薬理学

薬理学 · B24

制吐薬・消化管運動促進薬

B24: Antiemetic drugs. Prokinetic agents

前提:病態
Core53:薬剤性有害反応:悪性症候群Core64:薬剤性有害反応:QT延長Core66:薬剤性有害反応:便秘・下痢・嘔吐Core69:薬剤性有害反応:鎮静
応用トピック
機能性ディスペプシアの薬物療法胃食道逆流症の薬物療法麻酔科学II:前投薬化学療法の副作用
薬剤
(フォス)アプレピタントアコチアミドイトプリドオンダンセトロンジメンヒドリナートデキサメタゾンドロペリドールドンペリドンパロノセトロンプロクロルペラジンメチルナルトレキソンメトクロプラミド
疾患
悪性症候群胃不全麻痺機能性ディスペプシア動揺病
症状
悪心急性ジストニア嘔吐

🧠 全体像:吐き気は「・迷走神経/腸管・前庭・大脳/炎症」の4つの入口から来る。 覚え方は受容体別に:①5-HT3遮断・②D2遮断・③NK1遮断・④H1/M遮断・⑤ステロイド補助・⑥促進/便秘解除。

⭐のリスクは、 + + + の4剤で覚える。は長く「悪心が問題なら足す任意の4剤目」だったが、2023年のMASCC/ESMO改訂で固定の構成薬になった1。

嘔吐の4つの入口と、薬が入る場所

💡 の分類は「どの入口を塞ぐか」の分類である。 どの薬がどの場面で効くかは、その入口が何を拾っているかで決まる——だからには効かないし、CINVに抗ヒスタミン薬を使っても足りない。

flowchart TD
  A["抗がん薬・オピオイド・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uremia'>尿毒症</span><br>(血中の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chemical substance'>化学物質</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chemoreceptor trigger zone (CTZ)'>化学受容器引金帯</span>(CTZ)<br>血液脳関門の外にある<br>D2・5-HT3・NK1受容体"]
  C["抗がん薬による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='enterochromaffin cell'>腸クロム親和性細胞</span>からの<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='serotonin release'>セロトニン遊離</span>・胃内容の停滞"] --> D["腸管・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vagal afferents'>迷走神経求心路</span><br>5-HT3・NK1受容体"]
  E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acceleration'>加速度</span>・回転・内耳の障害"] --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vestibular apparatus'>前庭器</span> → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='vestibular nuclei'>前庭神経核</span><br>H1・ムスカリンM受容体"]
  G["不安・痛み・におい・頭蓋内圧亢進"] --> H["大脳皮質・辺縁系"]
  B --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vomiting center'>嘔吐中枢</span><br>(延髄の神経回路)"]
  D --> I
  F --> I
  H --> I
  I --> J["嘔吐・悪心"]
  B -.->|"遮断"| K["D2拮抗薬・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='5-HT3 antagonist'>5-HT3拮抗薬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='NK1 receptor antagonist'>NK1拮抗薬</span>"]
  D -.->|"遮断"| L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='5-HT3 antagonist'>5-HT3拮抗薬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='NK1 receptor antagonist'>NK1拮抗薬</span><br>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prokinetic'>消化管運動促進薬</span>"]
  F -.->|"遮断"| M["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='H1 antihistamine'>H1抗ヒスタミン薬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anticholinergics'>抗コリン薬</span>"]
  H -.->|"抑制"| N["ベンゾジアゼピン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='olanzapine'>オランザピン</span>"]

5-HT3受容体拮抗薬「-setron」

腸管のとCTZのセロトニン経路を遮断する → CINVとに強い

⚠️ のQT延長はで、しかも「実測値」と「モデルの予測値」が混ざりやすい。 健常人58例の・単回静注で、実際に測定された比の最大平均延長は 32 mg静注で19.5 ms(95%上限21.8)・8 mg静注で5.6 ms(同7.4) である。ここから得た曝露-反応関係を使って予測された値が 24 mgで14.0 ms(95%予測上限16.3)・16 mgで9.1 ms(同11.2) で、24 mgと16 mgは実測ではなく外挿である2。8 mgの15分では臨床的に意味のある延長は認めなかった。

