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Disease Atlas · 運動器 · 疾患

骨粗鬆症

Osteoporosis

臓器系
運動器内分泌・代謝
科目
Internal MedicinePathologyTranslational Medicine and PathophysiologyPharmacologyObstetrics and Gynecology (Gynecology)
トピック
内科学 L-35:骨粗鬆症病理学 C/91:後天性骨疾患(骨粗鬆症・くる病・骨軟化症)病態生理学 I-29:カルシウム・リン代謝と骨格系への影響薬理学 B20:骨ミネラル恒常性に作用する薬婦人科 12:閉経
鑑別疾患
くる病・骨軟化症骨のパジェット病骨形成不全症多発性骨髄腫低ホスファターゼ症変形性関節症慢性腎臓病慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)
続発疾患
足関節骨折橈骨遠位端骨折大腿骨頸部・転子部骨折上腕骨近位部骨折
関連疾患
サルコペニア外傷性脊椎・脊髄損傷顎骨壊死更年期症状疲労骨折非定型大腿骨骨折
治療薬
アレンドロネートリセドロネートゾレドロン酸デノスマブテリパラチドアバロパラチドロモソズマブラロキシフェンカルシトリオールコレカルシフェロールイバンドロン酸
原因薬剤
アナストロゾールデキサメタゾンレボチロキシンメチルプレドニゾロンプレドニゾロンヒドロコルチゾン
症状
背部痛骨変形亀背
元疾患
カドミウム中毒ホモシスチン尿症リウマチ性多発筋痛症移植片対宿主病高IgE症候群高プロラクチン血症脳腱黄色腫症
原因となる疾患
Werner症候群クッシング症候群クラインフェルター症候群スポーツにおける相対的エネルギー不足セリアック病ターナー症候群バセドウ病関節リウマチ機能性視床下部性無月経強直性脊椎炎摂食症(神経性やせ症・過食症)全身性肥満細胞症短腸症候群男性性腺機能低下症中毒性腺腫中毒性多結節性甲状腺腫膵外分泌不全
適応薬
アバロパラチド

🧠 全体像:骨粗鬆症は、骨密度(BMD)と骨質の低下により骨強度が落ち、軽微な外力で骨折する()疾患である。(破骨細胞)と骨形成(骨芽細胞)のバランスが吸収側に傾くことが本態で、閉経によるエストロゲン低下と加齢が二大原因(原発性)だが、・甲状腺機能亢進症・など多数の続発性原因も除外する必要がある。骨折するまで無症状のことが多いため、のT-scoreと()で先回りしてリスクを層別化し、リスクの高さに応じて(・)または(・)を選択する。

病態

骨は生涯を通じて破骨細胞による吸収と骨芽細胞による形成を繰り返す動的なリモデリングを行っており、若年成人では両者が釣り合っている。骨粗鬆症は、この釣り合いがに吸収優位へ傾いた結果、が減弱・が菲薄化し、石灰化自体は正常のまま骨の絶対量が減る病態である(そのものである・くる病とは異なる)。

  • エストロゲンの役割:エストロゲンは破骨細胞の分化を抑え、骨芽細胞・骨細胞からの分泌を促す。OPGはRANKLに結合してRANK-RANKL経路を遮断し、破骨細胞の活性化にブレーキをかける。閉経でエストロゲンが低下すると、このブレーキが外れてRANKL経路が優位になり、が加速する(閉経後最初の数年で特に速い)。
  • 加齢の役割:加齢そのものでも骨芽細胞の活性が低下する一方、破骨細胞活性は保たれるため、性別を問わず緩徐なが進む(老人性骨粗鬆症)。
  • 続発性の機序:グルココルチコイド過剰はを促進すると同時に骨形成を直接抑制するため二重に骨量を減らし、の原因として最も頻度が高い。甲状腺機能亢進症・はいずれもを亢進させて吸収優位にする。
flowchart TD
    A["加齢+閉経によるエストロゲン低下"] --> B["骨芽細胞・骨細胞からのOPG分泌低下"]
    B --> C["RANK-RANKL経路のブレーキ解除"]
    C --> D["破骨細胞の分化・活性化"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone resorption'>骨吸収</span>が骨形成を上回る"]
    F["続発性原因(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucocorticoids'>糖質コルチコイド</span>過剰・甲状腺機能亢進症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary hyperparathyroidism, PHPT'>原発性副甲状腺機能亢進症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypogonadism'>性腺機能低下</span>・吸収不良など)"] --> E
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trabeculae'>骨梁</span>減弱・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cortical'>皮質骨</span>菲薄化(石灰化は正常)"]
    G --> H["骨強度低下"]
    H --> I["軽微な外力での<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fragility fracture'>脆弱性骨折</span>(椎体・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal femur'>大腿骨近位部</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='distal radius'>橈骨遠位端</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal humerus'>上腕骨近位部</span>)"]

