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Drug Atlas · B26 Antiasthmatic & COPD drugs / 喘息・COPD治療薬

クロモグリク酸ナトリウム

sodium cromoglicate

分類
Antiasthmatic & COPD drugs / 喘息・COPD治療薬
商品名(日本)
インタール
科目
Pharmacology
トピック
B26: Histamine and antihistamines
承認適応
運動誘発性気管支攣縮気管支喘息アレルギー性鼻炎アレルギー性結膜炎食物アレルギー全身性肥満細胞症
副作用
気管支攣縮咳悪心皮疹
対象疾患
肥満細胞活性化症候群

🧠 全体像:はこのグループの中で唯一に作用しない薬である。肥満細胞の膜を安定化してそのものを抑えるだけで、を塞ぐ働きは一切持たない1。そのためすでに放出されたヒスタミンには無力——発作が始まってからの投与では効果がなく、規則的な予防投与を続けてはじめて意味を持つ薬という理解が欠かせない。経口吸収がほとんどないため、効かせたい場所(気道・・・腸管)に直接届けるが前提になる。

薬効群の中での位置づけ

薬剤
・・ あり あり あり(既に放出されたヒスタミンにも作用)
なし あり(これのみ) なし(発作治療薬ではなく予防薬)

⭐ 「」という言葉が同じでも、H1遮断を伴うかどうかで臨床の使い方がまったく変わる。 などはH1遮断を併せ持つため症状が出てからでもある程度効くが、はH1遮断を持たないため発作中に使っても症状を止められない。この一点が、試験でも実臨床でも最も誤解されやすい。

機序

flowchart TD
    A["アレルゲンがIgEを架橋"] --> B["肥満細胞内へCaが流入"]
    B --> C["顆粒がヒスタミン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leukotriene'>ロイコトリエン</span>などを放出(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='degranulation'>脱顆粒</span>)"]
    C --> D["ヒスタミンが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='H1 receptor'>H1受容体</span>に結合し症状を起こす"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Na-cromoglycat'>クロモグリク酸ナトリウム</span>が肥満細胞膜を安定化"] -.->|"Ca流入・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='degranulation'>脱顆粒</span>そのものを妨げる"| B
    F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='H1 receptor'>H1受容体</span>には<span class='jp-term jp-term-diagram' title='direct action'>直接作用</span>しない"] -.->|"すでに放出されたヒスタミンは止められない"| D

💡 「発作を止める薬ではなく、発作を起こしにくくする薬」。 効果発現までに数日〜数週間の規則的な使用を要するため、症状が出てから開始してもは期待できない。運動誘発性のように誘因が予測できる場面では、曝露前に予防投与するという使い方が本来の強みを引き出す。

薬物動態

項目 値・特徴
1%以下(消化管からの吸収が悪く、残りは糞便中に排泄される)1
吸入()、点鼻()、点眼()、経口(・——腸管内にとどまり局所で作用する)
吸収がほとんどないため、ではほぼ問題にならない
腎・肝機能低下時 経口剤では減量を考慮する1

適応

製剤ごとに承認されている適応が異なり、国によっても違う。 「肥満細胞症」は米国のの適応、「」は英国のの適応であって、日本の吸入液にこれらの記載はない。

製剤・地域 承認されている適応
吸入液(日本、インタール吸入液1%) のみ2
点眼液(英国、Opticrom Aqueous 2%) 急性・慢性の、春季の予防および対症療法3
(英国) 回避できない食物成分による症状の予防4
(米国、Gastrocrom) の管理(下痢・・頭痛・嘔吐・蕁麻疹・腹痛・悪心・掻痒の改善が報告されている)1
(米国、NasalCrom、一般用医薬品) ——その他の鼻アレルギーによる・鼻のかゆみ・くしゃみ・アレルギー性鼻閉の予防と緩和(2歳以上)5

現行ガイドラインでの位置づけ

⚠️ 「限定的」ではなく「推奨しない」である。 喘息の国際指針では、クロモン系(・ネドクロミルナトリウム)は小児6〜11歳の治療の「推奨しない」の項に置かれ、世界的に販売中止となったと記載されている6。加圧噴霧式(pMDI)の製剤は特に、毎日の洗浄が必要という運用面の負担もあって姿を消した。