⚠️ 添付文書が求めているのは「回避」と「監視」の2つに分かれる。 逐語で Avoid ZOFRAN in patients with congenital long QT syndrome(では回避)、そのうえで Electrocardiogram (ECG) monitoring is recommended in patients with electrolyte abnormalities (e.g., hypokalemia or hypomagnesemia), congestive heart failure, bradyarrhythmias, or patients taking other medicinal products that lead to QT prolongation(電解質異常・・・QT延長薬の併用では心電図監視)である2。QT延長薬の全体像はCore64:薬剤性:QT延長にある。

⚠️ 禁忌にとの併用がある。 併用で高度の低血圧とが報告されたことを理由に禁忌とされており、の相互作用の中で最も見落としやすい2。

⚠️ が起こりうる。 拮抗薬で報告があり、大半は・セロトニン・・・・・・・静注といったとの併用例だが、単独の過量でも報告があり、死亡例もある2。

💡 重度では1日量に上限が付く。 10点以上では逐語で a total daily dose of 8 mg should not be exceeded とされ、しかも初日を超える投与経験が無いと書かれている2。

妊娠中の使用——結論が完全には一致していない

⚠️ 2つのコホートで、見ている転帰ごとにが違う。両方を並べて覚える。

研究 集団
デンマークの歴史的コホート3 60万8,385件の妊娠からとを1:4で ・・(2.9%対2.9%、1.12、95%CI 0.69〜1.82)・早産・・在胎不当過小のいずれにも有意なリスク増加を認めなかった
米国Medicaidのコホート4 181万件超の妊娠、第1三半期曝露8万8,467件 は増えず(調整0.99)、全体も増えなかったが、とは小さな関連を認めた(調整1.24、10,000出生あたりの2.7)

💡 「安全」とも「危険」とも言い切れない、が正確な要約である。 のは10,000出生あたり2.7と小さい一方、については2研究とも増加を示していない。「は増えない」で止めるとの所見が落ち、「催奇形性がある」と書くとの陰性所見が落ちる。

D2受容体拮抗薬(CTZ遮断)+消化管運動促進薬

  • — D2拮抗+高用量で5-HT4作動→アセチルコリン↑|+促進|⚠️・
  • — D2拮抗()|術後/化学療法性嘔吐|⚠️QT延長・鎮静
  • — D2拮抗|・促進|💡血液脳関門を通過しにくくが少ない
  • — D2拮抗+→アセチルコリン↑|・胃運動低下|💡主に
  • — +ムスカリンM1/M2受容体拮抗|💡 日本でという病名そのものに承認されている(・・)|⚠️ D2拮抗を持たないのでではなく純粋な運動促進薬

メトクロプラミド——遅発性ジスキネジアの枠組み警告と、EU・米国で違う制限

⚠️⚠️ 米国はのを持ち、期間の上限を12週に置く。 逐語で Metoclopramide, including Reglan, can cause tardive dyskinesia (TD), a potentially irreversible serious movement disorder、the risk of developing TD increases with duration of treatment and total cumulative dosage、In patients with symptomatic, documented gastroesophageal reflux, the maximum duration of Reglan treatment is 12 weeks、糖尿病性では avoid a total duration of treatment with metoclopramide products ... for longer than 12 weeks と定める5。TDの既往は禁忌であり、TDの徴候が出たら直ちに中止する。

⚠️ TDのリスクが高い集団が名指しされている。 逐語で the risk of developing TD is increased in elderly patients, especially in elderly women ... and in patients with diabetes mellitus——高齢者、とくに高齢女性と、糖尿病患者である5。糖尿病性はまさにこの集団なので、適応と危険因子が重なる。

⚠️ 米国の禁忌は5項目ある。 ①TDまたはによる反応の既往、②を刺激すると危険な状況(消化管出血・・穿孔)、③・カテコールアミン産生(を起こしうる)、④てんかん(発作の頻度と重症度を増しうる)、⑤過敏症5。⚠️ ②はに共通する発想で、「動かす薬は、動かしてはいけない管には使えない」。

