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Drug Atlas · C4 Antifungals / 抗真菌薬 · 必修

フルシトシン

flucytosine

分類
Antifungals / 抗真菌薬
商品名(日本)
アンコチル
商品名(EU)
Ancotil
科目
Pharmacology
トピック
C4: Antifungal agents
標的微生物
Candida albicansCryptococcus neoformans
監視検査値
絶対好中球数血小板数クレアチニン
相互作用
アンフォテリシンB
対象疾患
クリプトコーマクリプトコッカス症

🧠 全体像:は抗真菌薬5系統の中で唯一そのものを止める薬で、真菌のcytosine deaminaseによって初めて()に変換されるという「としての」を持つ。しかし単剤では真菌が容易にこの酵素を失って耐性化するため、実臨床で単独で使われることはほぼなく、との併用が事実上の唯一の使い方になる。骨髄抑制という重大な副作用はされる未変化体の蓄積で悪化するため、が引き起こす腎障害がの毒性をさらに増幅するという薬物相互作用の連鎖を理解しておくことが実務上重要。

薬効群の中での位置づけ

系統 代表薬 標的 単剤での使用
等 合成(CYP51) 可
等 (結合) 可
等 細胞壁合成 可
合成 不可(急速に耐性化)——常にと併用

⭐ 抗真菌薬5系統の中でだけが「単剤禁止」に近い扱いを受ける。 これは機序そのものの弱さではなく、単一遺伝子(cytosine deaminaseまたはUPRT)の変異だけで耐性が成立してしまうというのしやすさに起因する。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flucytosine'>フルシトシン</span>が真菌細胞内へ取り込まれる<br>(cytosine permease経由)"] --> B["真菌のcytosine deaminaseが<br>5-フルオロシトシン→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorouracil'>5-フルオロウラシル</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='5-fluorouracil'>5-FU</span>)に変換"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='5-fluorouracil'>5-FU</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ribonucleic acid'>RNA</span>に取り込まれる"] --> D["異常な蛋白合成"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='5-fluorouracil'>5-FU</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thymidylate synthase'>チミジル酸合成酵素</span>を阻害"] --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>合成が停止"]
    G["ヒト細胞はcytosine deaminase活性が<br>極めて低い"] -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='selective toxicity'>選択毒性</span>の根拠"| B
    H["単一酵素の変異で<br>deaminase活性を失う"] -.->|"単剤では急速に耐性化"| B

💡 の正体は「ヒトにはこの変換酵素がほとんどない」という一点に尽きる。 ヒト細胞はcytosine deaminase活性がごく低いため、をへほとんど変換できず、としてののような全身毒性を起こしにくい。ただし腸内細菌がをへ変換することがあり、これが骨髄抑制の一因になるという説もある。

薬物動態

項目 値・特徴
高い(ほぼ完全に吸収される)
分布 水溶性が高く、髄液へも良好に移行(中枢神経感染に使える理由)
代謝 ヒトではほとんど代謝されない
排泄 ほぼ未変化体のまま
半減期 腎機能正常で約3〜6時間だが、腎機能低下で著明に延長し蓄積する

⭐ 型薬物の典型。 による腎障害が進むとの排泄が遅れて血中濃度が上昇し、骨髄抑制のリスクがさらに高まるという悪循環が生じる。持続的にピーク血中濃度が100 μg/mLを超えると毒性頻度が増すとされ、これがTDMの目安になる1。と腎機能の頻回評価が欠かせない。

適応

主な適応はので、との2剤併用が標準( 2022年版ガイドラインでも単回投与+14日間+という構成が推奨されており、この単回高用量レジメンはAMBITION試験で従来の7日間レジメンに対し10週死亡率でが示されている)23。でも重症例でとの併用が選択肢になることがある。

用法・用量

のでは通常2週間、と併用する。腎機能に応じたが必須で、可能であれば血中濃度をモニタリングしながら投与量を決める。実際の用量は適応・腎機能・体重で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ は行わない。 単剤での長期曝露中に耐性が出現するため常になど他の抗真菌薬と併用する1
  • ⚠️ 腎機能低下例では蓄積し骨髄抑制が増悪する。 骨髄抑制は不可逆的で免疫抑制患者では死亡につながりうるため、併用時は特に腎機能・血算をこまめに確認する1
  • 骨髄抑制のリスク因子(既存の血球減少、放射線・化学療法歴、感染など)がある場合は特に慎重にモニタリングする

副作用

頻度 内容
高頻度 消化器症状(悪心・下痢)
注意 骨髄抑制(好中球減少・血小板減少)、
重篤・まれ 重症の、腸炎、

まとめ

  • 。真菌内でcytosine deaminaseによりへ変換されを止める。
  • ヒトはこの変換酵素をほとんど持たないためが成り立つ。
  • 単剤では単一酵素変異で急速に耐性化するため、常にとの併用が基本。
  • のは+が標準。
  • ほぼ未変化体でされるため、腎機能低下(しばしば自身が引き起こす)で蓄積し骨髄抑制が悪化する。
  • 髄液への移行が良好で、中枢神経感染に使える数少ない抗真菌薬の一つ。

出典

  1. 1.ANCOBON (flucytosine) capsule — Prescribing Information(Bausch Health US / DailyMed(米国FDA)・2026)フルシトシンへの耐性が単剤での長期曝露中に出現することが示されており、全身性カンジダ症・クリプトコッカス症の治療ではこの耐性出現のためアンフォテリシンBとの併用が必須とされていること、骨髄抑制は不可逆的で免疫抑制患者では死亡につながりうること、経口投与後の放射性標識体の90%超が未変化体のまま尿中に回収されるため腎機能障害では蓄積し血中濃度モニタリングと腎機能に応じた用量調整が必要なこと、持続的に血中濃度が100 μg/mLを超えると毒性の頻度が増すとされていることを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Recommendations on induction, consolidation and maintenance antifungal treatment regimens — Guidelines for Diagnosing, Preventing and Managing Cryptococcal Disease Among Adults, Adolescents and Children Living with HIV(World Health Organization・2022)HIV関連クリプトコッカス髄膜炎の導入療法として、リポソーマルアムホテリシンB単回高用量(10 mg/kg)+フルシトシン14日間(100 mg/kg/日を4分割)+フルコナゾール1200 mg/日を第一選択とし、リポソーム製剤が入手できない場合はアムホテリシンBデオキシコール酸塩+フルシトシン7日間に続けてフルコナゾール7日間とすることを推奨している。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Single-Dose Liposomal Amphotericin B Treatment for Cryptococcal Meningitis(The New England Journal of Medicine・2022)アフリカ5か国のHIV陽性成人844例を対象としたAMBITION試験で、リポソーマルアムホテリシンB単回10 mg/kg+フルシトシン14日間+フルコナゾール1200 mg/日は、当時のWHO推奨(アムホテリシンBデオキシコール酸塩+フルシトシン7日間→フルコナゾール1200 mg/日7日間)に対し10週死亡率で非劣性だった(24.8%対28.7%、差−3.9ポイント、非劣性マージン10ポイント)ことを確認した。閲覧 2026-08-27