免疫学

免疫学 · 7.1

過敏反応

Hypersensitivity reactions

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W11Lecture / 講義
応用トピック
薬剤による皮膚有害反応と薬疹の管理気管支喘息アレルギー吸入・食物アレルギーの症候・診断・治療とアナフィラキシー乳幼児・小児期のアレルギー疾患、アトピーの定義アトピー性皮膚炎・蕁麻疹・おむつ皮膚炎気管支喘息原因が明らかな間質性肺疾患サルコイドーシス
疾患
遺伝性αトリプターゼ血症血清病食物アレルギー食物蛋白誘発性腸炎症候群
検査値
TSH受容体抗体血清トリプターゼ抗AQP4抗体

🧠 過敏反応は「無害な、あるいは自己の抗原に対する病的な免疫応答」として読む。 初回接触は感作にとどまり症状を出さないが、再接触でが症状を引き起こす。分類の軸は関与する抗体・細胞の種類と発症までの時間の2つで、I型(即時型・分単位・IgE)、II型(細胞傷害型・時間単位・IgG)、III型(・時間単位・IgG)、IV型(遅延型・日単位・T細胞)に分かれる。

免疫応答の2つの見方

視点 内容
生物学的アプローチ 主な敵=体内外の寄生体(感染・腫瘍)
臨床的アプローチ =過敏反応・自己免疫、機能低下=免疫不全(先天性・後天性・腫瘍性)、免疫調節=ワクチンによる刺激・移植における抑制

過敏反応の定義

無害または自己の抗原に対する病的な免疫応答。は①環境抗原、②組織・基質抗原、③微生物の3種に大別される。抗原を排除できない場合、自然免疫・獲得免疫の古典的な応答がを経てし、組織への制御されない攻撃(=慢性炎症、chronic inflammation)に至る。

4つの型の全体像

型 機序 発症までの時間
I型(即時型) IgE、に対して。アレルギー・アナフィラキシー 数分以内
II型(細胞傷害型) IgG(時にIgM)、に対して 4〜6時間
III型() IgG(時にIgM)、に対して 2〜8時間
IV型(遅延型) T細胞介在性 2〜3日

⚠️ Gell & Coombs の I〜IV 型は今も教育・臨床の共通言語だが、「これで全部が説明できる枠組み」ではない。 枠組みを捨てるのではなく、限界を3点セットで添えて覚えるのが正しい扱い方である。

  1. IV型は細分された。 T細胞が呼び寄せる細胞の種類によって、単球主体のIVa、好酸球主体のIVb、好中球主体のIVdに分かれ、CD4/CD8による細胞傷害性のIVcはすべてのIV型反応に関与する1。の表現型(斑状丘疹型・水疱型・膿疱型)の違いはこの細分で説明される。
  2. 複数の型が混ざる。 実際の症例で単一の型に収まらないことは珍しくなく、EAACIの position paper も「臨床では複数型の混在がありうる」と明記している2。
  3. 4型に収まらない反応がある。 EAACIは2023年に、Gell & Coombs を尊重したうえで9つの型へ拡張した——抗体依存性のI〜III、細胞性のIVa〜c、組織側の要因による V(の欠陥)・VI(代謝性の)、そしてへの直接的な細胞・炎症応答である VII2。この拡張は、従来「非免疫学的」「非アレルギー性」として枠外に置かれていた反応に居場所を与えたものである。

I型過敏反応:即時型アレルギー

臨床像:、喘息、、アナフィラキシー。(exposure route:吸入・摂取・静注・)によって症状の現れ方が異なる(例:静注は蕁麻疹)。

感作の機序

flowchart TD
  A["低用量の無害抗原(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low molecular weight'>低分子量</span>タンパク)との初回接触<br>皮膚・粘膜表面経由"]
  A --> B["Th2活性化 → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='interleukin-4'>IL-4</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interleukin-13'>IL-13</span>産生"]
  B --> C["BCR<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heavy chain'>重鎖</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='isotype switching (class switching)'>クラススイッチ</span> → IgE産生"]
  C --> D["IgEが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mast cell'>マスト細胞</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basophil'>好塩基球</span>のFcεRIに結合(無抗原の状態で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elective'>待機</span>)"]

