薬理学

薬理学 · B12

経口・非経口グルココルチコイド

B12: Glucocorticoids for oral and parenteral use

前提:病態
Core6:有効性と力価Core10:耐性・タキフィラキシー・依存Core20:半減期Core67:薬剤性有害反応:粘膜障害Core68:薬剤性有害反応:体重増加・減少
応用トピック
医原性クッシング症候群とグルココルチコイドの減量・離脱呼吸器疾患の全身薬物療法
薬剤
デキサメタゾンデフラザコートトリアムシノロンバモロロンヒドロコルチゾンプレドニゾロンプレドニゾンベタメタゾンメチルプレドニゾロン

🧠 全体像:全身性グルココルチコイドはの順に並べると、力価と作用が同時に読める。

が長くなるほど → 抗炎症力↑・(Na⁺貯留)作用↓。

両端を押さえるのが近道である。=短時間・作用あり=副腎不全の補充向き。=長時間・最強・作用ほぼゼロ=脳浮腫・・抑制試験向き。

⭐ そしてこのページのもう1つの軸が軸(軸、hypothalamic-pituitary-adrenal axis)である。効かせる話と同じだけの分量で、どう止めるか()・止められないときどうするか(ストレス時の増量)を覚える。

力価・作用時間・等価用量

⚠️ 等価用量の換算表は「目安」として扱う。 欧州内分泌学会/米国内分泌学会の2024年合同ガイドラインは表1にこの換算を載せたうえで、脚注で「これらは歴史的に受け入れられてきた換算係数に基づく推定値であり目安にすぎない。・個々の患者の代謝と感受性によりかなりばらつきうる」「力価の等価は経口および/または静注投与に当てはまる。作用は考慮していない」「はを反映しない」と明記している1。

薬剤 等価用量 抗炎症力価(比) 位置づけ
(=コルチゾール) 20 mg 1.0 90〜120分 8〜12時間 副腎不全の補充
コルチゾン 25 mg 0.8 80〜120分 8〜12時間 副腎不全の補充
7.5 mg 1.0 70〜120分 未定義
5 mg 4.0 60分 12〜36時間 抗炎症・免疫抑制、副腎不全の補充
5 mg 4.0 115〜200分 12〜36時間 抗炎症・免疫抑制、副腎不全の補充
4 mg 5.0 30分 12〜36時間 抗炎症・免疫抑制
4 mg 5.0 180分 12〜36時間 抗炎症・免疫抑制
0.5 mg 30〜60 200分 36〜72時間 重症・急性病態への短期使用
0.5 mg 25〜40 300分 36〜72時間 重症・急性病態への短期使用

(表1の値1)

💡 「」と「」を混同しない。 のは60分しかないのには12〜36時間ある——グルココルチコイドの作用は受容体を介した遺伝子発現の変化なので、薬が血中から消えたあとも効果が続く。同表の脚注も「はを反映しない」と断っている1。⭐ 1日1回投与でよい理由も、軸の抑制がと相関する理由も、この欄から読める。

短時間作用型(ミネラルコルチコイド作用あり)

  • — =コルチゾールそのもの。抗炎症力価の基準(×1)で作用をもつ|適応:副腎不全の生理的補充・(Na⁺貯留作用があるので補充に最適で、ストレス時のでも第一選択になる)

中間作用型(ミネラルコルチコイド作用が弱く、経口の主力)

⚠️ 長期投与の骨保護は、用量と期間で介入基準が具体的に定められている。 2022年版ガイドラインは、換算1日2.5 mg以上を3か月超(予定を含む)投与する成人全例に、開始後速やかな骨折リスク評価(、40歳以上では)を強く推奨し、中等度以上のリスクには経口/・・などの薬物治療を強く推奨している2。長期投与のは医原性(・・・易出血)・高血糖と糖尿病・骨粗鬆症・易感染性・・緑内障・精神症状・成長抑制(小児)・筋症・に及ぶ(→Core67:薬剤性:・Core68:薬剤性:体重増加・減少)。

💡 用量と予後の関係には「線」がある。 2024年の合同ガイドラインは、換算1日5 mgを超える超生理的用量が関節リウマチ患者での補正1.97(95%信頼区間1.81-2.15)と関連し、1日5 mg未満ではこの関連が観察されなかったと紹介している。⚠️ ただしこれらは観察研究の推定値で、原疾患とその重症度というの可能性があるため慎重に解釈すべきだと同ガイドライン自身が断っている1。

