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Disease Atlas · 免疫・膠原病 · 疾患

食物アレルギー

Food allergy

臓器系
免疫・膠原病消化器皮膚
科目
ImmunologyPediatricsInternal MedicinePhysiologyPathology
トピック
免疫学 7.2:過敏症 I免疫学 7.1:過敏反応小児科 2-42:吸入・食物アレルギーの症候・診断・治療とアナフィラキシー内科学 R-14:アレルギー生理学 6.5:栄養素の分解と吸収病理学 A/35:I型・II型過敏反応(即時型・細胞障害型)
鑑別疾患
乳糖不耐症
合併症
アナフィラキシー
関連疾患
アトピー性皮膚炎アレルギー性鼻炎セリアック病好酸球性食道炎蕁麻疹
治療薬
エピネフリンオマリズマブ
症状
嘔吐下痢腹痛掻痒血管性浮腫腫脹蒼白

🧠 全体像は、原因が同じ「食物」でも免疫機序で3つに分かれる——数分〜2時間で症状が出る、数時間〜数日かけて消化管に症状が出る、両者が重なる混合型()。診断の主役は病歴とであり、は「感作の証拠」にすぎず「診断」ではない。管理の考え方は過去10年で大きく転換した——アレルゲンを避けて感作を防ぐという旧来の指導は撤回され、現在は乳児期早期にアレルゲン性食品を積極的に導入して寛容を誘導する戦略が標準になっている。

機序による3分類

は、関与する免疫機序によって3つに大別される。同じ食物が原因でも、機序が違えば発症までの時間もも別物になる。

flowchart TD
    A["食物抗原の摂取"] --> B{"関与する免疫機序"}
    B -->|"IgE"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IgE-mediated'>IgE介在性</span><br>数分〜2時間で発症"]
    B -->|"T細胞・非IgE"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-IgE-mediated'>非IgE介在性</span><br>数時間〜数日で発症"]
    B -->|"IgEとT細胞の混合"| E["混合型"]
    C --> F["蕁麻疹・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angioedema'>血管性浮腫</span>・腹痛<br>重症でアナフィラキシー"]
    D --> G["FPIES・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='food protein-induced allergic proctocolitis'>食物蛋白誘発性直腸結腸炎</span>"]
    E --> H["慢性の消化管炎症・線維化"]
分類 代表病態 発症までの時間
蕁麻疹腹痛、重症でアナフィラキシー 数分〜2時間 陽性のことが多い
数時間〜数日 陰性が通常
混合型 慢性・反復性 陽性のこともある

⚠️ FPIESは乳児期に多く、原因食物(・大豆・米・卵など)の摂取後1〜4時間して反復性の激しい嘔吐を来し、重症例では蒼白・傾眠・低血圧まで進む。慢性型は間欠的な曝露により反復する嘔吐・下痢・体重増加不良を来す。掻痒や蕁麻疹を伴わずも陰性のことが多いため、感染性胃腸炎や敗血症とされやすい。は健常に見える乳児の血便が主徴で、多くは1歳までに自然軽快する。

💡 は通常、エンドサイトーシスした蛋白質の大半をで分解するが、乳児期は腸管透過性が高く、無傷に近い蛋白質が吸収されて感作の引き金になりやすい。この未熟なの上にによる皮膚バリア破綻が重なるとが先行し、後年にへ進むの入口になりうる。

食物アレルギーと食物不耐症の違い

は免疫機序を介する反応であるのに対し、は免疫を介さない反応である。この区別は対応を左右する——不耐症はの量を減らせば症状を抑えられることが多いが、アレルギーは微量の混入でも重篤な反応を起こしうる。

機序 (IgE・T細胞) 非免疫性(酵素欠損・など)
代表例 ・卵・ピーナッツアレルギー
量依存性 微量でも反応しうる 摂取量が症状の強さを左右する
誤食時のリスク 生命を脅かしうる 通常は消化器症状にとどまる

なお、セリアック病に対するT細胞介在性の自己免疫疾患であり、免疫を介する点ではに近いが、IgEを介さずアナフィラキシーを来さない点で本稿のとは区別する。

主要アレルゲンと年齢による経過の違い

原因食物は年齢層で傾向が異なり、それぞれも対照的である。

アレルゲン 好発年齢
・鶏卵・小麦・大豆 乳幼児期に発症しやすい 多くは学童期までに耐性化する
ピーナッツ・木の実・魚介・甲殻類 幼児期以降も新規発症しうる 耐性化しにくく成人まで残ることが多い

⭐ 「乳幼児に多いアレルゲンほど治る」という単純な対応ではない。同じ乳幼児期に発症しても、・卵は治りやすく、ピーナッツ・木の実は治りにくいという非対称性が、除去食の長期方針や再評価のタイミングを左右する。

