微生物学

微生物学 · 4/9

クリプトコッカス・ネオフォルマンス、ニューモシスチス・イロベチイ(カリニ)

Cryptococcus neoformans, Pneumocystis jirovecii (carinii)

応用トピック
その他の肺感染症
微生物
Cryptococcus gattiiCryptococcus neoformansPneumocystis jirovecii
疾患
クリプトコーマクリプトコッカス症ニューモシスチス肺炎
検査値
クリプトコッカス抗原検査
画像所見
シャボン玉様病変

🧠 この2菌は、4/7・4/8の4天王とは対照的な「日和見病原体」として読む。 4天王は免疫正常者にも感染するだったが、Cryptococcus neoformansとPneumocystis jiroveciiは健常者ならまず発症しない——どちらもAIDS()指標疾患であり、細胞性免疫の障害度そのものを映す鏡になる。Cryptococcusは莢膜を持つ酵母(二形性ではなく常に)、Pneumocystisは「かつて原虫と誤認されていた」菌体外の酵母——どちらも4/1の3形態分類(酵母/カビ/二形性)のうち「酵母」の枠に固定される点で共通する。

Cryptococcus neoformans

  • 全身性真菌症の日和見病原体
  • 莢膜を持つ酵母——をする。二形性ではなく常にをとる点が4/7・4/8の4菌種と異なる
  • 莢膜は反復性の多糖莢膜抗原からなる
  • 複数の血清型があり、それぞれ地理的分布が異なる

⚠️ C. neoformans/C. gattii種複合体はさらなる細分化が提案されているが、まだ広く定着していない。 2015年にHagenらは11遺伝子座のに基づきC. neoformansを2種、C. gattiiを5種へ再分割する提案を行ったが、Kwon-Chungらは2017年、既知2,606株の遺伝子型データがすでに7種を上回る多様性を示しており系統ごとに種を新設するとの不安定化を招くと指摘し、生物学的な種差についての合意が得られるまでは*“Cryptococcus neoformans species complex”・“C. gattii species complex”*という中間的な呼称を用いるべきだと反論した1。本ノートでは従来どおりC. neoformans/C. gattiiの2種で扱う。

病原性・感染経路

  • ハト・キジバトの糞便に汚染された土壌に存在
  • を含むの吸入により感染する

臨床像:

  • 発症の主要な危険因子は細胞性免疫の障害、特に/(, human immunodeficiency virus)感染患者
  • 急性肺感染:咳、呼吸困難などの重篤な肺感染症状
  • :肺から中枢神経系への播種によって起こる(の原因として最多)。画像上、灰白質に「」や真菌を充満した嚢胞が見られる
  • :莢膜、メラニン

診断

  • India ink(墨汁)染色:髄液(=cerebrospinal fluid)を染色する。まずで髄液を採取し、その後に染色を行う。莢膜のために菌体周囲に染まらない厚いが見える
  • 肺組織:または染色
  • :莢膜抗原を検出し凝集を起こす
  • ⭐ (アッセイ, ):感染者の疑い髄膜炎832例を対象とした検証で、・・India ink染色より優れた性能(感度99.3%・特異度99.1%)を示した——現在最も推奨される莢膜抗原検出法である2
  • 生化学検査:ウレアーゼ陽性
  • 培養:無添加のを用いる(4/3参照——はCryptococcus自体の発育も抑制してしまうため)

治療

Pneumocystis jirovecii

  • 全身性真菌症の日和見病原体
  • かつては原虫と考えられていたが、現在は真菌として分類される
  • ヒトに感染する種は1999年に*Pneumocystis jiroveciiとされ、2002年に学術誌上で正式に提唱された——に感染する別種であるP. carinii*との遺伝的・機能的な違いが明らかになったための改称で、旧名は今も略称「PCP」(Pneumocystis pneumoniaと読み替え)に残る4
  • 偏性細胞外性の酵母