長時間作用型(最強・ミネラルコルチコイド作用はほぼゼロ)

  • — 抗炎症力価はの30〜60倍・36〜72時間・作用ほぼゼロ1|適応:脳浮腫・・化学療法の悪心()・重症・
  • — 25〜40倍・36〜72時間|の促進などに用いられる

⚠️ でが死亡を減らしたのは、酸素を要する患者に限られる。 入院患者6,425例を対象としたRECOVERY試験では、6 mg/日10日間投与により28日死亡が全体で22.9%対25.7%(比0.83、95%信頼区間0.75-0.93)と有意に減った。しかし内訳を見ると、侵襲的下では29.3%対41.4%(0.64、95%信頼区間0.51-0.81)、酸素投与のみでは23.3%対26.2%(0.82、95%信頼区間0.72-0.94)で有益だった一方、呼吸補助を受けていなかった患者では17.8%対14.0%(1.19、95%信頼区間0.92-1.55)で有益性が示されなかった3。⚠️ 最後の群のは1をまたぐので、「害が証明された」ではなく「利益が示されなかった」と読む。⭐ どの重症度の集団かによってが逆転する典型例であり、「には」と一律に読んではならない。

💡 「最強だから最良」ではない。 2024年の合同ガイドラインは推奨2.5で、長時間作用型(・)が必要でなくなったら短時間作用型(・)へ切り替えることを提案している1。が長いほど1日を通じて軸を抑え続けるためで、は「短期・急性・強力」の枠で使う薬という位置づけが表1の「重症・急性病態への短期使用」という欄にも表れている。

HPA軸の抑制と漸減

副腎不全のリスクが生じるのは、期間と用量の両方が閾値を超えたときである。2024年の合同ガイドラインは用語をこう定義する1。

用語 定義
生理的1日量相当 15〜25 mg/または4〜6 mg/3〜5 mg/0.25〜0.5 mg(内因性コルチゾール産生量の推定値は1日9〜10 mg)
超生理的療法 生理的1日量相当を超える用量
短期療法 3〜4週間未満
長期療法 3〜4週間を超え、かつ生理的1日量相当を超える用量
  • 推奨2.1:3〜4週間未満の短期療法では、用量によらずしない1。⭐ 「ステロイドは必ずする」は誤りで、の要否を決めるのは用量ではなく期間が先である。
  • 長期療法では、生理的1日量相当に近づくにつれて減量幅を小さく、間隔を長くする。
現在の換算1日量 減量幅 間隔
40 mg超 5〜10 mg 毎週
20〜40 mg 5 mg 毎週
10〜20 mg 2.5 mg 1〜4週ごと
5〜10 mg 1 mg 1〜4週ごと
5 mg 症状がないか副腎不全の検査が陰性なら1 mg 4週ごと

(表41)

💡 朝に寄せる理由は「夜に抑えないため」である。 同ガイドラインは「・短時間作用型はが短く力価も低いため軸の回復を許しやすい——ただし夜間に投与しなければ、という条件が付く。夜間投与は産生と早朝の内因性コルチゾール上昇をより強く抑えてしまう」と述べている1。⭐ 「朝1回」という処方習慣は、コルチゾールの(早朝にピーク)に逆らわないという生理学から来ている。

ストレス時の増量と副腎クリーゼ

⚠️ 推奨3.1:グルココルチコイドを使用中または最近まで使用しており、生化学的検査で副腎不全を除外していない患者がストレスに曝されるときは、ストレス用量を投与する1。⭐ 「副腎不全と診断されていないから不要」ではない——除外していないなら投与する側に倒すのがこの推奨の骨である。

