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Disease Atlas · 神経 · 疾患

慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー

Chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy

別名
CIDP慢性炎症性脱髄性多発根神経炎Chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy
臓器系
神経免疫・膠原病
科目
NeurologyNeurology and Neurosurgery
トピック
神経内科 G1-36:多発ニューロパチーの症候と主な原因神経内科 06:感覚系の診察
鑑別疾患
Charcot-Marie-Tooth病POEMS症候群ギラン・バレー症候群家族性アミロイドポリニューロパチー感覚性ニューロノパチー多巣性運動ニューロパチー糖尿病性ニューロパチー糖尿病性筋萎縮
治療薬
免疫グロブリン静注療法プレドニゾロンエフガルチギモド
症状
筋力低下腱反射消失末梢神経障害
検査値
髄液検査神経伝導検査
適応薬
エフガルチギモド

🧠 全体像:は、末梢神経の髄鞘に対する免疫反応が慢性に続く病態で、⭐ 末梢神経障害の中では珍しく「治療できる」側に立つ。だから見つけることに意味がある。と症候はよく似ており、分かれ目は主に経過である——8週間以上かけて進行するか、再発を繰り返すならこちらを考える1。⚠️ ただし最大13%は4週以内に急速進行する急性発症CIDPとして始まり、急性期に両者を分ける特異的な検査は無い2。⚠️ そして治療の反応も正反対で、副腎皮質ステロイドはでは回復を早めないのに、本症では第一選択のひとつになる23。

何を見て疑うか

⭐ 「近位も遠位も、左右対称に弱い」が入口である。 (糖尿病性など)は遠位から始まりに広がるが、本症は根に近い側も同時に侵されるため、を上がれない・椅子から立てないといった近位筋の訴えが遠位のと同居する。

項目 典型的CIDPの所見
筋力低下 左右対称・運動優位。近位と遠位の両方1
感覚 痛覚・温度覚より振動覚とが強く侵される1
腱反射 しばしば消失()1
脳神経 10〜20%に障害。・など1
経過 8週間以上かけて進行、または再発を繰り返す1

💡 振動覚・が先に落ちるのは、が主役だからである。 脱髄は髄鞘を持つ線維に起きるので、・薄髄のが担う痛覚・温度覚は相対的に保たれる。末梢神経障害を見たとき、どの太さの線維が侵されているかで機序の当たりがつく。

診断基準——EAN/PNS 2021の臨床基準

EAN/PNS 2021のは、典型的CIDPを次の3項目すべてを満たすものと定義する2。

  • 進行性または再発性の、左右対称な、上下肢の近位かつ遠位の筋力低下、および2肢以上の感覚障害
  • 少なくとも8週間かけて進行すること
  • 全四肢で腱反射の消失または減弱

⭐ 「近位かつ遠位」「2肢以上の感覚障害」「全四肢の腱反射」という但し書きを飛ばさない。 遠位だけ・片側だけ・感覚だけなら、それは典型的CIDPではなく下のバリアントのどれかであり、必要なの本数も変わる。

バリアント 臨床像(他は典型的CIDPと同じ)2
下肢優位の遠位の感覚障害と筋力低下
多巣性 多巣性・通常は非対称・上肢優位で、2肢以上
1肢のみの感覚障害と筋力低下
運動型 感覚障害を伴わない運動症状・徴候
感覚型 運動障害を伴わない・徴候

