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Microbe Atlas · 細菌

Campylobacter jejuni

分類
G− 桿菌・微好気性 / Gram− rods (microaerophilic)Campylobacter
性状
Gram陰性 (G−)桿菌 Bacilli微好気性 Microaerophilic
科目
Medical Microbiology
トピック
2/17: Campylobacter genus and Helicobacter pylori5/28: Pathogens of hepatitis and their transmission, as well as microbiological diagnosis
自然耐性薬
スルファメトキサゾール+トリメトプリムバンコマイシン
原因となる疾患
Bickerstaff脳幹脳炎MALTリンパ腫(節外性辺縁帯リンパ腫)Miller Fisher症候群ギラン・バレー症候群過敏性腸症候群細菌性急性胃腸炎反応性関節炎旅行者下痢症
作用する薬剤
アジスロマイシン

🧠 全体像:Campylobacter jejuniは世界で最も頻度の高い細菌性胃腸炎の原因菌の一つで、Helicobacter pyloriと形態(湾曲したグラム陰性桿菌・)がそっくりな「兄弟菌」だが、腸管に侵入して自然治癒する急性感染という点で、胃に定着して慢性炎症を起こす菌とは正反対の生き方をする。この菌を語る上で最重要なのは腸炎そのものより感染後に起こる自己免疫合併症——の代表的なである。

微生物学的な特徴

グラム陰性の湾曲した(・)桿菌で、(複数本)による活発な運動性を持つ。——42℃でよく増殖する性質がH. pyloriとの鑑別に使われる(H. pyloriは体温域を好む)。が高く、少量の菌(1,000個未満)でも感染が成立しうる。

検査 Campylobacter jejuni H. pylori
増殖至適温度 42℃() 体温
ウレアーゼ 陰性 強陽性
オキシダーゼ・カタラーゼ ともに陽性 ともに陽性
主な生息部位 動物の腸管(特に鶏) ヒトの胃

⭐ のが同定に直結する。 はC. jejuniの想定耐性表現型として、バンコマイシンを含むとを挙げている1。この性質を利用して、(Campy培地)にはバンコマイシン・にを加えた抗菌薬を添加し、他のを抑えながら本菌を選択的に発育させる。

病原性の仕組み

結腸粘膜に侵入して表層を破壊し、炎症性の下痢を起こす(ではなく侵襲型の下痢)。

flowchart TD
  A["汚染された鶏肉・生乳などを摂取"] --> B["結腸粘膜への侵入・破壊"]
  B --> C["炎症性・血性下痢<br>(潜伏期2〜5日)"]
  A --> D["菌体表面の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lipooligosaccharide (LOS)'>リポオリゴ糖</span>が<br>末梢神経の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ganglioside'>ガングリオシド</span>と構造類似<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='molecular mimicry'>分子相同性</span>)"]
  D --> E["感染後、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cross-reactivity'>交差反応性</span>の抗体が産生される"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Guillain-Barré syndrome'>ギラン・バレー症候群</span><br>上行性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flaccid paralysis'>弛緩性麻痺</span>"]
  B --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reactive arthritis'>反応性関節炎</span>"]

💡 の機序は。 Campylobacterの菌体表面()が末梢神経のと構造的に類似しているため、菌に対して作られた抗体が自己の末梢神経を誤って攻撃してしまう——黄色ブドウ球菌のとは異なる機序の自己免疫合併症で、感染におけるの代表例として頻出する。

感染経路と疫学

  • :動物(特に(鶏)、牛、犬)の腸管
  • 糞口感染で伝播し、主に十分に加熱されていない鶏肉、殺菌されていない生乳、汚染された水を介する
  • 潜伏期は通常2〜5日2

起こす疾患

疾患 臨床像
血性下痢、発熱、強い腹痛。多くは1週間以内に自然に回復する
(旧称) 感染後に生じる
による上行性の(のとは逆の進行パターン)。の5〜41%が本菌によると推定されるが、本菌感染1,000件あたりの発症は0.2〜1.7件にとどまる2
感染後に発症するのリスクを高める

