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Disease Atlas · 免疫・膠原病 · 疾患

リウマチ性多発筋痛症

Polymyalgia rheumatica

別名
PMR
臓器系
免疫・膠原病運動器
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 S-47:血管炎内科学 R-08:中血管炎・大血管炎内科学 I-04:不明熱
鑑別疾患
関節リウマチ甲状腺機能低下症
合併症
骨粗鬆症
関連疾患
巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)
治療薬
プレドニゾロンメトトレキサートトシリズマブサリルマブ
症状
倦怠感発熱体重減少筋痛
検査値
C反応性蛋白(CRP)赤沈リウマトイド因子

🧠 全体像は、50歳以上の高齢者に起こる原因不明の炎症性疾患で、頸部・の対称性の痛み・を主徴とする。最大の診断的手掛かりは症状そのものより治療への反応にある――少量の15mg/日前後)を開始すると、数日以内に劇的に改善する。この「ステロイドがよく効く」という反応性の良さは、他の高齢発症の関節疾患(RA、変形性疾患、悪性など)との鑑別に事実上使われるほど特徴的である。と同じ炎症性血管病態のスペクトラムに位置づけられ、常に両者の併存を意識する。

病態

PMRの正確な機序は未解明だが、加齢に伴う自然免疫の活性化(IL-6を中心とした産生)と、(HLA領域の関連)が組み合わさって発症すると考えられている。肩・に軽度のが生じ、筋肉そのものに炎症性の破壊はない(血清CK値は正常)——「筋痛症」という病名にもかかわらず、病理学的主座は筋肉ではなく関節周囲軟部組織にある点が誤解されやすい。

flowchart TD
    A["加齢に伴う自然免疫の活性化<br>(IL-6を中心とした<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory cytokine'>炎症性サイトカイン</span>)"] --> B["肩・頸部・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pelvic girdle'>骨盤帯</span>の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='bursitis'>滑液包炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tenosynovitis'>腱鞘炎</span>(筋肉そのものは正常)"]
    B --> C["対称性の痛み・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='morning stiffness'>朝のこわばり</span><br>(CK正常、CRP/ESR上昇)"]
    C --> D["低用量グルココルチコイドに劇的に反応"]
    A -->|"同じ炎症スペクトラムの<br>より重篤な表現型"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='GCA'>巨細胞性動脈炎</span>"]
    E -->|"視覚症状があれば"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-dose glucocorticoid'>高用量グルココルチコイド</span>を緊急開始"]

💡 PMRとGCAは「同じ炎症の異なる強さ」と捉えると理解しやすい。 GCA患者の最大50%にPMR様症状を認め、PMR患者の約20%は経過中にGCAと診断される1。したがってPMRと診断したら、頭痛・・視覚症状の有無を必ず確認し、GCAの合併を見逃さない。

臨床像

  • 中心症状:頸部・の対称性の痛みとこわばりで、は45分を超えることが典型的。発症は急性〜亜急性(数日〜2週間)で、起床時や安静後の動き始めに強い。
  • 随伴症状発熱体重減少などの全身炎症症状を伴うことがある。手・手関節の腫脹や様の症状(RS3PE症候群に近い病態)を伴う例もある。
  • 筋力低下を訴えない:患者は「力が入らない」と表現することがあるが、これは疼痛による可動域制限であり、真の筋力低下(神経筋疾患)ではない。筋痛はあっても、な筋力低下やCK上昇があれば他疾患(症など)を疑う。

⚠️ PMRの診断時には必ずGCAの症状(新規頭痛、、視覚症状)をする。見逃すと不可逆的な失明につながりうる。

診断

PMRを単独で確定する検査はなく、50歳以上・典型的な症状分布・CRP/ESR上昇・低用量ステロイドへの速やかな反応を総合して臨床診断する。2012年EULAR/ACR分類基準は、50歳以上・他疾患で説明できない両側肩痛・CRPまたはESRの上昇の3つを必須の前提条件とし、45分超(2点)・股関節痛または可動域制限(1点)・および陰性(2点)・末梢関節痛の欠如(1点)というスコア方式で、4点以上をPMRに分類する(感度68%・特異度78%)2。ただしこの基準は臨床研究向けの分類基準であり、個々の患者を診断する際は臨床像を優先する。

鑑別診断

疾患 区別のポイント
関節リウマチ(高齢発症) 末梢小関節の腫脹・骨びらん、RF/陽性が多い(PMRは陰性)
筋痛・こわばりを来しうるが、CK上昇・TSH異常で区別する
悪性 な症状分布、体重減少が著明、ステロイドへの反応が不良・不完全
な筋力低下とCK上昇を伴う(PMRは伴わない)

