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Disease Atlas · 運動器 · 疾患

骨粗鬆症

Osteoporosis

臓器系
運動器内分泌・代謝
科目
Internal MedicinePathologyPathophysiologyPharmacologyGynecology
トピック
内科学 L-35:骨粗鬆症病理学 C/91:後天性骨疾患(骨粗鬆症・くる病・骨軟化症)病態生理学 I-29:カルシウム・リン代謝と骨格系への影響薬理学 B20:骨ミネラル恒常性に作用する薬婦人科 12:閉経
鑑別疾患
くる病・骨軟化症骨のパジェット病骨形成不全症多発性骨髄腫変形性関節症慢性腎臓病慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)
続発疾患
大腿骨頸部・転子部骨折
関連疾患
サルコペニア外傷性脊椎・脊髄損傷顎骨壊死非定型大腿骨骨折
治療薬
アレンドロネートリセドロネートゾレドロン酸デノスマブテリパラチドロモソズマブラロキシフェンカルシトリオールコレカルシフェロールイバンドロナト
原因薬剤
アナストロゾールデキサメタゾンレボチロキシンメチルプレドニゾロンプレドニゾロンヒドロコルチゾン
症状
背部痛骨変形亀背
元疾患
ホモシスチン尿症リウマチ性多発筋痛症移植片対宿主病
原因となる疾患
クッシング症候群クラインフェルター症候群セリアック病ターナー症候群バセドウ病関節リウマチ強直性脊椎炎摂食症(神経性やせ症・過食症)短腸症候群男性性腺機能低下症中毒性腺腫中毒性多結節性甲状腺腫膵外分泌不全

🧠 全体像症は、と骨質の低下により骨強度が落ち、軽微な外力で骨折する()疾患である。(破骨細胞)と骨形成(骨芽細胞)のバランスが吸収側に傾くことが本態で、閉経によるエストロゲン低下と加齢が二大原因(原発性)だが、・甲状腺機能亢進症・など多数の続発性原因も除外する必要がある。骨折するまで無症状のことが多いため、DXAのT-scoreとで先回りしてリスクを層別化し、リスクの高さに応じて)または)を選択する。

病態

骨は生涯を通じて破骨細胞による吸収と骨芽細胞による形成を繰り返す動的なリモデリングを行っており、若年成人では両者が釣り合っている。症は、この釣り合いがに吸収優位へ傾いた結果、が減弱・が菲薄化し、石灰化自体は正常のまま骨の絶対量が減る病態である(そのものである・くる病とは異なる)。

  • エストロゲンの役割:エストロゲンは破骨細胞の分化を抑え、骨芽細胞・骨細胞からの分泌を促す。OPGはRANKLに結合してRANK-RANKL経路を遮断し、破骨細胞の活性化にブレーキをかける。閉経でエストロゲンが低下すると、このブレーキが外れてRANKL経路が優位になり、が加速する(閉経後最初の数年で特に速い)。
  • 加齢の役割:加齢そのものでも骨芽細胞の活性が低下する一方、破骨細胞活性は保たれるため、性別を問わず緩徐なが進む(老人性症)。
  • 続発性の機序:グルココルチコイド過剰はを促進すると同時に骨形成を直接抑制するため二重に骨量を減らし、の原因として最も頻度が高い。甲状腺機能亢進症・はいずれも回転を亢進させて吸収優位にする。
flowchart TD
    A["加齢+閉経によるエストロゲン低下"] --> B["骨芽細胞・骨細胞からのOPG分泌低下"]
    B --> C["RANK-RANKL経路のブレーキ解除"]
    C --> D["破骨細胞の分化・活性化"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone resorption'>骨吸収</span>が骨形成を上回る"]
    F["続発性原因(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucocorticoids'>糖質コルチコイド</span>過剰・甲状腺機能亢進症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary hyperparathyroidism, PHPT'>原発性副甲状腺機能亢進症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypogonadism'>性腺機能低下</span>・吸収不良など)"] --> E
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trabeculae'>骨梁</span>減弱・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cortical'>皮質骨</span>菲薄化(石灰化は正常)"]
    G --> H["骨強度低下"]
    H --> I["軽微な外力での<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fragility fracture'>脆弱性骨折</span>(椎体・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal femur'>大腿骨近位部</span>・橈骨遠位端・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal humerus'>上腕骨近位部</span>)"]

💡 症は「骨の量」の病気、・くる病は「骨の質(石灰化)」の病気という対比で覚えると整理しやすい。症では血清Ca・リン酸・ALP・PTHは通常すべて正常であり、これらが異常ならや続発性原因(など)を疑う。

