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Disease Atlas · 免疫・膠原病 · 疾患

悪性関節リウマチ

Malignant rheumatoid arthritis

別名
MRA
臓器系
免疫・膠原病
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 L-68:関節リウマチ内科学 R-04:関節リウマチの診断と治療
上位概念
関節リウマチ
鑑別疾患
アミロイドーシス結節性多発動脈炎
続発疾患
間質性肺疾患
関連疾患
血管炎
治療薬
プレドニゾロンメトトレキサートシクロホスファミドアザチオプリンリツキシマブアダリムマブエタネルセプトインフリキシマブ
症状
多発性単神経炎末梢神経障害皮膚潰瘍皮下結節上強膜炎発熱体重減少
検査値
リウマトイド因子CH50補体C4

🧠 全体像:悪性関節リウマチ(MRA)は、関節リウマチという土台の上に血管炎という新しい病気が乗る病態である1。関節の破壊が進んで身体障害が重くなっただけでは「悪性」とは呼ばない——関節外に血管炎による臓器障害が出て初めて悪性関節リウマチになる、という一点が名前の由来であり診断の軸である。血管炎の型によって予後が大きく分かれ、全身性動脈炎型は内臓を侵して予後不良、末梢動脈炎型は四肢・皮膚にとどまり予後は良好という対比を最初に覚える。

位置づけ

⚠️ 「悪性関節リウマチ」は日本独自の疾患概念・名(告示番号46)である。 国際的にはおおむね「rheumatoid vasculitis()」に相当する病態を指すが、厚労省のはACR/による関節リウマチの分類基準2010年を満たすことを前提に、血管炎を示す・組織所見の組み合わせで「Definite」を定義するという、国内固有の操作的な枠組みを持つ1。

の(国内のの)が挙げる除外項目「(特に、悪性関節リウマチ)」は、この疾患を指している——・多発関節痛・血管炎様の臓器症状という像が、Still病と紛らわしいために名指しで除外される。

病態

診断される年齢のピークは60歳代で、男女比は1:2である1。

flowchart TD
    A["既存の関節リウマチ"] --> B["IgGクラスの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rheumatoid factor, RF'>リウマトイド因子</span>が高率に出現し自己凝集する"]
    B --> C["補体消費の高い免疫複合体が形成される"]
    C --> D["血管壁への沈着・血管炎"]
    D --> E{"血管炎の型"}
    E -->|"全身性動脈炎型"| F["内臓を系統的に侵す<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyarteritis nodosa, PAN'>結節性多発動脈炎</span>に類似<br>生命予後不良"]
    E -->|"末梢動脈炎型"| G["内膜の線維性増殖<br>四肢末梢・皮膚にとどまる<br>生命予後は良好"]

💡 -DR4(-DRB1*0401)との関連は、関節リウマチそのものより悪性関節リウマチのほうが強い1。⭐ は12%にみられるが、遺伝性疾患と呼べるほどの強い遺伝性は無い1。

()を合併すると生命予後は不良である1。

臨床像

型 主な症状 血清所見
全身性動脈炎型 発熱(38℃以上)・体重減少を伴い、皮下結節・紫斑・筋痛・筋力低下・・・(または多発)・消化管出血・などが急速に出現する 高値・血清補体価低値(CH50・C4など)・免疫複合体高値
末梢動脈炎型 ・梗塞、または四肢先端の壊死・壊疽が主症状 全身性動脈炎型ほど顕著ではない

英語圏の総説では、状65〜88%・神経症状35〜63%・心症状33%が高頻度で、体重減少・発熱などの全身症状を70%に伴うと報告されている2。

⭐ 生物学的製剤の普及とともに頻度が下がっている。 は1988〜2000年の人口100万人あたり9.1件から2001〜2010年には3.9件へ低下しており、関節リウマチそのものの重症度の改善と喫煙率の低下がおもな理由と考えられている2。💡 リスクを高める因子は、関節リウマチ診断時の喫煙・の長さ・重症の関節リウマチ・血清反応陽性・男性であることである2。

診断基準(国内・指定難病46)

ACR/による関節リウマチの分類基準2010年を満たすことが前提になる。そのうえで次のいずれかを満たせば悪性関節リウマチと診断する1。

(1〜10) 内容
(1) 多発または(知覚障害・運動障害いずれも可)
(2) 又は梗塞又は壊疽(感染・外傷によるものは除く)
(3) 皮下結節(骨突起部・伸側表面・関節近傍)
(4) 又は(眼科的に確認)
(5) 又は
(6) 心筋炎
(7) 又は
(8) 臓器梗塞(血管炎による虚血・壊死に起因する腸管・心筋・肺などの梗塞)
(9) 高値(2回以上の検査でRF 960 IU/mL以上)
(10) 血清価(CH50・C4など)又は血中免疫複合体陽性(2回以上)
区分 判定
Definite 1 (1)〜(10)のうち3項目以上
Definite 2 (1)〜(10)のうち1項目以上+組織所見(皮膚・筋・神経などの生検で小ないし中動脈の・ないし)