⚠️ と米国で、制限の掛け方そのものが違う。 どちらも正しく、片方で他方を代表させない。

(2013年、欧州委員会の法的拘束力ある決定)6 米国(添付文書)5
成人の最大用量 1日30 mg で1日60 mg、糖尿病性で1日40 mg
投与期間 最大5日間 で4〜12週間(上限12週)、も12週を超えない
小児 1歳未満は使用しない。1歳以上では化学療法後の遅発性予防と治療の第二選択に限定 小児には推奨しない(TD・その他の、新生児のの危険)
挙げられた危険 急性のは小児で高頻度、は高用量・長期使用の高齢者で多く報告 TDの危険は高齢者(とくに高齢女性)と糖尿病患者で増加

💡 同じ有害事象を根拠にしながら、は「短く(5日)」、米国は「長くても12週」と線を引いている。 期間の数字を覚えるときは必ず国とセットにする。はCore53:薬剤性:を参照。

ドンペリドン——EUは制限、米国はそもそも未承認

⚠️ はQT延長・のリスクを理由に用量・期間・対象を制限した。 重篤な心臓(延長・・重篤な・)の危険は60歳を超える患者、1日30 mgを超えるを受けている成人、QT延長薬または阻害薬を併用している患者でより高く観察され、成人の用量は1回10 mg・1日3回(最大1日30 mg)まで、投与期間は通常1週間を超えるべきでないとされた7。

⚠️ 米国では承認されていない。 は逐語で Domperidone is not currently a legally marketed human drug and it is not approved for sale in the U.S. for human use とし、標準治療に反応しなかった12歳以上の一部の消化器疾患(上部消化管症状を伴う、、慢性便秘)に限り、を通じて使いうるとしている。理由として挙げているのは逐語で cardiac arrhythmias, cardiac arrest, and sudden death である8。

💡 「で制限されている薬」と「米国で承認されていない薬」は、同じリスクを別の重さで扱った結果である。 ⚠️ 一国の扱いを「世界の標準」と読まない。

NK1受容体拮抗薬

  • (フォス) — NK1()受容体拮抗|💡リスクのCINV予防で++と併用(4剤)|⚠️を介した相互作用(はの中等度阻害薬でもあり基質でもある)

H1抗ヒスタミン薬(前庭系)+抗コリン作用

💡 の入口は H1 とで動いているので、ここだけは抗ヒスタミン薬・が第一選択になる。 逆に、にやD2拮抗薬を出しても入口が違う。鎮静そのものの扱いはCore69:薬剤性:鎮静、第1世代抗ヒスタミン薬の全体像はB26:ヒスタミンおよび抗ヒスタミン薬にある。

ステロイド系制吐補助薬・多受容体拮抗薬

  • — 長時間作用型グルココルチコイド|CINVの構成薬|💡リスクでは++と併用(4剤)
  • — 多受容体拮抗(D2/5-HT3/5-HT2A/H1/M)の|💡リスクのCINV予防で4剤併用の固定の構成薬|⚠️鎮静

💡 が4剤目に入った根拠と、その意味。 化学療法(シスプラチン70 mg/m²以上または-)を受ける未治療患者380例ので、当時の標準3剤(・/・)に10 mg/日(1〜4日目)をした。は悪心の予防で、悪心が無かった割合は0〜24時間74%対45%、25〜120時間42%対25%、全期間37%対22%(いずれもP=0.002)。(嘔吐なし・救済薬なし)はで、全期間64%対41%(P<0.001)だった。2日目に高度の鎮静が5%で生じた9。

⚠️ この試験が主に示したのは「悪心が減る」ことである。 リスクの分類は嘔吐だけで組まれていて悪心を含まないので、分類が同じでも悪心の負担は別に評価する必要がある。が4剤目に入った意味はここにある。

💡 用量は10 mgが最もよく検討されている。5 mgはより優れるが、10 mgと同等かを決められる比較試験がないため未確定である(Level of evidence II, Grade of recommendation B)。鎮静が懸念されるなら5 mg開始や就寝時投与が選択肢とされる1。