主な原因・危険因子

分類 主な原因・危険因子
原発性 閉経後のエストロゲン低下、加齢(老人性)
内分泌・代謝性 甲状腺機能亢進症(など)、Cushing症候群過剰、、糖尿病
薬剤性 長期、一部の
消化管・栄養性 吸収不良、セリアック病、・摂食障害、Ca・ビタミンD摂取不足
慢性疾患 )、関節リウマチなど慢性炎症性疾患、
不動・長期、喫煙、過量飲酒、

臨床像

症自体は骨折するまで無症候性であることが最大の特徴で、健診でのDXA測定や偶発的な画像検査で初めて指摘されることも多い。

  • :無症状〜急性で発症し、繰り返すと身長低下・円背、いわゆる「未亡人の」)を来す。円背が進むと胸郭が圧迫されにつながることもある。
  • :転倒を契機に多く、機能予後・生命予後への影響が最も大きい部位。骨折後の不動により肺塞栓・肺炎のリスクが上昇する。
  • (Colles骨折):転倒時に手をついて生じる代表的なで、しばしば症の初発イベントになる。
  • 骨折:転倒による代表的なの一つ。

⭐ 「低(つまずく程度・立った高さからの転倒など、通常なら骨折しない外力)で生じた骨折」は、それ自体が症の臨床診断根拠になる。DXAのT-scoreを待つ必要はない。

⚠️ 急性の激しい・神経症状(下肢筋力低下、膀胱直腸障害)を伴う場合は、単純な症性と決めつけず、など)や脊髄圧迫を鑑別する。

診断

DXAとT-score/Z-score

  • 骨密度は二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)で(股関節)を測定する。
  • 閉経後女性・50歳以上の男性では、若年成人平均との差であるT-scoreを用いる。
T-score 判定
−1.0以上 正常
−1.0未満〜−2.5超 、osteopenia)
−2.5以下
  • 閉経前女性・50歳未満の男性・小児では、年齢を一致させた対照との差であるZ-scoreを用いる(Z-score ≤ −2.0を「年齢相応の範囲を下回る」とし、これだけで症と診断しない)。
  • 臨床的診断:DXAのT-scoreにかかわらず、または椎体の低骨折があれば症として治療対象とする。

FRAXによる骨折リスク評価

FRAXは年齢・性別・BMI・既存骨折歴・両親の歴・喫煙・使用・関節リウマチ・・過量飲酒・(可能であれば)のBMDを用いて、今後10年間の主要症性骨折確率確率を算出する。

⚠️ FRAXは直近の骨折、複数回の骨折、転倒しやすさ、量依存の影響、BMDなどを十分に反映できない場合があり、これらがあれば実際のリスクをFRAXの数値以上に高く見積もって治療を検討する。

続発性原因の除外

薬剤性(・利尿薬によるは別として、など)、脱水、代謝性疾患を除外したうえで、以下を基本セットとして評価する。

  • 血算、血清Ca、リン酸、ALP、クレアチニン/eGFR、25-OHビタミンD、肝機能、TSH
  • 病歴・所見に応じて:PTH(の除外)、性腺機能、セリアック抗体、・尿蛋白電気泳動(など単クローン性疾患の除外)、24時間尿中Ca

💡 血清Ca・リン酸・ALP・PTHがすべて正常なら症として矛盾しない所見だが、いずれかが異常ならに伴うなどの鑑別を優先する。では回転自体が高回転にも低回転にもなりうるため、DXAのT-scoreだけでは骨折リスクやを十分に評価できない点に注意する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fragility fracture'>脆弱性骨折</span>の既往 または 危険因子(閉経後・高齢・続発性原因)"] --> B{"低<span class='jp-term jp-term-diagram' title='traumatic'>外傷性</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal femur'>大腿骨近位部</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vertebral fracture'>椎体骨折</span>があるか"}
    B -->|"あり"| C["BMDにかかわらず<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteoporosis'>骨粗鬆</span>症と臨床診断"]
    B -->|"なし"| D["DXAでT-score測定"]
    D --> E{"T-score ≤ −2.5"}
    E -->|"はい"| C
    E -->|"いいえ(−1.0〜−2.5)"| F["FRAXで10年骨折確率を評価"]
    F --> G{"治療閾値を超えるか"}
    G -->|"はい"| C
    G -->|"いいえ"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lifestyle advice'>生活指導</span>+経過観察・再評価"]
    C --> I["続発性原因のスクリーニング(Ca・リン酸・ALP・PTH・25-OHビタミンD・TSHなど)"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='risk stratification'>リスク層別化</span>に応じた薬物治療へ"]

治療

全例で行う基本管理

  • 食事+必要に応じたで十分なカルシウム・ビタミンD摂取を確保し、欠乏があればなどで補正する。
  • 荷重運動・筋力訓練・平衡感覚訓練、禁煙、過量飲酒回避、住環境整備・視力矯正・鎮静薬の見直しを含む転倒予防を徹底する。
  • 新規の後は、治療開始を先延ばしにせずとして速やかに薬物治療を開始する。