💡 骨粗鬆症は「骨の量」の病気、・くる病は「骨の質(石灰化)」の病気という対比で覚えると整理しやすい。骨粗鬆症では血清Ca・リン酸・・は通常すべて正常であり、これらが異常ならや続発性原因(、など)を疑う。

主な原因・危険因子

分類 主な原因・危険因子
原発性 閉経後のエストロゲン低下、加齢(老人性)
内分泌・代謝性 甲状腺機能亢進症(など)、、Cushing症候群・過剰、、(を介した骨密度低下)、糖尿病
薬剤性 長期、、、一部の
消化管・栄養性 吸収不良、セリアック病、・摂食障害、Ca・ビタミンD摂取不足
慢性疾患 ()、関節リウマチなど慢性炎症性疾患、
不動・、喫煙、過量飲酒、

臨床像

骨粗鬆症自体は骨折するまで無症候性であることが最大の特徴で、健診での測定や偶発的な画像検査で初めて指摘されることも多い。

⭐ 「低(立った姿勢からの転倒か、それ以下の外力)で生じたまたは」は、それ自体が骨粗鬆症の診断根拠になる。のT-scoreを待つ必要はない。⚠️ ただしそれ以外の部位のは、単独では診断根拠にならない——肋骨・骨盤・・・下腿骨の骨折は、日本の基準では骨密度がYAMの80%未満であることと組み合わせて骨粗鬆症と判定する1。

⚠️ 急性の激しい・神経症状(下肢筋力低下、膀胱直腸障害)を伴う場合は、単純な骨粗鬆症性と決めつけず、(・など)や脊髄圧迫を鑑別する。

診断

DXAとT-score/Z-score

  • 骨密度は二重エネルギーX線吸収測定法()でと(股関節)を測定する。
  • 閉経後女性・50歳以上の男性では、若年成人平均との差であるT-scoreを用いる。
T-score 判定
−1.0以上 正常
−1.0未満〜−2.5超 (、osteopenia)
−2.5以下 骨粗鬆症
  • 閉経前女性・50歳未満の男性・小児では、年齢を一致させた対照との差であるZ-scoreを用いる(Z-score ≤ −2.0を「年齢相応の範囲を下回る」とし、これだけで骨粗鬆症と診断しない)。
  • 臨床的診断:のT-scoreにかかわらず、または椎体の低骨折があれば骨粗鬆症として治療対象とする。

日本の診断基準(2012年度改訂版)と国際基準の関係

上のT-score表はに由来する国際的な体系である。日本の原発性骨粗鬆症のは、日本学会・日本骨粗鬆症学会の合同委員会による2012年度改訂版が現行である。

⚠️ 「日本はYAM比、世界はTスコア」と割り切って覚えると誤る。 2012年の改訂はそもそも「国際的な整合性を目指す」ことを目的に掲げており、とについてはYAMの70%と−2.5SDを併記する形に改められた(いずれのも女性ではほぼ−2.5SDに一致するため)。そのものも「YAMの70%未満」から「YAMの70%以下または−2.5SD以下」へ、の定義に合わせて書き換えられている1。

を来す他疾患とを除外したうえで、次の3分岐で診断する1。

分岐 条件
I-1.あり またはがあれば、骨密度を問わず骨粗鬆症
I-2.あり その他の(肋骨・骨盤〈恥骨・・〉・・・下腿骨)があり、骨密度がYAMの80%未満
II.なし 骨密度がYAMの70%以下または−2.5SD以下
  • ()の定義は国際基準と同一で、−2.5SDより大きく−1.0SD未満とする。ただしI-2に当たる骨折がある場合はYAMの80%未満で骨粗鬆症と判定し、の定義は用いない1。
  • YAMの基準年齢はでは20〜44歳、では20〜29歳と部位で異なる(後者は国際基準に合わせる目的で2012年改訂時に変更された)。測定部位は原則としてまたはで、複数部位を測ったときはより低い%値またはSD値を採る。これらの測定が困難なときに用いる橈骨・第二だけは、%表記とSD表記の差が大きいため%表記のみを使う1。
  • ⭐ 「椎体またはのはそれ自体が診断根拠になる」という考え方は、日本の基準にも国際的な運用にも共通している。逆に言えば、それ以外の部位のは日本では骨密度(YAMの80%未満)と組み合わせて初めて診断に至る1。