オピオイド誘発性便秘の解除

⚠️ のクラス表示の禁忌は「既知または疑われる消化管閉塞のある患者、および閉塞を繰り返す危険が高い患者」である10。穿孔の危険が高いこと自体は禁忌ではない——・併用薬・最近の消化管処置による穿孔の危険と、排便を得る利益を比較して患者を選ぶ、という書き方になっている。💡 には耐性がつかないので、の下剤を最初から組み込み、反応不十分なら単剤へ進む。詳細はCore66:薬剤性:便秘・下痢・嘔吐にある。

化学療法誘発性悪心嘔吐(CINV)の予防

CINVの正本はCore66:薬剤性:便秘・下痢・嘔吐にあり、リスク表と4剤レジメンの推奨の格付けはそちらに揃えてある。ここではの側から見た要点を置く。

催吐性リスクの区分は投与経路で分かれる

⚠️ 静注薬は4区分、は2区分である。 「4区分」とだけ覚えると経口抗がん薬の分類を取り違える。区分の%は有効なの予防投与を行わなかった場合に嘔吐を生じる患者の割合であり、悪心は分類に含まれない。のは初回1回分ではなく治療1コース全体に基づいて決められ、この分類は成人にのみ適用される11。

区分 予防投与なしで嘔吐する割合 例
静注 高度 ほぼ全例(90%超) シスプラチン、、、ストレプトゾシン、クロルメチン、1500 mg/m²以上、+併用(この7項目で全部)
静注 中等度 30〜90% 、、、、
静注 軽度 10〜30% 、、、、
静注 最小 10%未満 、、リツキシマブ、、
経口 中等度〜高度 30%超 、、、、、
経口 最小〜軽度 30%未満 、クロラムブシル、、、

⚠️ のの2区分は、逐語で Risk in more than 30% of patients と Risk in fewer than 30% of patients と書かれている。 つまりちょうど30%はどちらの区分にも属さない書き方になっており、静注薬の中等度が Risk in 30 to 90% of patients と30%を含むのとは揃っていない11。境界値をそのまま覚えるときは、この不整合ごと覚える。

💡 経口が2区分になったのは、精度が上がったからではなく落ちたからである。 は単回ではなく連日長期に飲むため、急性期・という枠組み自体が成り立たなくなり、報告される嘔吐の頻度も試験間で大きくばらつく。そこでMASCC/ESMOは2023年改訂での4段階を2段階へ粗くし、ASCOの2017年改訂の方式に合わせた。静注薬の4区分はそのまま維持されている11。

💡 同じ薬でも経路で区分名が変わる。 は静注なら用量で高度(1500 mg/m²以上)と中等度に分かれるが、経口では「中等度〜高度」の一区分に入る。も静注は中等度、経口は中等度〜高度である。2区分の「中等度〜高度」は4区分の中等度と高度をまとめた枠であって、格上げではない11。

高度催吐性リスクの予防は4剤

⭐ 急性期(0〜24時間)の予防は、拮抗薬・・NK1受容体拮抗薬(、、ネツピタント、ホスネツピタント、ロラピタント)・の4剤を化学療法前に単回投与する。 MASCC/ESMOの2023年改訂は、+併用(AC)以外の化学療法でも、AC療法を受ける女性でも、この4剤併用を Level of evidence I, Grade of recommendation A で推奨している1。

  • 2016年版でだったが、で良質な試験の結果を受けて固定の構成薬になった——これが2023年改訂の要点である1。
  • ⚠️ (24〜120時間)は非ACとACで内容が違う。 非ACではとを2〜4日目に、ACではだけを2〜4日目に投与することが提案されている(いずれも Level of evidence II, Grade of recommendation B)1。

💡 ガイドラインどうしで書き方が割れている。 SEOM(スペイン臨床腫瘍学会)の2021年版は、リスクの予防を「拮抗薬・NK1受容体拮抗薬・ステロイドの3剤併用」(Level of Evidence I, Grade of Recommendation A)とし、の追加は悪心が問題になるときに考慮するもの(同じくI, A)と位置づけている。同じガイドラインの薬剤別の節では4剤レジメンが有効(I, A)とも述べており、内部でも力点が揺れている12。古い書き方(3剤)に出会っても誤りではなく、を固定要素とするかどうかが版と学会で違うと理解する。