💡 バリアントでは、罹患していない肢の腱反射は正常でよい2。「腱反射が残っている=CIDPではない」と切らない。

ギラン・バレー症候群との分かれ目

flowchart TD
    A["左右対称の筋力低下・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='loss of deep tendon reflexes'>腱反射消失</span><br>髄液の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='albuminocytologic dissociation'>蛋白細胞解離</span>"] --> B{"進行の期間はどれくらいか"}
    B -->|"4週以内に極期"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Guillain-Barré syndrome'>ギラン・バレー症候群</span>"]
    B -->|"8週以上かけて進行、または再発性"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy (CIDP)'>慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー</span>"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-dose intravenous immunoglobulin'>免疫グロブリン大量静注</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='therapeutic plasma exchange, TPE'>血漿交換</span><br>副腎皮質ステロイド単独は無効"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-dose intravenous immunoglobulin'>免疫グロブリン大量静注</span>または副腎皮質ステロイド<br>無効なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='therapeutic plasma exchange, TPE'>血漿交換</span>"]
    D --> G["再発・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='relapse'>再燃</span>に備えて維持療法を組む"]

⭐ 8週間という数字が診断そのものを定義している。 StatPearlsは「診断の確定には症状が少なくとも8週間持続することを要し、これが急速に進行するAIDP(の)との区別になる」と明記する1。

⚠️ ただし境目は臨床的に難しい。急性発症CIDP(A-CIDP)という入口がある。 典型的CIDPの最大13%は4週以内に急速進行する形で発症し、当初はと診断されうる2。逆に、と初期診断された患者の5%が後にA-CIDPへ分類し直されている2。

A-CIDPを疑う手がかりは、発症8週を超えて悪化を続けるか、初期改善後に3回以上再発することである2。加えてA-CIDPの患者は、を保てることが多く、・・を伴いにくく、感覚徴候を示しやすい2。

⚠️ これらは「傾向」であって決め手ではない。 ガイドラインは「急性期にとA-CIDPを区別できる特異的なも検査も無い」と明記している2。⭐ 急性期に無理に確定させず、8週の時点との回数で判定し直す。 治療の初手(または)は両者で共通なので、急いで分けなくても初期対応は誤らない。

検査

髄液

(蛋白は上がるのに細胞は増えない)が典型で、は10/mm³未満にとどまる1。⚠️ 白血球が10/mm³を超えたら別の診断を疑う(・・の浸潤など)1。

⚠️ 髄液蛋白が上がる頻度は、資料によって大きく違う。 StatPearlsは85〜90%とするが1、EAN/PNS 2021は(42のから9件を抽出)に基づき感度42〜77%・特異度は不明とし、(50歳未満で0.5 g/L以上、60歳超で0.6 g/L超)を用いたLiberatoreらの検討では感度68%と記している2。⭐ どちらを採るにせよ、「が正常だからCIDPではない」とは言えない。 同ガイドラインはの独立した診断的価値は未証明であり、電気診断が確証的でないのにだけが高い症例ではの危険があると明記している2。髄液は支持所見(PICO 4)であって、診断を単独で決める検査ではない。

神経伝導検査

脱髄を示す所見をで捉える。⭐ EAN/PNS 2021のは7項目あり、いずれか1つを満たせば「脱髄を強く示唆する」。同じ所見が1神経にしか無ければ「弱く示唆する」に落ちる——2段構えである2。

項目 「強く示唆する」基準2
(a) の延長 2神経で基準値上限比50%以上(による障害は除く)
(b) の低下 2神経で下限比30%以上
(c) F波の延長 2神経で基準値上限比20%以上(遠位CMAP陰性ピーク振幅が下限の80%未満なら50%以上)
(d) F波の消失 2神経(当該神経の遠位CMAP振幅が下限の20%以上のとき)+他の1神経以上に他の脱髄所見1つ以上
(e) 運動 近位/遠位のCMAP陰性ピーク振幅が30%以上低下(は除く)かつ遠位CMAP振幅が下限の20%以上。これを2神経で、または1神経+他の1神経以上に他の脱髄所見1つ以上(F波消失は不可)
(f) 異常な 近位・遠位のCMAP陰性ピークが30%を超えて延長(では100%以上)を2神経以上で
(g) 遠位CMAPの延長 1神経以上+他の1神経以上に他の脱髄所見1つ以上