💡 感作の時点では症状は出ない——「弾を装填しただけ」の状態。 IgEは抗原がなくてもあらかじめ・のFcεRI受容体に結合してする。新たな曝露で抗原がFcεR上のIgEを架橋して初めてが起こる。

マスト細胞のメディエーター

分類 内容
即時型(既成顆粒由来、preformed) ヒスタミン、酵素(・・)→数分以内に症状
早期脂質メディエーター(由来、de novo合成) →経由→/→PGD2・PAF・LTC4/LTD4/LTE4
(サイトカイン遺伝子の) IL-3・・IL-5・IL-6・

マスト細胞の2型

型 抗原侵入経路 代表的疾患
粘膜 吸入・摂取抗原 、アレルギー性喘息(動物の毛・花粉・ダニの糞)、(ピーナッツ・魚介類、・)
結合組織 皮膚・ 全身性アナフィラキシー(薬物・動物毒・ピーナッツ)、蕁麻疹(・)

⚠️ は・血圧・気道の3方向から生命を脅かす。 抗原が直接循環血に入る、または急速に吸収され二次的に血流に入ることで発症。播種性の、血圧低下、を来し、は生命を脅かす状態で、が必要になることもある。

アトピーと衛生仮説

=過剰なIgE産生への(高アレルギー体質)。・・としてしばしば併存し、との関連も強い。

⭐ アレルギー疾患の地理的分布は感染症の分布と「鏡写し」になる——。 感染負荷の低い地域ほどアレルギー疾患の頻度が高いというの地理的分布が報告されている(Th1シフト vs Th2シフト)。小児期早期の微生物曝露がアレルギー疾患を予防するという考え方(カレリア研究:フィンランド側とロシア側のカレリア地方比較で、では皮膚の多様性が有意に低下していた)。同での喘息のは26〜75%にとどまり、遺伝要因だけでは説明できない大きな非遺伝的要素の存在を示唆する。

⚠️ は「観察された関連」であって、機序は30年以上たった今も決着していない。 出発点は1989年の「Hay fever, hygiene and household size」で、同胞が多い英国の小児ほどになりにくいという観察だった。1990年代半ばにTh1/Th2パラダイムで説明が試みられ、2000年代初頭には「仮説」が広まり、農家育ちや人智学的な生活様式との関連も加わって、農家育ちで同胞の多い小児ではのが約6分の1にまで下がることが示されている。しかし21世紀に入って多数の微生物・環境・生活要因が候補として検討されたにもかかわらず、同胞数効果・農家効果を説明する頑健な機序はいまだ得られていない3。上の「Th1シフト vs Th2シフト」という説明も、当時の枠組みによる解釈であって確定した機序ではない点に注意する。

💡 カレリア研究は「自然実験」としての強さでこの仮説を支えている。 第二次世界大戦後にカレリアがフィンランド側とロシア側に分断され、環境・生活様式の変化はフィンランド側でより大きかった。Karelia Allergy Study(2002〜2022年)では、が近いにもかかわらずアレルギー疾患はフィンランド側で顕著に多く、ロシア側では遺伝子-微生物ネットワークの相互作用がより豊かで、免疫調節回路の均衡と低いアレルギーに関連していた。フィンランド側の思春期児でも、住居周辺の生物多様性が高いほどアレルギーが少なかった4。

💡 ——自然との接触減少がアレルギーを増やす。 自然の生物多様性との接触が減ると、とその免疫調節能力が損なわれ、アレルギー疾患の頻度増加につながるという仮説。生物多様性減少の要因:農業、森林伐採、モノカルチャー(単一栽培)、都市化、汚染物質、地球温暖化。この仮説は観察にとどまらず介入として実装された——フィンランドの全国アレルギープログラム(2008〜2018年)はの獲得・自然との接触・「アレルギーとともに健康に暮らす」を掲げて成果を上げ、後継のNature Step to Health(2022〜2032年)へ引き継がれている4。

