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Drug Atlas · B12 Steroids / ステロイド · 必修

デキサメタゾン

dexamethasone

分類
Steroids / ステロイドAntiemetics / 制吐薬
商品名(日本)
デカドロン
商品名(EU)
Fortecortin
科目
Pharmacology
トピック
B24: Antiemetic drugs. Prokinetic agentsB12: Glucocorticoids for oral and parenteral use
副作用
筋力低下不眠
影響検査値
高血糖
対象疾患
アミロイドーシスクッシング症候群クループ・急性喉頭蓋炎・細菌性気管炎メニエール病悪液質外耳炎感音難聴急性リンパ性白血病急性呼吸窮迫症候群急性骨髄性白血病急性前骨髄球性白血病急性扁桃炎・扁桃周囲膿瘍血液・腫瘍救急(発熱性好中球減少症・腫瘍崩壊症候群・上大静脈症候群)血球貪食性リンパ組織球症原発性副腎不全細菌性髄膜炎常位胎盤早期剥離新型コロナウイルス感染症新生児呼吸窮迫症候群髄膜腫脊髄腫瘍先天性副腎過形成前期破水前置胎盤早産陣痛・早産多胎妊娠多発性骨髄腫胎児発育不全中枢神経系腫瘍(成人・小児)嚢虫症脳膿瘍免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群免疫性血小板減少症
原因となる疾患
角膜炎骨粗鬆症消化管出血(上部・下部)消化性潰瘍緑内障

🧠 全体像(GC)作用の最上段に位置する薬で、置換により抗炎症力が最強(比で約6〜7倍、比で約25〜30倍)になった代わりに、(MC)作用がほぼ消え、が最も長いという一貫した性質を持つ。この「MCゼロ・長時間・最強GC」という3点セットが、脳浮腫・重症COVID-19・・多くの診断的抑制試験という、他の全身性ステロイドとは毛色の違うを説明する。

薬効群の中での位置づけ

全身投与グルココルチコイドは「が長くなるほど抗炎症力が上がり、MC作用が消える」という一本のスペクトラムに並ぶ。はその終端であり、(MC作用だけを狙う対極の薬)とはがまったく逆になる。

薬剤 抗炎症力(PSL比) MC作用 主な立ち位置
短時間(半減期8〜12時間) ×0.25(基準) 強い コルチゾールそのもの。副腎不全の生理的補充
中間(半減期12〜36時間) ×1(基準) 弱い 経口の標準。自己免疫疾患の第一選択
中間(半減期12〜36時間) ×1.25 ほぼなし 高用量IVパルス(重症自己免疫疾患)
中間(半減期12〜36時間) ×1.25 なし 関節内・が主戦場
長時間(半減期36〜72時間) ×6〜7(最強) ほぼゼロ 脳浮腫・・COVID-19重症・抑制試験

なぜ長時間作用型ほどMC作用が消えるのか。 (GR)への親和性を高めるための構造改変(9α-・16位メチル化)が、同時に(MR)への結合を弱め、かつを受けにくくして半減期を延ばす。この2つの性質が同じ改変から生まれるため、「長時間=MCゼロ」という対応がほぼ例外なく成り立つ。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dexamethasone'>デキサメタゾン</span>が細胞膜を通過"] --> B["細胞質<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucocorticoid receptor (GR)'>グルココルチコイド受容体</span>(GR)に強力に結合"]
    B --> C["GR-ステロイド複合体が核内へ移行"]
    C --> D["GRE(glucocorticoid response element)に結合"]
    D --> E["抗炎症遺伝子(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lipocortin-1 (annexin A1)'>リポコルチン-1</span>等)↑"]
    D --> F["NF-κB・AP-1を介する炎症性遺伝子発現を抑制"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phospholipase A2 (PLA2)'>ホスホリパーゼA2</span>↓→プロスタグランジン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leukotriene'>ロイコトリエン</span>産生↓"]
    F --> H["サイトカイン(IL-1・IL-6・TNF-α)↓"]
    G --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular permeability'>血管透過性</span>↓→脳浮腫・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='airway edema'>気道浮腫</span>の軽減"]
    H --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vomiting center'>嘔吐中枢</span>への炎症性シグナル↓(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antiemesis'>制吐</span>効果)"]
    B -.->|"MR親和性は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorination'>フッ素化</span>により低下"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mineralocorticoid'>ミネラルコルチコイド</span>作用(Na貯留)はほぼ生じない"]