⭐ 高頻度ポイント:「-setron」=5-HT3拮抗(CINV/PONV、⚠️QT延長・便秘・併用は禁忌)、=長時間で遅発性CINV。=D2拮抗+運動促進(⚠️の、は5日・米国は12週)。=末梢性D2拮抗(は1日30 mg・1週間まで、米国は未承認)。=NK1拮抗、リスクでは5-HT3++と併用(4剤)。=2023年改訂で任意のから固定の4剤目へ(⚠️鎮静)。リスクの区分は静注4・経口2。=(H1+抗コリン)。=末梢μ拮抗でオピオイド便秘、鎮痛は保つ(⚠️禁忌は消化管閉塞)。

📋 まとめ表

薬剤 系統 機序 適応・注意
5-HT3拮抗「-setron」 /CTZの5-HT3遮断 CINV/PONV・⚠️QT延長()/便秘/・⚠️併用は禁忌
長時間作用型5-HT3拮抗 5-HT3遮断(長時間) 💡遅発性CINVに強い
D2拮抗+促進 D2遮断+高用量で5-HT4作動→アセチルコリン↑ /・⚠️⚠️の(米国12週/ 5日)・
D2拮抗 CTZのD2遮断 PONV/CINV・⚠️QT延長/鎮静
末梢性D2拮抗 末梢のD2遮断(血液脳関門をほぼ通らない) /運動促進・⚠️は用量/期間/年齢を制限、米国は未承認
D2拮抗+→アセチルコリン↑ ・胃運動↑
+M1/M2拮抗 (日本で病名に承認)・💡は持たない
(フォス) NK1拮抗 /NK1遮断 CINV予防・5-HT3++の4剤・⚠️
H1遮断+抗コリン のH1/ムスカリン遮断 /めまい・⚠️眠気/口渇/尿閉
ステロイド補助 作動→炎症性/中枢性嘔吐シグナル↓ CINVの4剤の一角
多受容体拮抗() D2/5-HT3/5-HT2A/H1/M拮抗 CINV予防の固定の4剤目(10 mg)・⚠️鎮静
末梢μ拮抗() 腸管遮断(中枢移行少) オピオイド便秘・鎮痛は温存・⚠️禁忌は消化管閉塞