ストレスの程度 例 の投与
軽度(経口。R3.1A=血行動態が安定し、嘔吐・下痢が遷延していない) 発熱、抗菌薬を要する感染症、身体的外傷、強い精神的ストレス(など)、安静を要する病気 生理的補充量の2倍=1日40 mgを3分割(起床時20 mg・正午10 mg・17時10 mg)を、軽快するまで2〜5日(抗菌薬投与中はその期間)
中等度〜高度(非経口。R3.1B=全身/下の処置、経口摂取が長くできない、血行動態が不安定、嘔吐・下痢が遷延) 入院やを要する感染症(敗血症)、大量出血や入院を要する急性外傷、遷延する嘔吐・下痢 100 mgをまたは筋注し、続けて24時間で200 mgを持続静注(持続静注が行えなければ50 mgを6時間ごとに静注)

(推奨3.1と表81)

⚠️ の診断は「ショック+1つ」である。 表9は、低血圧またはに加えて悪心または嘔吐・高度の倦怠感・発熱・意識障害のいずれか1つ以上で診断するとしている。診断に必須ではないが支持するとして低Na血症(典型的には上昇を伴う)・高K血症・とクレアチニンの上昇・低血糖・・好酸球増多が挙がる1。急性期の救急管理そのものは副腎不全の項が正本である。

⚠️ グルココルチコイド誘発性副腎不全には、この病態に特有の誘因がある1。

⚠️ 推奨2.12:グルココルチコイド誘発性副腎不全にを用いないことを推奨する1。⭐ ここはとの決定的な差である——が抑えているのはであって、アルドステロンを支えるは保たれているので、の補充は要らない(→B13:・外用GC・)。

特殊:デュシェンヌ型筋ジストロフィーのバモロロン

⚠️ 「副作用が少ないステロイド」と単純化しない。 米国添付文書はを「を介して抗炎症作用・を示す副腎皮質ステロイド」と記載し、で効果を発揮する正確な機序は不明としている。全文に「」という語は現れず、他の副腎皮質ステロイドより副作用が少ないという比較の主張も本文書には無い——中止後の副腎不全・・高血糖、易感染性、と塩分/水分貯留、消化管穿孔、行動と気分の障害、骨密度低下と、・緑内障、成長と発達への影響、、血栓塞栓症という副腎皮質ステロイドのが一式そのまま課されている4。

💡 添付文書で裏づけられる実用上の特徴は「切り替えやすさ」のほうである。 米国添付文書は「経口副腎皮質ステロイド(やなど)からAGAMREEへは、副腎不全のリスクを最小にするためも事前の減量も置かずに切り替えられる」と定める4。⚠️ 一方でのSmPCは、は・可逆的だが急な減量・中止でを起こしうるため、中止するときは約20%ずつ段階的にすることを求めている5。「入るときはなし、出るときは」と覚える。

⭐ 高頻度ポイント:が長いほど抗炎症力価↑・(Na⁺貯留)作用↓。=短時間・作用あり→副腎不全の補充とストレス時の、=長時間・最強(30〜60倍)・作用ゼロ→脳浮腫・・抑制試験。=、=。⚠️ 等価用量の表は歴史的な換算係数に基づく目安で、作用は考慮されていない。が要るかどうかを決めるのはまず期間(3〜4週間)で、3〜4週間未満なら用量によらずしない。ストレス時は軽度なら1日40 mgの経口、中等度〜高度なら100 mg静注+24時間で200 mgの持続静注。は「低血圧/ショック+(嘔吐・高度・発熱・意識障害のいずれか)」。⚠️ グルココルチコイド誘発性副腎不全には使わない。⚠️ 強いの開始はの誘因になる。