💡 脳浮腫に効く理由は「抗炎症」だけでは説明しきれない。 を直接下げて血液脳関門の破綻を修復する効果が特に強く、腫瘍周囲のに劇的に効く。一方、脳卒中や外傷後のにはこの機序が働かないため無効というのが重要な区別である。

CINV()にステロイドが効く理由は完全には解明されていないが、中枢性のプロスタグランジン産生抑制と、5-HT3・NK1経路へのな抑制が想定されている。B24で扱うの3剤併用がCINV予防の標準セットである。

薬物動態

項目 値・特徴
高い(約80%以上)
分布 血液脳関門を良好に通過。胎盤も通過する(産科での使用根拠にもにもなる)
代謝 主にCYP3A4。強いCYP3A4(フェニトイン・リファンピシンなど)併用で効果が落ちる
排泄 代謝物として
約3〜4.5時間
の持続) 約36〜72時間

」と「」を混同しない。 は血中からの消失は数時間で終わるのに、視床下部-下垂体-軸の抑制効果は1.5〜3日続く。用法・用量(1日1回で足りる、抑制試験で翌朝の値を見る)はすべてこのの長さに基づいている。

💡 多くのコルチゾールをほとんど起こさない。 これがを成立させる的根拠——投与した自体が血中コルチゾール値の測定を邪魔しないため、内因性コルチゾールの抑制だけを純粋に評価できる。

適応

領域 使いどころ
神経・救急 による脳浮腫脊髄圧迫などの腫瘍緊急症
感染症 小児)、の抗菌薬併用(特に肺炎球菌性、難聴予防目的)、重症ARDS・重症COVID-19(RECOVERY試験に基づく標準治療)
(CINV)予防の3剤併用の一角、(PONV)の補助
血液・腫瘍 の高用量レジメンの構成薬、(HLH-94プロトコル)
内分泌診断 Cushing症候群のスクリーニング・鑑別)
産科 早産など)での促進の代替レジメン(が第一選択の施設が多い)
耳鼻科 感音難聴への

用法・用量

代表例(いずれも施設・重症度で大きく変わる):

  • 脳浮腫:初回10 mg IV、以後4〜6 mgを6時間ごと。
  • CINV予防:レジメンのに応じて8〜20 mg単回(高レジメン初日、他と併用)。
  • 重症COVID-19/ARDS:6 mg/日を7〜10日間(RECOVERY試験レジメン)。
  • の補助:抗菌薬投与直前または同時に開始、0.15 mg/kgを6時間ごと。
  • :スクリーニングは前夜23時に1 mg投与し翌朝コルチゾールを測定(低用量1泊法)。

実際の用量は適応・重症度・年齢・体重で大きく変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:全身性真菌感染(など抗真菌治療下でなければ)
  • ⚠️ 長期使用後の急な中止は禁物。 が長くも強いため、数日を超える投与ではが必要
  • ⚠️ 生ワクチンは高用量・長期投与中は避ける。 免疫抑制状態での感染リスク
  • 糖尿病患者では血糖上昇が顕著。 高血糖の中でも作用の強さゆえに影響が大きい
  • 精神症状:不眠・・まれに。高用量パルスで特に出やすい

副作用

頻度 内容
高頻度 不眠高血糖
注意 気分変化・、易感染性、消化性潰瘍、筋力低下ステロイドで頻度が高いとされる)
重篤・まれ (長期使用後の急な中止で)、症・(長期)、、消化管出血・穿孔

まとめ

  • 全身性GCの中で抗炎症力が最強・が最長・MC作用がほぼゼロという3点セットを持つ長時間作用型。
  • MC作用が消えるのはによるMR親和性低下が理由で、これが長時間作用と同じから生まれる。
  • (3〜4.5時間)とが続く(36〜72時間)を区別する。1日1回投与・抑制試験の根拠はどちらも後者。
  • コルチゾール測定としないため、が成立する。
  • 脳浮腫()・CINV3剤併用・重症COVID-19・補助という「循環器以外の急性期治療薬」としての顔を持つ。
  • 対極に位置するのが(MC作用だけを狙う薬)。
  • 長期使用では急な中止を避けする。生ワクチンは高用量・長期下で避ける。