⚠️ 英語圏では、これに相当する標準化されたがまだ整っていない。 2023年の総説は、既存の1984年Scott and Bacon基準が血管炎の組織学的確証を必須としない一方で、その後に蓄積した知見(皮膚・神経・心の高頻度な臓器病変やリスク因子)を反映した更新版の基準が無いと指摘している2。

鑑別診断

  • 感染症、治療薬剤の副作用(薬剤誘発性・薬剤誘発性血管炎など)
  • 続発性——胃・直腸・皮膚・腎・肝などの生検でを確認する
  • 関節リウマチ以外の(・強皮症・など)との重複症候群
  • シェーグレン症候群——関節リウマチに最も合併しやすいで、悪性関節リウマチにも約10%合併する
  • フェルティ症候群——・脾腫・易感染性を示す
  • ——全身性動脈炎型の臨床像・血管病理が類似する。既存のRAを伴わない点が鑑別の軸になる

(以上1)

治療

flowchart TD
    A["悪性関節リウマチと診断"] --> B{"血管炎の分布"}
    B -->|"全身症状を伴う<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serositis'>漿膜炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='episcleritis'>上強膜炎</span>・発熱・体重減少など)"| C["グルココルチコイド+<br>静注<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclophosphamide'>シクロホスファミド</span>パルスで寛解導入"]
    B -->|"皮膚に限局"| D["グルココルチコイド+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='azathioprine'>アザチオプリン</span>で寛解導入"]
    C --> E{"治療抵抗性・再発性か"}
    D --> E
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumour necrosis factor'>TNF</span>阻害薬またはリツキシマブを考慮<br>(リツキシマブは国内保険適用外)"]

⚠️ リツキシマブは2021年時点で国内の保険適用外であることに留意する1。ほかメトトレキサートをはじめとする抗リウマチ薬・分子標的型合成抗リウマチ薬・も用いられ、治療法の選択は臨床病態により異なる1。

重症度分類と予後

医療費助成の対象は、①腎(ヒートマップの赤当・)・肺(重症度III度以上・肺胞出血・)・心( 2度以上の心不全・)・眼(0.3未満)・耳・腸管(腸管梗塞・消化管出血)・皮膚軟部組織(四肢の梗塞・潰瘍・壊疽やそれによる欠損・切断)・神経(modified Rankin Scale 3以上、または筋力3以下・2肢以上の)・その他臓器のいずれかの非可逆的障害、②血管炎治療に伴う合併症(感染症・・・消化性潰瘍・糖尿病・・緑内障・精神症状)で入院治療を要する状態、のいずれかを満たす重症例である1。

⚠️ 積極的な治療をしても死亡率は下がりきっていない。 2002年の本邦では転帰が軽快21%・不変26%・悪化31%・死亡14%・不明その他8%で、死因は呼吸不全が最多、感染症合併・心不全・腎不全が続く1。2017年のKishoreらの報告でも、生物学的製剤を含む積極的な治療アプローチにもかかわらず、の死亡率は以前と同様であるとされている1。

まとめ

  • 悪性関節リウマチ(MRA)は既存の関節リウマチに血管炎などの関節外症状が加わった、日本の(告示番号46)。による機能障害だけでは該当しない。
  • 血管炎は全身性動脈炎型(内臓を侵し予後不良)と末梢動脈炎型(四肢・皮膚にとどまり予後良好)に分かれる。
  • 診断はACR/関節リウマチ基準2010を満たしたうえで、10項目中3項目以上(Definite 1)、または1項目以上+。
  • 鑑別は・続発性・薬剤性血管炎・重複症候群・シェーグレン症候群・フェルティ症候群。
  • 治療は全身症状を伴えばグルココルチコイド+、皮膚限局ならグルココルチコイド+、治療抵抗性では阻害薬・リツキシマブ(保険適用外)を考慮。
  • 生物学的製剤の普及では下がったが、⚠️ 死亡率は依然として高いままである。

