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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

クリプトコーマ

Cryptococcoma

別名
脳クリプトコーマクリプトコッカス性肉芽腫肺クリプトコーマ
臓器系
感染症神経
科目
Medical MicrobiologyNeurology
トピック
微生物学 4/9:クリプトコッカス・ネオフォルマンス、ニューモシスチス・イロベチイ(カリニ)神経内科 G3-04:AIDSの神経学的合併症微生物学 5/22:ウイルス性・真菌性の髄膜炎・脳炎の病原体(一覧)
上位概念
クリプトコッカス症
鑑別疾患
結核腫中枢神経系腫瘍脳膿瘍
合併症
水頭症
治療薬
アンフォテリシンBフルシトシンフルコナゾールデキサメタゾン
原因微生物
Cryptococcus neoformansCryptococcus gattii
症状
頭痛意識障害嘔吐痙攣発作発熱うっ血乳頭
検査値
クリプトコッカス抗原検査
画像所見
リング状増強病変シャボン玉様病変

🧠 全体像:は「が(あるいは肺)に侵入して作った塊」である。⚠️ camptocormia()とはまったくな語である。 の中枢神経病変には、がで膨らんだ()と、実質に踏み込んで腫瘤を作ったという成り立ちの違う2つがあり、前者は「炎症の乏しさ」が、後者は「腫瘤としての振る舞い」が問題になる。本ノートは中枢神経系のを主題とし、同じ語で呼ばれるを1節で扱う。

定義と成り立ち

播種性の感染は多くがとして現れるが、菌が・に定着したのちへ侵入すると、限局した実質腫瘤=を形成する1。免疫不全者にも、明らかな免疫不全のない者にも報告がある。

()
成り立ち ()がと菌体を含む粘液様物質で拡張 菌がへ侵入して腫瘤を形成
個数・形態 多数の小円形病変が 単発〜少数の
造影 ほとんど増強されない 増強されることも、されないこともある
主な問題 「炎症が乏しい」ことが診断の手掛かり ・周囲浮腫・水頭症

⚠️ 画像上、この2つは混同されやすい。 拡張したが癒合してになったものと、とが取り違えられた報告がある1。

起因菌:C. gattii と C. neoformans

「といえばCryptococcus gattii」と言われる。実際、ガイドラインはC. gattiiが脳(症例の最大30%まで)と肺のをC. neoformansより不釣り合いに多く生じると記す——ただしこの記述は先行文献の引用である2。

⚠️ 「=C. gattii」と短絡しない。 症例集積のスコーピングレビューでは、菌種が同定できた34例のうちC. neoformansが74%、C. gattiiが26%で、実数としてはC. neoformansのほうが多かった1。C. gattiiのほうが「を作りやすい」という性質と、症例全体でどちらが多いかは別の話である(C. neoformans感染そのものが桁違いに多く、またが行われない症例も27%あった)。

💡 C. gattiiが健常宿主に感染しやすく、がを封じ込める結果として腫瘤を作りやすい——これが病変の「治りにくさ」の説明として挙げられている2。

臨床像

頭痛、意識変容・、嘔吐が主体で、症状出現から受診までの中央値は30日と亜急性である1。診察所見に乏しい例が多く、非特異的な症候のために初診で診断されにくい。

  • 40報告47例のレビューでは年齢中央値48.5歳、男性75%。
  • 50%超が単発病変で、病変周囲浮腫を73%に認めた。
  • 部位は21%・基底核21%・19%が多く、視床5%・橋2%は稀。

画像と診断

よりが感度に優れる。ただし所見は一定せず、を示すものから造影T1で増強されないものまで幅がある1。

治療

髄膜炎そのものの( 2022年版の単回高用量を含む)はノートに譲り、ここでは腫瘤病変に固有の推奨を扱う。

相 2010年版の推奨
導入 0.7〜1 mg/kg/日、 3〜4 mg/kg/日、またはABLC 5 mg/kg/日に、100 mg/kg/日経口4分割を併用して最低6週間(B-III)2
・維持 400〜800 mg/日経口を6〜18か月(B-III)2
ステロイド と周囲浮腫に対して投与を検討する(B-III)2
外科 径3 cm以上で到達可能かつを伴う病変ではまたはによる減量・摘出を検討(B-II)。IRISで説明できない増大は組織診断へ2

⭐ 髄膜炎より間が長く、維持も長い理由。 髄膜炎はでそのものを繰り返し採取して効果判定できるが、ではそれができない。そのためガイドラインは維持を最低6か月、望ましくは12〜18か月と定めている2。

⚠️ 画像だけで治療の成否を判断しない。 有効な抗真菌治療中でも病変が長期間残存することがあり、またの制御に伴う免疫応答として周囲浮腫が新たに出現することがある2。

