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Symptoms · Published

末梢神経障害

Peripheral neuropathy

別名
末梢神経炎ニューロパチー
臓器系
神経全身
科目
NeurologyHistology
トピック
神経内科 G1-36:多発ニューロパチーの症候と主な原因組織学 5.4:神経組織:神経線維
関連疾患
Fabry病Waldenströmマクログロブリン血症

🧠 全体像:末梢神経障害は単一の疾患ではなく、末梢神経のどの太さの線維が・どんな分布で・どんな機序(か脱髄か)で侵されているかによって、原因ももまるで違う病態の総称である。同じ「」でも、(振動覚・)が主に侵されるか、(痛覚・温度覚・自律神経)が主に侵されるかで症状の性質が変わり、左右対称のか非対称のかで原因検索の優先順位が逆転する。全体として最も頻度の高い原因は糖尿病だが、のパターンを見た瞬間は、頻度をして血管炎を最優先で疑う——この一点だけは別格である。

定義と用語の整理

末梢神経障害は、脳・脊髄ではなく神経根から末梢の軸索・髄鞘までの末梢神経そのものが障害される病態の総称である。患者の「る」「ピリピリする」「痛い」という訴えは、それぞれ(感覚の低下・消失)・(刺激なく生じるという)・(痛みという症状の性質と治療)という個別の症状ノートが扱う。このノートはそれらを生む末梢神経障害そのものの分類軸と原因のを扱い、個々の感覚の質は掘り下げない。

病態生理:3つの軸で分類する

原因は膨大だが、次の3軸を組み合わせると検索の優先順位が立てやすい。

軸1:線維の太さ

(Aα・Aβ) (Aδ・C)
担う 振動覚・ 痛覚・温度覚
障害時の所見 、筋力低下1 、自律神経症状(・発汗異常・1
異常を検出できる 正常なことが多い——伝導が遅くでは捉えられない1

⚠️ だけが侵された患者ではが正常に出る。 の脱落を見る検査で障害を否定してはならず、疑うなら皮膚生検()など別の検査に進む1

軸2:分布

分布 特徴 示唆する機序
左右対称、遠位優位、最も長い神経(下肢)から始まる 代謝性・・栄養性・遺伝性
非対称、解剖学的に離れた神経が同時または段階的に侵される の虚血——血管炎を最優先で疑う
神経根型 に沿う、を伴う などの圧迫性病変

のパターンを見たら、頻度に関わらず血管炎を最優先で疑う。 対称性のとは緊急性も検索の順序もまるで違う(機序・評価の詳細はを参照)。

軸3:軸索障害か脱髄か

での分類は原因群をほぼ決める。

脱髄
所見 振幅低下が主体、は比較的保たれる 低下・が主体、振幅は保たれやすい
代表原因 糖尿病、アルコール、 、遺伝性(1型など)

原因:頻度と機序で群分けする

糖尿病は全体として最も頻度の高いの原因である2・対称性の感覚優位型として現れることが最多だが、稀にのような型を来すこともあり、その場合も血管炎の合併を除外する。

分類 代表例
代謝・内分泌 糖尿病(最多)、)、2
栄養・中毒 アルコール、ビタミンB12欠乏2過剰による医原性が代表)
薬剤性(化学療法) シスプラチン)、)、3
傍蛋白血症 (抗MAG抗体によるIgM関連
遺伝性 など。緩徐進行、、家族歴
免疫・血管性 を来す血管炎

💡 は微小管への作用が逆方向でも、同じ「感覚優位の末梢神経障害」を起こす。 は微小管を安定化してを妨げ、は逆に微小管の重合そのものを妨げる——機序は正反対だが、どちらもを障害する3のDNAに白金を作り細胞そのものを傷害するため、後もしばらく症状が進行・遺残しうる。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["末梢神経障害を疑う症候"] --> B{"分布は左右対称・遠位優位か"}
    B -->|"非対称・段階的"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mononeuritis multiplex'>多発単神経炎</span>パターン"]
    C --> D["血管炎を最優先で検索"]
    B -->|"対称・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gloves and stockings pattern'>手袋靴下型</span>"| E{"急性〜亜急性か、慢性か"}
    E -->|"急性〜亜急性"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Guillain-Barré syndrome'>ギラン・バレー症候群</span>など<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune-mediated'>免疫介在性</span>を優先評価"]
    E -->|"慢性"| G["血糖・HbA1c、腎機能、甲状腺機能、<br>B12、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serum protein electrophoresis'>血清蛋白電気泳動</span>を検索"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerve conduction study (NCS)'>神経伝導検査</span>で軸索性か脱髄性かを分類"]
    H --> I{"原因が特定できないか、<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-length-dependent'>非長さ依存性</span>か"}
    I -->|"はい"| J["傍蛋白血症・遺伝性・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='small fiber'>小径線維</span>障害を検討"]

対応の考え方

末梢神経障害そのものへの介入は原因治療が中心で、糖尿病なら、薬剤性なら原因薬の中止・減量、なら補充というように原因ごとに異なる。痛みへの対症療法に譲る。

まとめ

  • 末梢神経障害は「か」「分布(か)」「か脱髄か」の3軸で分類すると原因検索が絞れる。
  • 全体として最も多い原因は糖尿病。ほかにアルコール・ビタミンB12欠乏・・化学療法()・症・傍蛋白血症(など)・遺伝性()が代表的である。
  • のパターンをみたら、頻度によらず血管炎を最優先で疑う。
  • 個々の)の評価は姉妹ノートに譲り、このノートは末梢神経障害そのものの分類軸を扱う。

出典

  1. 1.Neuropathy(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2022)末梢神経障害は軸索性・脱髄性・混合型にさらに分類できること、最も頻度の高い多発ニューロパチーは糖尿病性感覚運動性多発ニューロパチーであること、原因として糖尿病・アルコール・ビタミン欠乏(B1・B6・B12・E)・化学療法・尿毒症・甲状腺機能低下症・傍蛋白血症(MGUS・多発性骨髄腫)・遺伝性疾患を挙げていることを確認した(Etiology節、Pearls and Other Issues節)。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Small Fiber Neuropathy(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2022)小径線維(Aδ・C線維)は痛覚・温度覚・掻痒感と自律神経(体温調節・心血管・消化管・発汗・泌尿生殖器)を伝えること、大径線維(Aα・Aβ)障害の所見は筋力低下・固有感覚低下・深部腱反射消失であること、小径線維は伝導が遅く神経伝導検査で捉えられないため単独の小径線維障害では神経伝導検査・針筋電図が正常になること、代表的な原因として糖尿病・ビタミンB12欠乏(代謝性)、アルコール・化学療法(中毒性)、Fabry病・ナトリウムチャネル変異(遺伝性)を挙げていることを確認した(Introduction節、Etiology節)。閲覧 2026-08-11
  3. 3.Long-Term Effects, Pathophysiological Mechanisms, and Risk Factors of Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathies: A Comprehensive Literature Review(Frontiers in Pharmacology・2017)化学療法誘発性末梢神経障害の主な原因薬剤がプラチナ製剤・タキサン系・ビンカアルカロイド系・プロテアソーム阻害薬/血管新生阻害薬であること、プラチナ製剤はDNAへの白金付加体形成、タキサン系は微小管の安定化による脱重合の妨害、ビンカアルカロイド系は逆に微小管重合の阻害という機序であること、タキサン系の発生頻度が薬剤別データで約80〜97%と特に高いことをそれぞれの薬剤クラスの節(Platinum-Based Anticancer Drugs節、Taxanes節、Vinca Alkaloids節)で確認した。閲覧 2026-08-11