微生物ノート一覧へ

Microbe Atlas · 真菌

Candida albicans

分類
酵母 / YeastsCandida
科目
Medical Microbiology
トピック
4/11: Candida genus
原因となる疾患
HIV感染症・AIDSカテーテル関連血流感染カンジダ症感染性心内膜炎眼内炎原発性免疫不全症候群(重症複合免疫不全症・ディジョージ症候群・X連鎖無ガンマグロブリン血症・慢性肉芽腫症・選択的IgA欠損症)新生児敗血症尿路感染症慢性皮膚粘膜カンジダ症
作用する薬剤
アニデュラファンギンアンフォテリシンBイサブコナゾニウムイソコナゾールイトラコナゾールイブレキサフンガープカスポファンギンクロトリマゾールケトコナゾールシクロピロクスナイスタチンフルコナゾールフルシトシンポサコナゾールボリコナゾールミカファンギンレザフンギン

🧠 全体像カンジダ属の6菌種を分ける最大の実務軸は「が効くかどうか」であり、C. albicansはそのにあたる——通常は感性で、陽性・形成という同定上のを持つ唯一の菌種でもある。もともと口腔・消化管・腟の常在菌であるため、感染の多くは外から来るのではなく宿主側の防御が崩れて起こるであり、侵入する場所(粘膜か血流か)と宿主の背景因子(免疫不全・カテーテル・抗菌薬による)さえ押さえれば臨床像はすべて説明がつく。

微生物学的な特徴

  • 二形性真菌:環境温度(20〜25℃)では、体温(37℃)ではを形成し菌糸型へ転換する。この温度依存的な形態転換が組織侵入の起点になる。
  • 臨床検体から最も高頻度に分離されるカンジダ属菌種で、の約95%はC. albicansC. glabrataC. parapsilosisC. tropicalisの4菌種が占める。
  • 陽性——血清中で37℃・2時間培養するとを形成する。この属の中でC. albicansだけが持つ性質で、迅速なスクリーニングとして使われる。
  • 形成:形成用培地)上で厚い壁を持つ胞子を作る。これもC. albicansに特徴的な所見。
  • CHROMagar上では緑色コロニーを呈し、他のカンジダ種と区別できる。

6菌種の見分け方はこの1枚に集約できる。 C. albicansを基準に、他の5菌種は「陰性」かつ「感受性のどこがずれているか」で位置づけられる。

菌種 感受性 特記事項
C. albicans 陽性 感性(通常) 最多分離菌種。形成
C. tropicalis 陰性 感性(通常、耐性増加傾向) 好中球減少患者の
C. glabrata 陰性 〜耐性 高齢者に多い。が優先される
C. krusei 陰性 無効。
C. auris 陰性 多くの株で耐性(多剤耐性) 院内伝播・同定困難・が要
C. kefyr 陰性 感性(通常) まれ。好中球減少患者での

病原性の仕組み

flowchart TD
    A["Candida albicans<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='normal flora'>常在フローラ</span>として定着"] --> B{"宿主の防御は保たれているか"}
    B -->|"保たれている"| C["無症候の保菌"]
    B -->|"崩れている<br>(免疫不全・抗菌薬・カテーテル)"| D["酵母形から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyphal form'>菌糸形</span>への転換<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='germ tubes'>発芽管</span>形成)"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Als'>接着因子</span>・分泌型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aspartate'>アスパラギン酸</span><br>プロテアーゼ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phospholipase'>リン脂質分解酵素</span>で組織侵入"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biofilm formation'>バイオフィルム形成</span><br>(カテーテル表面)"]
    E --> G["表在性:口腔・食道・腟のカンジダ症"]
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep-seated'>深在性</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bloodstream infection'>血流感染</span>→播種<br>(心内膜炎・肝脾・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endophthalmitis'>眼内炎</span>)"]
    F --> H

💡 なぜ「形態転換」がこの菌の病原性の核心か。 酵母形は増殖・血流播種に向くのに対し、は組織へ物理的に貫入する力を持つ。C. albicansはこの両方の形を状況に応じて使い分けられる(真の二形性)ため、粘膜表面での定着から深部組織への浸潤まで一つの菌で説明できる——単一形態しか取れない他の非albicans種より病原性の幅が広い理由でもある。

感染経路と疫学

  • が中心:口腔・消化管・腟に常在するフローラが、宿主側の隙に乗じて感染を起こす。ヒト-ヒト感染はほぼ問題にならない。
  • 高リスク因子:による、糖尿病、ステロイド使用、乳児(おむつ内の熱と湿気)、、好中球減少。
  • 院内ではカテーテル関連のの主要な入り口になる。

起こす疾患

病型 特徴
(thrush、 免疫不全患者やステロイド使用者に多い。後にうがいをしない場合など
おむつ内の熱と湿気による
糖尿病患者や、を破壊する抗菌薬・経口避妊薬の使用者に多い
白色の・斑状病変。の初発症状となりうる
カンジダ症(播種性・→敗血症) (薬物静注使用者に多くを侵しやすい)

⚠️ はAIDSの初発症状になりうる。 若年〜中年で明らかな免疫抑制の既往なくを来した場合は、背景にHIV感染がないかを検討する。

⚠️ の心内膜炎を起こしやすい。 通常の弁膜(・大動脈弁)を好むのと対照的に、に伴う感染はを侵すという鑑別ポイントを併せて覚える。

診断

検査 内容
喀痰、、滲出液
を確認
培養 、CHROMagar(緑色コロニー)、形成用の
血清中37℃・2時間で形成——C. albicansに特徴的
血液培養 の確認に必須だが感度は約50%にとどまる

⚠️ 培養陽性は必ずしも感染を意味しない。 口腔・腟・気道からの分離は保菌のことが多く、臨床像・宿主リスク因子と統合して定着か感染かを判断する。を疑う場合は血液培養に加えの評価)も行う。

治療と予防

病態 治療
軽症・局所(皮膚・粘膜) 局所など)
口腔・ (口腔内でしてから使用)、または経口
初期治療は)、感受性確認後に安定していれば。重症・耐性例には

の初期治療でが第一選択になる理由。 ・感受性の結果が出るまでのでは、C. kruseiC. glabrata、多剤耐性のC. aurisを取りこぼせない。はこれら非albicans種を含め広くカバーできるため、まず経験的にで開始し、菌種と感受性が判明してから化するのが標準的な流れになる。

  • 深部感染ではカテーテルのが治療の一部として必須になることが多い(内の菌は抗真菌薬が届きにくい)。
  • 予防:好中球減少患者・患者への予防投与、カテーテル管理の徹底。ワクチンは実用化されていない。

まとめ

  • カンジダ属の常在菌で、二形性(環境温度で/、体温で/菌糸型)を示す。陽性・形成が本菌に特徴的な同定所見。
  • ほとんどのカンジダ症は——宿主側の防御破綻(免疫不全・抗菌薬・カテーテル・糖尿病)が引き金になる。
  • カンジダ属6菌種は感受性で分かれる。C. albicansは基準となる「通常感性」の菌種で、C. glabrata)・C. krusei)・C. auris(多剤耐性)と対比される。
  • はAIDSの初発症状になりうる。を起こしやすい。
  • 血液培養の感度は約50%にとどまり、培養陽性は保菌との鑑別が必要。
  • の初期治療はが第一選択——前から非albicans種のをカバーできるため。カテーテルが治療の一部になることが多い。