⚠️ 不等号を取り違えない。 と・・F波は「以上」(≥)だが、だけは「30%を超えて」(>)である2。

⚠️ 項目を満たすだけでは足りない。 典型的CIDPの臨床診断を確認するには、少なくとも2本のがこの基準を満たす異常を示す必要がある2。多巣性CIDPでは2肢以上にまたがる計2神経、CIDPでは1肢内の2神経が要件で、1神経しか満たさなければ診断確実性の上限は「possible」にとどまる2。

💡 の低下とは、では起こらない。 軸索が減るだけなら振幅(CMAP)が下がって速度は保たれる。⭐ 「遅い・ブロックする」は髄鞘の問題を、「小さい」は軸索の問題を指す。

治療——3つとも効くことに意味がある

⭐ ・副腎皮質ステロイド・のいずれもが有効な治療である1。EAN/PNSガイドラインは、典型的CIDPとCIDPバリアントの初期治療としてまたは副腎皮質ステロイドを強く推奨し、この2つが無効な場合にを強く推奨する2。

治療 位置づけ 目安
初期治療(強い推奨)2 導入2 g/kgを2〜5日で1
副腎皮質ステロイド(など) 初期治療(強い推奨)2 の通常導入量60〜100 mg/日1
上記2つが無効なとき(強い推奨)2 2〜4週で5〜10回1

⚠️ 運動型CIDPではを第一選択として考慮する(Good Practice Point)2。維持療法には・・副腎皮質ステロイドが推奨され、が高くなる場合は併用または・免疫調節薬の追加を考慮する2。の常用量は(または)60 mg相当(なら48 mg)で、6〜8か月かけてする2。有効性の確立した3治療に抵抗性の場合には、・・リツキシマブを考慮してよいとされる2。

FcRn阻害薬——2021年ガイドライン以降に加わった選択肢

⭐ の皮下注製剤は、米国(VYVGART HYTRULO)4・(Vyvgart 1,000 mg 皮下注)5・日本(ヒフデュラ配合皮下注、2024年12月の効能変更で追加)6のいずれでも成人CIDPの適応をもつ。 💡 同じ「皮下注」でも製剤の建て付けが国で違う——米国のVYVGART HYTRULOと日本のヒフデュラは との配合剤だが、のVyvgart 1,000 mg 皮下注はが のみで、rHuPH20は添加剤として含まれる5。 ⚠️ 適応があるのは3極とも皮下注製剤だけで、静注製剤(VYVGART/ウィフガート)にCIDPの適応は無い56。は適応の書き方が最も狭く、「副腎皮質ステロイドまたは免疫グロブリンによる前治療の後の、進行性または再発性の活動性CIDPに対する」と限定している5。()を阻害してIgGのを断ち、病原性IgGを含む血中IgGを下げる薬である。用法は週1回の皮下注(プレフィルドシリンジなら 1,000 mg/10,000単位を約20〜30秒で)で、静注してはならず、希釈してもならない4。

⚠️ 試験の設計を読まずに「IVIgより効く」と読まない。 根拠となったStudy 4(NCT04281472)は反応例を選んでからする中止試験である4。

  • 既存治療を中止して最大12週の run-in で活動性を確認し、で322例中69%(221例)が連続2回の来院で改善した。11%(36例)は効果不十分、6%(19例)は悪化のため次段階へ進まなかった4。
  • その反応例だけを111例・110例にした期(Stage B)で、臨床的悪化(aINCATスコアの1点以上の上昇)までの期間が0.394(95%CI 0.253〜0.614、p<0.0001)と有意に延長した4。

⚠️ したがってこの結果が支えるのは「反応した患者で治療を続けると悪化までの期間が延びる」ことであって、や副腎皮質ステロイドとの直接比較ではない。組入れもEAN/PNS 2021ではなくEFNS/PNS 2010基準でのdefinite/probable CIDPである4。⚠️ 禁忌は またはへの重篤な過敏症で、は感染症・過敏症反応・注射関連反応(注射部位反応は15%以上と高頻度)。IgGを一過性に下げるため、治療サイクル開始前にの要否を評価し、治療中の生ワクチン接種は推奨されない4。