出典

  1. 1.2023 updated MASCC/ESMO consensus recommendations: prevention of nausea and vomiting following high-emetic-risk antineoplastic agents(Multinational Association of Supportive Care in Cancer / European Society for Medical Oncology・2023)全文(PMC10739516)を取得して確認した。推奨表(Table 2)では、アントラサイクリン・シクロホスファミド併用(AC)以外の高度催吐性化学療法でも、女性のAC療法でも、急性期の予防として5-HT3受容体拮抗薬・デキサメタゾン・NK1受容体拮抗薬(アプレピタント、ホスアプレピタント、ネツピタント、ホスネツピタント、ロラピタント)・オランザピンの4剤を化学療法前に単回投与することが推奨されている(Level of evidence I, Grade of recommendation A)。2016年版ではオランザピンの3剤への上乗せは任意(optional)だったが、大規模試験の結果を受けて4剤レジメンの固定要素になったと本文が明記している。遅発期は非ACではデキサメタゾンとオランザピンを2〜4日目に、ACではオランザピンを2〜4日目に投与することが提案されている(Level of evidence II, Grade of recommendation B)。オランザピンは10 mgが最もよく検討された用量で、5 mgはプラセボより優れるが10 mgと同等かは不明とされる(Level of evidence II, Grade of recommendation B)。鎮静が懸念されるなら5 mg開始や就寝時投与が選択肢とされる。閲覧 2026-09-08
  2. 2.ZOFRAN (ondansetron hydrochloride) injection, for intravenous use — full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration・2021)PDF全文(18頁、印字された改訂表示は逐語で Revised 10/2021)を取得して確認した。⚠️ 12.2の数値は実測と予測が混ざっているので分けて読む。健常人58例の二重盲検・単回静注・プラセボおよび陽性対照つきクロスオーバー試験で、ベースライン補正後のプラセボとのQtcF差の最大平均値は逐語で "19.5 (21.8) ms and 5.6 (7.4) ms after 15-minute intravenous infusions of 32 mg and 8 mg ZOFRAN, respectively" =実測されたのは32 mgと8 mgである。24 mgの14.0 ms(95%予測上限16.3)と16 mgの9.1 ms(同11.2)は逐語で "mean predicted" とされる曝露-反応モデルからの予測値であり、実測ではない。8 mgの15分点滴は臨床的に意味のある延長を示さなかった。5.2は逐語で "Ondansetron prolongs the QT interval in a dose-dependent manner"、"Avoid ZOFRAN in patients with congenital long QT syndrome"、"Electrocardiogram (ECG) monitoring is recommended in patients with electrolyte abnormalities (e.g., hypokalemia or hypomagnesemia), congestive heart failure, bradyarrhythmias, or patients taking other medicinal products that lead to QT prolongation" と述べ、市販後のトルサード・ド・ポワントの報告に言及する。4の禁忌は過敏症と、逐語で "The concomitant use of apomorphine with ondansetron is contraindicated based on reports of profound hypotension and loss of consciousness when apomorphine was administered with ondansetron" のアポモルヒネ併用である。5.3はセロトニン症候群を扱い、多くはセロトニン作動薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬・セロトニン ノルアドレナリン再取り込み阻害薬・モノアミン酸化酵素阻害薬・ミルタザピン・フェンタニル・リチウム・トラマドール・メチレンブルー静注)との併用例だが本剤単独の過量でも報告があり、逐語で "Some of the reported cases were fatal" とする。2.3と8.6は重度肝機能障害(Child-Pugh 10点以上)で逐語 "a total daily dose of 8 mg should not be exceeded" とし、初日を超える投与経験が無いとする。5.4は心筋虚血(冠攣縮)、5.5は進行性イレウス・胃拡張の徴候を覆い隠しうることを扱う。閲覧 2026-09-23
