疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 消化器 · 症候群

食物蛋白誘発性腸炎症候群

Food protein-induced enterocolitis syndrome

別名
FPIES食物蛋白誘発胃腸炎
臓器系
消化器小児
科目
PediatricsMedical Genetics and Immunology (Immunology)
トピック
小児科 2-42:吸入・食物アレルギーの症候・診断・治療とアナフィラキシー免疫学 7.1:過敏反応
上位概念
食物アレルギー
鑑別疾患
アナフィラキシー細菌性急性胃腸炎敗血症
合併症
循環性ショック
治療薬
オンダンセトロンメチルプレドニゾロン
症状
嘔吐蒼白低血圧筋力低下

🧠 全体像:(FPIES)は、の病型の代表で、「状も呼吸器症状も伴わないのに、摂取後1〜4時間で嘔吐を繰り返し、重症ではショックに至る」という一見矛盾した像を取る。のアナフィラキシーと正反対の(・が陰性)を示すため、病歴だけが頼りの診断になる。治療の要も対称的で、第一選択はエピネフリンではなく輸液とである。

病態

FPIESは食物抗原に対するT細胞介在性の腸管局所炎症反応と考えられているが、反応ほど機序が解明されていない。抗原提示を受けたT細胞がでを放出し、の亢進・体液の腸管内漏出・平滑筋の攣縮を来すことで、大量嘔吐と腸管内へのが起こると考えられている。

flowchart TD
    A["原因食物の摂取"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal mucosa'>腸管粘膜</span>でのT細胞介在性炎症<br>非IgE機序"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal permeability'>腸管透過性</span>の亢進・体液の腸管内漏出"]
    C --> D["摂取後1〜4時間で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='recurrent vomiting'>反復性嘔吐</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasma volume depletion'>血漿量減少</span>"]
    E --> F["蒼白・傾眠・脱力"]
    E --> G["重症:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypotensive shock'>低血圧性ショック</span>"]

⚠️ 状(蕁麻疹・)や呼吸器症状(喘鳴・)を伴わない点が、同じ「食物摂取後の重篤な反応」であるアナフィラキシーとの決定的な違いである。肥満細胞のを介さないため、これらの臓器症状が原則として出ない。

疫学・原因食物

好発は乳児期で、多くは生後数か月〜1歳台に発症する。代表的な原因食物は・大豆・米・オート麦で、日本では卵黄・魚(特に加熱不十分な魚卵を含む)も比較的多い原因として知られる。複数の食物に反応する例、の進行に伴い新規食物への反応が判明する例もある。

⭐ FPIESの前向き研究では、約9割が3歳までに自然に耐性を獲得したと報告されている1。米・オート麦は・大豆よりやや遅れて耐性化する傾向がある。

臨床像

病型 経過 症状
急性FPIES 原因食物の単回・間欠的摂取後に発症 摂取後1〜4時間で反復性の激しい嘔吐。蒼白・脱力・傾眠を伴い、重症では低血圧性ショックに進む
慢性FPIES 原因食物を継続的に摂取し続けた場合 間欠的な嘔吐・下痢・体重増加不良が持続し、食物を除去すると数日で改善、再摂取で急性像がする

💡 「に何度もかかる乳児」に見えることがの典型パターンである。反復する嘔吐エピソードが特定の食物摂取後に再現性をもって起こることに気づけるかどうかが鑑別の分かれ目になる。重症発作では・代謝性アシドーシス・を来すこともあり、敗血症やとされに進むことがある。

診断

⚠️ ・は診断に用いない(多くが陰性で、感作の有無を反映しないため)。診断は国際コンセンサスガイドライン2の病歴に基づく・、および必要に応じたによる。

flowchart TD
    A["原因食物摂取後1〜4時間の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='recurrent vomiting'>反復性嘔吐</span><br>皮膚・呼吸器症状を伴わない"] --> B{"典型的な病歴と再現性"}
    B -->|"明らか"| C["臨床診断(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='challenge test'>負荷試験</span>は必須ではない)"]
    B -->|"不確実"| D["医療監視下の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral food challenge'>経口食物負荷試験</span>"]
    D -->|"陽性:嘔吐・蒼白などの再現"| E["FPIESと確定"]
    D -->|"陰性"| F["耐性化または他疾患を再検討"]

は「疑わしい食物の摂取後1〜4時間以内の嘔吐、かつ通常の症状〈皮膚・呼吸器〉を伴わない」こと。にはエピソードの既往、蒼白、傾眠・活気低下、複数回の受診・治療歴、低血圧、などが含まれ、⚠️ 1つに加えてを3つ以上満たすことで臨床診断する2。

非IgE介在性の近縁病型との違い

にはFPIES以外にも近縁の病型があり、症状の主座とで区別する。

病型 主症状
FPIES 、重症で 摂取後1〜4時間(急性型)
健常に見える乳児の血便 慢性・間欠的
、体重増加不良、 慢性

⚠️ がまれに陽性になる例(非定型FPIES)もあり、この一群は非IgE型の中でもが遅れやすく、の再導入をより慎重に進める。

治療

急性発作

⚠️ エピネフリン筋注は第一選択ではなく、にはも処方しない。 アナフィラキシーと異なり、FPIESのはによるであり、対応は()20 mL/kgのを反応をみながら反復することが中心になる2。(0.15 mg/kgを静注または筋注)を併用すると嘔吐の短縮に有用とされる。重症例(3回以上の嘔吐、著明な・蒼白・チアノーゼ様の様子)では1 mg/kg(最大60〜80 mg)の全身投与を考慮し、遷延する低血圧・ショックがあれば管理へ移行する2。

長期管理

原因食物を完全に除去し、と連携して代替栄養を確保する。乳児では、の評価のため定期的に医療監視下のを行い、除去を漫然と続けない。

まとめ

  • FPIESはの病型で、摂取後1〜4時間のが特徴。皮膚・呼吸器症状を伴わない点がアナフィラキシーとの決定的な違い。
  • ・は陰性が通常で診断に使えず、病歴(・)と必要時ので診断する。
  • 治療の第一選択はエピネフリンではなく、20 mL/kgの輸液と。にはも処方しない。
  • 原因食物は乳・大豆・米・オート麦が代表的(日本では卵黄・魚も)で、多くは3歳までに耐性を獲得する。

出典

  1. 1.The prevalence and natural course of food protein-induced enterocolitis syndrome to cow's milk: a large-scale, prospective population-based study(Journal of Allergy and Clinical Immunology・2011)牛乳FPIESの前向き集団ベース研究で、約9割が3歳までに耐性を獲得したという自然経過のデータ閲覧 2026-08-19
  2. 2.International consensus guidelines for the diagnosis and management of food protein-induced enterocolitis syndrome: Executive summary-Workgroup Report of the Adverse Reactions to Foods Committee, American Academy of Allergy, Asthma & Immunology(Journal of Allergy and Clinical Immunology・2017)FPIESの診断基準(大基準・小基準)、重症度分類、急性期の生理食塩水20 mL/kgボーラス・オンダンセトロンによる管理を規定した国際コンセンサスガイドライン閲覧 2026-08-19