💡 日本に固有なのはTスコアを使わないことではない。 固有なのは、①を部位で2段に分け「その他の」にYAMの80%未満という独自の枠を残していること、②%表記を併用する慣行、の2点である。日本ではTスコア −1.5 がおよそYAMの80%、Tスコア −2.5 がおよそYAMの70%に相当する2。

💡 改訂前の記述に注意。 2011年版ガイドラインの英語版要約は、日本の診断を「①の有無、②骨密度または脊椎X線での」という2段階として記述していた2。2012年改訂は、の普及で脊椎X線像での度判定が困難になったことを理由に脊椎X線像でのの表記を削除しており、度は診断の判定軸から外れている1。古い教科書の「2段階」「度Ⅱ度以上」は2000年度改訂版までの枠組みである。

FRAXによる骨折リスク評価

は年齢・性別・・既存骨折歴・両親の歴・喫煙・使用・関節リウマチ・・過量飲酒・(可能であれば)のBMDを用いて、今後10年間の主要確率と確率を算出する。

⚠️ は直近の骨折、複数回の骨折、転倒しやすさ、量依存の影響、BMDなどを十分に反映できない場合があり、これらがあれば実際のリスクをの数値以上に高く見積もって治療を検討する。

⚠️ の使いどころも国内外で違う。 日本の「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」(2015年版)はを薬物治療開始基準の中に組み込んでいるが、位置づけは限定的で、既存骨折が無く骨密度がYAMの70%より大きく80%未満(域)の人について、10年主要確率15%以上を治療開始の閾値とする。同ガイドラインはの値のみで薬物治療開始を判断することを推奨していない(を補う骨折リスク情報として用いる)3。

  • ⚠️ ステロイド使用・関節リウマチ・のいずれかに当てはまる者には適用しない(原発性骨粗鬆症に限った基準であるため、これらがすべて「なし」の症例に限られる)3。
  • この15%という値は、複数の医療機関で2006年版ガイドラインに従って薬物治療を受けている骨粗鬆症患者の主要確率の平均値から求められたものである。適用は75歳未満に限られる(75歳以上ではほとんどすべての女性がこのを上回り、識別力を失うため)。50歳代を中心とする世代では、より低いを用いても現行ので薬物治療が推奨される集団を部分的にしかカバーしないという限界も指摘されている3。
  • ⭐ このを用いるときのには骨密度を入力しない。日本での発生頻度が高いことを踏まえ、を含む主要確率の側にが定められている3。
  • 日本ではを一次スクリーニング(へ回す人を選ぶ段階)には用いない2。

⚠️ 予防と治療ガイドラインは2025年版(2025年7月発行)が最新だが書籍としてのみ提供されており、本項で照合できたのは学会サイトで全文が公開されている2015年版までである。閾値そのものが2025年版で維持されているかは確認できていない。

続発性原因の除外

薬剤性(・利尿薬によるは別として、・など)、脱水、代謝性疾患を除外したうえで、以下を基本セットとして評価する。

  • 血算、血清Ca、リン酸、、クレアチニン/、25-OHビタミンD、肝機能、
  • 病歴・所見に応じて:(の除外)、性腺機能、セリアック抗体、・(など単クローン性疾患の除外)、24時間尿中Ca

