、12歳未満・妊婦(とくに初期)・高齢者では使用を避け、エフェドリン系には反対すること、INCS に点鼻血管収縮薬を上乗せすることに反対(条件つき・非常に低い確実性)だが導入時の短期併用は考慮しうることを確認した。加えて、推奨が ARIA の間欠性/持続性分類ではなく季節性/通年性で整理されている理由(大半の無作為化比較試験が ARIA 分類を採用していないため)も確認した。閲覧 2026-09-05
  3. 3.Allergic Rhinitis and Its Impact on Asthma (ARIA)-EAACI Guidelines—2024–2025 Revision: Part II—Guidelines on Oral and Ocular Treatments(ARIA / European Academy of Allergy and Clinical Immunology・2026)全文を確認した。経口抗ヒスタミン薬(OAH)より鼻噴霧用ステロイドを強く推奨(中等度の確実性)、第1世代 OAH より第2世代 OAH を強く推奨(確実性は非常に低い)、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)より OAH を強く推奨(中等度)、未治療の患者に LTRA を開始することに反対する提案(条件つき・中等度)、OAH に LTRA を上乗せするより OAH 単独を提案(条件つき・中等度)、眼症状のごく速やかな緩和を要する場合を除き点眼抗ヒスタミン薬より OAH を提案(条件つき・非常に低い確実性)、点眼するなら肥満細胞安定化薬より点眼抗ヒスタミン薬を提案(条件つき・非常に低い確実性)、個々の第2世代 OAH の選択は有効性・安全性についての患者の好みと入手性・価格で決めることを確認した。LTRA については「安全性の懸念と有効性の低さのため特定の場面に限るべきで、とくに OAH でコントロールできず経口薬を強く希望する患者や喘息を合併する患者が対象になる」と本文で述べていることも確認した。加えて表5に、2024–2025年版が再評価しなかった ARIA 2010 の推奨として、経口血管収縮薬を常用しないこと(および経口抗ヒスタミン薬との併用を常用しないこと)と、他の治療で抑えられない中等症〜重症の鼻・眼症状に経口ステロイドの短期投与を提案することが掲げ直されていることを確認した。閲覧 2026-09-05
  4. 4.Peritol tabletta — Alkalmazási előírás(Országos Gyógyszerészeti és Élelmezés-egészségügyi Intézet (OGYÉI)・2023)ハンガリーの Peritol 錠(シプロヘプタジン)の適用範囲に、アレルギー性鼻炎と血管運動性鼻炎が含まれることを確認した。テキストの改訂日は2023年10月20日閲覧 2026-09-07
  5. 5.ペリアクチン錠4mg/ペリアクチン散1% 電子添文(2023年4月改訂 第1版)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)添付文書情報・2023)日本のペリアクチン(シプロヘプタジン)の効能又は効果に、枯草熱・アレルギー性鼻炎・血管運動性鼻炎および感冒等上気道炎に伴うくしゃみ・鼻汁・咳嗽が含まれることを確認した。同欄にアレルギー性結膜炎とアナフィラキシーは無い閲覧 2026-09-07