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Microbe Atlas · 真菌

Candida glabrata

分類
酵母 / YeastsCandida
科目
Medical Microbiology
トピック
4/11: Candida genus
原因となる疾患
カンジダ症
作用する薬剤
アニデュラファンギンイブレキサフンガープカスポファンギンフルコナゾールミカファンギンレザフンギン

🧠 全体像:Candida glabrataは「C. albicansほど病原性は強くないが、薬が効きにくい」菌として読む。を作らずもほとんど形成しない小型ので、への感受性が〜耐性へ傾いているのが最大の特徴——C. kruseiのような一律のではなく、株ごとに幅があるからこそでは最初からを選ぶ根拠になる。高齢・糖尿病患者、でC. albicansに次いで問題になる非albicans種のひとつでもある。

微生物学的な特徴

  • 陰性、をほとんど作らない小型の球形——二形性への転換能が乏しいこと自体がC. albicansとの形態的な鑑別点になる。
  • 分類学上は、2022年にCandida属からNakaseomyces属へ移し*Nakaseomyces glabratusとする提案がなされた1。Candida属には系統上の位置が定まらない種が残っていて学名の改訂が完了しておらず、その整理の一環である。新しい文献では新名、臨床検査の報告では旧名C. glabrataが使われることも多く、両名を対で覚える(さらに古くはTorulopsis glabrata*と呼ばれていた)。
  • の主要4菌種(C. albicans・C. glabrata・C. parapsilosis・C. tropicalis)の一角を占め、・院内感染で頻度が高い。

⚠️ 感受性は「効くか効かないか」の二択ではない。 C. glabrataは(CDR1・CDR2)の発現亢進により、のが〜耐性の範囲に広く分布する——C. kruseiの一律なとは異なり、の結果次第で高用量が使える株もあれば全く効かない株もある。この不確実性こそがでを優先させる理由になる。

病原性の仕組み

flowchart TD
    A["Candida glabrata<br>口腔・消化管・腟の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='normal flora'>常在フローラ</span>"] --> B{"宿主の防御は保たれているか"}
    B -->|"崩れている<br>(高齢・糖尿病・カテーテル・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='broad-spectrum antibiotics'>広域抗菌薬</span>)"| C["カテーテル表面への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biofilm formation'>バイオフィルム形成</span>"]
    C --> D["血流侵入・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='candidemia'>カンジダ血症</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disseminated infection'>播種性感染</span><br>(特に尿路への親和性が高い)"]

💡 なぜでC. glabrataが目立つのか。 二形性への転換能が弱く組織侵入力自体はC. albicansより劣るが、尿路への定着・生存には強く、患者や高齢者の無症候性の原因菌として頻度が高い。組織侵入力の弱さと定着のしぶとさが同居する点が、この菌の臨床像の幅を決めている。

感染経路と疫学

  • が中心——が宿主の隙に乗じて感染を起こす構図はC. albicansと共通。
  • 高リスク群:高齢者、糖尿病、・留置、使用歴、曝露歴(予防投与・治療歴のある患者で選択的に増える)。
  • ⚠️ 予防投与を受けている患者で発症するは、非albicans種(特にC. glabrata・C. krusei)である可能性が高まる。 予防・治療でを使用中の患者に新規が出た場合は、この可能性を念頭にを組み立てる。

起こす疾患

病型 特徴
高齢者・患者に多い。無症候性なら、播種の高リスク群を除き抗真菌薬で治療せず、カテーテルなど誘因の除去を優先する2
・ カンジダ症の一部として、高齢・患者に多い
C. albicansに次いで頻度が高く、再発性のものでは本菌の関与を疑う。経口が効かない場合、 2016はホウ酸600 mgのゼラチンカプセル(1日1回14日間)を代替に挙げる2

診断

  • 陰性・形成に乏しい小型という所見でC. albicansと鑑別する。
  • がを左右する——〜耐性の幅があるため、だけでは治療薬を決められない。 2016は、血流由来など臨床的に意味のある全株で感受性を調べ、感受性はの前治療がある例とC. glabrata・C. parapsilosis感染で調べることを考慮するとしている2。

治療と予防

状況 治療
・侵襲性感染 (・・)で開始する( 2016は非好中球減少患者のの初期治療として強く推奨)2
への移行 高用量800 mg(12 mg/kg)/日または200〜300 mg 1日2回への移行は、感受性が確認された株に限って考慮する2
不耐・耐性例 脂質製剤の
耐性株の症候性膀胱炎 0.3〜0.6 mg/kg/日を1〜7日間、または経口25 mg/kg 1日4回を7〜10日間2