💡 血清Ca・リン酸・・がすべて正常なら骨粗鬆症として矛盾しない所見だが、いずれかが異常なら・・に伴う()・などの鑑別を優先する。では自体が高回転にも低回転にもなりうるため、のT-scoreだけでは骨折リスクやを十分に評価できない点に注意する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fragility fracture'>脆弱性骨折</span>の既往 または 危険因子(閉経後・高齢・続発性原因)"] --> B{"低<span class='jp-term jp-term-diagram' title='traumatic'>外傷性</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal femur'>大腿骨近位部</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vertebral fracture'>椎体骨折</span>があるか"}
    B -->|"あり"| C["BMDにかかわらず骨粗鬆症と臨床診断"]
    B -->|"なし"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dual-energy X-ray absorptiometry'>DXA</span>でT-score測定"]
    D --> E{"T-score ≤ −2.5"}
    E -->|"はい"| C
    E -->|"いいえ(−1.0〜−2.5)"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fracture Risk Assessment Tool'>FRAX</span>で10年骨折確率を評価"]
    F --> G{"治療閾値を超えるか"}
    G -->|"はい"| C
    G -->|"いいえ"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lifestyle advice'>生活指導</span>+経過観察・再評価"]
    C --> I["続発性原因のスクリーニング(Ca・リン酸・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alkaline phosphatase'>ALP</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parathyroid hormone'>PTH</span>・25-OHビタミンD・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid-stimulating hormone'>TSH</span>など)"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='risk stratification'>リスク層別化</span>に応じた薬物治療へ"]

治療

全例で行う基本管理

  • 食事+必要に応じたで十分なカルシウム・ビタミンD摂取を確保し、欠乏があればなどで補正する。
  • 荷重運動・筋力訓練・平衡感覚訓練、禁煙、過量飲酒回避、住環境整備・視力矯正・鎮静薬の見直しを含むを徹底する。
  • 新規の後は、治療開始を先延ばしにせずとして速やかに薬物治療を開始する。

リスク層別化と薬物治療の選択

⭐ 非常に高いリスクでは、まず骨形成を促進する薬剤から開始し、その効果をでつなぎ止める「アナボリック・ファースト」の考え方が中心になる。

リスク区分 目安 初期治療の考え方
高リスク 既存の椎体または、T-score −2.5以下、または10年確率≥3%・主要確率≥20% 経口または、あるいは
非常に高いリスク かつT-score −2.5以下(内分泌学会2019)。AACE/ 2020はこれに加えT-score −3.0未満、直近12か月以内の骨折、治療中の新規骨折、が高い、で主要骨折>30%・>4.5% を挙げる4 ・・などの、または静注・を優先し、終了後はへ橋渡しする

骨吸収抑制薬(抗異化)

薬剤 機序・特徴 注意点
・(経口) に結合し破骨細胞のアポトーシスを誘導 食道刺激性のため起床時コップ一杯の水で服用し30分は横にならない。腎機能低下では慎重投与
() 年1回ので高い 投与後の(発熱・筋肉痛)、腎機能に応じた調整
。皮下注射を6か月ごとに投与 ⚠️ の延長・中止で急激な亢進(リバウンド)が起こり、のリスクが上がる。中止する場合は必ず後続のなどへ切り替える
。骨では作動薬、乳房・子宮では拮抗薬として働く は減らすがの予防効果は確立していない。のリスクに注意

⚠️ 長期の(特に・)に共通するまれだが重要な合併症として、(〜ので、しばしば大腿部のを伴う)と(や口腔外科処置を契機に生じやすい)がある。いずれも頻度は低く、骨折予防のが上回る患者が大半だが、使用期間が長いほど頻度が上がるため(は2年使用で約3/10万人年、5年で約20、8年超で約50。は4年超で約0.21%)、治療開始前の歯科評価と、など症状出現時の速やかな評価を心がける。

骨形成促進薬(同化)

薬剤 機序・特徴 注意点
((1-34))・(PTHrPアナログ) により骨芽細胞優位の骨形成を誘導する(持続的な高血症は逆にを促すのと対照的) で見られた所見に基づくは、市販後の疫学データでヒトでのリスク増加が示されなかったことを受けて(2020年)・(2021年)とも解除された。現行の米国添付文書ではいずれもが無く、は「および使用上の注意」の項で、未閉鎖・Paget病・や骨悪性腫瘍の既往・骨格への照射歴・の遺伝性素因といったハイリスク患者では使用を避ける、という形で扱われている56。ただし投与期間の考え方は完全に撤廃されたわけではない:は「生涯2年を超える使用は、骨折の高リスクが持続している・再び高リスクに戻った患者に限って考慮すべき」という条件付きの表現である5のに対し、は「2年を超える安全性・有効性は評価されておらず、生涯2年を超える使用は推奨されない」という制限が残る6。終了後はいずれもに切り替えて効果を維持する
抗体。骨形成促進と抑制を同時に起こす が12回の月1回投与の後に減弱するため投与を12回分に限り、骨粗鬆症治療の継続が必要ならへ切り替える7。⚠️ として心筋梗塞・脳卒中・心血管死のリスク上昇が掲げられ、直前1年以内に心筋梗塞または脳卒中の既往がある患者には開始してはならない。他のをもつ患者ではがリスクを上回るかを検討し、治療中に心筋梗塞・脳卒中が起きたら中止する7