ギラン・バレー症候群でステロイドが効かないこと

⭐ この対比は「覚え方」ではなく、実測されたものである。 Cochraneレビューは6件・587例で、4週後の障害度の変化が副腎皮質ステロイド群と対照群で有意差を示さず、1年後の死亡またはにも差が無かったと報告し、ではむしろ回復が遅い(非常に低い質のエビデンス)としている3。糖尿病の発生はステロイド群で有意に多かった3。

💡 同じ脱髄でも、一過性の免疫応答()と持続する免疫応答(本症)では、長期に免疫を抑える薬の意味が違う。 前者では極期を過ぎれば自然に修復へ向かうため、副作用だけが残る。

分類——典型とバリアント

EAN/PNS 2021は、旧来の「atypical CIDP」という呼称を「CIDPバリアント」へ置き換え、多巣性・・・運動型・感覚型を独立した病型として位置づけた2。診断確実性の段階も、probableとdefiniteの診断精度に有意差が無かったことから、3段階からCIDPとpossible CIDPの2段階へ減らされた2。

自己免疫性ノドパチー——CIDPから切り出された別疾患

⭐ ここが2021年改訂のもうひとつの要点である。 結節・傍結節のに対する抗体をもつ一群を、EAN/PNS 2021は「」と呼び、CIDPバリアントではなく「CIDPとは別の疾患」と位置づけた2。対象となる抗原はコンタクチン1(CNTN1)・ニューロファシン155(NF155)・contactin-associated protein 1(Caspr1)・ニューロファシンの(NF140/186)である2。

💡 切り出した理由が治療に直結している。 これらの患者は独自の臨床像をもち、顕在的な炎症もマクロファージ介在性脱髄も欠き、CIDPの治療とくにへの反応が乏しい。一方でリツキシマブが有効でありうる2。⚠️ 「CIDPなのにIVIgが効かない」を治療抵抗性の一言で片づけると、効く薬に届かない。

抗体 報告されている臨床像2
抗CNTN1 急性・、運動症状または失調。IVIgへの反応が無いか乏しい
抗NF155 発症年齢が若い、亜急性〜慢性の経過、・失調・振戦。IVIgへの反応が無いか乏しい
抗Caspr1 急性/亜急性、しばしば失調・・を伴う。IVIgへの反応が乏しい

⚠️ ガイドラインはGood Practice Pointとして、CIDPを疑うすべての患者で結節・傍結節抗体の検査を考慮し、とくに標準治療に抵抗性であるなど特定の特徴をもつ症例では検査を勧めている2。検査は(ヒトNF155・CNTN1・NF186/NF140・Caspr1を発現させたもの)で行うよう助言されており、どこでもできる検査ではない2。

鑑別

疾患 決め手
4週以内に極期。副腎皮質ステロイドは無効3。⚠️ ただし急性発症CIDPとは急性期に分けられない(上記)2
家族歴、のような長年の足の変形、小児期からの緩徐一方向の経過。免疫療法に反応しない1
純粋運動性・非対称。感覚は保たれる1
、、、皮膚変化を伴う1
感染症に伴うもの ・・肝炎1。⚠️ 髄液で細胞が増えていたらまずこちらを考える

⚠️ (とくにCMT1)はが一様に遅いだけで、やを伴わない。 遺伝性を免疫性と取り違えると、効かない免疫療法を長く続けることになる。

疫学と予後

は10万人あたり0.3、は10万人あたり0.8〜8.9で、男女比は2対1、平均発症年齢は60歳だが小児にも生じる1。

⭐ 標準治療のいずれか単剤に初期反応する患者は約3分の2で、約40%が治癒または寛解に至る1。⚠️ 一方で54%は経過中のいずれかの時点で高度の障害を経験する1。「治療できる」ことと「軽い」ことは違う。