リスク層別化と薬物治療の選択

⭐ リスクが高いほど、まず骨形成を促進する薬剤から開始し、その効果をでつなぎ止める「アナボリック・ファースト」の考え方が中心になる。

リスク区分 目安 初期治療の考え方
高リスク T-score −2.5以下、または軽度〜中等度のFRAXリスク上昇 経口または、あるいは
非常に高いリスク T-score −3.0未満、、治療中の新規骨折、が高い、FRAXが著しく高値 など などの、または静注を優先し、終了後はへ橋渡しする

骨吸収抑制薬(抗異化)

薬剤 機序・特徴 注意点
(経口 に結合し破骨細胞のアポトーシスを誘導 食道刺激性のため起床時コップ一杯の水で服用し30分は横にならない。腎機能低下では慎重投与
年1回ので高い 投与後の(発熱・筋肉痛)、腎機能に応じた調整
。皮下注射を6か月ごとに投与 ⚠️ の延長・中止で急激な亢進(リバウンド)が起こり、のリスクが上がる。中止する場合は必ず後続のなどへ切り替える
。骨では作動薬、乳房・子宮では拮抗薬として働く は減らすがの予防効果は確立していない。のリスクに注意

⚠️ 長期の(特に)に共通するまれだが重要な合併症として、で、しばしば大腿部のを伴う)とや口腔外科処置を契機に生じやすい)がある。いずれも頻度は低く、骨折予防のが上回る患者が大半だが、長期使用(目安として3年以上)で頻度が上がるため、治療開始前の歯科評価と、大腿部痛など症状出現時の速やかな評価を心がける。

骨形成促進薬(同化)

薬剤 機序・特徴 注意点
(PTH(1-34))・(PTHrPアナログ) により骨芽細胞優位の骨形成を誘導する(持続的な高PTH血症は逆にを促すのと対照的) で見られた所見に基づくは、後の疫学データでヒトでのリスク増加が示されなかったことを受けて(2020年)・(2021年)とも解除された。ただし添付文書上の投与期間の考え方は完全に撤廃されたわけではない:は「生涯2年まで」という一律上限から、骨折の高リスクが持続する・した患者に限り2年を超える継続を考慮できるという条件付きの表現に改められた一方、は現在も生涯2年を超える使用は推奨されないとする制限が残る。終了後はいずれもに切り替えて効果を維持する
抗体。骨形成促進と抑制を同時に起こす 通常12か月で終了し、その後はへ。⚠️ 心筋梗塞・脳卒中・心血管死のリスク上昇と関連し、発症から1年以内の心筋梗塞・脳卒中がある患者には開始しない

閉経後骨粗鬆症とホルモン補充療法の位置づけ

閉経周辺期にあり、などのを併せ持つ比較的若い閉経後女性(60歳未満または閉経後10年以内が目安)で禁忌がなければ、・骨折リスクの低下にも寄与しうる。ただし、骨折リスクの低減だけを主目的として、あるいは高齢・閉経後長期間が経過した女性に新規に開始することは推奨されない。詳細な適応・禁忌の考え方は閉経を参照。

薬物治療の見直し(休薬)とモニタリング

  • 経口・は、骨に長期間残留する特性を利用し、3〜5年の治療後にリスクを再評価したうえで、骨折リスクが低〜中等度に落ち着いた選択された患者に限り(drug holiday)を検討できる。非常に高リスクの患者や、治療中に骨折した患者にはを適用しない。
  • にはの概念はない。中止する場合はリバウンド骨折を避けるため、必ず後続のなど)への切り替えを計画する。
  • 治療中は通常1〜3年ごとにDXAを再評価し、新規骨折、BMD低下、不良、続発性原因の見落としがないかを確認する。

まとめ

  • 症はと骨形成のバランスが吸収優位に傾き、石灰化は正常なまま骨量が減少する疾患で、閉経後のエストロゲン低下と加齢が二大原因、過剰などの続発性原因も広く関与する。
  • 骨折するまで無症状のことが多く、椎体・・橈骨遠位端・で顕在化する。低はBMDにかかわらず症の臨床診断根拠になる。
  • 診断はDXAのT-score(閉経後女性・50歳以上男性でT-score ≤ −2.5)とFRAXによる10年骨折確率評価を組み合わせ、続発性原因(内分泌疾患、など)を除外する。
  • 治療は・転倒予防・Ca/ビタミンD補正を土台に、高リスクではなどの、非常に高リスクではなどのを先行し、終了後はで効果を維持する。
  • 長期のではに、では心に、中止時にはリバウンド骨折に注意し、は低〜へ再分類された選択例に限って検討する。