💡 ただし用の吸入液は日本でも米国でも現行の添付文書を持つ——日本の電子添文はを適応として掲げている2。「ガイドラインが推奨しない」ことと「承認が取り消された」ことは別であり、両者を混同しない。

⭐ 例外として、運動誘発性の予防では、運動前のクロモン投与が発症を予防することが Evidence A として今も記載されている6。この薬が最も理にかなうのは、やはり「誘因が分かっていて、事前に打てる」場面である。

用法・用量

規則的なスケジュール投与が前提で、の頓用には使わない。効果判定には数日〜数週間の継続を要する。

製剤 用量
吸入液(日本) 1回1アンプル(として20mg)を、朝・昼・就寝前、または朝・昼・夕・就寝前に1日3〜4アンプル、電動式で吸入する。症状が緩解すれば経過を見ながら1日2〜3アンプルへ減量する2
点眼液(英国) 1回1〜2滴を両眼へ1日4回3
(米国) 2歳以上で各鼻孔に1回1噴霧を1日3〜4回(4〜6時間ごと、必要なら1日6回まで)。アレルゲンとの接触がある間は毎日使い、予防目的なら接触の最大1週間前から始めるのが最良5
(英国、) 食事の15分前に成人200mg・小児100mgを1日4回(4回投与なら毎食前と就寝前)。2〜3週間で効果が不十分なら最大40mg/kg/日まで増量できる。2歳未満は安全性を評価できるデータが不足している4

禁忌・注意

  • 禁忌は本剤成分への過敏症の既往のみ(日本の吸入液・英国の点眼液とも同じ)23。疾患を理由とする禁忌の記載はない。
  • ⚠️ 急性発作の治療薬ではない。 日本の電子添文は「既に起こっているを抑える薬剤ではないので、発作発現時は対症療法が必要であること」を患者・保護者へ十分説明するよう求めている2。など本来の急性期治療の開始を遅らせてはならない。
  • ⚠️ 本剤でステロイドを減量できた患者が吸入を中止するときは、原疾患が再発するおそれがある。 減量前のステロイドへ戻す2。長期ステロイド療法中の患者でステロイドを減らす場合も、十分な管理下で徐々に行う。
  • 効果発現に時間がかかるため、規則的な使用を継続するよう患者に説明する。
  • 経口剤は腎・肝機能低下例で減量を考慮する1。

副作用

頻度(日本の吸入液の電子添文) 内容
0.1〜5%未満 発疹、刺激感、悪心
頻度の記載はないが実際によく問題になるもの 吸入時の咳、苦みなどの不快感(製剤による)、点眼時の一過性のしみる感じ・灼熱感
重大な副作用 (0.1%未満)——吸入中または直後に重篤なものが起こりうる/PIE症候群(0.1%未満)——好酸球増多を伴うで、発熱・咳嗽・喀痰を伴うことが多い/アナフィラキシー(0.1%未満)

⚠️ 喘息の薬でありながら、吸入そのものがを誘発しうる。 咳や刺激感は投与手技に伴う軽い症状として説明できるが、吸入中・直後の重篤なは重大な副作用として明記されている2。

💡 PIE症候群は「薬が効かない」と見分けがつきにくい。 発熱・咳嗽・喀痰とが出たら、感染症だけでなく本剤によるの可能性を考え、投与を中止して必要ならステロイドを投与する2。

まとめ

  • この群で唯一、には作用せず肥満細胞のだけを抑える薬。血管収縮作用・抗ヒスタミン作用・作用のいずれも持たない。
  • 経口吸収は1%以下。効かせたい部位への(吸入・点鼻・点眼・経口)が前提で、経口剤は消化管局所で働く。
  • 発作を止める薬ではなく予防薬。 すでに放出されたヒスタミンには無力で、規則的な投与を続けてはじめて効果を発揮する。
  • 現行の喘息国際指針ではクロモン系は「推奨しない」に分類され、pMDI製剤は世界的に販売中止となった。ただし用吸入液は日本・米国で承認が残っている。
  • 例外は運動誘発性の予防で、運動前投与の有効性は Evidence A として残っている。
  • は製剤・国ごとに違う。肥満細胞症は米国の、は英国のの適応で、日本の吸入液はのみ。
  • 重大な副作用に・PIE症候群・アナフィラキシー(いずれも0.1%未満)がある。

