疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 神経 · 症候群

ギラン・バレー症候群

Guillain-Barré syndrome

別名
GBS
臓器系
神経免疫・膠原病
科目
PathologyNeurologyPediatricsAnesthesiology
トピック
病理学 C/110:髄鞘疾患(脱髄性疾患)神経内科 G1-31:ギラン・バレー症候群小児科 3-09:小児神経免疫疾患:ADEM・多発性硬化症・Guillain-Barré症候群麻酔科学 B-11:生命を脅かす神経疾患の集中治療(脳卒中・ギラン・バレー症候群)
鑑別疾患
ベル麻痺(末梢性顔面神経麻痺)ボツリヌス症ポリオポルフィリン症筋萎縮性側索硬化症重症筋無力症
関連疾患
多発性硬化症腕神経叢損傷
治療薬
免疫グロブリン静注療法
原因微生物
Campylobacter jejuniInfluenza A virus
症状
眼筋麻痺顔面神経麻痺球麻痺筋力低下神経障害性疼痛知覚異常弛緩性麻痺便秘嚥下障害
検査値
交感神経皮膚反応髄液検査最大吸気圧・最大呼気圧
適応薬
免疫グロブリン静注療法

🧠 全体像(GBS)は、への免疫応答がにより末梢神経の髄鞘・軸索を標的化してしまう、である。下肢から上行する対称性筋力低下+/消失が中核像で、重症筋無力症と並ぶ急性〜亜の代表的鑑別疾患だが、末梢神経そのものを標的とする点でが標的のMG・とはが異なる。呼吸不全・によるリスクが高く、診断確定を待たずに呼吸・嚥下・自律神経を集中監視しながら免疫治療を進める姿勢が生命予後を左右する。

誘因と病態

感染後のの病原体表面分子と末梢神経の構成分子が構造的に類似しているために生じる反応)を背景に、免疫系が末梢神経の髄鞘または軸索を障害する。Campylobacter jejuniが最も代表的なで、なども関連しうる。手術・外傷後に発症することもあり、ワクチン接種後の発症はまれで、個々のワクチンによる感染予防利益とこの稀なリスクは区別して扱う。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='preceding infection'>先行感染</span>(Campylobacter jejuni等)"] --> B["病原体表面分子と末梢神経成分の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='molecular mimicry'>分子相同性</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cross-reactivity'>交差反応性</span>の免疫応答"]
    C --> D["末梢神経の髄鞘または軸索を攻撃"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='AIDP'>脱髄型</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conduction velocity'>伝導速度</span>低下・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conduction block'>伝導ブロック</span>"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='AMAN/AMSAN'>軸索型</span>:軸索そのものの障害"]
    E --> G["上行性の対称性筋力低下・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyporeflexia'>腱反射低下</span>/消失"]
    F --> G

末梢神経の髄鞘はが形成し(1細胞=1)、中枢神経のとは担当細胞が異なる(病理学C/110)。GBSはこの末梢の髄鞘・軸索をとする点で、中枢の髄鞘をとすると対をなすとして理解すると整理しやすい。

病型 主な特徴
AIDP( 最多の病型。脱髄により低下、延長、を来す
AMAN( 純運動性の(GM1等)との関連が知られる
AMSAN( 運動・感覚の両軸索が障害される
Miller Fisher症候群 ・失調・の三徴。が支持的所見となる

臨床像と緊急性

下肢から始まり上肢・体幹・顔面・へと上行する対称性筋力低下、/消失が中核である。手足の、背部・四肢の、両側性の、構音・嚥下障害、が起こりうる。(血圧の上昇・低下の両方向への変動、頻脈・不整脈、尿閉、便秘・イレウス)は生命を脅かしうる合併症であり、運動症状だけでなくの監視が欠かせない。

flowchart TD
    A["進行性の対称性筋力低下+反射低下"] --> B["呼吸・嚥下・咳嗽・心拍/血圧を直ちに評価"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CSF analysis'>髄液検査</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerve conduction study (NCS)'>神経伝導検査</span>を行うが、治療開始を待たない"]
    C --> D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-ambulatory'>歩行不能</span>、急速進行、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bulbar palsy'>球麻痺</span>・呼吸/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autonomic neuropathy'>自律神経障害</span>はあるか"}
    D -->|"ある"| E["入院し高依存度/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intensive care'>集中治療</span>で監視、IVIgまたは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='therapeutic plasma exchange, TPE'>血漿交換</span>を実施"]
    D -->|"ない"| F["頻回に再評価し、適応が生じれば免疫治療、並行して支持療法・リハビリ"]

⚠️ 単回のSpO2や動脈血ガスだけではを早期に検出できない。 ・咳嗽力の反復評価、・分泌物排出不良の有無を継続的にモニタリングし、数値のみに頼らず臨床的なの徴候から気道確保のタイミングを判断する。

診断

  • (蛋白上昇・細胞数正常)が支持所見だが、発症早期には正常のこともある。が目立つ場合はHIV感染、、神経、悪性腫瘍などの鑑別を再検討する。
  • :脱髄型(低下・)と軸索型を鑑別する。
  • (Miller Fisher症候群でのなど)は診断を支持するが、全例に必須ではない。
  • として、脊髄圧迫、重症筋無力症、急性などを考慮する。感覚障害・の有無、進行パターン(上行性か否か)が鑑別の手掛かりになる。

治療・支持療法

は、回復を早める同等に有効な選択肢である。 2023年EAN/PNSガイドラインは、自力な患者に対し、筋力低下発症から2週間以内であればIVIg 0.4 g/kg/日を5日間(実務上は病状に応じ2〜4週の期間で調整することも考慮される)、または発症4週間以内であればを4〜5回行うことを推奨する。歩行可能であっても、急速進行、、呼吸不全、があれば治療開始を検討する。IVIgと併用、予後不良のみを理由とする2コース目のIVIg投与、経口ステロイド単独療法は推奨されない。

💡 であるは、既存治療に反応不良な難治性GBSへの追加治療として症例報告・小規模レベルでの有効性が近年報告されているが、2026年時点で主要ガイドラインの標準治療としては未確立であり、IVIg・に代わる第一選択とはされていない。

監視・支持療法 内容
呼吸 ・咳嗽力・症状を継続的に評価し、数値だけでなく臨床的の徴候で気道介入のタイミングを判断する
自律神経 心電図・血圧・尿量を監視し、不整脈や著明な血圧変動を迅速に治療する
合併症予防 予防、予防、、栄養・嚥下評価
早期からの、疲労を考慮した段階的リハビリテーション

予後は多くの患者で良好な回復が得られる一方、慢性疼痛・疲労・残存する筋力低下が残ることがある。死亡率やを要する割合は集団・医療によって幅があるため、固定値として扱わない。

まとめ

  • GBSはへの免疫応答がにより末梢神経の髄鞘・軸索を障害するで、上行性の対称性筋力低下とが中核像である。
  • 呼吸不全・によるリスクが高く、単回のに頼らず継続的に監視する。
  • 髄液のは診断を支持するが、重症例では結果を待たずに治療を開始する。
  • IVIgまたはのいずれかを選択し、両者の併用やステロイド単独療法は推奨されない。
  • 末梢神経をとするGBSは、とする重症筋無力症・、中枢神経の髄鞘をとすると対比すると病態の位置づけが整理しやすい。