まとめ

  • 末梢神経の髄鞘に対する慢性の免疫反応。⭐ 治療できるであり、見つけることに意味がある。
  • ⭐ との分かれ目は経過の一点——8週間以上かけて進行するか再発性なら本症を考える。⚠️ ただし典型的CIDPの最大13%は4週以内に急速進行するA-CIDPとして発症し、急性期に両者を分ける検査は無い。
  • EAN/PNS 2021の臨床基準は3項目——左右対称で近位かつ遠位の筋力低下+2肢以上の感覚障害、8週以上の進行、全四肢の/減弱。1つでも外れればバリアント(・多巣性・・運動型・感覚型)を考える。
  • 髄液は(細胞は10/mm³未満)。10/mm³を超えたら別の診断を疑う。 ⚠️ 蛋白上昇の頻度は資料で割れる(StatPearls 85〜90%、EAN/PNS 2021は感度42〜77%)——正常でも否定できない支持所見である。
  • は7項目のうち1つで「脱髄を強く示唆」、1神経だけなら「弱く示唆」。加えて2本以上のが基準を満たす必要がある。「遅い・ブロックする」が脱髄、「小さい」が軸索。
  • 治療はまたは副腎皮質ステロイドが初期治療、無効なら。⚠️ でステロイドが回復を早めないのと対照的である。 抵抗例には・・リツキシマブ、阻害薬の皮下注(米国・・日本のいずれでも成人CIDPに承認)が挙がる。
  • ⭐ 抗NF155・抗CNTN1・抗Caspr1などをもつ一群は「自己免疫性」としてCIDPから切り出された。 IVIgが効きにくくリツキシマブが効きうるので、治療抵抗例では抗体を測る。
  • 単剤への初期反応は約3分の2、寛解は約40%。一方で54%は経過中に高度の障害を経験する。

