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Lab values · Published

クリプトコッカス抗原検査

Cryptococcal antigen test

別名
CrAgクリプトコッカス莢膜抗原クリプトコッカス抗原
臓器系
感染症神経
科目
Medical MicrobiologyNeurology
トピック
微生物学 4/9:クリプトコッカス・ネオフォルマンス、ニューモシスチス・イロベチイ(カリニ)神経内科 G3-04:AIDSの神経学的合併症
関連疾患
HIV感染症・AIDSクリプトコッカス症

🧠 全体像は、Cryptococcus neoformansCryptococcus gattiiが菌体の外に持つ、GXM)を検出する検査であり、菌そのものではなく菌が撒き散らす抗原の量を見ている。の登場で血清・血漿・全血・髄液・尿のどれからでも10分程度で判定ができるようになり、HIV診療における運用を一変させた。⚠️ ただし高抗原価では逆に陰性化するがあり、力価は治療効果判定には使わない——培養陰性化と臨床経過で判断する。

何を測っているか

莢膜を持つCryptococcus属が産生し髄液・血中へ放出する多糖体抗原(はGXM)を、抗体を用いて検出する。培養やが「菌体そのもの」を見ているのに対し、CrAgは菌が分泌した抗原を見ており、両者は検出対象が異なる。C. neoformansC. gattiiのいずれの抗原も検出するが、通常の検査は両種を区別しない。

検体・測定法と結果の読み方

測定法 検体 所要時間 特徴
血清・髄液 約2時間 古典的な半定量法(希釈系列で力価を出せる)。などで偽陽性になりやすい
EIA 血清・髄液 検査室での処理を要する 定量的な結果を出せる
血清・血漿・全血・髄液・尿 10〜20分 で実施可能。室温保存・機器不要で、より高感度12

LFAの・特異度は血清97.6%・98.1%、髄液98.9%・98.9%と非常に高い3・髄膜炎ではこの高い感度がそのまま活き、血清CrAgだけでも強く疑える。一方で肺に限局した感染では組織中の莢膜抗原量が少なく血流にあまり出ないため、血清CrAgが陰性にとどまることがある——陰性でも肺を除外しない。は髄液より採取が容易で、LFAならではの選択肢になる3

結果は定性(陽性・陰性)に加え、希釈系列で力価(例:1:1,024)を出す半定量判定もできる。

⚠️ 測定上の注意

  • 抗原濃度が極端に高いと、過剰な抗原がストリップ上の抗体と先に結合してしまい判定帯が形成されず、かえって陰性に出ることがある。1:2希釈の定性判定で陰性でも臨床的疑いが強ければ、1:5以降に希釈した半定量法で再検する——実際に定性判定では陰性だった検体が、希釈後に1:327,680・1:655,360というへ転じた症例が報告されている4
  • 偽陽性。 や、Trichosporon属などの他の酵母とので偽陽性を来しうる。Trichosporonの場合、の原因は莢膜ではなく細胞壁Cryptococcusと生化学的に類似することにある
  • 力価は測定法間で互換性がない。 LFAとの力価は、すれば相関自体は強い(r=0.84)ものの一致限界が非常に広く(比にして0.13〜18.1倍)、個々の検体では何倍もずれうる。相関の強さを互換性と読み違えない——経過を追うときは同一の測定法で統一する1
  • 力価を治療効果判定に使わない。 治療後も長期間陽性が持続しうるため、抗原価の低下だけをもって治療と判断しない。経過は髄液培養の陰性化と臨床経過で追う

HIV陽性者におけるCrAgスクリーニング

CD4数100/µL未満のHIV感染者は、ART開始・再開前に血清CrAgスクリーニングを行う(CD4数200/µL未満でも考慮してよい)2。無症候のうちに莢膜抗原量の上昇を捉え、髄膜炎が顕在化する前に治療へつなげる狙いである。

flowchart TD
    A["HIV感染者、CD4数100/µL未満<br>(200/µL未満でも考慮)"] --> B["血清<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cryptococcal antigen'>クリプトコッカス抗原</span>スクリーニング"]
    B --> C{"陽性か"}
    C -->|"陰性"| D["ARTを通常どおり開始"]
    C -->|"陽性"| E["髄膜炎の徴候・症状を評価"]
    E --> F{"可能なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lumbar puncture'>腰椎穿刺</span>で髄膜炎の有無を確認"}
    F -->|"髄膜炎あり"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cryptococcal meningitis'>クリプトコッカス髄膜炎</span>として治療"]
    F -->|"髄膜炎なし"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluconazole'>フルコナゾール</span>800〜1200mg/日を2週間<span class='jp-term jp-term-diagram' title='preemptive administration'>先制投与</span>"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='consolidation (therapy)'>地固め</span>・維持療法へ移行"]