  3. 3.Ondansetron in pregnancy and risk of adverse fetal outcomes(The New England Journal of Medicine・2013)デンマークの60万8,385件の妊娠を含む歴史的コホートから曝露群と非曝露群を1:4の傾向スコアマッチングで比較した研究で、オンダンセトロン投与は自然流産・死産・大奇形(曝露群2.9%対非曝露群2.9%、有病率オッズ比1.12、95%CI 0.69-1.82)・早産・低出生体重・在胎不当過小のいずれについても有意なリスク増加と関連しなかったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Association of Maternal First-Trimester Ondansetron Use With Cardiac Malformations and Oral Clefts in Offspring(JAMA・2018)抄録(PMID 30561479、PMC6669077)で確認した。2000〜2013年の米国Medicaid Analytic eXtractに基づく後方視的コホートで、対象は1,816,414件の妊娠、うち88,467件(4.9%)が第1三半期にオンダンセトロンに曝露した。傾向スコア層別化で交絡を調整した結果、心奇形の調整相対危険度は0.99(95%CI 0.93〜1.06)、先天異常全体は1.01(95%CI 0.98〜1.05)で増加を認めなかったが、口唇口蓋裂は調整相対危険度1.24(95%CI 1.03〜1.48)、調整リスク差は10,000出生あたり2.7(95%CI 0.2〜5.2)で小さな関連を認めた。口唇口蓋裂の絶対リスクは非曝露10,000出生あたり11.1、曝露14.0である。著者らの結論は逐語で、第1三半期曝露は心奇形とも先天異常全体とも関連しなかったが口唇口蓋裂の危険がわずかに高いことと関連した、である。閲覧 2026-09-23
  5. 5.REGLAN- metoclopramide hydrochloride tablet(ANI Pharmaceuticals(米国添付文書)・2026)DailyMedの本文(Highlights末尾に印字された改訂表示は逐語で Revised 2/2026)で確認した。枠組み警告は逐語で "Metoclopramide, including Reglan, can cause tardive dyskinesia (TD), a potentially irreversible serious movement disorder"、"the risk of developing TD increases with duration of treatment and total cumulative dosage"、"Reglan is contraindicated in patients with a history of TD"、"In patients with symptomatic, documented gastroesophageal reflux, the maximum duration of Reglan treatment is 12 weeks"、糖尿病性胃不全麻痺について "avoid a total duration of treatment with metoclopramide products, including Reglan tablets, for longer than 12 weeks" と述べる。5.1は危険因子を逐語で "the risk of developing TD is increased in elderly patients, especially in elderly women ... and in patients with diabetes mellitus" とする。適応は従来治療に反応しない成人の症候性・確認済み胃食道逆流に対する4〜12週間の治療と、成人の急性・反復性の糖尿病性胃不全麻痺の症状緩和の2つで、最大1日量は前者60 mg・後者40 mg。小児には遅発性ジスキネジア・その他の錐体外路症状と新生児のメトヘモグロビン血症の危険から推奨されない。禁忌は5項目で、逐語で遅発性ジスキネジアまたはメトクロプラミドによるジストニア反応の既往、"When stimulation of gastrointestinal motility might be dangerous (e.g., in the presence of gastrointestinal hemorrhage, mechanical obstruction, or perforation)"、褐色細胞腫その他のカテコールアミン産生パラガングリオーマ、てんかん、過敏症である。閲覧 2026-09-23
  6. 6.European Medicines Agency recommends changes to the use of metoclopramide(European Medicines Agency・2013)EUはメトクロプラミドの錐体外路症状(急性ジストニアなど)と遅発性ジスキネジアのリスクを理由に、2013年12月20日付の欧州委員会の法的拘束力ある決定で成人の最大用量を1日30 mg・投与期間を最大5日間に制限し、1歳未満の乳児には使用しないこと、1歳以上の小児では化学療法後の遅発性悪心嘔吐予防と術後悪心嘔吐治療の第二選択に限定したこと、急性の錐体外路症状は小児でより高頻度、遅発性ジスキネジアは高用量・長期使用の高齢者でより多く報告されたことを確認した。閲覧 2026-08-27
  7. 7.CMDh confirms recommendations on restricting use of domperidone-containing medicines(European Medicines Agency・2014)ドンペリドンの重篤な心臓有害反応(QTc延長・トルサード・ド・ポワント・重症心室性不整脈・心臓突然死)のリスクが60歳超・1日30 mg超の経口投与・QT延長薬またはCYP3A4阻害薬の併用でより高く観察されたとし、成人の用量を1回10 mg・1日3回(最大1日30 mg)まで、投与期間を原則1週間までに制限する勧告を確認した。閲覧 2026-08-27