🔁 1枚図でまとめ

flowchart TD
  R["B12:全身性グルココルチコイド"]
  R --> A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='duration'>作用時間</span>で並べる軸"]
  R --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypothalamic-pituitary-adrenal'>HPA</span>軸をどう扱うかの軸"]
  A --> S["短時間・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mineralocorticoid'>ミネラルコルチコイド</span>作用あり<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydrocortisone'>ヒドロコルチゾン</span>(力価1.0)→副腎補充"]
  A --> M["中間・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mineralocorticoid'>ミネラルコルチコイド</span>作用が弱い<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='prednisolone'>プレドニゾロン</span>(4)/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methylprednisolone'>メチルプレドニゾロン</span>(5・パルス)<br>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='triamcinolone'>トリアムシノロン</span>(5・関節内)"]
  A --> L["長時間・最強・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mineralocorticoid'>ミネラルコルチコイド</span>作用ゼロ<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='dexamethasone'>デキサメタゾン</span>(30〜60)/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='betamethasone'>ベタメタゾン</span>(25〜40)"]
  A --> D["特殊:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vamorolone'>バモロロン</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Duchenne muscular dystrophy (DMD)'>デュシェンヌ型筋ジストロフィー</span>(2歳以上)"]
  B --> B1["3〜4週間未満=短期<br>用量によらず<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>しない"]
  B --> B2["3〜4週間超+超生理的用量=長期<br>生理的量に近づくほど<span class='jp-term jp-term-diagram' title='short steps (marche à petits pas)'>小刻み</span>に減らす"]
  B2 --> B3["⚠️誘因:急な中止・生理的量以下への減量<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='inhaled corticosteroid, ICS'>吸入ステロイド</span>の変更・強い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytochrome P450 3A4'>CYP3A4</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='inducers'>誘導薬</span>の開始"]
  B --> B4["ストレス時は増量する<br>軽度=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydrocortisone'>ヒドロコルチゾン</span>40 mg/日 経口<br>中等度〜高度=100 mg静注+200 mg/24時間"]
  B4 --> B5["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adrenal crisis'>副腎クリーゼ</span>=低血圧/ショック<br>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nausea'>嘔気</span>嘔吐・高度<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Malaise'>倦怠</span>・発熱・意識障害のいずれか"]
  B --> B6["⚠️グルココルチコイド誘発性副腎不全に<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='fludrocortisone'>フルドロコルチゾン</span>は使わない"]

📋 まとめ表

薬剤 抗炎症力価・作用 適応・特徴
短時間(8〜12時間) 力価1.0・作用あり 副腎不全の補充・・ストレス時の
中間(12〜36時間) 力価4.0・作用は弱い 自己免疫・炎症・(経口の標準)
中間(12〜36時間) 力価5.0・作用ほぼなし 高用量静注パルス(の再発・)
中間(12〜36時間) 力価5.0・作用なし 関節内/・皮膚疾患
長時間(36〜72時間) 力価30〜60・作用ほぼゼロ 脳浮腫・・・重症・抑制試験。不要になったら短時間作用型へ切り替える
長時間(36〜72時間) 力価25〜40・作用ほぼゼロ 重症・急性病態への短期使用
経口(DMD用の1日1回投与) を介する抗炎症・免疫抑制 (2歳以上)。⚠️副腎皮質ステロイドのは一式課されている

