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Microbe Atlas · 細菌

Campylobacter fetus

分類
G− 桿菌・微好気性 / Gram− rods (microaerophilic)Campylobacter
性状
Gram陰性 (G−)桿菌 Bacilli微好気性 Microaerophilic
科目
Medical Microbiology
トピック
2/17: Campylobacter genus and Helicobacter pylori5/11: Zoonotic infections (list) and their prevention

🧠 全体像Campylobacter fetusは形態・生化学的性状がC. jejuniとよく似た湾曲グラム陰性桿菌だが、臨床的な立ち位置は正反対である。C. jejuni健常者の腸に侵入して自然治癒する下痢を起こすのに対し、C. fetus血流に乗って全身に散らばる菌血症を起こしやすく、標的になるのは健常な若年成人ではなく高齢者・免疫不全者・妊婦である。この違いを生むのが、血清(補体)による殺菌を回避する表面蛋白の鎧——S層蛋白の有無である。

微生物学的な特徴

グラム陰性の湾曲した()桿菌で、C. jejuniと同じを示す。

⚠️ 標準的なCampylobacter・42℃培養では見逃されうる。 C. jejuniが42℃でよく増殖するのに対し、C. fetus25℃・37℃でよく発育し42℃では発育が抑制されることが多い。便検体をルーチンの・42℃条件だけで培養するとC. fetusは検出されず、血液培養や法)による選択的分離が必要になる——この培養条件の違いが臨床現場での見逃しの主因になる。

病原性の仕組み

C. fetusの最大の特徴は、菌体表面を覆うS層蛋白(surface layer protein, SLP)を持つことである。

flowchart TD
  A["Campylobacter fetus"] --> B["S層蛋白(SLP)が菌体表面を被覆"]
  B --> C["補体のC3bによる<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='opsonization'>オプソニン化</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membrane attack complex (MAC)'>膜侵襲複合体</span>形成を阻害"]
  C --> D["血清(補体)による殺菌を回避"]
  D --> E["血流中で生存し増殖できる"]
  E --> F["持続性・再発性の菌血症"]
  E --> G["血管内皮への親和性<br>→ 血管感染"]

💡 S層蛋白はを変化させることもでき(antigenic variation)、宿主の抗体産生を後手に回らせる。 これによりC. fetusは一度の感染で終わらず、再発性・持続性の菌血症を起こしやすい——C. jejuniが腸管局所の侵襲で完結するのに対し、C. fetusは血管内で生き延びる能力そのものが病原性の核心になっている。

感染経路と疫学

  • ・ヒツジの腸管・生殖器(C. fetus subsp. venerealis・流産の原因となる獣医学的病原体で、ヒトには感染しない)
  • ヒトへの感染は動物との接触、汚染された食肉・乳製品の摂取などで成立するが、C. jejuniほど食品由来感染としての頻度は高くない
  • 高リスク宿主:高齢者、細胞性免疫が低下した患者(悪性腫瘍、肝硬変、使用など)、妊婦——健常な若年成人での感染はまれ

起こす疾患

病態 特徴
菌血症・全身性感染 高齢者・免疫不全者に多い。持続性・再発性の経過をとりやすい
に類似した血管感染)——血管内皮への親和性を反映する
髄膜炎 まれだが報告される
妊娠中の感染 により流産・早産・胎児死亡、母体のを起こしうる——の流産病原体としての性質がヒトでも再現される
胃腸炎 起こすこともあるがC. jejuniに比べて頻度・重症度ともに低い

診断

  • 血液培養が最も確実——便培養は上記の理由(42℃で発育が悪い)で偽陰性になりやすく、菌血症を疑う高リスク患者では血液培養を優先する
  • 便からの分離を狙う場合は法)や25〜37℃での培養条件を用いる
  • グラム染色では湾曲したグラム陰性桿菌として観察される

治療

  • 全身性感染・にはセフトリアキソンなどのβラクタム、アミノグリコシドとの併用)を用いる——C. jejuniの自然治癒する胃腸炎とは治療強度が大きく異なる
  • (動脈瘤・心内膜炎)では外科的処置()を要することがある
  • 妊婦の感染は胎児喪失のリスクがあるため、疑ったら積極的に血液培養を行い早期治療する

まとめ

  • C. fetusC. jejuniと形態は似るが、S層蛋白による補体抵抗性を武器に血流内で生存し、健常者の腸炎ではなく高齢者・免疫不全者・妊婦の全身性感染を起こす点で対照的である。
  • 標準的なCampylobacter・42℃培養では発育が悪く見逃されやすい——菌血症を疑う場合は血液培養を優先する。
  • 血管内皮への親和性からを起こしうる。
  • 妊娠中の感染はにより流産・早産・胎児死亡の原因となる(の流産病原体としての性質と対応)。
  • 治療はによる全身治療が基本で、自然治癒を待つC. jejuni腸炎とは対応が異なる。