出典

  1. 1.Chronic Inflammatory Demyelinating Polyradiculoneuropathy(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)NCBI Bookshelfで確認した(2024年3月4日最終更新、Gogia B・Rocha Cabrero F・Khan Suheb MZ・Lui F・Rai PK)。診断の確定に症状が少なくとも8週間持続することを要し、これが急速に進行するAIDP(ギラン・バレー症候群の脱髄型)との区別になること、男女比が2対1で男性に多いこと、粗発生率が10万人あたり0.3、有病率が10万人あたり0.8〜8.9であること、平均発症年齢が60歳だが小児にも生じること、典型的CIDPが左右対称で運動優位の筋力低下と感覚障害を呈し、痛覚・温度覚より振動覚と位置覚が強く侵され、しばしば腱反射消失を伴うこと、脳神経障害を10〜20%に認めること、患者の85〜90%で髄液蛋白が上昇し細胞は10/mm³未満の軽度増多にとどまり、10/mm³を超える白血球数は別の診断を疑わせること、電気診断で2神経における運動遠位潜時の基準値上限比50%以上の延長・2神経における運動伝導速度の基準値下限比30%以上の低下・近位刺激のCMAP陰性ピーク振幅が30%を超えて低下する部分運動伝導ブロック("Partial motor conduction block, defined by a greater than 30% amplitude reduction of the proximal negative peak CMAP")のいずれかを要すること、第一選択治療が副腎皮質ステロイド・免疫グロブリン大量静注・血漿交換であること、プレドニゾンの通常導入量が60〜100 mg/日、免疫グロブリン大量静注の導入量が2 g/kgを2〜5日で投与、血漿交換が2〜4週で5〜10回であること、標準治療のいずれか単剤に初期反応する患者が約3分の2であること、約40%が治癒または寛解に至る一方で54%が経過中のいずれかの時点で高度の障害を経験すること、鑑別にAIDP・多巣性運動ニューロパチー・Charcot-Marie-Tooth病(とくにCMT1)・遺伝性圧脆弱性ニューロパチー・POEMS症候群・感染症(Lyme病・HIV・肝炎)が挙がることを確認した閲覧 2026-09-02
  2. 2.European Academy of Neurology/Peripheral Nerve Society guideline on diagnosis and treatment of chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy: Report of a joint Task Force—Second revision(European Journal of Neurology(European Academy of Neurology・Peripheral Nerve Society合同タスクフォース;Van den Bergh PYK, et al.)・2021)Unpaywall経由でAmsterdam UMCリポジトリの出版社版PDF(European Journal of Neurology 28(11):3556-3583)を取得し全文を確認した。2010年版EFNS/PNSガイドラインの改訂第2版であること、典型的CIDPとCIDPバリアントを区別し、旧来の「atypical CIDP」という呼称を多巣性・巣状・遠位型・運動型・感覚型を含む「CIDP variants」へ置き換えたこと、診断確実性の段階をdefinite・probable・possibleの3段階からCIDPとpossible CIDPの2段階へ減らした理由がprobableとdefiniteの診断精度に有意差が無かったためであること、Table 1の典型的CIDPの臨床基準が「進行性または再発性の、左右対称な、上下肢の近位かつ遠位の筋力低下、および2肢以上の感覚障害」「少なくとも8週間かけて進行」「全四肢で腱反射の消失または減弱」の3項目すべてを満たすことであること、バリアントの定義が遠位型(下肢優位の遠位の感覚障害と筋力低下)・多巣性(多巣性・通常非対称・上肢優位で2肢以上)・巣状(1肢のみ)・運動型(感覚障害を伴わない運動症状)・感覚型(運動障害を伴わない感覚症状)であること、Table 2の運動神経伝導基準が「脱髄を強く示唆」する7項目(a)〜(g)——(a)2神経で運動遠位潜時が基準値上限比50%以上延長(手根管症候群による正中神経障害を除く)、(b)2神経で運動伝導速度が基準値下限比30%以上低下、(c)2神経でF波潜時が基準値上限比20%以上延長(遠位CMAP陰性ピーク振幅が基準値下限の80%未満なら50%以上)、(d)2神経でF波消失(当該神経の遠位CMAP振幅が基準値下限の20%以上のとき)+他の1神経以上で他の脱髄所見1つ以上、(e)運動伝導ブロック=近位/遠位のCMAP陰性ピーク振幅が30%以上低下(脛骨神経を除く)かつ遠位CMAP振幅が基準値下限の20%以上、これを2神経で、または1神経+他の1神経以上で(F波消失を除く)他の脱髄所見1つ以上、(f)異常な時間的分散=近位・遠位のCMAP陰性ピーク持続時間が30%を超えて延長(脛骨神経では100%以上)を2神経以上で、(g)遠位CMAP持続時間の延長を1神経以上+他の1神経以上で他の脱髄所見1つ以上——のいずれかであり、同じ所見が1神経のみのときは「脱髄を弱く示唆」に落ちること、Recommendation 