薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · B24 Antiemetics / 制吐薬 · 必修

オンダンセトロン

ondansetron

分類
Antiemetics / 制吐薬
商品名(日本)
ゾフラン
商品名(EU)
Zofran
科目
Pharmacology
トピック
B24: Antiemetic drugs. Prokinetic agents
禁忌疾患
心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)
副作用
便秘頭痛
監視検査値
カリウムマグネシウム
対象疾患
ウイルス性胃腸炎妊娠悪阻
原因となる疾患
心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)

🧠 全体像:嘔吐へ至る経路は①CTZ()②消化管の④大脳皮質の4つに大別でき、経路ごとに主役の受容体が違う。は①と②のを遮断する代表格(語尾「-setron」)で、抗がん薬・放射線・手術による粘膜/CTZ刺激で起きる急性の嘔吐にとりわけ強い。もう一つの顔はQT延長で、2012年のFDA安全性通知以降、静注の1回量に上限が設けられている——「よく効くが、心臓には気をつける薬」という理解が実地臨床でのの位置づけを決めている。

薬効群の中での位置づけ

は「へ至るどの経路を遮断するか」で使い分ける。

経路 受容体 代表薬 得意な場面
CTZ+消化管 5-HT3 CINV急性期・PONV
CTZ D2 低下を伴う嘔吐
CTZ NK1/ (フォス) CINV
H1・ムスカリン

はどちらもだが、半減期がまるで違う。 は半減期約4時間ので、急性期(投与後24時間以内)のCINVとPONVに向く。は半減期約40時間かつ受容体のに結合して受容体そのものをさせるため、単回投与で(24時間以降〜5日目)までカバーできる。ガイドライン上は高度・中等度化学療法の対策としてが優先されることが多い。

機序

flowchart TD
    A["化学療法・放射線・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surgical stress'>手術侵襲</span>が<br>消化管粘膜や中枢を刺激"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='enterochromaffin cell'>腸クロム親和性細胞</span>から<br>セロトニン(5-HT)が放出"]
    B --> C["消化管の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vagal afferent'>求心性迷走神経</span>終末の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='5-HT3 receptor'>5-HT3受容体</span>を刺激"]
    B --> D["血流を介してCTZ(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='area postrema'>最後野</span>)の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='5-HT3 receptor'>5-HT3受容体</span>を刺激"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nucleus tractus solitarius (NTS)'>延髄孤束核</span>を経由し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='vomiting center'>嘔吐中枢</span>へ入力"]
    D --> E
    E --> F["悪心・嘔吐"]
    G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ondansetron'>オンダンセトロン</span>が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='5-HT3 receptor'>5-HT3受容体</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='competitive'>競合的</span>に遮断"] -.->|"末梢・中枢の両方で入力を止める"| C
    G -.-> D

💡 末梢(消化管)との両方を止めるのがポイント。 化学療法・放射線・術後の悪心は、腸管粘膜の傷害でセロトニンが大量放出される急性期の反応が中心のため、この二重の遮断が効く。一方、のように(H1・ムスカリン経路)が原因の嘔吐にははほとんど効かない——経路が違えば効く薬が違うという全体の大原則がここに表れている。

薬物動態

項目 値・特徴
約60%(あり)
分布 約70〜76%
代謝 CYP3A4・CYP1A2・CYP2D6の複数経路(1つの薬があっても代謝が破綻しにくい)
排泄 代謝物として腎・糞便排泄。未変化体はごくわずか
半減期 約3〜4時間(短い)

半減期が短いため、と違って単回投与ではをカバーしきれない。 化学療法では複数日にわたる投与か、への切り替えが検討される。

適応

領域 使いどころ
腫瘍内科 (CINV)の急性期予防(と併用することが多い)
周術期 の予防・治療
放射線治療 放射線照射に伴う悪心・嘔吐
の難治例(催奇形性リスクの報告が一致しないため、他の治療で効果不十分な場合にのうえで使用)
救急・小児科 急性胃腸炎に伴う嘔吐(が多いが、臨床現場では頻用される)

用法・用量

の予防:成人では化学療法開始前にPO/IVで投与し、レジメンのリスクに応じてと併用する。PONV予防:時にIV投与。静注の1回量には上限がある——2012年のFDA安全性通知で32 mg単回静注がQT延長のリスクから削除され、1回の静注は16 mgを超えないことが標準になっている。実際の用量は適応・年齢・体重・肝機能で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌の既往を含むとの併用(重度低血圧・の報告があり
  • ⚠️ QT延長は 静注1回量の上限(16 mg)を超えない。カリウムなど電解質異常があれば投与前に補正し、他のQT延長作用薬との併用にも注意する
  • :SSRI・SNRI・・MAO阻害薬など他のとの併用で報告がある
  • 重度:主にのため1日総量を制限する

副作用

頻度 内容
高頻度 頭痛便秘
注意 めまい、一過性の
重篤・まれ QT延長・、アナフィラキシー

まとめ

  • (「-setron」)。CTZと消化管の両方でを遮断する。
  • CINVの急性期とPONVに強い。半減期約4時間と短く、のカバーは弱い。
  • には(長時間作用・)やの追加が必要になる。
  • にQT延長を起こす。2012年のFDA通知以降、静注1回量は16 mgが上限。
  • 電解質異常(低K・低Mg)を補正してから投与し、他のQT延長薬・との併用に注意する。
  • との併用は禁忌(重度低血圧・)。
  • の難治例では催奇形性の報告が一致しないためのうえで使用する。