交差反応

構造の似た異なる由来の抗原を免疫系が区別できずに起こるは、の臨床像を複雑にする。

症候群 の組み合わせ 特徴
(口腔アレルギー症候群) 樹木・イネ科花粉 × 生の果物・野菜(リンゴ、モモ、ニンジン等) 口腔・咽頭の掻痒・軽度腫脹に限局しやすく、加熱調理した食品はされることが多い
天然ゴム × アボカド・キウイ・バナナ・栗 医療従事者など曝露が多い集団で頻度が高い

💡 の原因抗原は熱やに不安定なタンパクであることが多く、加熱調理や消化管内での分解で失活しやすい。そのためアナフィラキシーへ進展することはまれだが、皆無ではなく症状を軽視しない。

食物依存性運動誘発アナフィラキシー

原因食物の摂取単独でも運動単独でも症状が出ず、摂取後数時間以内に運動が加わったときだけアナフィラキシーを来す病型がある。小麦(ω-5)が代表的な原因抗原で、の併用や飲酒が発症の閾値を下げる補助因子になりうる。診断は運動誘発試験を含む詳細なに依存し、管理は原因食物摂取後数時間の運動回避とエピネフリン薬の携行である。

診断

診断の中心は病歴であり、検査はそれを補強する位置づけにとどまる。

flowchart TD
    A["症状の病歴:曝露からの時間・再現性"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='specific IgE'>特異的IgE</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='skin prick test'>皮膚プリック試験</span>"]
    B --> C{"感作の証拠は病歴と一致するか"}
    C -->|"一致"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral food challenge'>経口食物負荷試験</span>"]
    C -->|"不一致・陰性"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='food allergy'>食物アレルギー</span>以外を再検討"]
    D -->|"陽性"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='food allergy'>食物アレルギー</span>と確定"]
    D -->|"陰性"| G["耐性化または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='misdiagnosis'>誤診</span>として再評価"]

⚠️ は感作の証拠であって診断ではない。 症状のない健常者でも陽性になることが多く、病歴と乖離する陽性結果だけでアレルゲンを除去してはならない。(医療監視下で少量からし反応を確認する)が診断の基準であり、効果を排除できる。IgG・IgG4抗体検査は食物への曝露やを反映するにすぎず、の診断に使ってはならない

管理

早期導入による一次予防

かつては乳児期にアレルゲン性食品の摂取を遅らせることで感作を防ぐ指導が主流だったが、この考え方は撤回された。LEAP試験(2015年)は、重症湿疹または卵アレルギーを持つハイリスク乳児にピーナッツ含有食品を生後4〜11か月から早期導入した群で、ピーナッツアレルギー発症が8割以上減少したことを示した。これを受けたNIAID 2017年addendumガイドラインは、リスク層別に導入時期を定めている。

リスク層 目安 導入時期
高リスク(重症湿疹・卵アレルギー) またはでスクリーニング後 生後4〜6か月
(軽症〜中等症湿疹) 検査を要さない 生後6か月頃
リスクなし 制限不要 他のと同時に自由に導入

💡 「を早期導入すれば予防できる」という説明は正確ではない。そのものにアレルギー予防効果を裏づける確立した根拠は乏しく、現在のは特定のフォーミュラではなく主要アレルゲン性食品そのものの早期導入に基づく。

経口免疫療法とオマリズマブ

確定診断後の管理は原因食物の回避と誤食時対応が基本だが、近年は積極的な肢が加わった。ピーナッツアレルギーに対する薬Palforzia(AR101)は2020年に米国で承認された初の治療薬で、2024年に1〜3歳への適応が拡大されたが、製造元は事業判断により2026年7月末で販売を終了した(安全性・有効性を理由とする中止ではない)。アレルギー専門医による食品ベースの自体は、この製品終了後も選択肢として続いている。

は2024年2月、OUtMATCH試験の結果に基づき、1歳以上の患者における誤食時の反応軽減を目的として米国でされた。複数の食物にアレルギーを持つ患者で誤って摂取した際の反応を減弱させるであり、治癒ではなく回避を続けたまま用いる点に注意する。

エピネフリン自己注射薬と誤食時対応

⭐ アナフィラキシーのリスクがある患者にはエピネフリン薬を処方し、常時携帯させる。書面のアクションプランを患者・家族・学校と共有し、誤食後に状を超える徴候(喘鳴、嗄声、嘔吐の反復、低血圧など)が出た時点で速やかにし、救急要請する。抗ヒスタミン薬の内服だけで様子をみて注射を遅らせてはならない(急性期対応の詳細はアナフィラキシーノートを参照)。

まとめ

  • (FPIES等)・混合型()の3機序に分かれ、発症までの時間とが異なる。
  • とは免疫機序の有無で区別され、セリアック病のような他の食物関連疾患とも機序が異なる。
  • ・卵・小麦は学童期までに耐性化しやすく、ピーナッツ・木の実・魚介は残存しやすい。
  • のようなのような複合誘因型も見逃さない。
  • 診断は病歴中心で、は感作の証拠にすぎず、が診断の基準である。IgG抗体検査は使わない。
  • 管理は「回避で予防」から「早期導入で寛容誘導」へ転換し、が治療の選択肢に加わった。の携行とアクションプランは引き続き中心的な備えである。