1が典型的CIDPの臨床診断の確認に「少なくとも2本の運動神経が運動神経伝導基準を満たす異常を示すこと」を要求すること、多巣性CIDPでは2肢以上にまたがる計2神経、巣状CIDPでは1肢内の2神経で基準充足が必要で1神経のみなら診断確実性の上限がpossibleになること、CSF蛋白上昇のCIDPに対する感度が42〜77%で特異度は不明であり、年齢調整カットオフ(50歳未満で0.5 g/L以上、60歳超で0.6 g/L超)を用いたLiberatoreらの検討では感度68%であること、典型的CIDPの最大13%が4週以内に急速進行する急性発症CIDP(A-CIDP)として発症し当初はギラン・バレー症候群と診断されうること、ギラン・バレー症候群と初期診断された患者の5%が後にA-CIDPへ分類し直されること、A-CIDPは発症8週を超えて悪化を続けるか初期改善後に3回以上再発する点でギラン・バレー症候群と異なるが「急性期にギラン・バレー症候群とA-CIDPを区別できる特異的な臨床所見も検査も無い」こと、結節・傍結節の細胞接着分子(CNTN1、NF155、Caspr1、ニューロファシンのNF140/186アイソフォーム)に対する抗体をもつ一群を「自己免疫性ノドパチー」と呼びCIDPとは別の疾患とみなす(CIDPバリアントとしない)こと、その理由が明確な臨床的特徴をもち顕在的な炎症もマクロファージ介在性脱髄も無く、CIDPの治療とくにIVIgに反応が乏しい一方でリツキシマブが有効でありうることであること、抗CNTN1抗体が急性・亜急性発症で運動症状または失調を呈しIVIgへの反応が無いか乏しい患者に、抗NF155抗体が発症年齢が若く亜急性〜慢性の経過で遠位筋力低下・失調・振戦を示しIVIgへの反応が無いか乏しい患者に、抗Caspr1抗体が失調・神経障害性疼痛・脳神経障害を伴う急性/亜急性ニューロパチーとしばしば関連しIVIgへの反応が乏しい患者に報告されていること、標準治療への抵抗性など特定の特徴をもつCIDP疑い例で結節・傍結節抗体の検査を考慮するようGood Practice Pointが述べていること、治療の主要推奨が「典型的CIDPおよびCIDPバリアントの初期治療として免疫グロブリン大量静注または副腎皮質ステロイドを強く推奨する」「免疫グロブリン大量静注と副腎皮質ステロイドが無効な場合に血漿交換を強く推奨する」「運動型CIDPでは免疫グロブリン大量静注を第一選択として考慮する(Good Practice Point)」「維持療法には免疫グロブリン大量静注・皮下免疫グロブリン・副腎皮質ステロイドを推奨する」「維持量が高用量になる場合は併用療法または免疫抑制薬・免疫調節薬の追加を考慮する(Good Practice Point)」「疼痛があれば神経障害性疼痛の薬物と多職種による管理を考慮する(Good Practice Point)」であること、経口ステロイドの常用量がプレドニゾンまたはプレドニゾロン60 mg相当(メチルプレドニゾロンなら48 mg)で6〜8か月かけて漸減するものであること、シクロホスファミド・シクロスポリン・リツキシマブを、有効性の確立した治療(IVIg・副腎皮質ステロイド・血漿交換)に抵抗性の患者で考慮してよいとすること、タスクフォースが本ガイドラインを5年ごとに更新する計画であると明記していることを確認した閲覧 2026-09-05
  3. 3.Corticosteroids for Guillain-Barré syndrome(Cochrane Database of Systematic Reviews・2016)抄録を閲覧した。ギラン・バレー症候群を対象とする無作為化比較試験6件・587例のデータで、4週後の障害度の変化が副腎皮質ステロイド群と対照群で有意差を示さなかったこと(平均差0.36だけ改善が小さい、95%CI 0.16改善が大きい〜0.88改善が小さい、中等度の質のエビデンス)、経口ステロイドの4件・計120例では4週後の改善がステロイド群でより小さかったこと(平均差0.82障害度、95%CI 0.17〜1.47、非常に低い質のエビデンス)、1年後の死亡または歩行不能にも有意差が無かったこと(リスク比1.51、95%CI 0.91〜2.5)、糖尿病の発生がステロイド群で多かったこと(リスク比2.21、95%CI 1.19〜4.12、高い質のエビデンス)、著者の結論が「中等度の質のエビデンスによれば副腎皮質ステロイドの単独投与はギラン・バレー症候群からの回復を有意に早めず長期転帰も変えない。非常に低い質のエビデンスによれば経口ステロイドは回復を遅らせる」であることを確認した閲覧 2026-09-02