出典

  1. 1.European Society of Endocrinology and Endocrine Society Joint Clinical Guideline: Diagnosis and Therapy of Glucocorticoid-Induced Adrenal Insufficiency(European Society of Endocrinology / Endocrine Society・2024)PMC11180513の全文で確認した。用語の定義として「生理的1日量相当」をヒドロコルチゾン15〜25 mg(プレドニゾンまたはプレドニゾロン4〜6 mg、メチルプレドニゾロン3〜5 mg、デキサメタゾン0.25〜0.5 mg)とし、内因性コルチゾール産生量の推定値を1日9〜10 mgとすること。「短期療法」を3〜4週間未満、「長期療法」を3〜4週間を超えかつ生理的1日量相当を超える用量とすること。表1(常用の全身性グルココルチコイドの薬理学的特性)は、短時間作用・低力価にヒドロコルチゾン(等価用量20 mg、ヒドロコルチゾンに対する力価1.0、血漿半減期90〜120分、生物学的半減期8〜12時間)・コルチゾン酢酸エステル(25 mg、0.8、80〜120分、8〜12時間)・デフラザコート(7.5 mg、1.0、70〜120分、生物学的半減期は未定義)、中間作用・中等度力価にプレドニゾン/プレドニゾロン(5 mg、4.0、それぞれ60分/115〜200分、12〜36時間)・トリアムシノロン(4 mg、5.0、30分、12〜36時間)・メチルプレドニゾロン(4 mg、5.0、180分、12〜36時間)、長時間作用・最高力価にデキサメタゾン(0.5 mg、30〜60、200分、36〜72時間)・ベタメタゾン(0.5 mg、25〜40、300分、36〜72時間)を挙げる。同表の脚注は「これらは歴史的に受け入れられてきた換算係数に基づく推定値であり目安にすぎない。投与経路・個々の患者の代謝と感受性によりかなりばらつきうる」「力価の等価は経口および/または静注投与に当てはまる。ミネラルコルチコイド作用は考慮していない」「血漿半減期は生物学的半減期を反映しない」と明記する。推奨2.1は3〜4週間未満の短期療法では用量によらず漸減しないことを提案し、表4は漸減の目安(プレドニゾン換算で40 mg超は毎週5〜10 mg減、20〜40 mgは毎週5 mg減、10〜20 mgは1〜4週ごとに2.5 mg減、5〜10 mgは1〜4週ごとに1 mg減、5 mgでは症状が無いか副腎不全の検査が陰性なら4週ごとに1 mg減)を示す。推奨2.5は長時間作用型(デキサメタゾン・ベタメタゾン)が不要になったら短時間作用型(ヒドロコルチゾン・プレドニゾン)へ切り替えることを提案する。推奨2.12はグルココルチコイド誘発性副腎不全にフルドロコルチゾンを用いないことを推奨する。推奨3.1は、グルココルチコイドを使用中または最近まで使用しており生化学的検査で副腎不全を除外していない患者がストレスに曝されるときはストレス用量を投与することを推奨し(R3.1Aは軽度ストレスで血行動態が安定し嘔吐・下痢が遷延していなければ経口、R3.1Bは中等度〜高度のストレス・全身/区域麻酔下の処置・経口摂取が長く行えない場合・血行動態不安定または嘔吐下痢が遷延する場合は非経口)、本文は軽度ストレスの例として発熱、抗菌薬を要する感染症、身体的外傷、強い精神的ストレスを挙げ、推奨するヒドロコルチゾンのストレス用量を生理的補充量の2倍(1日40 mg、通常は起床時20 mg・正午10 mg・17時10 mgの3分割)とする。表8は中等度〜高度のストレスにヒドロコルチゾン100 mgの静注ボーラスまたは筋注に続けて24時間で200 mgの持続静注(持続静注が行えなければ50 mgを6時間ごとに静注)を挙げる。表9は副腎クリーゼを「低血圧または循環血液量減少性ショック」に加えて「悪心または嘔吐」「高度の倦怠感」「発熱」「意識障害」のいずれか1つ以上と定義し、診断に必須ではない検査異常として低Na血症(典型的には尿中Na上昇を伴う)・高K血症・脱水の徴候(尿素窒素とクレアチニンの上昇)・低血糖・リンパ球増多・好酸球増多を挙げ、誘因として感染症・急性疾患・身体的外傷・麻酔を要する処置・下剤や浣腸を要する腸管処置・分娩・歯科処置・強いストレスと疼痛・激しい運動に加え、グルココルチコイド誘発性副腎不全に特有の誘因として長期投与中の急な中止、生理的補充量を下回る漸減、吸入ステロイドの種類・剤形・用量の変更、強いCYP3A4誘導薬(アパルタミド、カルバマゼピン、エンザルタミド、ホスフェニトイン、ルマカフトル、ルマカフトル・イバカフトル、ミトタン、フェノバルビタール、フェニトイン、プリミドン、リファンピシン)の開始を挙げる。本文はプレドニゾン換算1日5 mgを超える超生理的用量が関節リウマチ患者で全死亡の補正ハザード比1.97(95%信頼区間1.81-2.15)と関連し、1日5 mg未満ではこの関連が観察されなかったこと、これらの推定値は原疾患と重症度という交絡の可能性があるため慎重に解釈すべきことを述べる。また「中間作用型・短時間作用型は生物学的半減期が短く力価も低いため、夜間に投与しなければHPA軸の回復を許しやすい——夜間投与ではACTH産生と早朝の内因性コルチゾール上昇をより強く抑えてしまう」と述べる。閲覧 2026-09-23