出典

  1. 1.46 悪性関節リウマチ(指定難病の概要、診断基準等)(厚生労働省・2021)既存の関節リウマチ(RA)に血管炎(リウマトイド血管炎)をはじめとする関節外症状を認め、難治性又は重症な臨床病態を伴う場合を悪性関節リウマチ(MRA、指定難病46)と呼び、関節病変の進行による高度な関節機能障害だけではMRAと呼ばないこと、診断される年齢のピークが60歳代で男女比1:2であること、血管炎が結節性多発動脈炎に似て内臓を系統的に侵し生命予後不良な全身性動脈炎型と、四肢末梢・皮膚を侵し生命予後は良好な内膜の線維性増殖を呈する末梢動脈炎型の2型に分かれること、間質性肺炎を合併すると生命予後不良であること、MRA患者の関節リウマチの家族内発症が12%にみられること、HLA-DR4(HLA-DRB1*0401)との関連が関節リウマチよりMRAで強いこと、IgGクラスのリウマトイド因子が高率にみられ自己凝集し補体消費の高い免疫複合体を形成して血管炎の発症に関与するとみなされていること、全身血管炎型では多発関節痛(炎)に発熱(38℃以上)・体重減少を伴って皮下結節・紫斑・筋痛・筋力低下・間質性肺炎・胸膜炎・多発神経炎または多発性単神経炎・消化管出血・上強膜炎などがかなり急速に出現しリウマトイド因子高値・血清補体価低値・免疫複合体高値を示すこと、末梢動脈炎型では皮膚の潰瘍・梗塞または四肢先端の壊死・壊疽を主症状とすること、診断基準が「ACR/EULARによる関節リウマチの分類基準2010年を満たし」たうえで、臨床症状10項目(多発神経炎または多発性単神経炎、皮膚潰瘍又は梗塞又は指趾壊疽、皮下結節、上強膜炎又は虹彩炎、滲出性胸膜炎又は心外膜炎、心筋炎、間質性肺炎又は肺線維症、臓器梗塞、リウマトイド因子高値〈2回以上の検査でRF960 IU/mL以上〉、血清低補体価又は血中免疫複合体陽性)のうち3項目以上を満たすDefinite1、または1項目以上と組織所見(皮膚・筋・神経・その他の臓器の生検で小ないし中動脈の壊死性血管炎・肉芽腫性血管炎ないし閉塞性動脈内膜炎)を満たすDefinite2のいずれかを対象とすること、鑑別診断として感染症・続発性アミロイドーシス・治療薬剤の副作用(薬剤誘発性間質性肺炎・薬剤誘発性血管炎など)、関節リウマチ以外の膠原病(全身性エリテマトーデス・強皮症・多発性筋炎など)との重複症候群、シェーグレン症候群(MRAに約10%合併)、フェルティ症候群(顆粒球減少・脾腫・易感染性を示す)が挙げられていること、治療がグルココルチコイド・メトトレキサートをはじめとする従来型抗リウマチ薬・生物学的抗リウマチ薬・分子標的型合成抗リウマチ薬・シクロホスファミドやアザチオプリンなどの免疫抑制薬・血漿交換療法からなり、全身症状を伴うリウマトイド血管炎の寛解導入治療ではグルココルチコイド+静注シクロホスファミドパルスを、皮膚に限局した血管炎ではグルココルチコイド+アザチオプリンを用い、治療抵抗性・再発性の血管炎ではTNF阻害薬またはリツキシマブ(2021年現在保険適用外)の使用を考慮すること、重症度分類が腎・肺・心臓・眼・耳・腸管・皮膚軟部組織・神経・その他臓器の非可逆的臓器障害、または血管炎の治療に伴う合併症(感染症・圧迫骨折・骨壊死・消化性潰瘍・糖尿病・白内障・緑内障・精神症状)で入院治療を要する場合のいずれかを満たせば重症とし医療費助成の対象とすること、2002年の本邦疫学調査で転帰が軽快21%・不変26%・悪化31%・死亡14%・不明その他8%であり死因は呼吸不全が最多で感染症合併・心不全・腎不全が続くこと、2017年のKishoreらの報告では積極的治療にもかかわらずリウマトイド血管炎の死亡率が以前と同様であるとされること、令和元年度の医療受給者証保持者数が5,246人であることを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Rheumatoid vasculitis in 2023: changes and challenges since the biologics era(Autoimmunity Reviews・2023)リウマトイド血管炎の診断基準の更新を目的に60件の文献を検討した総説で、皮膚症状65〜88%・神経症状35〜63%・心症状33%が高頻度でみられ全身症状(体重減少・発熱など)を70%に伴うこと、生物学的製剤の承認後にリウマトイド血管炎の発生率が低下し1988〜2000年の人口100万人あたり9.1件(95%CI 6.8〜12.0)から2001〜2010年には3.9件(95%CI 2.3〜6.2)まで下がったこと、これはおそらく関節リウマチの重症度の顕著な改善と喫煙率の低下によること、組織所見は小血管炎から中型血管の壊死性動脈炎まで幅があるが1984年のScott and Bacon診断基準は血管炎の確証を必須としていないこと、リウマトイド血管炎のリスクを高める因子として関節リウマチ診断時の喫煙・罹病期間の長さ・重症の関節リウマチ・血清反応陽性・男性であること(年齢を問わず)が挙げられていること、現行の診断基準はこれらの進歩した知見を反映しておらず更新された妥当性のある基準が欠けていると結論していることを、Europe PMCで取得した抄録で確認した。全文は購読制(Elsevier)で未取得。閲覧 2026-09-07