病原性・感染経路

  • 宿主となる環境は不明(おそらく土壌関連)
  • も不明だが、主なは呼吸器

臨床像

  • 健常者では通常無症候
  • 免疫不全患者でのみ感染症を起こす:
    • /患者(本菌による肺炎は指標疾患=-defining disease)
    • リンパ腫患者
    • 臓器移植後の患者
  • びまん性(, pneumocystis pneumonia):発熱、(非定型的な経過)

診断

  • :、、
  • 染色:で(卵形)の酵母として観察される。他に、、Calcofluor染色、も用いられる
  • 胸部X線:斑状浸潤影→「すり」陰影。内のふわふわとした泡沫状滲出液を反映する

治療

⭐ どちらも「指標疾患」——CD4数と結び付けて覚える。 もも、細胞性免疫()が高度に低下した患者に特異的に出現する日和見感染であり、臨床的には感染の進行度・発症の指標として扱われる。

まとめ

  • Cryptococcus neoformansとPneumocystis jiroveciiはいずれも全身性真菌症の日和見病原体で、健常者にはほぼ発症せず指標疾患として現れる。
  • Cryptococcus neoformansは莢膜を持つ酵母(二形性ではなく常に)で、ハト糞便からのにより感染し、の最多原因菌となる。診断はIndia ink染色。は+(2週、古典的レジメン)または 2022年推奨の単回高用量+14日間+、続いて8週間の維持療法。
  • Pneumocystis jiroveciiはかつて原虫と誤認されていた偏性細胞外性酵母で、免疫不全患者にびまん性(すりガラス陰影)を起こす。診断は、治療はTMP-SMX(バクトラム)が第一選択。
  • Cryptococcus培養時は4/3の標準からを除く必要がある点に注意する。

出典

  1. 1.The Case for Adopting the 'Species Complex' Nomenclature for the Etiologic Agents of Cryptococcosis(mSphere (American Society for Microbiology)・2017)2015年にHagenらが115株の系統解析からC. neoformansを2種・C. gattiiを5種に再分割する提案を行ったのに対し、既知2,606株の遺伝子型データがすでに7種を上回る多様性を示していること、単系統群ごとに種を新設すると命名の不安定化を招くこと、クレード間に生物学的な違いの合意がないことを理由に、著者ら(2人の分類学的委員会メンバーを含む)が"Cryptococcus neoformans species complex"・"C. gattii species complex"という中間的な呼称の採用を推奨したことを確認した。閲覧 2026-08-26
  2. 2.Multisite validation of cryptococcal antigen lateral flow assay and quantification by laser thermal contrast(Emerging Infectious Diseases・2014)ウガンダ・南アフリカのHIV感染者832例(疑い髄膜炎)を対象とした検証で、髄液クリプトコッカス抗原ラテラルフローアッセイ(CRAG LFA)の感度99.3%・特異度99.1%が、髄液培養(CSF量依存で82.4〜94.2%)、ラテックス凝集反応(感度97.0〜97.8%・特異度85.9〜100%、メーカー間差あり)、India ink染色(感度86%)のいずれよりも優れていたことを確認した。閲覧 2026-08-26
  3. 3.Recommendations on induction, consolidation and maintenance antifungal treatment regimens — Guidelines for Diagnosing, Preventing and Managing Cryptococcal Disease Among Adults, Adolescents and Children Living with HIV(World Health Organization・2022)導入療法はリポソーマルアンフォテリシンB単回高用量10mg/kg+フルシトシン14日間(100mg/kg/日を4分割)+フルコナゾール1200mg/日を第一選択とし、地固め療法はフルコナゾール800mg/日を8週間、維持療法はフルコナゾール200mg/日をCD4数200/µL超かつARTによるウイルス抑制まで継続することを確認した。閲覧 2026-08-26
  4. 4.A new name (Pneumocystis jiroveci) for Pneumocystis from humans(Emerging Infectious Diseases・2002)DNA解析によりPneumocystis属が宿主種ごとに極めて多様であることが判明し、ヒトのPneumocystis肺炎を起こす種がPneumocystis jiroveci(Frenkel、1999年命名)として区別されるようになったこと、この改称後も略称PCPは"Pneumocystis pneumonia"と読み替えて使用できることを確認した。閲覧 2026-08-26