  2. 2.2022 American College of Rheumatology Guideline for the Prevention and Treatment of Glucocorticoid-Induced Osteoporosis(American College of Rheumatology・2023)リウマチ性・非リウマチ性疾患でグルココルチコイドをプレドニゾン換算1日2.5mg以上・3か月超投与する(予定を含む)成人全例について、開始後速やかに臨床的骨折リスク評価・骨密度測定(可能なら脊椎骨折評価または脊椎X線)・40歳以上ではFRAXによる骨折リスク評価を行うことを強く推奨したこと、中等度・高度・非常に高度の骨折リスクの成人には薬物治療(経口/静注ビスホスホネート、デノスマブ、副甲状腺ホルモン類縁体から共同意思決定で選択)を強く推奨したこと閲覧 2026-08-27
  3. 3.Dexamethasone in Hospitalized Patients with Covid-19(New England Journal of Medicine(RECOVERY Collaborative Group)・2021)PubMed(PMID 32678530)の抄録で確認した。デキサメタゾン群2,104例・通常治療群4,321例(計6,425例)で、28日死亡は22.9%対25.7%(年齢調整率比0.83、95%信頼区間0.75-0.93、P<0.001)。無作為化時点の呼吸補助の程度で効果が分かれ、侵襲的人工呼吸管理下では29.3%対41.4%(率比0.64、95%信頼区間0.51-0.81)、侵襲的人工呼吸を伴わない酸素投与では23.3%対26.2%(率比0.82、95%信頼区間0.72-0.94)で低かったが、無作為化時点で呼吸補助を受けていなかった患者では17.8%対14.0%(率比1.19、95%信頼区間0.92-1.55)で、信頼区間が1をまたぐため有意な差ではないこと。結論は逐語で「入院したCovid-19患者において、デキサメタゾンは無作為化時点で侵襲的人工呼吸または酸素のみを受けていた患者では28日死亡を低下させたが、呼吸補助を受けていなかった患者では低下させなかった」であること。閲覧 2026-09-23
  4. 4.AGAMREE (vamorolone) oral suspension — Full Prescribing Information(米国FDA(DailyMed収載の添付文書)・2024)2024年6月改訂(Revised 6/2024)。米国の適応は2歳以上のデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療。12.1は「バモロロンはグルココルチコイド受容体を介して抗炎症作用・免疫抑制作用を示す副腎皮質ステロイドである。デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者で効果を発揮する正確な機序は不明である」とする。⚠️ 全文検索で dissociative(解離型)は0回で、他の副腎皮質ステロイドより副作用が少ないという比較の主張も本文書には無い——警告・使用上の注意は内分泌機能の変化(中止後の副腎不全、クッシング症候群、高血糖)、免疫抑制と感染リスク、血圧上昇と塩分・水分貯留、消化管穿孔、行動・気分の障害、骨密度低下と骨壊死、白内障・緑内障(6週間を超えて投与するなら眼圧を測る)、予防接種(生ワクチンは開始4〜6週間前まで)、成長・発達への影響、ミオパチー、カポジ肉腫、血栓塞栓症、アナフィラキシーと、副腎皮質ステロイドの一式が課されている。2.5は「経口副腎皮質ステロイド(プレドニゾンやデフラザコートなど)からAGAMREEへは、副腎不全のリスクを最小にするため、休薬期間も事前の減量も置かずに切り替えられる」とする。14の主要試験は121例のDMD男児をAGAMREE 6 mg/kg/日(30例)・2 mg/kg/日(30例)・プレドニゾン・プラセボへ無作為化したものであること。閲覧 2026-09-23
  5. 5.Agamree (vamorolone) — Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency・2026)EUでの適応はDuchenne型筋ジストロフィー(2歳以上、Becker型は適応に含まれない)。用量は体重40kg未満で6mg/kg/日、40kg以上は240mg/日を開始用量とし、忍容性に応じて4→2mg/kg/日へ段階的に減量できる。禁忌(4.3)は過敏症・重度肝機能障害(Child-Pugh C)・開始6週間前から治療中の生ワクチン接種の3つで、全身性真菌感染は含まれない(米国添付文書の禁忌も過敏症のみで、真菌感染の記載は確認できなかった)。副腎抑制は用量依存性・可逆的だが、急な減量・中止で副腎クリーゼ(急性副腎不全)を起こしうるため約20%ずつの段階的漸減が必要。他の経口グルココルチコイドからの切り替えは休薬・事前減量なしで6mg/kg/日へ移行できる。(参考:2026年8月時点でPMDA添付文書検索・国内報道を確認した範囲では日本国内の治験・承認情報は見当たらず、電子添文は存在しないと判断した。次回監査時に再確認が必要)閲覧 2026-08-04