  8. 8.How to Request Domperidone for Expanded Access Use(U.S. Food and Drug Administration・2025)ページ本文(ページ下部の最終更新表示は2025年8月4日)で確認した。逐語で "Domperidone is not currently a legally marketed human drug and it is not approved for sale in the U.S. for human use" とし、逐語で "Patients 12 years of age and older with certain gastrointestinal (GI) conditions who have failed standard therapies may be able to receive treatment with domperidone through an expanded access investigational new drug application (IND). These conditions include gastroesophageal reflux disease with upper GI symptoms, gastroparesis, and chronic constipation" と、12歳以上・標準治療不応という条件つきで拡大アクセス治験薬申請の経路のみがあることを述べる。危険は逐語で "The serious risks associated with domperidone include cardiac arrhythmias, cardiac arrest, and sudden death"。⚠️ 本ページはWebFetch経由で取得しており、ここに写した逐語以外の細部は再取得で表現が揺れうる。閲覧 2026-09-23
  9. 9.Olanzapine for the Prevention of Chemotherapy-Induced Nausea and Vomiting(The New England Journal of Medicine・2016)抄録を再取得して確認した。高度催吐性化学療法(シスプラチン70 mg/m²以上またはシクロホスファミド-ドキソルビシン)を受ける未治療患者380例(オランザピン群192例・プラセボ群188例)を対象とした二重盲検第3相試験で、デキサメタゾン・アプレピタント(またはホスアプレピタント)・5-HT3受容体拮抗薬の3剤に加えオランザピン10 mgを1〜4日目に経口投与した。主要評価項目は悪心の予防で、悪心が無かった割合はオランザピン群対プラセボ群で0〜24時間74%対45%、25〜120時間42%対25%、全120時間37%対22%(いずれもP=0.002)。完全奏効(嘔吐なし・救済薬の使用なし)は副次評価項目で、同じ3期間について86%対65%(P<0.001)、67%対52%(P=0.007)、64%対41%(P<0.001)だった。グレード5の毒性は無かったが、2日目に鎮静の増強があり5%が高度だった。閲覧 2026-08-27
  10. 10.Treatment of Opioid-Induced Constipation: Inducing Laxation and Understanding the Risk of Gastrointestinal Perforation(Journal of Clinical Gastroenterology・2025)全文(PMC12165528、CC BY-NC-ND)で確認した。末梢作用型μオピオイド受容体拮抗薬(PAMORA=メチルナルトレキソン・ナロキセゴル・ナルデメジン)は、消化管穿孔の可能性があるため「既知または疑われる消化管閉塞のある患者、および閉塞を繰り返す危険が高い患者」に禁忌である。⚠️ この禁忌は「閉塞」についてのものであり、穿孔の危険が高い患者への投与は禁忌ではなく、併存疾患・併用薬・最近の消化管処置による穿孔の危険とベネフィットを比較して患者を選ぶ、という書き方になっている。オピオイド誘発性便秘では市販の下剤が第一選択で、反応が不十分ならPAMORA単剤が続く。⚠️ 著者にSalix Pharmaceuticalsの社員が含まれる総説である。閲覧 2026-09-23
  11. 11.Emetic risk classification and evaluation of the emetogenicity of antineoplastic agents—updated MASCC/ESMO consensus recommendation(Multinational Association of Supportive Care in Cancer / European Society for Medical Oncology・2023)全文(PMC10739277)を取得して確認した。静注抗腫瘍薬の催吐性リスクは従来の4区分(高度=ほぼ全例、90%超/中等度=30〜90%/軽度=10〜30%/最小=10%未満)が本改訂でも維持され、経口抗腫瘍薬はASCOの2017年改訂に合わせて2区分(中等度〜高度=30%超/最小〜軽度=30%未満)へ改められたことを確認した。この割合は有効な制吐薬の予防投与を行わなかった場合に嘔吐を生じる患者の割合であり、悪心は分類に含まれない。経口薬の催吐性は初回1回分ではなく治療1コース全体に基づいて決められ、この分類は成人にのみ適用される。表3の静注薬の高度は、アントラサイクリンとシクロホスファミドの併用・カルムスチン・クロルメチン・シスプラチン・シクロホスファミド1500 mg/m²以上・ダカルバジン・ストレプトゾシンの7項目である。閲覧 2026-09-08
  12. 12.SEOM clinical guideline emesis (2021)(Clinical and Translational Oncology(Spanish Society for Medical Oncology)・2022)全文(PMC8986698)を取得して確認した。催吐性リスクの区分は投与経路で分かれており、非経口薬は表1で4区分(高度=90%超/中等度=30〜90%/軽度=10〜30%/最小=10%未満)、経口薬は表2で2区分(中等度〜高度=30%以上/最小〜軽度=30%未満)である。高度催吐性リスクの予防について本ガイドラインは「HEC prophylaxis consists in administering a three-drug regimen including 5HT3-RAs, NK1-RAs and steroids」(Level of Evidence I, Grade of Recommendation A)とし、オランザピンの追加は悪心が問題になるときに考慮するもの(同じくLevel of Evidence I, Grade of Recommendation A)と位置づけている。一方で薬剤別の節では、オランザピンを加えた4剤レジメンが高度催吐性・中等度催吐性化学療法のCINV予防に有効である(Level of evidence I, Grade of Recommendation A)とも述べている。閲覧 2026-08-27