閉経後骨粗鬆症とホルモン補充療法の位置づけ

にあり、などのを併せ持つ比較的若い閉経後女性(60歳未満または閉経後10年以内が目安)で禁忌がなければ、(MHT)は・骨折リスクの低下にも寄与しうる。ただし、骨折リスクの低減だけを主目的として、あるいは高齢・閉経後長期間が経過した女性に新規に開始することは推奨されない。詳細な適応・禁忌の考え方は閉経を参照。

薬物治療の見直し(休薬)とモニタリング

  • 経口・は、骨に長期間残留する特性を利用し、3〜5年の治療後にリスクを再評価したうえで、骨折リスクが低〜中等度に落ち着いた選択された患者に限り(drug holiday)を検討できる。非常に高リスクの患者や、治療中に骨折した患者にはを適用しない。
  • にはの概念はない。中止する場合はを避けるため、必ず後続の(など)への切り替えを計画する。
  • 治療中は通常1〜3年ごとにを再評価し、新規骨折、BMD低下、不良、続発性原因の見落としがないかを確認する。

まとめ

  • 骨粗鬆症はと骨形成のバランスが吸収優位に傾き、石灰化は正常なまま骨量が減少する疾患で、閉経後のエストロゲン低下と加齢が二大原因、過剰などの続発性原因も広く関与する。
  • 骨折するまで無症状のことが多く、椎体・・・ので顕在化する。低の・はBMDにかかわらず骨粗鬆症の臨床診断根拠になる。
  • 診断はのT-score(閉経後女性・50歳以上男性でT-score ≤ −2.5)とによる10年骨折確率評価を組み合わせ、続発性原因(内分泌疾患、、など)を除外する。
  • ⚠️ 日本の原発性骨粗鬆症(2012年度改訂版)は、の部位で分ける3分岐(椎体・の骨折なら骨密度を問わず/その他のならYAMの80%未満/骨折が無ければYAMの70%以下または−2.5SD以下)で運用される。Tスコアを排した別体系ではなく、・では70%と−2.5SDが併記されている1。国内に独自なのは「その他の」の80%枠と、薬物治療開始基準に置かれた 10年主要骨折確率15%以上(75歳未満・原発性骨粗鬆症に限る)という閾値である3。
  • 治療は・・Ca/ビタミンD補正を土台に、高リスクではやなどの、非常に高リスクでは・などのを先行し、終了後はで効果を維持する。
  • 長期のでは・に、では心血管イベントに、中止時にはに注意し、は低〜へ再分類された選択例に限って検討する。