ステロイドへの反応が乏しい、な症状分布、CK上昇や末梢小関節の破壊性変化があれば、PMR以外の診断を再検討する。

治療

グルココルチコイドによる寛解導入と漸減

第一選択は12.5〜25mg/日を初期用量とするで、多くの患者は数日以内に劇的な症状改善を示す(この反応性の良さ自体が診断を支持する)1。寛解が得られたら4〜8週かけて10mg/日まで減量し、その後は4週ごとに1mg程度ずつ、最低12か月かけてする1。急速な減量はを招きやすいため、症状・CRP/ESRを見ながら個別に調整する。

flowchart TD
    A["PMR診断(GCA症状の有無を確認済み)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prednisolone'>プレドニゾロン</span>12.5〜25mg/日で開始"]
    B --> C{"数日〜数週で劇的に改善したか"}
    C -->|"いいえ"| D["診断を再検討(RA・悪性腫瘍・GCA合併など)"]
    C -->|"はい"| E["4〜8週かけて10mg/日まで減量"]
    E --> F["以後4週ごとに約1mgずつ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>(最低12か月)"]
    F --> G{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='relapse'>再燃</span>リスクが高い・長期治療を要するか"}
    G -->|"はい"| H["メトトレキサート7.5〜10mg/週を併用"]
    G -->|"いいえ"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>を継続し骨密度・血糖・血圧を定期評価"]
    H --> I

ステロイド節減薬

を繰り返す例、あるいはステロイド関連の有害事象が問題になる例では、メトトレキサート(7.5〜10mg/週)を早期から併用する1。IL-6経路を標的とする生物学的製剤も有力な選択肢で、不応例・例で有効性が報告されている1は欧州・米国でステロイドへの反応不十分例・減量中の例に適応が拡大されているが、日本のケブザラは2026年8月時点でこの適応が未承認であり、日本ではRAのみに承認されている点に注意する34

安全性・モニタリング

長期ステロイド治療は・糖尿病・易感染性・などの毒性を蓄積させるため、骨密度評価とカルシウム・ビタミンD、必要に応じた症治療薬の併用、血糖・血圧の定期チェックを治療開始時から組み込む。NSAIDs単独ではPMRの炎症を十分に制御できず、ステロイド開始を遅らせるべきではない。

まとめ

  • PMRは50歳以上に好発し、頸部・の対称性の痛み・を主徴とする炎症性疾患で、筋肉そのものではなくが病態の主座である。
  • 少量グルココルチコイドへの劇的な反応が診断を支持する最大の手掛かりであり、反応が乏しければ診断を再検討する。
  • GCAとは同じ炎症スペクトラムにあり、GCA患者の最大50%にPMR症状、PMR患者の約20%が後にGCAと診断されるため、PMR診断時は必ず頭痛・・視覚症状を確認する。
  • 治療は12.5〜25mg/日で開始し数週〜数か月かけてする。リスクが高い例にはメトトレキサートを併用し、などIL-6阻害薬もとして有力である(のPMR適応は欧州・米国のみで日本は未承認)。
  • 長期ステロイド治療に伴う症・糖尿病などの毒性を見越して、治療開始時からモニタリングを組み込む。

出典

  1. 1.Polymyalgia Rheumatica(StatPearls Publishing(NCBI Bookshelf)・2025)PMRは50歳以上に好発し肩・頸部・骨盤帯の対称性のこわばり・痛み(45分超の朝のこわばり、発症は数日〜2週の急性)を特徴とすること、GCA患者の最大50%にPMR症状を認めPMR患者の約20%が後にGCAと診断されること、初期治療はプレドニゾロン換算12.5〜25mg/日でありそこから4〜8週で10mg/日へ、その後4週ごとに1mg減量する漸減を最低12か月行うこと、再燃リスクが高い患者や長期治療を要する患者にはメトトレキサート7.5〜10mg/週を併用すること、トシリズマブは糖質コルチコイド不応・再燃例に有効でサリルマブはステロイドへの反応不十分例・減量困難例に承認されていることを確認した。閲覧 2026-08-10
  2. 2.2012 Provisional classification criteria for polymyalgia rheumatica: a European League Against Rheumatism/American College of Rheumatology collaborative initiative(Annals of the Rheumatic Diseases・2012)50歳以上・他疾患で説明のつかない両側肩痛・CRPおよび/またはESRの上昇の3項目を必須の前提条件とし、朝のこわばり45分超(2点)・股関節痛または可動域制限(1点)・リウマトイド因子および抗CCP抗体陰性(2点)・末梢関節痛の欠如(1点)のスコア4点以上でPMRに分類する基準(感度68%・特異度78%)であり、この基準は診断基準ではなく分類基準であることを確認した。閲覧 2026-08-10
  3. 3.Kevzara 200 mg solution for injection in pre-filled pen - Summary of Product Characteristics (SmPC)(electronic medicines compendium(Sanofi)・2026)EUでは関節リウマチに加え、ステロイド不応・減量中再燃のリウマチ性多発筋痛症にも適応拡大していること、禁忌は過敏症と活動性の重篤な感染症であることを確認した。閲覧 2026-08-03
  4. 4.ケブザラ皮下注 添付文書(医療用医薬品情報)(KEGG MEDICUS・2026)日本の承認適応は関節リウマチのみで、2026年8月時点でリウマチ性多発筋痛症は未承認であることを確認した。閲覧 2026-08-03