  4. 4.VYVGART HYTRULO (efgartigimod alfa and hyaluronidase-qvfc) injection, for subcutaneous use — US Prescribing Information(DailyMed (argenx US) / U.S. FDA・2026)DailyMedで全文を確認した(Revised 5/2026、SPL version 13、初回承認2023年)。適応(第1節)が成人の全身型重症筋無力症および慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)であり、原文が "chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy (CIDP)" と表記していること、CIDPの用法(第2.4節)が皮下注のみで週1回、プレフィルドシリンジならエフガルチギモド アルファ1,000 mgとヒアルロニダーゼ10,000単位を約20〜30秒で、バイアルなら1,008 mg/11,200単位を30〜90秒で投与するものであること、静注してはならずまた希釈してはならないこと、IgGを一過性に低下させるため治療サイクル開始前に予防接種の要否を評価し治療中の生ワクチン接種は推奨されないこと、禁忌がエフガルチギモド アルファまたはヒアルロニダーゼへの重篤な過敏症であること、警告が感染症・過敏症反応・注射関連反応であり注射部位反応がCIDP・gMGとも15%以上と高頻度であること、新生児Fc受容体に結合する薬剤の効果減弱に注意するという相互作用の記載があること、有効性の根拠(第14.2節)が2段階の多施設試験(Study 4、NCT04281472)であり、既存治療の中止後に最大12週の run-in で活動性を確認したうえで、非盲検期(Stage A)で反応例を同定し、反応例のみを無作為化二重盲検プラセボ対照の中止試験(Stage B)へ進めた設計であること、組入れがEFNS/PNS 2010基準でdefiniteまたはprobable CIDPと診断された進行型または再発型の18歳以上であること、Stage Aの322例のうち69%(221例)が連続2回の来院で改善を示してStage Bへ進み、11%(36例)が効果不十分、6%(19例)が悪化のため進まなかったこと、Stage Bの221例(実薬111例・プラセボ110例)で主要評価項目である臨床的悪化(aINCATスコアの1点以上の上昇)までの期間がハザード比0.394(95%CI 0.253〜0.614、p<0.0001)で有意に延長したこと、Stage B参加者の年齢中央値55歳・CIDP診断からの期間の中央値2.2年・INCATスコア中央値3.0であり、221例中146例が標準治療を受けていた一方75例は未治療または6か月以上標準治療を受けていなかったことを確認した閲覧 2026-09-05
  5. 5.Vyvgart: EPAR — Product Information (Annex I: Summary of Product Characteristics)(European Medicines Agency (EMA)・2026)EUのSmPC(EPARの製品情報。EMAの製品ページ上の最終更新は2026年1月15日、EMEA/H/C/005849)の4.1で、皮下注製剤(Vyvgart 1 000 mg solution for injection)が「副腎皮質ステロイドまたは免疫グロブリンによる前治療の後の、進行性または再発性の活動性CIDPに対する単剤療法」を適応として掲げる一方、静注製剤(Vyvgart 20 mg/mL concentrate for solution for infusion)の4.1は抗AChR抗体陽性の成人の全身型重症筋無力症に対する上乗せのみでCIDPを含まないことを確認した。皮下注のCIDPの用法は1,000mgを週1回で継続し、臨床評価により隔週へ調節できる(症状悪化時は週1回へ戻す。臨床効果は通常3か月以内に得られ、開始3〜6か月後に評価する)閲覧 2026-09-07
  6. 6.ヒフデュラ配合皮下注 電子添文(第3版)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/アルジェニクスジャパン・2025)日本の電子添文(2025年9月改訂 第3版)で、エフガルチギモド アルファ・ボルヒアルロニダーゼ アルファ配合皮下注(ヒフデュラ配合皮下注)の効能・効果が「全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)」と「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎」の2つであり、後者が2024年12月改訂(第2版、効能変更、用法変更)で追加されたこと、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の用法が1回5.6mL(エフガルチギモド アルファ1,008mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ11,200単位)を週1回皮下投与であることを確認した閲覧 2026-09-07