出典

  1. 1.原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)(日本骨代謝学会・日本骨粗鬆症学会 合同原発性骨粗鬆症診断基準改訂検討委員会・2012)学会公開の原本PDF全文(13頁)を取得して確認した。表2の診断が「I. 脆弱性骨折あり——1.椎体骨折または大腿骨近位部骨折あり(骨密度を問わない)2.その他の脆弱性骨折があり骨密度がYAMの80%未満」「II. 脆弱性骨折なし——骨密度がYAMの70%以下または−2.5SD以下」の3分岐であること。注3の「その他の脆弱性骨折」の部位が肋骨・骨盤(恥骨、坐骨、仙骨を含む)・上腕骨近位部・橈骨遠位端・下腿骨の5部位であること。注2に「形態椎体骨折のうち,3分の2は無症候性である」とあること。YAM(若年成人平均値)の基準年齢が「腰椎では20〜44歳,大腿骨近位部では20〜29歳」と部位で異なり、後者は「国際基準に合わせる目的で」変更されたこと。注4により複数部位測定時はより低い%値またはSD値を採用し、橈骨・第二中手骨では「%表記のみを使用する」こと。骨量減少(骨減少)が「国際的な基準と同じ−2.5SDより大きく−1.0SD未満」と定義されることを確認した。⚠️ 本改訂は冒頭に「今回,国際的な整合性を目指すとともに新たな知見に基づき2012年度改訂版を作成した」と明記し、「このことから,腰椎と大腿骨近位部については,70%と−2.5SDを併記することとした」「骨粗鬆症の診断基準は,これまでの骨密度がYAMの70%未満から,WHOの定義に合わせてYAMの70%以下または−2.5SD以下とすることとした」と述べる。つまり日本の基準はSD(Tスコア)表記を排した別体系ではない。また「7)脊椎X線像での骨粗鬆化の表記を削除した——近年,デジタル化の普及により脊椎X線像での骨萎縮度判定が困難となっており」とあり、2000年度改訂版(表1)にあった骨萎縮度は本改訂で判定軸から外れている。閲覧 2026-09-16
  2. 2.Japanese 2011 guidelines for prevention and treatment of osteoporosis--executive summary(Archives of Osteoporosis・2012)Europe PMCの全文(PMC3517709、CC BY-NC)を確認した。日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会・骨粗鬆症財団による「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」の英語版要約で、日本の原発性骨粗鬆症は、低骨量を来す他疾患と続発性骨粗鬆症を除外したうえで、①脆弱性骨折の有無、②骨密度または脊椎X線での骨萎縮の評価、という2段階で診断すると述べる。日本ではTスコア −1.5 がおよそ若年成人平均値(YAM、20〜44歳)の80%、Tスコア −2.5 がおよそYAMの70%に相当するとしている。薬物治療開始基準にはFRAXが組み込まれており、脆弱性骨折が無く低骨量にとどまる人については、日本の臨床で薬物治療を受けている患者の10年主要骨粗鬆症性骨折確率が15%前後であったことから15%を治療開始の閾値として採用し、この閾値は75歳未満の男女に適用するとしている(75歳以上ではほぼ全員が15%を超えるためカットオフとしての識別力が弱い)。またFRAXは日本では一次スクリーニング(骨密度測定へ回す人を選ぶ段階)には用いないとしている。⚠️ 本文書は2011年版に基づく英語版要約であり、記述されている「①脆弱性骨折の有無、②骨密度または脊椎X線での骨萎縮の2段階」という枠組みは2012年改訂前のものである(2012年度改訂版は脊椎X線像での骨粗鬆化の表記を削除し、脆弱性骨折の部位で分ける3分岐に整理した。本ファイルの jsbmr-primary-osteoporosis-criteria-2012 を参照)。本文書から引いてよいのはTスコアとYAM比の換算の目安と、FRAXの位置づけに関する記述までである。閲覧 2026-09-05
  3. 3.骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会(日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会・骨粗鬆症財団)・2015)学会サイトで公開されている全文PDFを取得して確認した。第V章A-cの薬物治療開始基準について、FRAXの位置づけが「既存骨折がなく骨密度がYAMの70%より大きく80%未満の場合に,診断基準を補う骨折リスクに関する情報として用いる」ものであり、「FRAXの値のみで薬物治療開始について判断することを推奨していない」こと。カットオフ値15%が「複数の医療機関において,2006年版ガイドラインに従って薬物治療を受けている骨粗鬆症患者の主要骨粗鬆症性骨折確率の平均値から求められたもの」であること。「75歳以上においては,ほとんどすべての女性がこのカットオフ値を上回ることから,カットオフ値の適用は75歳未満とすることが提案された」こと(図25の注5も「75歳未満で適用する」とし、50歳代を中心とする世代ではより低いカットオフ値でも現行の診断基準で薬物治療が推奨される集団を部分的にしかカバーしない限界を併記する)。図25の注6が「FRAX®の項目のうち糖質コルチコイド,関節リウマチ,続発性骨粗鬆症にあてはまる者には適用されない。すなわち,これらの項目がすべて「なし」である症例に限って適用される」と定めること。カットオフ値を定めた確率が「わが国における椎体骨折の発生頻度の高さを考慮し」主要骨粗鬆症性骨折確率の側であり、その算出では「BMDは入力しない」ことを確認した。本版は2012年度改訂版の診断基準(YAMの70%以下または−2.5SD以下、注4の測定部位規定を含む)をそのまま踏襲している。⚠️ 本ガイドラインは2025年7月30日発行の2025年版(ライフサイエンス出版、ISBN 978-4-89775-502-1)が最新だが市販書籍としてのみ提供されており、本項で全文を照合できたのは2015年版までである。閲覧 2026-09-16