⚠️ 陽性即治療開始ではない。 の前に、可能な限りで無症候性の髄膜炎を除外する——見逃せば単独の量では髄膜炎の治療として不十分になりうる2

診断的位置づけと経時変化

より高感度・高特異度で、迅速に結果が出るため現在の診断の中心を占める。培養は依然としてだが結果に数日を要し、CrAgはこれを補う即日検査として位置づけられる。

治療完了後にルーチンでを繰り返したり血清・血漿CrAgを追跡したりすることは、資源の限られた地域では推奨されていない2——力価そのものを経過観察の主指標にはしない。経過は髄液培養の陰性化と、頭蓋内圧が管理下にあるかで追う。

まとめ

  • CrAgはCryptococcus属のを検出する検査で、菌体自体を見る培養・とは検出対象が異なる
  • 測定法は・EIA・LFAがあり、LFAは血清・血漿・全血・髄液・尿のいずれにも使え、10分程度で判定ができる
  • ・髄膜炎では血清CrAgの感度が非常に高い一方、肺限局の感染では陰性のことがある
  • ⚠️ 高抗原価によるでの偽陰性、Trichosporon等による偽陽性、測定法間で力価が互換しないことに注意する
  • ⭐ 力価を治療効果判定に使わない。経過は髄液培養の陰性化と臨床経過で追う
  • HIV感染者ではCD4数100/µL未満で血清CrAgスクリーニングを行い、陽性ならで髄膜炎を除外したうえで先制的にを投与する

出典

  1. 1.Cryptococcal disease (2022) — WHO guidelines on the management of advanced HIV disease(World Health Organization・2022)CD4数100/µL未満のHIV感染者はART開始・再開前に血清クリプトコッカス抗原(CrAg)スクリーニングを行い(CD4数200/µL未満でもスクリーニングを考慮してよい)、陽性者は髄膜炎の徴候・症状を評価したうえで可能であれば腰椎穿刺を行い、フルコナゾール800〜1200 mg/日を2週間先制投与したうえで地固め・維持療法へ移行することを確認した。側方流動イムノアッセイ(LFA)はラテックス凝集法・India ink染色より高い臨床的・分析的感度を持ち、10分未満の迅速判定・室温保存・簡便な機器で実施できる点を確認した。治療完了後のルーチンな腰椎穿刺再検や血清・血漿CrAgの追跡調査は、資源の限られた地域では推奨されないことを確認した。閲覧 2026-08-04
  2. 2.Evaluation of a New Cryptococcal Antigen Lateral Flow Immunoassay in Serum, Cerebrospinal Fluid and Urine for the Diagnosis of Cryptococcosis: A Meta-Analysis and Systematic Review(PLOS ONE・2015)LFAの統合感度・特異度は血清で97.6%・98.1%、髄液で98.9%・98.9%、尿で感度85.0%であり、血清ではラテックス凝集法と高い一致率を、髄液ではEIA・培養と高い一致率を示すことを確認した。LFAは10分未満で判定でき室温で安定するためポイントオブケア検査に適し、髄液より採取が容易な尿検体でも利用できることを確認した。閲覧 2026-08-04
  3. 3.Clinical Utility of the Cryptococcal Antigen Lateral Flow Assay in a Diagnostic Mycology Laboratory(PLOS ONE・2012)同一患者でLFAによる力価とラテックス凝集法・EIAによる力価は対数変換後も相関係数0.84・信頼区間が広く直接比較できず、力価を予後判定に用いる前にはさらなる検証が必要であることを確認した。血清での感度はLFAがラテックス凝集法より高く(100%対91.1%)、判定にかかる時間(20分対2時間)でも優れていたことを確認した。閲覧 2026-08-04
  4. 4.False-Negative Serum Cryptococcal Lateral Flow Assay Result Due to the Prozone Phenomenon(Journal of Clinical Microbiology・2018)抗原濃度が非常に高いと過剰な抗原がストリップ上の抗体と先に結合してしまい判定帯の形成を妨げる(プロゾーン現象)ため、1:2希釈の定性判定では陰性でも、1:5以降に希釈した半定量法で再検すると陽性かつ高力価(1:655,360、1:327,680)になった症例が報告されたことを確認した。閲覧 2026-08-04