出典

  1. 1.GASTROCROM (cromolyn sodium) liquid(U.S. National Library of Medicine (DailyMed) / Viatris Specialty LLC・2025)米国の経口液剤の適応が「肥満細胞症の管理」であり、下痢・潮紅・頭痛・嘔吐・蕁麻疹・腹痛・悪心・掻痒の改善が報告されていること(Indications and Usage)、クロモグリク酸ナトリウムが肥満細胞からのヒスタミンとロイコトリエン(SRS-A)の遊離を抑えるだけで血管収縮作用・抗ヒスタミン作用・糖質コルチコイド作用を持たないこと、経口投与では消化管からの吸収が悪く投与量の1%以下しか吸収されず残りは糞便中に排泄されること(Clinical Pharmacology)、腎・肝機能低下例では減量を考慮すべきことを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.インタール吸入液1% 電子添文(医薬品医療機器総合機構(製造販売元:サノフィ株式会社)・2021)日本の吸入液の効能・効果が「気管支喘息」のみであること(4.)、用法・用量が1回1アンプル(クロモグリク酸ナトリウムとして20mg)を1日3〜4回、電動式ネブライザーで吸入し、症状が緩解すれば1日2〜3アンプルへ減量すること(6.)、既に起こっている喘息発作を抑える薬剤ではないと患者・保護者へ説明すべきこと、本剤でステロイド維持量を減量できた患者が吸入を中止する場合は原疾患再発のおそれがあるため減量前の維持量へ戻すこと(8.1・8.2)、禁忌が本剤成分への過敏症既往のみであること(2.)、重大な副作用が気管支痙攣(0.1%未満)・PIE症候群(0.1%未満)・アナフィラキシー(0.1%未満)であること、その他の副作用(0.1〜5%未満)が発疹・咽喉頭刺激感・悪心であること(11.)を確認した閲覧 2026-09-05
  3. 3.Opticrom Aqueous 2% w/v Eye Drops, Solution - Summary of Product Characteristics(Thornton & Ross Ltd / electronic medicines compendium (emc)・2018)英国の点眼液の適応が急性アレルギー性結膜炎・慢性アレルギー性結膜炎・春季角結膜炎の予防および対症療法であること(4.1)、用法が成人・小児とも1回1〜2滴を両眼へ1日4回であること(4.2)、禁忌が有効成分・添加剤への過敏症のみであること(4.3)を確認した閲覧 2026-09-05
  4. 4.Sodium cromoglicate 100mg/5ml oral solution - Summary of Product Characteristics(Brown & Burk UK Ltd / electronic medicines compendium (emc)・2023)英国の経口液剤の適応が「回避できない食物成分によるアレルギー症状の予防的治療」であること(4.1)、用法が食事の15分前に成人200mg・小児100mgを1日4回(4回投与時は毎食前と就寝前)、2〜3週間で効果不十分なら最大40mg/kg/日まで増量できること、2歳未満の安全性を評価できるデータが不足していること(4.2)を確認した閲覧 2026-09-05
  5. 5.NASALCROM (cromolyn sodium) spray, metered(U.S. National Library of Medicine (DailyMed) / Prestige Brands Holdings, Inc.・2026)米国では一般用医薬品の点鼻スプレーとして「花粉症その他の鼻アレルギーの鼻症状(鼻汁・鼻のかゆみ・くしゃみ・アレルギー性鼻閉)の予防と緩和」に用いられること、2歳以上で各鼻孔に1回1噴霧を1日3〜4回(4〜6時間ごと、必要なら1日6回まで)、アレルゲンとの接触がある間は毎日使い、予防目的なら接触の最大1週間前から開始するのが最良であること、効果を実感するのに数日を要し最良の効果は1〜2週間かかりうること、喘息・副鼻腔炎・かぜの治療には用いないこと(Uses・Directions・When using this product)を確認した閲覧 2026-09-05
  6. 6.Global Strategy for Asthma Management and Prevention(Global Initiative for Asthma (GINA)・2026)クロモン系(ネドクロミルナトリウムとクロモグリク酸ナトリウム)が小児6〜11歳の治療の「Not recommended(推奨しない)」の項に置かれ、世界的に販売中止となったと記載されていること、一方で運動誘発性気管支攣縮の項では運動前のSABA・LABA・クロモン投与が発症を予防する(Evidence A)とされ、クロモンの加圧噴霧式定量吸入器(pMDI)は世界的に販売中止と付記されていることを確認した閲覧 2026-09-05