気道アレルギーの病態

のDer p1(プロテアーゼ)は呼吸器上皮を通過できる。反復・持続的なアレルゲン曝露による慢性気道アレルギー性炎症は、過形成・・・亢進・上皮細胞死を来し、の病理像を形成する。

II型過敏反応:細胞傷害型

抗体介在性疾患は、細胞・基質結合抗原またはを標的とする。

エフェクター機構

→溶解、(、NK細胞)、介在性貪食(マクロファージ)。

機能的分類:抑制性抗体 vs 刺激性抗体

抗体の作用 疾患例
:重症筋無力症——筋力低下
抗受容体抗体:——作用で過剰産生

⭐ II型自己免疫疾患は炎症なしでも成立しうる。 受容体を直接標的とする抗体(抗-R、抗AChR)は、補体や炎症を介さずとも受容体機能を直接modulateするだけで疾患を引き起こす——「炎症のない自己免疫」という II型の本質的な特徴。

💡 の置き場所には3つの流儀がある——「II型の一部」「V型(刺激型)」「IIb型」。 ①本ノートのようにII型の機能的な区分として扱う、②Gell & Coombs の外に type V(stimulatory hypersensitivity) として別立てにする(英国系の教科書に多い)、③II型そのものをIIa(従来の細胞傷害型)とIIb(抗体による細胞刺激型)に分ける——③ではと「自己免疫型」の慢性特発性蕁麻疹がIIbに入る5。⚠️ 紛らわしいのは、EAACIが2023年に導入した「V型」がこれとは全く別物——EAACIのV型はの欠陥に由来する反応を指し、ではない2。「V型」という語を見たら、どちらの体系のV型かを必ず確認する。

その他の例:、ペニシリン誘発性。基底膜に沿ったの抗体(など)はII型を、の免疫複合体は次のIII型を反映する。

III型過敏反応:免疫複合体型

なが感染性病原体を排除しきれないときに、抗原-抗体免疫複合体が形成され組織に沈着することで発症する。の帰結はに依存する。

flowchart TD
  A["抗原-抗体免疫複合体の形成"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complement activation'>補体活性化</span>"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='increased vascular permeability'>血管透過性亢進</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='frustrated phagocytosis'>フラストレート型貪食</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microthrombi'>微小血栓</span>形成"]
  C --> D["血管壁・基底膜への沈着 → 血管炎"]
分類 例
局所
急性全身性 急性(7〜10日)
慢性 (SLE)

IV型過敏反応:遅延型

主にTh1・Th17・(Tc)が介在し、発症まで2〜3日を要する。タンパク質・などの低分子物質により誘発されることが多い。

⭐ IV型は「動員される白血球の種類」でa〜dに細分される(Pichlerの細分)。 の見た目の違いがこの細分にきれいに対応するので、・アレルギー科では実用的な枠組みになっている1。

細分 エフェクター 疾患例
IVa CD4+ Th1 →マクロファージ活性化(単球を動員) 、1型糖尿病
IVb CD4+ Th2 →好酸球の関与(好酸球を動員) 持続型の喘息、
IVc 細胞傷害性CD8+ T細胞(・Bによるアポトーシス)。すべてのIV型反応に関与する 、
IVd T細胞が駆動する(好中球を動員) 、

出典15。同じ疾患が複数の型の機序を併せもつことがある点も、この細分と合わせて覚える5。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chemokine'>ケモカイン</span>がマクロファージを動員"]
  A --> B["活性化Th1がIFN-γを分泌 → マクロファージ活性化"]
  B --> C["ROS・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hydrolase'>加水分解酵素</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory cytokine'>炎症性サイトカイン</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chemokine'>ケモカイン</span>放出"]
  C --> D["内皮の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adhesion molecules'>接着分子</span>発現↑、局所<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue injury'>組織傷害</span>、線維芽細胞活性化、血管新生"]

代表例

疾患 特徴
接触性皮膚炎 ・クロム・毛染め剤誘発性
セリアック病 -DQ多型依存性のT細胞活性化、天然型・に対するIgA型形質細胞、内視鏡で十二指腸粘膜が「ひび割れた泥」様所見