⭐ でが選ばれる根拠のひとつがこの菌にある。 前の段階ではC. albicansかC. glabrataかを区別できず、後者であればが無効な可能性が高い——だからこそ非albicans種を広くカバーできるを最初に選び、感受性結果が判明してから狭域化するという二段構えの戦略が標準的な流れになる。

  • ⚠️ 耐性も増えている。 標的酵素の遺伝子FKS1・FKS2の変異が原因で、米国の単一施設のC. glabrata(2001〜2010年、293エピソード)では、耐性が4.9%から12.3%へ、耐性が18%から30%へ増え、耐性株の14.1%は1剤以上のにも耐性だった。FKSの予測因子としてで挙がったのはの前治療(約19.6)で、中間〜耐性のを示すをで治療した10例中8例が無効または再発した3。がある例や治療反応が乏しい例では、感受性を確かめ直す。

まとめ

  • 陰性・形成に乏しい小型で、2022年にNakaseomyces glabratusへの移籍が提案された。
  • 感受性は〜耐性——C. kruseiの一律なとは異なり株ごとに幅があるため、必ずで確認する。
  • 高齢者・糖尿病・患者に多く、・の主要な非albicans原因菌。
  • 曝露歴のある患者でのは本菌を疑う。
  • 侵襲性感染はで開始し、への移行は感受性確認株に限る。FKS変異による耐性も増えており(のが予測因子)、治療反応不良時は感受性の再確認が要る。

出典

  1. 1.Taxonomy of Pathogenic Yeasts Candida, Cryptococcus, Malassezia, and Trichosporon: Current Status, Future Perspectives, and Proposal for Transfer of Six Candida Species to the Genus Nakaseomyces(Medical Mycology Journal(Takashima M, Sugita T)・2022)抄録で確認した。「1菌1名」の原則に合わせて医学上重要な酵母の学名が見直されてきたこと、Candida属は系統上の位置が定まらない種が残り改訂が完了していないこと、未改訂のまま残っていた6種をNakaseomyces系統群へ移すことを提案し、その中にNakaseomyces glabratusが含まれることを確認した(Crossrefで著者2名・63巻119〜132頁を照合)。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Clinical Practice Guideline for the Management of Candidiasis: 2016 Update by the Infectious Diseases Society of America(Infectious Diseases Society of America (IDSA)・2016)PMC全文(PMC4725385)で確認した。非好中球減少患者のカンジダ血症の初期治療にエキノキャンディン系(カスポファンギン・ミカファンギン・アニデュラファンギン)を推奨し(強い推奨・高い質のエビデンス)、C. glabrataでは高用量フルコナゾール800 mg(12 mg/kg)/日またはボリコナゾール200〜300 mg 1日2回への移行を感受性が確認された株に限って考慮するとしていること(強い推奨・低い質)、アゾール感受性検査を血流由来の全株に、エキノキャンディン感受性検査をエキノキャンディン前治療例とC. glabrata・C. parapsilosis感染で考慮するとしていること、無症候性カンジダ尿症は播種の高リスク群を除き抗真菌薬で治療しないこと、フルコナゾール耐性C. glabrataによる症候性膀胱炎にはアムホテリシンBデオキシコール酸0.3〜0.6 mg/kg/日を1〜7日間または経口フルシトシン25 mg/kg 1日4回を7〜10日間とすること、経口アゾールに反応しないC. glabrata外陰腟炎にはホウ酸600 mgのゼラチンカプセル腟内投与を1日1回14日間を代替とすることを確認した。閲覧 2026-09-27
  3. 3.Increasing echinocandin resistance in Candida glabrata: clinical failure correlates with presence of FKS mutations and elevated minimum inhibitory concentrations(Clinical Infectious Diseases(Alexander BD, Johnson MD, Pfeiffer CD, et al.)・2013)抄録で確認した。米国Duke大学病院の2001〜2010年のC. glabrata血流感染293エピソード(313株)の後ろ向き解析で、エキノキャンディン耐性が4.9%から12.3%へ、フルコナゾール耐性が18%から30%へ増えたこと、フルコナゾール耐性78株の14.1%が1剤以上のエキノキャンディンにも耐性だったこと、25株(7.9%)がFKS変異を持ち、変異株の予測因子はエキノキャンディンの前治療(オッズ比19.647)だったこと、エキノキャンディンに中間・耐性のMICを示すFKS変異株に感染しエキノキャンディンで治療された10例中8例が無効または再発したことを確認した。閲覧 2026-09-27