⚠️ ステロイドを急に切らない。 とくに抗真菌薬への反応が乏しいでは、急速な減量がのを招くためする2。症候性の水頭症でを伴えばシャントの適応になる。

⚠️ 実診療は推奨どおりには行われていない。前述のレビューでは、製剤の投与は91%に行われたが、またはを併用したのは58%にとどまり、維持療法を受けたのは52%(126日)だった。全体の死亡率は34%である1。

肺クリプトコーマ

同じ語は、が結節・腫瘤として現れたものにも使われる。は病変の大きさと数で治療を分けている2。

  • 単発・小型:400 mg/日(B-III)。
  • 非常に大きい、または多発:+を4〜6週間、続いてを6〜18か月(手術の有無による)(B-III)。
  • 手術の検討:重要臓器の圧迫、治療4週間で縮小しない、全身状態が保てない(B-III)。

まとめ

  • は、が(または肺)に侵入して作った腫瘤病変。が拡張した=とは成り立ちも形態も異なる。camptocormia()とは。
  • C. gattiiはを作りやすいが、症例の実数ではC. neoformansのほうが多い。「=C. gattii」と短絡しない。
  • 単発病変が半数超、周囲浮腫が7割超。画像所見は一定せず、画像だけでは診断確定にも治療効果判定にも足りない。
  • 治療は+の導入を最低6週間、維持を6〜18か月と、髄膜炎より長い。ステロイドは、径3 cm以上でがあれば外科を検討する。

出典

  1. 1.Cerebral Cryptococcomas: A Systematic Scoping Review of Available Evidence to Facilitate Diagnosis and Treatment(Pathogens・2022)40報告47例のスコーピングレビューで、年齢中央値48.5歳・男性75%、菌種同定できた34例ではC. neoformansが74%とC. gattiiの26%より多かったこと、頭痛・意識変容/錯乱・嘔吐が中央値30日かけて出現したこと、50%超が単発病変で病変周囲浮腫を73%に認めたこと、49%が外科的介入を受けたこと、91%にアンフォテリシンB製剤が導入療法として投与されたがフルシトシンまたはフルコナゾールを併用したのは58%にとどまり導入期間の中央値が42日だったこと、52%が維持療法を受け期間中央値126日だったこと、全体の死亡率が34%だったこと、病変部位が前頭葉21%・基底核21%・頭頂葉19%で視床5%・橋2%は稀だったこと、腫瘍・化膿性膿瘍・結核性膿瘍と誤られやすく神経嚢虫症や腫瘤形成性脱髄病変と誤診された報告もあること、拡張した血管周囲腔が癒合してできる膠様偽嚢胞と画像上混同されることを確認した。⚠️ 抄録は副腎皮質ステロイドを「約30%に投与、期間中央値31.5日」とするが考察は「約25%に投与、病変周囲浮腫のある患者では期間中央値21日」としており、出典側で数値が一致していない。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Clinical Practice Guidelines for the Management of Cryptococcal Disease: 2010 Update by the Infectious Diseases Society of America(Infectious Diseases Society of America・2010)脳クリプトコーマの導入療法をアンフォテリシンBデオキシコール酸塩0.7〜1 mg/kg/日静注、リポソーマルアンフォテリシンB 3〜4 mg/kg/日静注、またはABLC 5 mg/kg/日静注に、フルシトシン100 mg/kg/日経口4分割を併用して最低6週間とし(推奨51、B-III)、地固め・維持療法をフルコナゾール400〜800 mg/日経口で6〜18か月とし(推奨52、B-III)、補助療法として腫瘤効果と周囲浮腫に対する副腎皮質ステロイド(B-III)と、径3 cm以上で到達可能な腫瘤効果を伴う病変に対する開頭または定位手術による減量・摘出(B-II)を挙げること、IRISで説明できない病変の増大は組織診断へ回すこと、髄膜炎と違って病巣を繰り返し採取できないためフルコナゾールの維持療法を最低6か月・望ましくは12〜18か月続けること、画像だけに頼ると誤ることがあり有効な抗真菌治療中でも病変が長期間残存したり周囲浮腫が新たに出現したりすること、ステロイドは急速な減量による反跳性IRISを避けて漸減すること、症候性水頭症にはシャントを行うことを確認した。肺クリプトコッカス症では単発小型のクリプトコーマにフルコナゾール400 mg/日、非常に大きいものや多発するものにアンフォテリシンBデオキシコール酸塩+フルシトシン4〜6週間に続くフルコナゾール6〜18か月(手術の有無による)を推奨し(推奨84、B-III)、重要臓器の圧迫・治療4週間で縮小しない・全身状態不良のいずれかで手術を検討する(推奨85、B-III)。なお「C. gattiiは脳(症例の最大30%まで)や肺のクリプトコーマをC. neoformansより不釣り合いに多く生じる」という記述は、本ガイドラインが参照番号つきで先行文献を引用したものである。閲覧 2026-09-03