  4. 4.American Association of Clinical Endocrinologists/American College of Endocrinology Clinical Practice Guidelines for the Diagnosis and Treatment of Postmenopausal Osteoporosis - 2020 Update(Endocrine Practice(American Association of Clinical Endocrinologists)・2020)推奨R23で「Consider patients with a recent fracture (e.g., within the past 12 months), fractures while on approved osteoporosis therapy, multiple fractures, fractures while on drugs causing skeletal harm, very low T-score (e.g., less than −3.0), high risk for falls or history of injurious falls, and very high fracture probability by FRAX (e.g., major osteoporosis fracture >30%, hip fracture >4.5%)…to be at very high fracture risk. (Grade B; BEL 1)」と、「非常に高い骨折リスク」の要件を定めていることを確認した。⚠️ Tスコア −3.0未満という数値の出所はこの文書であって、内分泌学会(Endocrine Society)2019年ガイドラインではない(同ガイドラインは very high risk を「多発椎体骨折かつ股関節・脊椎のTスコア −2.5以下」としている)。Wayback に保存された出版社の全文ページを閲覧した。閲覧 2026-09-05
  5. 5.FORTEO (teriparatide injection), for subcutaneous use - Prescribing Information(DailyMed (U.S. National Library of Medicine) / Eli Lilly and Company・2026)現行の米国添付文書(Revised 8/2026)を確認した。枠組み警告(boxed warning)は置かれておらず、骨肉腫は「警告および使用上の注意 5.2」として、骨端線が閉じていない患者、Paget病を含む代謝性骨疾患、骨転移・骨悪性腫瘍の既往、骨格への外部照射/密封小線源治療歴、骨肉腫を素因とする遺伝性疾患をもつ患者では使用を避ける、という形で記載されている。用法・用量の「2.3 Recommended Treatment Duration」は "Use of FORTEO for more than 2 years during a patient's lifetime should only be considered if a patient remains at or has returned to having a high risk for fracture" と記載する。⚠️ 枠組み警告が2020年に解除されたという時期については、この添付文書からは確認していない。閲覧 2026-09-05
  6. 6.TYMLOS (abaloparatide) injection, for subcutaneous use - Prescribing Information(DailyMed (U.S. National Library of Medicine) / Radius Health, Inc.・2026)現行の米国添付文書(Revised 8/2026)を確認した。枠組み警告は置かれておらず、骨肉腫はテリパラチドと同じ形式で「警告および使用上の注意 5.2」に移されている。用法・用量の「2.3 Treatment Duration」は "The safety and efficacy of TYMLOS have not been evaluated beyond 2 years of treatment. Use of the drug for more than 2 years during a patient's lifetime is not recommended." と記載し、テリパラチドのような「高リスクが持続・再燃していれば2年超も考慮しうる」という条件付きの表現にはなっていない。⚠️ 枠組み警告が2021年に解除されたという時期については、この添付文書からは確認していない。閲覧 2026-09-05
  7. 7.EVENITY (romosozumab-aqqg) injection, for subcutaneous use - Prescribing Information(DailyMed (U.S. National Library of Medicine) / Amgen Inc.・2026)現行の米国添付文書(Revised 1/2026)を確認した。枠組み警告「WARNING—POTENTIAL RISK OF MYOCARDIAL INFARCTION, STROKE AND CARDIOVASCULAR DEATH」があり、"EVENITY should not be initiated in patients who have had a myocardial infarction or stroke within the preceding year"(直前1年以内に心筋梗塞または脳卒中の既往がある患者には開始してはならない)、他の心血管危険因子をもつ患者ではベネフィットがリスクを上回るか検討すること、治療中に心筋梗塞・脳卒中が起きた場合は中止することを求めている。「1.2 Limitations of Use」は、同化作用が12回の月1回投与の後に減弱するため投与期間を12回分に限ること、骨粗鬆症治療の継続が必要なら骨吸収抑制薬による治療継続を考慮することを述べる。適応は「骨粗鬆症性骨折の既往、または骨折の複数の危険因子をもつ骨折高リスクの閉経後女性、あるいは他の骨粗鬆症治療が無効または不耐の患者」である。閲覧 2026-09-05