診断

  • 検体:便、食品、血液、髄液
  • グラム染色または便検体の直接検鏡(湾曲したグラム陰性桿菌)
  • (Campy培地)で培養:42℃、微好気環境、バンコマイシン・・などの選択的抗菌薬を添加

治療と予防

  • 多くは1週間以内に自然に回復し2、支持療法(経口補水)が中心。抗菌薬で短縮できる有症期間は平均1日程度である3
  • 抗菌薬を使うのは重症例と、重症化しやすい人(65歳以上・妊婦・免疫不全者)である2
  • のガイドラインは第一選択をアジスロマイシン、代替をとしている3(は効きにくい)
  • ⚠️ が広がっている。 渡航先によっては耐性率が56%(メキシコ)〜92%超(タイ)に達し、渡航者の感染ではフルオロキノロン感受性が確認されない限りアジスロマイシンを選ぶ3。米国内でもは一般的になっている2
  • 予防:食品の十分な加熱、生乳の殺菌、調理時の交差汚染防止

まとめ

  • C. jejuniは(42℃)・ウレアーゼ陰性の湾曲グラム陰性桿菌で、鶏肉を介した糞口感染で腸管に侵入し血性下痢を起こす。
  • バンコマイシン()・に本来的に耐性で、この性質にを組み合わせたものが()の設計根拠になっている。
  • の代表的な——により菌体と末梢神経がする。ただし本菌感染からの発症は1,000件に0.2〜1.7件とまれである。
  • 、も合併しうる。
  • 治療は多くが自然治癒し支持療法が中心。抗菌薬が要る例ではアジスロマイシンが第一選択で、フルオロキノロンは耐性の広がりから感受性確認なしには選びにくい。

出典

  1. 1.Expected Resistant Phenotypes, Version 1.2(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing (EUCAST)・2023)現行版(v1.2、2023年1月)のTable 3で、Campylobacter jejuni・C. coli(規則3.5)の想定耐性表現型がフシジン酸・ストレプトグラミン・トリメトプリムであり、表題で同群がグリコペプチド系・リポグリコペプチド系・リンコサミド系・オキサゾリジノン系にも想定耐性とされていることを確認した。ポリミキシンBはこの表に挙げられていない。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Clinical Overview of Campylobacter(Centers for Disease Control and Prevention・2026)2026年8月12日更新のページで、潜伏期が通常2〜5日であること、多くは1週間以内に完全に回復し、抗菌薬は重症例または重症化リスクのある人(65歳以上・妊婦・免疫不全者)に用いうること、アジスロマイシンとフルオロキノロン(シプロフロキサシンなど)がよく使われるが米国でもフルオロキノロン耐性が一般的であること、カンピロバクター感染1,000件あたりギラン・バレー症候群に至るのは0.2〜1.7件と推定される一方、ギラン・バレー症候群の5〜41%がカンピロバクターによると推定されること、長期的な帰結として関節炎・過敏性腸症候群・ギラン・バレー症候群があることを確認した。閲覧 2026-09-27
  3. 3.2017 Infectious Diseases Society of America Clinical Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Infectious Diarrhea(Infectious Diseases Society of America・2017)PMC5850553の全文で、Table 6(病原体別の推奨抗菌薬)がカンピロバクターの第一選択をアジスロマイシン、代替をシプロフロキサシンとしていること、本文でフルオロキノロン耐性は渡航先によって高く(メキシコ56%〜タイ92%超)、渡航者のカンピロバクター感染ではフルオロキノロン感受性が確認されない限りアジスロマイシンを第一選択と考えるべきとしていること、抗菌薬で有症期間が平均約1日短縮するが全例が自然治癒したことを確認した。閲覧 2026-09-27