⭐ も自己免疫疾患の引き金になりうる——1型糖尿病がその例。 T細胞介在性の遅延型反応は、外来抗原(接触性皮膚炎)だけでなく、自己組織そのもの(1型糖尿病のβ細胞破壊)に対しても起こりうる。

まとめ

  • 過敏反応は無害・への病的免疫応答で、初回接触(感作)では無症状、再接触でエフェクター機構が発動する。
  • I型(IgE、分単位)は・の(即時型メディエーター)と新規合成メディエーター(脂質・サイトカイン)の2段階で症状を起こし、・・がその増加を説明する枠組みになる。
  • II型(IgG、時間単位)は・・に加え、抑制性/による「炎症なしの自己免疫」も引き起こしうる(重症筋無力症、)。
  • III型(免疫複合体、時間単位)は病原体排除の失敗から生じ、に応じた血管炎症状を来す(、、SLE)。
  • IV型(T細胞、日単位)は・タンパク質により誘発され、Th1-マクロファージ軸を介した遅発性炎症を起こし(接触性皮膚炎、セリアック病)、1型糖尿病のような自己免疫疾患の機序にもなりうる。

出典

  1. 1.Delayed drug hypersensitivity reactions - new concepts(Clinical and Experimental Allergy・2007)遅延型(IV型)はT細胞が動員する細胞の違いで単球主体のIVa、好酸球主体のIVb、好中球主体のIVdに細分され、CD4/CD8による細胞傷害性のIVcはすべてのIV型反応に関与する閲覧 2026-08-25
  2. 2.Nomenclature of allergic diseases and hypersensitivity reactions: Adapted to modern needs: An EAACI position paper(Allergy・2023)EAACIはGell & Coombsの4型を9型へ拡張し、抗体依存性I〜III、細胞性IVa〜c、組織由来V・VI(上皮バリア障害・代謝性の免疫調節異常)、化学物質への直接反応VIIとした。臨床では複数型の混在がありうる閲覧 2026-08-25
  3. 3.The hygiene hypothesis for allergy - conception and evolution(Frontiers in Allergy・2022)1989年の「Hay fever, hygiene and household size」から30年余りの衛生仮説の変遷を辿り、1990年代半ばにTh1/Th2パラダイムで説明が試みられ2000年代初頭に「旧友仮説」が広まったこと、農家育ちで同胞の多い小児では花粉症の有病率が約6分の1になること、21世紀に多数の微生物・環境・生活要因が検討されたにもかかわらず同胞数・農家効果を説明する頑健な機序はいまだ得られていないことを確認した閲覧 2026-08-25
  4. 4.A short history from Karelia study to biodiversity and public health interventions(Frontiers in Allergy・2023)第二次世界大戦後にカレリアがフィンランド側とロシア側に分断され、環境・生活様式の変化がフィンランド側でより大きかったこと、Karelia Allergy Study(2002〜2022年)でアレルギー疾患はフィンランド側で顕著に多く、ロシア側では遺伝子-微生物ネットワークの相互作用がより豊かで免疫調節回路の均衡と低いアレルギー有病率に関連したこと、フィンランド側の思春期児では住居周辺の生物多様性が高いほどアレルギーが少なかったことを確認した閲覧 2026-08-25
  5. 5.Chapter 28: Classification of hypersensitivity reactions(Allergy and Asthma Proceedings・2012)Gell & Coombs分類は改良され、II型は従来型のIIaと抗体による細胞刺激型のIIb(バセドウ病、自己免疫型の慢性特発性蕁麻疹)に分けられること、IV型はIVa(CD4陽性Th1によるマクロファージ活性化:肉芽腫形成・1型糖尿病)、IVb(CD4陽性Th2による好酸球性:持続型喘息・アレルギー性鼻炎)、IVc(細胞傷害性CD8陽性T細胞のパーフォリン/グランザイムBによるアポトーシス:Stevens-Johnson症候群・中毒性表皮壊死症)、IVd(T細胞が駆動する好中球性炎症:膿疱性乾癬・急性汎発性発疹性膿疱症)の4つに分かれること、複数の型の免疫学的過敏症を併せもつ疾患があることを確認した閲覧 2026-08-25